花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

山川異域 風月同天│「唐大和上東征伝」

2020-02-10 | アート・文化


山川異域風月同天寄諸佛子共結來縁│「唐大和上東征伝」

時に大和尚、揚州大明寺に在して衆の為に律を講す。榮叡、普照、大明寺に至りて大和上の足下に頂禮して具(つぶ)さに本意を述て曰く、佛法東流して日本國に至れり。其の法有りと雖も傳法に人無し。日本國に昔、聖徳太子と云ふ人有り。曰く、二百年の後、聖教日本に興らんと。今此の運に鍾(あた)る。願はくは大和尚東遊して化(け)を興したまへと。大和上答へて曰く、昔し聞くに南岳の思禪師、遷化之後、生を倭國の王子に託して仏法を興隆し、衆生を濟度すと。又聞く、日本國の長屋王、佛法を崇敬して千の袈裟を造て、此の佛の大徳、衆僧に棄施す。其の袈裟の縁上に四句を繍著(しゅうちゃく)して曰く、山川域を異にすれども、風月は天を同じうす。諸の佛子に寄せて、共に來縁を結ばん。此を以て思量するに、誠に是れ佛法興隆に有縁之国也。今我が同法の衆中に、誰か此の遠請に應して日本國に向ひ法を傳ふる者の有んや。時に衆黙然(もくねん)として一りも對ふる者の無し。良久して僧祥彦(しょうげん)と云ふもの有り。進て曰く、彼の國太た遠くして生命存し難く、滄海淼漫(びょうまん)として百に一りも至ること無し。「人身は得難く中國に生し難し。」進修未だ備はらず、道果未だ剋(きざ)さず。是の故に衆僧緘黙して對ふる無きのみ。大和上曰く、是れ法事の為也。何ぞ身命を惜しまん。諸人去(ゆ)かずんば、我れ卽ち去かんのみ。祥彦曰く、和上若し去かば、彦も亦随ひて去かん。

時大和尚在揚州大明寺爲衆講律榮叡普照至大明寺頂禮大和尚足下具述本意曰佛法東流至日本國雖有其法而無傳法人日本國昔有聖德太子曰二百年後聖教興於日本今鍾此運願大和尚東遊興化大和尚答曰昔聞南岳思禪師遷化之後託 生倭國王子興隆佛法濟度衆生又聞日本國長屋王崇敬佛法造千袈裟棄施此國大德衆僧其袈裟縁上繍著四句曰山川異域風月同天寄諸佛子共結來縁以此思量誠是佛法興隆有縁之國也今我同法衆中誰有應此遠請向日本國傳法者乎時衆黙然一無對者良久有僧祥彦進曰彼國太遠生命難存滄海淼漫百無一至人身難得中國難生進修未備道果未剋是故衆僧緘黙無對而已大和尚曰是爲法事也何惜身命諸人不去我卽去耳祥彦曰大和尚若去彦亦随去
(「宝暦十二年版本 唐大和上東征伝」, 19-20)

参考資料:
蔵中進編:和泉書院影印叢刊12「宝暦十二年版本 唐大和上東征伝」, 和泉書院, 1979
安藤更生著:人物叢書「鑑真」, 日本歴史学会, 1989

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