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表徴の帝国




日本人であるわたしが外国人の大小のパーティに出ると、昔から西洋の知識人には日本文化好みが少なくないと決まっているので、必ずその話題に花が咲く。


なぜに西洋の知識人が日本文化好みなのかという理由は述べられないが、知識が増えるほどリベラル化が進む、知識が増えるほど抽象的なものを好む、シンプリシティを理解できるというハイブラウなポーズをとりたい心情、文化資本の影響...などが思い付く。どなたか訂正加筆、お願いします。


真に知性的(つまり自分の知性に批判的であるということ)な人物と話すと、新しい見方を教えられたり、新しい知識を授けられたりして楽しいものだ。
一方、素朴な知識しかない人に限って「われこそがこの件について深く認識している」と堂々と意見を述べたりし、また、極マイナーなサブ文化を王道と勘違いしている人などもいるので要注意である。

そういうときは優雅に苦笑して無視するに限る。
自分の知識/知性に無反省な人との会話はそれがどんな内容であれ苦しくなる。



さて、時々、「もっと日本について知りたいのだけれど、おすすめの本、ないかな?」と聞かれる。
こういう人々は「ビバ!日本文化!」に位置する人が多いので、わたしが印篭のように取り出す本は、


「表徴の帝国」じゃ~!


今は懐かしきフレンチ・ポスト・モダンの旗手、ロラン・バルト氏が書いたこの本には、エクリチュールやらシーニュやらのポスト・モダン語がちりばめられていて、日本文化万歳さんたちの目をくらまし、さらに神秘化し、さらに有り難がってもらうのに適切。

踏み絵的に使用している。

すき焼きと仲居さんを評して「彼女はあなたが目で食べる食物の女オデュッセウスなのである。あなたが立ち会っているのは<なまの食物なる神々の黄昏>なのである」

えっと~(笑)。
日本人が読んだら爆笑である。すき焼きやで、すき焼き。


もっと真面目な向きには「日本の歴史」を読みたまえ、とおすすめしたいところだが、現在のところ手ごろなものは日本語版も含めて(日本語版は膨大すぎる)見つかっていない...






今夜頂戴したお花。妙に日本的、いや、正月的に見える。



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