知っていますか？＝学力調査を人事評価に使うつもりの市長がいる！

　学力調査を人事評価に使うつもりの市長もいるとは驚きです！
このような市長がいると聞いた時には、全国すべての学校の学力調査が始まる時に、「これを悪用して査定に使ったりはしないだろうね」と半ば冗談で話したことを思い出しました。ところが、こんな非常識なことを考える市長がいたのです。大阪市の市長です

　校長や教員の人事評価とボーナスの額に反映させる意向を示したと言います。教育のことをちょっとでも学んだ人あるいは常識のある人ならば、学力調査の問題点や、教育の結果を人事に結び付ける短絡的な発想の危険なことに気付くはずではないでしょうか。
それは次のような問題点があるからです。

　①学力調査の結果は一部
　学力調査は、その子の能力の一部を測るものであること。しかもそれが必ずしも正しく評価、表示されるものではなく、大人社会が今必要としている限定的なものであること。一部の物差しで測れるようなものではなく個性のある人間なのです。

　②結果の要因はいろいろ。
　その全国学力調査であらわされる結果については、さまざまな要因が考えられること。よく言われるように「教え方の問題」「教える内容の問題」「教わる子どもの問題」の三点が複雑に関わること。市長はこのうち「教え方の問題」のみをとらえて教師や校長を評価しようとしているが、何か、均一な物を生産する工場の生産性と同じように考えているのではないでしょうか。今、「教わる子どもの問題」が家庭の経済格差に大きく関係してくることが指摘されています。

　③やはり危惧があっていた
そもそも全国学力調査は①に述べたように子どもの学びのうち、極めて限定的なものなのですが、それでも利用するとすれば、子どもの学力向上のために「授業の改善に使う」ということでしょう。文科省もスタートする時には、上記の目的を示し、いたずらな競争にはならないようにするとか、成績は公表しないということなどを言っていました。しかしいざ始まって見ると、やはり、一部の自治体が公表したり、順位を問題にし始めました。当初問題視されていた、全国学力テストの弊害が出始めました。

　④抽出で十分な調査なのに
　全国学力調査は、その必要性は否定はしませんが、今のやり方と利用の仕方が問題なのです。皆さん誰でもわかるように世論調査などでも世論を見るのに、全員を調べることなどしていません。全国学力調査でも、かつては抽出調査でした。大まかな学力の傾向を調べるのですからそれで十分で、その結果を持って教育について論じてきました。ところが、全校もれなく調査するという大金をかけて一部の教育産業に委託して実施するということを始めました。

　⑤子ども犠牲の調査
　統計学などを無視して、この悉皆調査を始めれば、結果は明らかでしょう。子どもを犠牲にしてのテストのための教育・調査で学校間や市町村・都道府県間の競争の始まりと、テスト業者の数億に上る利益のために簡単にはやめられないということです。

　⑥道徳教科化で「心」まで測定
　次に心配なのは、今度始まった道徳も教科になったことです。道徳心などの心の問題も道徳の教科では評価しますから、子どもたちは心までもが学力テストの対象となりかねません。それを評価するという非常識なことに加えて、さらに先生方の人事評価にまで影響させるという世界にも例のない（おそらく独裁国家でもここまでやっているでしょうか？）ことになります。

　【教育行政は中身に関わってはいけない】
　以上みてきたように、政権による学校教育への管理が強まるとともにこの学力調査をもって管理の道具にするという意図があるのではないかと危惧されていましたが、やはり現在はその危惧が当たっているようです。そこへ大阪の市長の発言です。
教育行政は、教育の中身にまで関わってはならないと教育基本法ではうたっています。それは戦前の苦い経験があるからでした。

　【官邸主導と同じ構図の教育介入の組織へ】
　所が、今憲法を無視してはばからない首相の下、教育行政の組織が大きく変えられ、行政のトップである首長が関わるようになりました。
つまり、今までは、行政から一定の距離を置くようになっていた教育行政に、市長などが直接働きかけるようになってきたのです。
大阪の例でいえば、市長は人事評価して教育を操ろうとしていますが、市長の本来の仕事である「教育環境をよくする」ことに専念して、学級内の児童数を減らして、教師を増やすなどの充実した教育をめざすべきなのです。

　安倍政権が官邸主導で官僚の人事権を握り、さまざまな問題を起こしていますが、教育へもこのように支配を強めてきていることが、大阪の市長の非常識的な言動に表れたのだと思います。首相はじめ、首長が教育内容にまで口を出して、各地で戦前回帰的なことが起きていますが、一般市民も今まで以上に教育に目を向けていかないと、様々な平和運動や民主的な運動が学校教育によって無にされてしまうのではと危惧します。（大学も大変な状況になっているとかありますがそのうちに）