第284話  少子化対策(親になる前に)

2010年03月30日 04時18分43秒 | Weblog

今年度終わりまで後2日。
タイムリミットを前にまたハッと目が覚め、眠れない。
何か書こうと思うと、今朝、新聞で見た2歳児の虐待死を思い出す。
夜中に泣き出してうるさいと思い、拳で胸を約3回殴り、頭を壁にぶつけた(供述より)って・・・何?

子どもの虐待死のニュースを見ると、その衝撃に
しばらく自分の気持ちを立て直すのに時間を要する。
今年のお正月休みに本屋さんで、家庭内での虐待を想像させるような出来事に出くわす。
背の高い本棚を隔てて、会話がきこえてくるのだが、
「大人しくしとけってゆったよな?」とまず一回目、普通の声で。
あぁ、子供のことだからパパの立ち読みが退屈になったんだねと呑気に思った
次の瞬間には、「ちゃんと大人しくしとけってゆったやろ」の怒鳴り声の後、
子供が振り回されている音が。本が落ちる音。
マスクをしている女性(おそらく母親)が駆け寄っていくのが見えたが、
制止する声は聞こえてこない。駆けつける店員の姿。
この恐怖が日常茶飯事であるからだろう何より恐ろしいのが、子供が声を発しないのだ。泣かないのだが、壁越しに子の恐怖感が伝わってくる。
私は吐きそうになってその場を離れた。
その後、しばらくはあの時の父親の豹変が耳から離れず、繰り返し思い出された。
同じ子供なのに、どうしてこんなにも境遇が違うのか・・・悲しくなる。

子供にどんな授業を受けさせたいですか?と問われたら、「人間」と「演劇」と答える。

「人間」では人がどう発達するのかを学ぶ。
生命の誕生から人の成長発達、保育など人間としての営みを学ぶ。
昔のような町ぐるみの子育てや、年長児による年少児の子守り
という保育との自然な出会いが難しいので、科目としてその機会を設ける。
目の前にいる赤ちゃんに命の尊さを学ぶ。
これは少子化対策にもなるのではないかと考える。
体験授業だけでなく、今世の中で起きているニュースについてもみんなで考えたい。
あなたも小さい頃はよく泣いていたという当たり前の話を
改めて親からきく機会になったら・・・いい。

「演劇」は演劇を作る過程の中でコミュニケーションを学ぶ。
人の数だけ意見がぶつかりあうが、その摩擦を乗り越え、一つの舞台を仕上げていく。
主役ばかりでは成り立たない。脇役もいる。
舞台を支える裏方の存在を忘れてはならないし、
音響や照明、美術、総合芸術ゆえの自分の得意(居場所)を見つけるきっかけにもなる。
動きに台詞に込められる感情を想像し、共感していく作業。
表現する時の集中力と表現することの気持ちよさ。
何より人が人と共に創る(=生きる)喜びを体験できる。

親になる前に学ぶ機会があれば・・・いいなと思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第283話 ムツゴロウさん

2010年03月28日 06時03分01秒 | 子育て・「おママごと」

いってきました、修了式。
0歳児、1歳児クラスの園児は保護者の膝の上に座っての式典参加。
この動き回れず、騒いで欲しくないシチュエーションは公共機関乗車スタイルではないか。
不安がよぎる。
修了式とはどんなものか? 昨年参加できなかった進級式への思いも加わり、
私は早めに会場入りし、センターポジョンをゲットした。
息子を膝上に乗せる。
最初はかしこまって座っていた息子だが、会場のガヤガヤ感が高まるにつれ、
落ち着きがなくなる。
予想はしていたが、式典が始まる頃にはもうできあがっていた。
理事長先生の挨拶では、私の太ももの上に立つバランス遊び。
私に手を出すなと補助を制止し、一人立ちをするのだが、
太ももの上なので、グラグラ揺れる。このグラグラ感に大はしゃぎ。
お願いだがら、静かにしてくれ・・・
続きまして、私の膝上で向かい合わせになり、徐々に体をそらしていく。
これは、私の補助を前提とする遊びで、
私の支えがなければ、頭から床に激突してしまう危険な感じに大興奮。
何度も何度もイナバウワー。
二の腕で支えなければならない。う、腕がぁ~。
お願いだから、じっとしてくれ・・・

