「帆」33号
2023/2/27発行 不定期刊 頒価300円
発行人 佐藤よしみ
「つなぐ」30首と「琉歌(うた)の見える場所」(22)が発表されている。
佐藤よしみもまた孤高の歌人だ。
「つなぐ」より5首紹介する。
手つかずのまま残されし売地あり夢の骸のようなくらがり
分けあえば半分になるかかなしみはビル風ばかり渦巻いている
くしゃみひとつこらえることがうまくなる能面のごとき顔が並べり
鼻曲りの鮭を一匹打ち上げて千歳河原は冬に入りゆく
無防備にならざるを得ぬ 肉体をもつものなべてに死ののちはある
1首目:直喩が効く。
2首目:二人でいれば悲しみは半分になるというまやかし。
3首目:くしゃみをこらえきれなかった時の周囲の目を気にする。
4首目:鼻曲りの鮭は雄。海から川を上るころは獰猛であった。
5首目:無防備とはまさにそれ。