百億の昼と千億の夜 (秋田文庫) 原作:光瀬 龍 画:萩尾望都 |
光瀬龍さんの原作は昔たしか読んだ記憶?はあるのですが、理解できたとは言えず。 漫画の方は何回か読み、圧倒的な印象が残っているものの、あらすじや感想を書くことは、結構難しい気がしています。
主な登場人物はプラトン、ポセイドン、イエス、ユダ、シッタータ(悉達多太子・釈迦国)、阿修羅、四天王、etc. (色々な名前が登場します。これはフィクションです。)
<前半>あらすじ
その昔 微細な星間物質の一個一個が - 遠い星の弱い光の波に押され押されて この空域に少しずつ集まってきた それはしだいに濃いガス雲となり 重力の場を支配し始めた このようにして星々は生み出されたがー その時から 歴史はすでに その行きつく所へ向かって歩み始めていた
世界は何故生まれ、どこへいくのか。生命はなぜ誕生し、進化し、争いを繰り返し、文明が生まれ、また進化し、われわれはどこからきてどこへ行くのかという根源的な問い。科学が宇宙の誕生の謎に迫り、星の誕生や宇宙の膨張が知られるようになっても、この根源的な問いの答えは誰も知らない。この世界はどこから来て、どこへ向かっているのか?
〈アトランティス〉 アテナイの学者プラトンは、長くアトランティス伝説の夢を見続けた人で、伝説の古文書を発見しそれに基づいて旅にでる。アトランティスの子孫の村エルカシアでは、プラトンが来ることは予期されていたことで、プラトンに村の長老の娘から「宗主」の伝言が伝えられ、彼は過去のアトランティス王国にタイムスリップ。王国の司政官オリオナエ(=プラトン)として目覚める。
アトランティス王国のポセイドン王は、王国を神の国アトランタへ移動する命令を出す。 (アトランティスで「神」と崇められていたものは、実は「惑星開発委員会」であり、「惑星開発委員会」はこの惑星において、一つの実験として「文明」をつくり、それを移動させようとしていた。)ポセイドン王の命令に怒った市民の暴動で、「移動」に手違いが起こり、アトランティスは破壊されてしまう。 オリオナエ(プラトン)は叫ぶ。「アトランティスを返せ。なぜ、なぜ神ならば、なぜわれわれをこんな目にあわせるのだ。」
〈シッタータ〉 釈迦国のシッタータ太子は、家族も国も目の前の悲惨も、「すべての現世」を捨て、出家する決心をする。 「天の意志は人のためにはたらくものではない・・全ては流転する大いなる相の一つにすぎない」として。
天上界をめざした太子は、そこで宇宙が静かに「終末のための終末」に向かっていることを目の当たりにする。 梵天王はシッタータに、広大な天上界は危機にあり、「五十六億七千万年後に人間界に現れ、人々を救うとされる救世主弥勒菩薩のいるこの地までも、侵略されようとしている」と語る。侵略?誰に? 「阿修羅」に。そして、全ての破壊は阿修羅王のせいであり、この者こそ宇宙の悪であり、われらの敵弥勒の敵であると言う。
シッタータ太子は、「なぜ阿修羅は天上界に攻め入ったのか、なぜ破壊を繰り返すのか、阿修羅に願いはないのか、失うものはないのか?」と会って尋ねたいと考え、帝釈天に阿修羅王に会えるように頼む。
〈阿修羅〉 シッタータは阿修羅に問う。「なぜ戦う?」 阿修羅は太子に答える。「弥勒に会え!」と。そして、
「波羅門のいう兜率天浄土に弥勒という沙門のありて、この世の末法に現れ出でて人々を救うという弥勒。では、五十六億七千万年後に何が起こるというのだ?末世にいたるほどの出来事、それほどの破滅とはいったいなんであるか?」と。
「人の死も(宇宙から見れば)完全な消滅ではない。すべては単なる変化にすぎない。しかしこの世界は完全なる死へ向かっている。一切の無。終末のための終末へ。これは、いったい何者のしわざであるのか?」と。
〈弥勒〉 シッタータは阿修羅の案内で、弥勒に会いに行く。 しかし、弥勒像は単なる作りもの・・。では弥勒像を作り、末法の世と救いの予言を残した者は何者か?宇宙の生成に何らかの作為が含まれていたとしたら?神が支配する宇宙の存在理由とは何か?
〈ユダとキリスト〉 長い間ローマの支配下にあり貧しかったガラリヤの人々は、救世主が現れると信じていた。ナザレの大工イエスは(「惑星委員会の」暗示と指令により) 「天使」のお告げを聞いたとし、いずれ神がこの世を裁く「最後の審判」の時が来ると人々に吹聴する。ユダはイエスの言葉に不信と疑惑を感じ、不安を抱く。「神とは裁くものなのか?」「もしこの世が最後の裁きを必要とするならば、この世は滅びの道にこそさだめがあるものなのか?」と。
ユダはイエスにただならぬものを感じて、彼を告発する。イエスはゴルゴダの丘ではりつけにされるが、しかし、これは予定されていた事だった。ユダは、何か大きな恐ろしい計画を察知する。
〈トーキョーシティ〉 長い間、海の中で眠っていた。記憶を無くしたまま「ユダ」は、トーキョーで目覚める。要塞のような場所で、トーキョーシティの市民の生き残り数十人が暮らしている。その中にオリオナエ(=プラトン)がいる。
彼は、今は太陽系紀元3905年だと言う。この都市は内惑星連合の首都として栄えていたが、2900年に太陽が色褪せたことを始まりに、地球の平均気温はマイナス65度になった。大陸は砂漠となり、動物は死滅し、千年の間に地球は死の星となってしまった。そして、この衰退は太陽系だけではない、銀河全体宇宙全体に起こっていることだと。そして、オリオナエは、これは”シ”によって計画されたことだと言う。
〈戦士たち〉 地球を監視していたイエスの攻撃によって、この場所も破壊される。オリオナエはユダに、アトランティスをはじめとする人々の悲劇について語る。そして、「アスタータ50における惑星開発委員会は”シ”の命令をうけ、アイ第三惑星にヘリオ・セス・ベータ型の開発を試みることになった」とアトランティスの支配者ポセイドンは言った、とユダに告げる。
阿修羅が現れ、イエスに問う。「ナザレのイエス、”シ”の手先! この宇宙を支配するという絶対者、人の世の運命を支配し破滅へと引き込むお前の主”シ”はどこにいる!」
百億の昼と千億の夜 (角川文庫―リバイバルコレクション エンタテインメントベスト20) 光瀬龍 |