不意に、私、ムツゴロウさんみたいだなと。
「よ~し、よしよし」ムツゴロウさんのあのフレーズ。
考えてみれば、今の私はムツゴロウさん的生活を送っているような。
ツルツルほっぺをなでまくり、よ~し、よしよし。
ピチピチ動く息子を危うく落としそうになりながらも抱き、よ~し、よしよし。
顔にかかる彼のよだれ、不意に食らう彼の頭突きにも、よ~し、よしよし。
あの頃、笑いながら噛まれていくムツゴロウさんの気が知れなかったが、今ならわかる。

そんな馬鹿なことを考えていたら、ついに運命の担任紹介。
パパが仕事のため、担任の先生だけでもビデオに撮っておこうと息子を降ろし、
構える私に「ママ、ママ」と私の腕を下から揺する。
あぁ、ブレまくり。息子の泣き声入り・・・
4歳児クラスの担任紹介で、M先生の名が・・・お別れ確定の瞬間である。
前クラスの親の落胆と新クラスの親の歓声が入り混じる。
集中力を欠いた息子はさておき、となりにいるR君の顔が泣き顔にゆがむ。
いつもにこにこR君、さっきまでにこにこだったのに・・・
先生との別れをわかっているんだね。

園歌と町歌を初めてきいて式典は終了した。到着駅についた安堵感と共に。
会場を出で、もう違うクラス担任となったM先生に最後のご挨拶。
大人の話に興味はないと、息子は園庭で遊んでいる。
「K、最後、先生に挨拶しよう」
うながすが、頑なに下を向き、土いじりをして逃げていく・・・わかってるんだね。
抱き上げて、もうお別れだと伝える。
息子の顔が歪む。先生を見ようとしない。
帰り道、「K君、M先生、好き」と幾度となく言っていた。(きいてもいないのに、自発的に)
先生が手を差し伸べる。観念したのか、短い握手。
M先生が「今、私の手をぎゅっと力強く握ってくれました」と目を潤ませる。

春は別れの季節を乗り越えると、出会いの季節。
進級なのだから、新しい環境へ前向きに進まねばと思う。

※2歳児クラスから、1歳児までの手厚さがなくならびっくりするよ
と上の子がいるママ友に教えてもらった。
私たち甘ったれ親子にとって試練の年になるかもしれない。
息子自立への第一歩ととらえ、教員への評価へと混同しないようにせねば。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第282話 修了式

2010年03月27日 05時47分41秒 | 子育て・「おママごと」

今日は息子の修了式。
昨年は進級式(夫婦揃って仕事の為参加できず、その内容知りませんが)という名で
4月に開催されていたのですが、
今年度より修了式という名で3月に開催され、
来週月曜日より新しいクラスでの保育となります。

慣れ親しんでいた担任の先生との別れ・・・
担任のM先生には、0歳児クラス、1歳児クラスと約2年間、お世話になりました。
先生への信頼の深さに、願わくば、奇跡の6年間一貫教育を、
それが無理なら3年間一貫で後1年クラス担任をと望まずにいられませんが、
2年続けてがミラクルだっただけに・・・ため息。
0歳児クラスは2人担任制だったので、昨年、F先生との別れを経験しています。
息子に伝えた「ひとつお兄ちゃんになるということは、
ひとつさみしさを乗りこえなければないないことでもあるのよ」思想。
今年もまた息子に伝えなければならないと思いながら、今、自分に言い聞かせています。

このような保護者の思いで見る新しいクラス担任の挨拶に、
なんと第一印象とは恐ろしい・・・
保護者視点を得た後、今後、自身の自己紹介は今までと少し異なるような気がします(笑)

生活発表会で、こんなことがありました。
舞台で歌う合唱の声にあわせて、客席からも歌声がきこえるのです。
観客席から歌声がきこえるなんて、通常の公演ではありませんからびっくりしましたが、
その声の元を辿ると、上のクラスのお兄ちゃんお姉ちゃんでした。
下級児童を応援するため、上級児童も共に歌うのか?!
それとも、
音楽がかかると自然と口づさんでしまうのか?!
どちらにしても、そこには上級生から下級生への関心がある、
こういうのって何だかいいなと思いました。

