「教室は私のめがねです」
今、各地で夜間中学校の設置を求める声が広がっています。さまざまな理由で中学校に通えなかった方々が学びの場を求めているのでした。そのような方の一人が朝日新聞「窓」(2021年12月19日)に紹介されていました。
福岡市立中学校にある自主夜間学級の「よみかき教室」。その文集に「私は小さい時から勉強がゆめでした。(中略)学校は私の生きがいです。」と書いたおばあちゃんは80年ほど前に日本の統治地だった朝鮮半島から来た金さんと言う方です。さまざな仕事をして子育てもしたが、日本語の読み書きはできなかったので、学校への連絡、市役所への届け出など困ったことばかりだったと言います。
74歳の時にこの教室に通い、いつも一番前で勉強をしてきたそうです。「この先行き止まり」の看板を読めるようになった時には、嬉しくて毎日そこへ行って読んだと言っていました。
夢は新聞を読むことと言っていた金さんは昨年なくなりました。
この金さんは文集に次のように書いていたそうです。
「よみかき教室は私のめがねです。近くも見えなかった私が遠くまで見えるようになりました」
この記事を読んで本当に学びたくても学べなかった金さんが文字を喜々として習っている姿を想像しました。
また文字習得が自分を広い世界に連れていってくれ、見えないものが見える「めがね」の役割をしていると書いていることに感動しました。
実は亡くなった母親も明治生まれで、6歳の頃子守にやられて奉公先の同じ年の子が学校へ行くのをうらやましくてたまらなかったと言っていましたし、カタカナは読めるけど、平仮名や漢字は苦労して覚えたと言って、新聞を読む時はうれしそうだったことを思い出しました。
勉強が夢と語っていた金さんの話は、私達があまりにも当たり前になっている学べる楽しさ、有難さについて、そして「学んで広がる世界」について考えさせられるものでした。
(長いあいだ、諸般の事情でブログを休んでいました。この間、変わらずに開いてくださった方にはお詫びいたします。今年もよろしくお願いします。)
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