今週、夜遅くまで教員の駐車場がいっぱいです。
私はいつもお迎えが遅いので、いつもとの違いがよくわかるのですが、
卒園式、修了式の準備でみなさん遅くまで残られているのでしよう。
止まっている先生方のお車を横目に見ながら、
園児のために、毎回各行事一丸となってとりくまれていることに心より感謝します。
人に対して無関心ではない教育がある園だから、
この園を構成する教員みんなが同じ方向を向いているのだから、きっと大丈夫だと。
新たな担任との出会いを信じて、修了式、いってまいります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

有言実行

2010年03月23日 23時48分45秒 | Weblog

ついに、車を買いました。
高額な契約金額を前に、後悔のドギドキと期待のワクワクが入り混じった複雑な気分。

車に乗るのが怖くて試乗できないまま、悩みに悩んで、
ようやく購入車が決まり、
道行く車の車種を気にしていた時期を乗り越え、
続いて、ナンバープレートをおっています。
ナンバープレート特有の字体があるので、美しい4桁の数字の並びを検討中(あくまで主観)

納車日には、私がいきなり運転できるわけもないので、父か弟に運転して帰宅することになるかと。
まずは週末ドライバーから。
GWに集中特訓し、梅雨には園のお迎えに利用できるようになっていればいいのだけれど、
最終、寒さ厳しい冬に車でお迎えできる、をタイムリミットに頑張ります。

ここで綴ると、絶対実行せねばならなくなるから・・・
自分を追い詰める意味でとりいそぎご報告まで。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第281話 PV

2010年03月21日 08時01分49秒 | Weblog

今頃、我が家で流行っている曲。
だんご3兄弟(やっぱり子どもは繰り返しがお好き♪)
いっぽんでもにんじん(よつぶでもごましお・・・苦しいけれど、よくできていると関心)
おしりかじり虫(都会のおしりは苦かったぁのところ、ハモるようにしています)
鬼のパンツ(曲にあわせ、手をたたきピースしてみせるが、息子はまだその真意に気づいていない)
およげたいやきくん(その衝撃的な結末に対して、息子のくいつきは悪い)などなど、
やはり映像つきでみると、楽しい。

友人がジャザサイズを始めたのを機に洋楽熱が復活し、
自身の日記に80年代、90年代をアップしてくれているのだが、
これが、いいのだ(涙もの)
今朝、第280話を書き終え、友人宅(彼女の日記)をのぞくと、
スターシップ「愛は止まらない」が!
高校時代、友人の家にお邪魔し、映画「マネキン」を鑑賞したことを思い出す。
あぁ、私も真夜中のデパートを独占デートしてみたい。
懐かしくて・・・私の創作意欲を刺激し、今、バックに流しながらこの話を書いている。
カイリー・ミノーグ、ワム、キャリン・ホワイト、バングルス・・・

高校時代、FM802をききながら、勉強していた?
MTVをカセットに録音した苦労が、いや、徒労が鮮やかに思い出される。
あんなにテレビを大音量に息を殺して録音したのに、
カセットにはかすかにきこえる洋楽と突如入る家族のデカい声に泣いた。
意味もわからなければ、一緒に歌えるほどの英語力もないが、
あの頃、私の体に沁み込んだ洋楽。
B'zをこよなく愛する主人と出会ってから音楽と言えば、家の中でも車の中でも
B'zしかきけない状態だった。
あぁ この曲 ハマった・・・私、洋楽、好きだった・・・忘れてた。
懐かしさと共に、今も体に残る曲の感覚が嬉しい。
あえて友人の日記に、リクエストはしなかった。
ラジオのように、ふいに流れてくる出会いを期待している深夜の一人時間。

洋楽の“雰囲気”もいいが、幼児向け邦楽のメッセージもあなどれない。
アンパンマンの歌詞をずっと胸に抱いていきてほしいし、
大きくなって辛い時、息子には にんげんていいな を思いだしてほしいから。
今日もPV鑑賞の二人親子時間。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第280話 進級

2010年03月21日 05時14分56秒 | 子育て・「おママごと」

雷の音で目が覚めてしまった・・・嵐の夜に一話。

久しぶりに行った美容院では、あまりにも急に増えた白髪に驚かれた。
なんとか染めずにやってきたが、次回はヘアマニキュアをと考えている。
この一年でほんと老けた。
原因は隣人の人事異動(にしておきたい)

おととしの夏、職場復帰をして、自分の仕事に責任が持てないことを思い知らされる。
独身の頃のように、明日の出勤が確約できない。
自分の体調管理はできても、子供体調まではコントロールできず、
明日、自分は出勤できるという確信がない。
抱える業務は隣人が主担で、私はサポーター。もしも私が休んでも彼がいる。
安心だった。
ところが、4月、その彼が異動する。
私の席は右にひとつスライドし、彼の席が私の席に、
そして、突如、彼の抱える業務の主担となった青天の霹靂。
仕事の締め切りを一人で抱えるプレッシャーに真夜中、ハッと目が覚めて、眠れない。
明日は絶対休めない。これを仕上げないと・・・お迎えの時間が遅くなり、
彼の異動は私たち母子の生活を一変する。
彼の存在に我が家の育児は支えられていたなと。

共働き。園と私の帰宅までをつないでくれる誰か。病後と登園までの間に誰か。
夫婦2人だけでやっていくのは無理かもしれない。とは思っていたが、
なんとおこがましい。
夫婦2人だけではなく、日々同じ課の人間に、職場に支えられて成り立っているのだと。
会社や社会の力も借りて子育てしているという思いに気づく一年となった。
ありがたいなと思いながら、職場に向かう。
職場に向かいながら、私はやっぱり働くのが好きだと思う。嬉しい。

息子の出席ブックをみる。
カレンダーに並ぶ登園シール。
3月今のところ、皆勤。
2月から12月まで皆勤。
11月、園でロタが流行って2回休みと、10月、台風による休園日以外、
9月から5月まで皆勤。
4月に2回ってことは、年間5回しか休んでいない。
親の張りつめた思いを感じ取り、共に頑張ってくれた息子に心より感謝する。

あの激動の春から1年。もうすぐ2度目の春を迎える。
息子が新しいクラスに進級する。
息子の次年度の目標
1、オムツはずれ
2、あいさつ
3、はみがき
私は
1、もう少し、肩の力をぬいて
2、思いつめず
3、もう少し、やわらかく 働きたい(笑)
息子と共にできるようになっていますように。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第279話 舞台裏話

2010年03月12日 04時27分04秒 | 子育て・「おママごと」

前話の関連話なので、前話から読まないとわからないかもしれませんが・・・

主人はできていないのに褒めるのはよくないという考え方。
じゃあ楽屋口で、あの時、あなたなら何とKに言うの?
あなたは私に任せていなくなったよね・・・逃げないでよねとここからは夫婦舞台裏話。

発表会終了後、
主人が私に「アスペルガー症候群って知ってるかい?」ときく。
「もしかしたら、Kは・・・かもしれない」
問題定義だけして、自分は早々に寝室に向かう。
気になるではないか。
知的障害がない発達障害? 学校や社会に適応できない? 対人関係障害?
明け方までインターネットで調べてしまう。
Kはとても照れ屋なところがある。気分転換がうまくないと思っていたが、
よくも悪くも普段の園の日常があらわれるといわれる生活発表会。
早速、集団生活の中のKの様子を改めて保育士に問う。
先生にお母さん心配しすぎですよと笑って励まされる。
主人に伝える。
「アスペルガー症候群であるかどうかはそんな早い時期にあらわれないよ。
だから、違いますよというのがある意味、正解なのだ」
なんて嫌な人。気になるのではないか。
「ADHDとアスペルガー症候群 この誤解多き子どもたちをどう救うか」主婦の友社。
「親とともに乗りこえる問題行動」小学館。を読破する。

2歳の息子が発表会で機嫌が悪かった。だけの話であるが、
発達障害を知る機会となった。
アスペルガーをきっかけに、ADHD、自閉症、場面かん黙症など知識は拡がった。
知ると同時にもっと認知されなければならないとここに記している。
健常児だから関係がないのではなく、
社会の認知度が高ければ、早期発見・対応に結びつく。
何より、発達障害児、健常児関係なく日々の育児に早速役立つ。

母親になってから、学生時代より勉強しているかもしれない。
育児書はもとより、アレルギー、アトピー性皮膚炎と子供の症状発生ごとに調べ尽くす。
保育園に預ける保護者でありながら、
「子どもがこっちを向く指導法」や「保護者とうまくいく方法」ひかりのくに株式会社
を読み、保育士視点も学ぶ。
学んだ知識はどんな分野でも基本であったり、応用展開可能なものばかり。
「保護者とうまくいく方法」は職場でのクレーム対応場面に活かしている(笑)
親になるということは、管理栄養士にも、教師にも、哲学者にもなりえるかもしれない。
人を育てるという尊い経験ができたことに心から感謝する。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第278話 気がかり

2010年03月12日 03時09分00秒 | 子育て・「おママごと」

秋の運動会と並ぶビックイベントといえば、お遊戯会。
時期的に年度末に開催されることから、
もしかしたら園での最大の年中行事かもしれないこの発表会。
保育園での日常の様子がその時如実に映し出されることから
今は「生活発表会」という名で開催されているメインイベント。
息子の勇姿を見るため、夫婦揃って土曜休暇を取得。
じぃじ、ばぁばにも声援依頼し、両家総出でKの出番を待ちわびた。

かぶりつきで緞帳を見つめる。
ついに、幕があがった。
瞬時にステージ上の息子を見つけ出す。
始まると同時に、息子が輪から外れ、背中を向けて座り込んでしまう。
どうした、K?!
みんなの輪からの距離は1メートル。
時折ちらっと見える息子の傷ついた表情にいてもたってもいられない。
舞台上の息子を抱きあげたい衝動をおさえながら、
誰か・・・先生、息子を抱っこしてあげてくださいとただただ祈る。
センターポジションを確保した我々。
左手隅にいる息子を茫然と見つめる私に、
右向きにカメラを構え、手を振り、呼びかける笑顔が視界に入る。
耳には音楽が届かない無音の長い時。早く終わってくれと願う。
ふと気がつけば、隣りの主人はいつの間にかビデオカメラをまわしていない。
あまりの出来栄えに、撮ることを止めた主人に腹が立つ。
Kが後々見たくない映像だと勝手に判断して止めたのだ。
何もできていないかもしれないけれど、この歳の発表会は一生に一度。
いつか笑って話せる日がくるんだから・・・残さなきゃ
と怒鳴りたいが、周りの迷惑になるので、カメラを奪い取って、間もなく終わった。
ようやく終わってくれた・・・

どうして? なぜ? 理由を探す。
息子は森の妖精。色々な動物に変身しながら妖精たちが遊ぶという演目設定。
発表会前、みんながワーッとなっている時、Kが固まってしまうと聞いていた。
ノリ遅れるのか・・・みんなの勢いにひいてしまうのか・・・
手がかりを育児日記に探す。
お馬さん(に変身)が苦手なようです。お馬さんは固まってしまう、とある。
発表会前日、出来栄えも気になるので、息子にきいた。
どんなことするの? お馬さん? お馬さん、ママにみせて。
イヤだと言う。ママ、お馬さん、どんなのかわからないから、教えて。
私がしつこくお願いするので、かんねんしたのか息子が見せてくれた。
それは、一瞬だった。私が、あ!と思った瞬間、息子が馬を止めてしまったからだ。
え、短くてわかんなかったよ。もうちょっと、みせて。
お願いしたが、もう二度と見せてくれなかった。
今までの原因はこれだと。
パッカパッカと、同じ右足を踏み込むギャロップ(スキップ)ができなくて、
微妙に左足まで出てしまって止まってしまうのだ。

翌当日、心配だったので、「楽しんでおいで」と送り出した。
カエルさん、ゾウさん、ちょうちょさん、とんぼさん、他の色々な動物に変身できるのに、
馬ができないからといって、まさか本番すべてを拒絶するとは・・・
きっと当日を迎えるまでに自信を失っちゃったんだね。
自分にはできないって思っちゃったんだね。
だから、拒絶しながらあんな傷ついた悲しい顔をしていたんだね・・・
できなくても、それが可愛いのに!
パパ似でプライドが高い恥ずかしがり屋さんなんだから(笑)

出番が終わると楽屋口に保護者が迎えに行くことになっている。
出てきたKに何と言えばいいのか・・・?
みんな笑顔で出てきた。よくがんばったね~とか。上手にできたね~とか褒められている。
なかなかKが出てこない。
ようやく出てきたKをやっと抱きしめてあげることができて、
私は「よく最後まで泣かずにいたね」と言った。
もっと何かしら言いたかったが、
注文になってしまうようで、これ以上傷つけてしまうようで言えなかった。
あの時の一言は重要だったような気がするだけに、
あの時、たった一声、なんと言えばよかったのか・・・
その一言で子育ての結論がでるわけではないのだが、
たくさんの選択肢の中から何かを瞬時に選んでいく作業に、あぁ 子育てって難しいなと。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする