tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

電気・ガス政府補助金終了、その功罪

2024年06月01日 16時28分36秒 | 経済

昨年2月の消費者物価は1月の104.7から104.0に下がりました。総務省によれば、その内の0.4%ほどの下げが電力会社、ガス会社への補助金による料金の引き下げによるという事だそうです。

この5月その補助金は半額になり、6月からは無くなるとのことです。当然電気料金ガス料金はその分高くなるでしょう。補助金を止める理由は、LNGの価格が上昇以前の価格に戻ったからとのことです。ただし、価格の下がらない原油の元売り業界へのガソリン価格抑制については補助金を続けるようで、政策が分かれています。

確かに輸入価格が上がった時、製品価格が上がらない様にという配慮で政府が関連業界に補助金を出して国民の負担を軽くするというのは、国民に寄り添う親切な政策という評価になるでしょう。

という事で、今回は、資源などの国際価格が上がった場合、補助金を出して消費者物価がなるべく上がらない様にするのが親切か、そんな親切はしない方がいいのかという問題を考えてみます。

資源という意味で日本を見れば、最大の資源は人的資源つまり人間でしょう。勤勉でよく働く、エネルギーレベルも高い。これは世界に誇ってもいいでしょう。しかし天然資源では保有するのは石灰石ぐらいです。

天然資源は長期的には殆ど値上がりです。石油もガスも、非鉄金属、レアメタルなど。それに農畜産物も上がります。日本は食料自給率も40%程度です。そして、こうした輸入原材料は長期的に見れば皆値上がりです。

これは世界経済が発展し需要が増えるからですから避けられません。それに如何にして対抗するかですが、上がった分は日本のGDPから払うしかありません。政府の補助金も国家予算からですから元はGDPです。足りなければ国債発行で、将来の国民負担です。

そこで大事になるのが技術開発です。ガソリンが高くなればハイブリッド車、ネオジムが高くなれば10分の1のネオジムで同じ磁力を生み出す技術です。

技術革新は人的資源の活用の成果ですから、輸入原材料が値上がりしてもコスト=人件費はそれほど上がりません。

ではどうすれば技術革新が進むのでしょうか。これは専門教育研究とか開発技術装置の進歩といった専門領域の問題ですが、経済学的にはどうなのでしょうか。

経済学では、「市場原理(価格機構)」があります、これはアダム・スミスの言った「神の見えざる手」なのです。

原理は単純で、「高いものは売れない」という事です。ガソリンが高くなると、ガソリンを食わない車に買い替えます。アメリカでは燃費の良い日本車が売れました。最近は省エネも含め最もコスパのいいのはハイブリッド車だとHB車が人気のようです。

アメリカでは原油価格が上がるとガソリンの価格もどんどん上るようです。ハイブリッド車の人気が高まればガソリンの需要が減り、ガソリンの値上がりにもブレーキがかかります。市場原理(価格機構)はこうして技術開発を進めます。ネオジム磁石のコスト削減・高性能化も市場原理の産物です。

ところで、政府のガソリン補助金の延長はどうでしょうか。ガソリンが高いから補助金を出して安くしますといわれて、単純に喜ぶか、「小さな親切・大きな迷惑」と考えるか。さて・・・。


日中韓サミットの再開を世界の安定に

2024年05月28日 15時06分20秒 | 経済

日中韓サミットが4年半ぶりに開かれました。最大の賛意を持って今後の継続と発展を願うところです。
この三国が、相互理解を促進し、国際政治面でも経済関係でも、文化社会の交流においても、望ましい信頼関係を作り上げたとき、今のささくれ立った世界の諸情勢の安定化に大きな役割を果すことになると考えるからです。
今の国際社会の混乱は、国連、その関連機関の努力をもってしても人類社会のガバナンスの実現は見通せないような深刻なものになっています。
具体的に言えば、プーチンやネタニヤフに典型的に見られるように、最近多くの国で、独裁的な指導者が見られます。長期政権の中で独裁者に変質するリーダー、政権に不満を持つ国民があえて独裁的なリーダーを選択する場合など、第二次大戦を知らない世代がほとんどになったせいでしょうか。これは人類社会にとって恐ろしい事です。
このブログでは、独裁的なリーダーは、多くの場合、人類社会にとってトラブルメーカーになると指摘していますが、それが現実になりつつあるようです。
そうした中で、長い歴史の中で、協調や協力、戦争や反目を繰り返し経験しながら葛藤の歴史を歩んで来た日中韓の三国が、信頼関係を築き、友好と協力による発展の道を踏み出したという動きは、これからの世界の注目すべきロールモデルになるのではないでしょうか。
来年は日本が議長国ということになっているようですが、日本は、アジアは勿論世界の貢献できるチャンスとして出来得る限りの努力で取り組むべきでしょう。
そのために十分理解しておかなければならない事は、有史以来の三国の関係、中でも、日本がその発展過程において、如何に中国、韓国から受け入れてきたものが多いかという事ではないでしょうか。
韓国は、今はハングルですが、もともとは漢字の国で、日本文化の源流には中国から、また韓国経由で入って来たものは、漢字、仏教、織物、陶磁器、諺、食文化などなど無数です。
戦後は日本から、スポーツ、音楽、芸能から、幅広い科学技術まで、日本発が中国、韓国で役立っている事もあるでしょう。
こうした相互交流により互いに裨益しあう状態というのは 相互の友好関係、相互に尊敬しあう環境の中で促進されることは明らかで、中国との関係は鄧小平さんの時代に大きく進みましたし、韓国とは残念ながらユン大統領以前は些か疎遠でした。しかし芸能など若者の世界やツーリズムでは一層の草の根交流が進んでいるようです。
ただ大きく懸念されているのは米中関係の狭間にある日本政府の立場でしょう。しかし古くは中国から先進文化を輸入し、戦後はアメリカから最新の文明を学んだ日本です。
両国の優れた点は勿論、互いに牽制しあう問題点も熟知している日本です。
そして日本はついこの間まで米中に続く第3の経済大国でした。円高次第で返り咲く可能性も無きにしも非ずです。
日本はその立場と歴史的交流の経験を駆使し、韓国とともに米中両国に、米中二国が友好の中で競い合う状態が世界にとっても米中両国にとっても、特に世界のリーダーの立場にあるアメリカにとって最善の道である事を徹底して説くべきでしょう。
日中韓三国が先んじてそうした関係を築くことが、アメリカが世界情勢を判断するうえでも極めて重要になるのではないでしょうか。


金利のある経済状態に早く慣れよう

2024年05月27日 15時31分48秒 | 経済

日銀のバランスシート圧縮の動きが具体化し、国債購入の減額に動き出した様子から10年物国債期の金利が1%に載せてきました。

植田総裁は大変慎重に、国際投機資本の動きをみながら適切な範囲で政策の選択をしている様で為替レートは現状、過度の円安を止めた程度の動きのようです。今後も日銀の微妙なかじ取りに期待したいところです。

ところで今の日本人や日本企業の経済行動はアベノミクス以来の10年来のゼロ金利が前提になってしまっているようです。

これからいよいよ借金をすれば金利がかかり、貯金をすれば利息が付くという資本主義の本来の状況になって行くということになるはずですから、借金と貯金の世界は、はじめは徐々ながら、最終的には資本主義の経済原則に従ったものになるのでしょう。

という事で大きく日本経済を見た場合、どんなことが起きるかですが、民間と政府に分けた場合、家計は2000兆円を越える金融資産を持っており、政府はその半分超を国民から借金しているとおいうのが現状です。

という事は、政府は国債などの借金に利息を払わなければならに事になり、家計は2000兆円の資産にそれなりの利息が付くことになります。政府はますます貧乏になり、家計は貯蓄に利息が付いてその分所得が増えることになります。 

家計はその分幾らかホッとする程度でしょうが、税府は大変です。金利は1%、2%、3%と上がっていけば、新規国債はその分支払利息が増えますから、今迄の様に赤字国債で補正予算をとはいかなくなるでしょう。既発債は金利上昇で評価額が下がりますから、国債を持っている日銀をはじめ金融機関は、評価損を被ります。家計は満期まで持っていて額面の支払いを受けてもインフレ分だけ実質価値は下がります。

こうしたこれまでのゼロ金利の収拾問題はありますが、経済全体としては金利が機能する正常な経済に戻ることになります。

ところで、金利とは何でしょうか。金利はカネの貸借の際に発生するもので、貸す人は、貸している間は金を使えないという不都合を我慢する我慢代の収入です。借りる人は、カネがなければできない事が出来るという便利さの獲得代の支払いです。

中世までは社会的に認められなかった「金利」が認められ、宗教改革や蒸気機関の発明と共にその後の経済発展が可能なった事は皆様ご承知の通りです。

特に間接金融を扱う銀行というシステムが金利を介して資本の自由な貸借を可能にしたことは渋沢栄一を驚かせた通りです。「金利をきちんと払う」という事は『論語と算盤』の論語の部分でしょう。(驚いた渋沢栄一はやっぱり銀行を作りましたね)

今、政府は、銀行より直接投資を奨励しているようです。銀行は企業に金を貸すのだから、銀行に預けるより直接株を買った方が早いというのでしょうか。免税までして少額投資を奨励していますが、庶民は銀行ほど知識がないので、失敗が多く常に危険を伴います。

日本人は堅実型ですから、銀行の専門性を活用、大儲けは無くても確定利付きの安全性を優先します。ですからゼロ金利でも銀行預金が多いのです。

勘ぐれば、政府が「貯蓄から投資へ」といったのは、国民の眼がゼロ金利に批判を強めることへの防衛策だったのかという見方があったのも理解できそうです。

悪い冗談はともかく、日本人は改めて、ゼロ金利は異常事態の産物と理解し、早期に適正水準の金利の機能する健全な資本主義に慣れることが必要なようです。


消費者物価の動き少し長期で見れば(解説編)

2024年05月25日 17時29分45秒 | 経済

今日は土曜日です。昨日も4月の消費者物価が発表になり当面の動きを見ましたが、土曜日にかこつけて少しのんびりと長い目で消費者物価の動きを見てみましょう。

2022-23年は想定外の消費者物価の上昇で24カ月連続で実質賃金が前年比マイナスとなり、家計にとっては最悪の2年間でした。犯人として消費者物価の上昇が言われました。それも調理食品、加工食品、調味料、飲料、果物、日用雑貨など、いわゆる生活必需品が中心で、多くが何千品目が何月から一斉値上げといった一斉波状値上げで、家計にとっては防禦の仕様もないといったものでした。 

実はこれには理由があったとこのブログは考えます。下のグラフを、改めてご覧ください。

    消費者物価主要3指数の推移(資料:総務省)

2021年の初めまでは青赤緑の3本の線はほぼ一緒です。ところが2021年の夏ごろから青と赤は上がり続けますが、緑は 下がり始め、22年に入って3月ごろから上昇に転じますが、青・赤と緑の線の間隔は23年の1月まで開くばかりでした。何故でしょう。

コロナ禍で家計は緊縮、日常の消費は落ち込む。当該企業は我慢の経営の連続でした。

23年2月に電力・ガスの補助金でエネルギー価格が下がり緑に急接近しましたが、緑の線自体も次第に上昇角度を弱めています。(昨日のブログの下のグラフも参照してください)

では緑の線の中身は何かと言いますと、主に「上に挙げた生活必需品が中心」で、国内のマーケットの事情で値段が決まる、別名、消費者物価の核(コアコア)と言われる部分です。

ここで改めて21年に緑の線が上がらなかった要因を考えてみますと、中小企業や非正規従業員などを支援しようと最低賃金は毎年平均賃金より大幅に上がりましたが、コロナ禍の時期は極端な消費不振・売り上げ減少で、生活必需品部門もとても値上げの出来る状態ではなく、利益の減少に耐えるしかなかったのです。22年に入って、これではやっていけないという事で「みんなで一緒に」足並み揃えて一斉値上げに踏み切ったのでしょう。

それまでは、賃金が上がらないが、物価も上がらないから何とかなるといっていた一般サラリーマン家庭も、その結果 実質賃金の低下に見舞われることになりました。

生活必需品部門の、コロナ禍で失われた利益の回復の動きは23年秋までの一斉・波状値上げという現象を生んだのでしょう。

確かに、ある程度の値上げまでは、値上げ容認の声もありました。しかし23年秋には、これ以上げると「便乗値上げ」の声も出始め、一部に買い控えも起き、そろそろ値上げも限界という雰囲気が生まれてきた様です。

こうした状況から、日銀や、学者のなかにも、この消費者物価の上昇は多分一過性で24年にかけては収まり、2%インフレ目標達成の可能性はあるという認識が生まれたようです。

これは正しい認識だったのでないかと思われます。

24カ月連続の実質賃金低下の犯人としての消費者物価の分析はここで一段落でしょう。

これからの問題は、異常な円安、円レートの変動と産業別利益構造の歪み、賃上げ圧力の増加、賃金と利益の適正分配構造への模索、経済成長の果たす役割、それに、円安から円高に転換する円レートがいかなる役割を演じるかといった問題になるのでしょう。

日本経済の正常化実現にはまだ課題が多いようです。その中で物価問題は、国民の日常生活に直接かかわる事として、問題であり続ける様です。


4月の消費者物価の動き、残る先行き懸念

2024年05月24日 16時06分11秒 | 経済

2023年の日本経済は、コロナ明けにも関わらず低迷状態でした、その中で、消費者物価の上昇が2022年から一層ひどくなるという、どうにも具合の悪い変な経済でした。不況下の物価高ですから「これはスタグフレーションだ」という人もいたようです。

そかし、賃金上昇も平均賃金では1~2%程度で、求人は活発、失業率は低く、企業収益は好調継続、設備投資も順調、国際収支は大幅黒字というのですからスタグフレーションではないようです。

そうした中で、このブログは毎月消費者物価の動向を追ってきました。賃金上昇より消費者物価上昇の方が大きいので、実質賃金が前年同月比マイナスという月が24カ月続いたのは何故でしょうという謎も解いてきました。

そして今日2024年の4月分の消費者物価が発表になり、6月5日には毎月勤労統計の4月分の速報が発表になって、実質賃金の対前年同月比が、プラス転換するかが解ることになります。

春闘賃上げは昨年の3.6%から今年は5%台ということになるようですから、一応期待は出来ますが、中小の賃金交渉が終わるのは6月ごろですから、全体の状況が見えて来るのにはもう少し時間がかかるでしょう。

ところで平均賃金の上昇より低くなるかという消費者物価の上昇ですが、今日発表の4月分の数字は微妙です。

先ず、消費者物価の原数字の動きですが、下のグラフです。3月と4月の数字を入れておきましたが、「総合」「生鮮を除く総合」「生鮮とエネを除く総合とも、今年に入って上向きに転じています。

     消費者物価主要3指数の推移(原指数)                        

               資料:総務省「消費者物価指数」

昨年10月の数千品目一斉値上げでの不評で、値上げの波は一応収まったかと思われたのですが、今年に入って新たにいろいろな値上げの声が出ています。

3月から4月にかけての上げ幅は0.3~0.5ポイントですから年率にすれば12倍ですから平均賃金が3%以上上がっても、物価上昇に飲み込まれる可能性も出て来ます。

一方、次のグラフで、消費者物価の対前年同月上昇率を見ますと、こちらは順調に下がっています。特に緑の線の「生鮮とエネルギーを除く総合」は国内のインフレ要因によるものですから、これが下がることが物価安定の基本です。

     消費者物価主要3指数対前年上昇率(%)

                     資料:上に同じ

4月の消費者物価の上昇要因を見ますと、一つには生鮮食品の上昇が天候不順で大きかった事、調理食品や加工食品の値上げが収まった中で果物、一部の菓子、飲料などで価格引き上げが起きています。教養娯楽とくに旅行関係はインバウンド盛況の影響で高めの上昇が続いています。(東京都の高校の授業料無償化は、引き下げ要因になっています)

2年続いた食品等生活必需品の値上げはコロナ期に値上げを我慢したことの反動とみれば、理解される面もありますが、企業収益は総じて上昇しているという企業統計の結果からすれば、今後は生産性向上でコスト吸収という企業本来の在り方への一層の傾斜が要求されるのではないでしょうか。

その場合、景気回復、円安などで収益好調の企業においては、日本経済全体のバランス回復に向けて価格メカニズムを活用しての積極的配慮も大事ではないでしょうか。

また、満額回答などで、賃金支払い能力に余裕のある企業は、非正規従業員の正規化、教区訓練の徹底などで、従業員の全体的能力アップで生産性向上を図るというアプローチも、日本の労働力のレベルの底上げという意味で、企業経営者の役割が期待されるところでしょう。


2024年1‐3月期のGDP速報を見る

2024年05月16日 15時37分49秒 | 経済

今日、内閣府から標記1-3月期のGDP速報が発表になりました。

残念ながら1-3月の実質成長率はマイナス0.2%とマイナスに落ち込み、同時に発表された2023年度のGDPは、年初に発表された閣議決定の政府経済見通し実績見込みの1.6%から1.2%に下がってしまう事になりました。

その結果、コロナ禍以と降の日本経済の実質成長率の推移は2020年度のコロナ禍によるマイナス3.9%から2021年度以降プラスに転じましたが、21年度2.8%、22年度1.6%、23年度1.2%一貫して低下傾向になってしまいました。

企業業績の回復、インバウンドの盛況、株価の上昇、昨年度の春闘賃上げは3%を超えて日本経済にも不況脱出の気配が出てきたのではないかといった感じも出て来ているのですが、現実の数字は予想外に厳しいようです。

発表になった1-3月のGDP速報を見ますと、この不調の原因、問題点が見えてくるように思われます。

    実質GDPと主要指標の推移(実質値、%)           資料:内閣府「四半期別GDP速報」                    

先ず、実質GDPですが22年度は消費が好調な年度でしたが、23年度に入って急激に落ち込んでいます。原因はその下の実質家計最終消費支出の落ち込みです。

それでは、実質家計最終消費支出の落ち込みの原因はと言いますと、その下の斜体になっているデフレーターの上昇です。(ここでのデフレーターは消費者物価ではなく国内家計最終消費支出デフレーターです)

表にはありませんが、名目家計最終消費支出は23年度の4-6月には対前年同期比3%台の増加でしたが、期ごとに減って1-3月には0.6増に減っていまい、名目値の伸びうも減少ですから家計は物価の上昇に負けて緊縮型になった様子が明らかです。

これは皆さんが実感されたように、食料品、飲料、調味料、日用品などの価格が波状の一斉値上げなどで異常と言えるほど上がったことによります。

こうした生活必需品の値上げは昨年秋で一段落かと思われましたが、その後も円安による輸入品の値上がりや原材料人件費の価格転嫁の容認政策で、高止まりの恐れがあるとも言われ、今後も予断を許さないところです。

企業設備は揺れはありますが、企業の設備投資意欲は堅調で、この速報も法人企業統計季報が出れば設備投資のところで上方修正の可能性もあると思っていますが、矢張り問題は民間消費、基本的は家計消費の動向で、これは消費支出と物価の相互作用で決まってくるところですから、当面、4-6月、そして、それ以降の家計消費の伸びが物価上昇を上回るかどうかが大きなカギでしょう。

という事は、2024年度の日本経済を成長路線に載せるためには4つの条件が必要という事になります。

1つは、賃金水準を、企業が可能な範囲で出来るだけ高める努力をすること。

2つは、価格の設定は厳密にコスト上昇にとどめ、便乗値上げをしない事。

3つは、生産性向上努力を最大限加速する事。

4つは、家計は、貯蓄指向から消費指向に少し気分を変えてみる事。         ◇

どうでしょう。どれもみんなやろうと思えば、出来る事のような気がしますが。


円安差益と経済成長と国際収支

2024年05月14日 14時29分45秒 | 経済

2024年度の上場企業の3月期決算が纏まって来たようです。

主要上場企業(TOPIX)の3月決算の数字がマスコミを賑わしていますが、3年連続の最高益という事で、却って今後が心配などと言う意見もあるようです。

SMBC日興証券の集計によりますと、前年度比で、売上高は6%の増加、営業利益は21%の増加、純利益は14%の増加と、まさに好調な増収・増益決算という事のようです。

製造業を始め商社などでも仕事そのものが順調だったという事が基本でしょうが、円安による為替差益が大きかった事で増益幅が大きかった事も指摘されています。

勿論、輸入が主要な業務であれば円安の場合は差損が出るわけですが、輸入原材料の価格上昇は価格転嫁がやり易くなったという事で多少救われている事もあるかもしれません。

日本の様に多様な輸出分野があり、また対外投資収益が大きい国は円安になりますと円建ての収益は円安になった分だけ増えるわけで、円安の方が経済が回り易いということが言えるでしょう。

ただこれは円建てだから言えることで、ドル建てにすれば円建てのGDPや賃金も、円安分だけ下がるわけです。

ですから、円安になって、利益が増えて、経済が上手く回るようになったという事はそれだけでは日本が得をしたことにはなりません。その円安を活用して国内経済を活発にして、経済成長率を引き上げないと、アベノミクス以来のように、世界の中での日本の一人当たりGDPのランキングは下がるばかりなのです。

ではどうするかといった選択は、強いて分ければ2本あります。1つは円安で利益が出たと喜んで、次に来る円高に備えて貯めておくという方法です。もう1つは、円安で増えた円建ての所得を日本経済の成長を高めるために活用して成長率を上げるという方法です。

現実は多分その中間のどこかになるのでしょうが、出来る事なら、成長率を上げることに沢山使った方がいいでしょう。

さて、設備投資、研究開発、海外投資、人材開発いろいろあります。政府は赤字国債で補助金を出してこれらを進めています。しかし上手く行きません。(理由はここをクリック

では今の日本経済が成長しない理由は何でしょうかと言えば、最大の理由は消費不振でしょう。消費不振の理由は「実質賃金マイナスでは好況は来ない」で書きました

出来るだけ早く実質賃金をプラスにしましょう。労使がその気になれば、賃上げはいつでも出来ます。

もう一つ、日本の生産性が低いことがありますが、その最大の原因は雇用者の4割近くが非正規だからではないでしょうか。非正規はきちんとした訓練を受けていません。ベテラン従業員に育っていないのです。日本の人材開発、産業人としての教育訓練の場は企業なのです。正規転換、教育訓練は必須だったのです。

経済成長のための投資は出来るだけ国内にしましょう。海外投資は海外の国々のGDPを増やしますが、日本のGDPを増やしてはくれません。

こうした積極政策には反対論があるかも知れません。そんな内需拡大中心の経済運営をやったら、賃金インフレになって、国際競争力を失う、資源のない日本は赤字国に転落する、赤字国になったら日本経済は成り立たない」という心配です。

内需拡大をやり過ぎれば、その通りです。アメリカの様に万年赤字国になったら、基軸通貨国でない日本経済は成り立たないでしょう。

従って、内需中心の経済成長追求の限度は国際収支を見て決めましょう。但し、差し当たってその心配はないでしょう。なぜなら、日本の労使は賢明ですから。


平均消費性向の上昇は続くか

2024年05月13日 12時28分47秒 | 経済

先週金曜日、総務省統計局から家計調査の家計収支編が発表になりました。あの日は「実質賃金マイナスでは好況は来ない」を書きました。この3月で実質賃金の対前年度月比が24カ月連続でマイナスになった事から2年間も連続は長すぎるという気持ちが強く、4月からの賃上げの効果への期待もあってでした。

今日、家計調査の勤労者世帯の世帯主の定期収入を見ましたら矢張り24カ月連続で対前年実質マイナスになっていました。

消費者物価の上昇のせいだという面もありますが、物価の上昇ばかりを言って、賃金上昇についての積極的な検討が不十分という状況が、今回の春闘で変わったのかどうか、4月分以降の統計の発表が気になるところです。

今春闘の賃上げが主要企業の満額回答も含め一段高になった事は、連合の発表でも出ていますが、5%を越えたと言っても、定昇込みですから平均賃金はそこまで上がりません。

消費者物価の方は、積年の積み残し分を引き上げるといったムードに、円安による輸入物価の転嫁意識、政府の補助金の終了など、どうも値上げムードが止まらないようです。

そうした中で、たよりは平均消費性向の上昇で少し明るい面が出てこないかという所です。

勿論実質賃金が上がらないのに、消費支出を増やせと言っても、勤労者世帯の方は、そんな能天気にはとてもなれませんと言われそうです。

然し2022年の経済成長率が高かったのは、実質賃金マイナスの中でもコロナも終息とのこともあり平均消費性向が年間を通じて高くなった結果です。

そして少しムードが変わり、23年24年の春闘での賃金要求も高くなり、経営側からも(円安の影響もありましたが)賃上げOKサインが出たという効果もあったように思えるところです。

という事で今年3月の平均消費性向ですが、下の図のように2月に続いて上昇(0.8ポイントですが)となっています。

 均消費性向の推移(2人以上勤労者世帯)      

            資料:総務省「家計調査

GDP統計から言えば、個人消費支出はGDPの半分を占めていますから、個人消費が1%増えるという事はGDPを0.5ポイント(名目値)押し上げる事になります。

消費堅調という事で便乗値上げが起きるようなことが無ければこの0.5ポイントはそのまま実質成長率の上昇です。

今年度の政府経済見通しでは実質経済成長率は1.3%ですから、個人消費が伸びれば経済成長率には大きな効果があります。

それが日本経済の今後の賃上げ率上昇の可能性を大きくし、岸田さんの言う成長と分配の好循環につながる事にもなるのです。

日本の家計の平均消費性向は過日長期推移で見ましたように、長期不況の中で随分下がってきました。これが日本経済を低成長にしたという面も否定できないのです。

嘗ての日本の家計は、明日の賃金上昇を期待して、元気に消費をしてきました。三種の神器、3C、新3C等買いたいものもいろいろありました。経済成長期はその購買意欲が経済を成長させるのです。

今の日本経済はかつてのように実質10%もの成長をしなくてもいいのです。実質3%の安定成長でも大いに結構です。個人消費の活発化で経済循環が順調に回り始めれば、その程度は十分可能になるのではないでしょうか。

多分日銀の考えているのも、実質成長率3%、インフレ目標2%で、名目経済成長率5%といった日本経済ではないでしょうか。


実質賃金マイナスでは好況は来ない

2024年05月10日 14時39分55秒 | 経済

実質賃金が前年比マイナスという月が連続で24カ月になりました。円安でトヨタ自動車の利益が5兆円に届きそうだとか、主要商社の利益も7社中5社で歴代2位の好決算などと言われていますが、平均賃金がまる2年間も前年比実質マイナスでは好況感を感じろと言っても無理でしょう。

外国から来るお客さんは、ラーメンもスシも安くてうまい、お店も綺麗でみんな親切、日本は最高だねと言ってインバウンドは絶好調で、お役所はオーバーツーリズム(お客の来過ぎ)をどうしようかと心配だというのですが、何だか日本人は低収入を我慢して、外国人にサービスするのが仕事か、などと言いたくなる状況です。

日銀は、こういう状況は一時的で、その内、実質賃金もプラスになりますから、好況感も出て来ますというのですが、最近は、「その内」が来年になるのではなどという見方もあるようです。

このブログでも6月ごろには遅くとも実質賃金は黒字転換とみてきましたが、中小下請けの賃上げ状況などの情報が入ってくると、やっぱりもう少し賃上げが欲しかったかななどと考えたりしています。

それに加えて、アメリカのインフレがFRBの予想以上にタフで、なかなか収まらないという事でFRBが金利を下げる時期がどんどん遠くなると、円安がさらに進むのではないかといった国際投機資本の動きも心配です。

財務省では円安が進み過ぎると輸入インフレが起きる恐れがあるから為替介入をしてでも、円安の進行は止めると言っていますが、効果は限定的でしょう。

日銀が金利を上げれば円安は簡単に収まるでしょうが、金利が上がると借金だらけで対応の準備が出来ていない政府は困るでしょう。

当面、アメリカは強いドルの方が都合が良いといった状況も考えられますから、投機筋の思惑による円安の行き過ぎをいかに防ぐかが、財務省、日銀の腕の見せどころでしょう。

とはいえ、そうした短期的なテクニカルな解決策だけで為替が本格的に安定することはないでしょうから、経済政策の在り方の再検討も必要なのではないでしょうか。

アメリカでは賃金が上がって、サービス部門が元気ですが、住宅部門や財の生産部門が不振のようです。もともと無理感のあるインフレ目標2%を3%にすれば、多分動きやすくなるだろといった気がします。

賃金の上がらない日本では、労使が物価の上昇を勘案して賃金の引き上げ幅をも少し大きくして先ず実質賃金の上昇を実現し、その後でインフレ目標2%に改めて挑戦というのが、やり易く、国民も安心するシナリオではないかとった感じがします。

変動相場制の下では、国際投機資本の思惑で、為替レートの行き過ぎや乱高下は避けられないでしょう。

つまり経済政策を策定しても、為替レート次第で、実体経済の動きが計画通りいかないといったことが起きる可能性が大きいわけですから、経済計画の目標数値なども、柔軟に臨機に読み替え組み換えをして、政策当局や労使や国民が対応し易いように考えることが必要なのではないかという気がするところです。


休日・休暇は、人間生活の「彩り」

2024年05月06日 15時16分42秒 | 経済

今日は月曜日ですが、振替え休日で今年のゴールデンウィークの最後の休日です。

もう長い間毎日が日曜日で、べたに休日・休暇の人生ですが、子供や孫が、孫やひ孫を連れて遊びに来ると、途端に家の中が大騒ぎの賑やかさになります。

こうして身内が集まると、嘗て現役時代に子供を連れて親のところに遊びに行ったときの記憶などもよみがえり、やっぱりこうした休日は、平凡な日常が忽ちお祭り気分になって些か草臥れるけれどおも、休日・休暇はいいもだといった感じになってきます。

日本経済が元気で、日本がアメリカに次いで世界第二の経済大国になったころ、外国からのやっかみか、日本特有の自虐的な発言か解りませんが「日本人は、ウサギ小屋に住む働き中毒だ」などという言い方がはやりました。

確かに地価の高騰で日本人の家は小さく狭く、外国の友人が来て、もう少し大きな家にした方がいいんじゃないかなどと言うから、そういう時は家の値段を言ってやるとビックリして、お前は金持ちだということになるんだ、などと友人が言っていたのを思い出します。

話が逸れましたが、やっぱり日本人は、働くことを苦にしない(働き中毒?)、どちらかというと仕事を楽しむという意識が強く、キリスト教世界の「労働は原罪にたいする罰」という意識とは違っている様で、標記の休日・休暇についての認識も違うといえそうです。

それでは日本人は仕事ばっかりだったのかと言いますとそうではなく、日本では古来祭りが盛んでした。日本は四季の変化がはっきりしていて、生活の基盤となる労働(昔は農業が主体)は、季節の変化に従うもので、その季節を示す山河の自然の中にはあらゆる所に神様が住んでいるのですから、春夏秋冬祭りの種は尽きません。

今に至る日本中に多様な祭りが残り、観光資源として大きな役割を果していますが、祭りは神(自然)に感謝する気持ちを表し、自然に返礼をするという「非日常」の儀式の日々です。生きるために働くという日常との中にそうした時を季節ごとに持つのです。そうした行事を生活の中の「彩り」として年々繰り返すことは人の心、気持ち、精神のリフレッシュという人間生活のバランスの維持回復に大きく役立っていたと思われます。

多くの祭りの中には上下の差別のない無礼講や、倫理や道徳から多少逸脱しても人間の本性の発露を認めるといったいろいろな要素が組み込まれているのです。

非日常の「祭り」を持つ事によって、改めて労働の日常に孜々として取り組む心のバランスが回復されるといった人間生活の知恵がそこにはあるようです。

日本人は欧米人の様に夏季に4週間の有給休暇を活用してリゾートに行って読書や海水浴や散歩などでのんびりと過ごすのではなく、一週間程度に分割した有給休暇を取って、観光地で忙しく見学をして回っているが、あれでは却って疲れに行くようなものだなどと言う見方もあるようです。

休日・休暇にいかなる価値を期待し、それをどう実現するかは大きくは伝統文化の違い、更にさらに個人個人の価値観の違いによるでしょう。しかしそれらは労働という日常から逃れる非日常の希求という意味では多分共通なのでしょう。

人生の中の長い時間を占める労働という日常に織り込む「非日常」というのが休日・休暇の意義とすれば、その意義に労働からの脱出を求めるか、労働と異なる自発的活動に求めるか、その在り方は、労働に対する認識の相違から来る違いはあっても、人間生活の中の彩りを増やし、心のバランスの確保を齎すという意味で大変大事な時間ではないかと感じるところです。


為替レートの乱高下、こんな対策は如何(試案)

2024年05月02日 14時04分29秒 | 経済

円レートが160円になって、財務省が慌てたのでしょうか5兆円ほどのドル売り・円買いをして154まで戻したというニュースがありました。

アメリカの財務長官のイエレンさんが「為替介入は滅多にやるのもではない」といった直後ですから、このニュースが「虚か実か」は解りませんが、例えて言えば「1件虚に吠えて万犬実を伝う」ようなもので、国際投機資本は少し警戒状態かもしれませんが、円レートは次第にまた156~7円になったりしています。

評論家の中には、アメリカが金利引き下げを言わなければ何れ160円に戻るでしょうなどと言っている人もいるようです。

アメリカのインフレ次第で円レートは変わるわけで、財務省筋は、急激な円安になると輸入品価格が上がって消費者物価が上がり、折角の賃上げがチャラになったら大変だと言いますし、日銀も賃上げを伴わない物価上昇になっては予測が外れると困惑でしょう。

一方で輸出関連産業は円安差益拡大でニコニコかも知れませんが、日本全体の事を考えれば、単純に喜んでだけはいられないという思いではないでしょうか。

変動相場制の下で、マネー資本主義が育ち、国際投機資本が巨大なマネーを持つようになれば当然こうなりますし、国際投機資本には「満腹」という概念はないようですから、こうした現象は激化こそすれ平穏になることはないでしょう。

ならば、日本のような国はどうしたらいいかという事です。そこでこのブログも満を持し手と迄は言いませんが「それなりの」対抗策を考えてみました。

  • まず日本としての適正な為替レートを決める。例えば、前年度の平均円レートとか年度初めの円レートでもいいでしょう。購買力平価でも構いません。
  • 決めたレートより円レートが変動して企業別に出た「差益」「差損」を企業は算出する。
  • 企業の決算の結果のうち、「差益」「差損」の部分は企業努力と関係ないので、官か民かの特別な機関に「プラス」「マイナス」という形でプールする。
  • 年次とか月次で企業別に差益と差損を相殺する。輸出と輸入がほぼ同額の日本では当面それで為替レートによる損得は相殺される。

ところで、為替レートの変動が長期的なものになれば、単に差益・差損だけではなく、日本経済全体の国際競争力に影響しますから輸出入やインバウンドの量、更には産業構造や雇用構造にも影響します。

その場合は実体経済の変化ですから雇用や賃金も含めた経済構造の変化での調整が政府・労使の対応行動が必要になります。

しかし、マネーゲームによる短期的な為替レートの変動には上の①~④でほぼ対応できそうな気がします。

もう一つ指摘しておかなければならないのは、原油、LNGなど国際価格の上昇で、輸入物価が上昇、国内物価に影響してくるといった場合は、為替レートの変化とは全く違うという事です。

この場合の輸入価格の上昇は、輸入額が上昇した分だけ、日本の所得(富)が海外に流出したのですからこれは価格転嫁して、国民全体で負担しなければなりません。


経済を失速させない政策運営が最重要の課題

2024年04月27日 16時28分15秒 | 経済

前回は、この所の日本では人口減少という長期予測を軸にして、将来を悲観的に見るのが流行るようですが、大事なことはそれを反面教師にして、嘗てのような元気な日本経済・社会を取り戻して行くことでしょうと書きました。

今回は、今がチャンスなので、3~5%ぐらいの実質経済成長を目指して、活性化の見えてきた日本企業が総力で取り組む時期に来ているという現状認識のもとに、経済の立て直しに経済政策、金融政策も含めて、民間企業労使が思い切って元気を出すような雰囲気を作りを進める必要があると指摘したいと思っています。

嘗てこのブログでは「株式投資大成功の話」という事で、戦後最大の不況と言われた昭和40年不況の時に株価暴落を何とかしようと苦し紛れに作った「共同証券」や「証券保有組合」が結果的には莫大な利益を上げた事を書きました。そしてそれは、その後の「イザナギ景気」があったからだということは明らかです。

今回のアベノミクスの不況では、世界最大級の機関投資家と言われるGPIFや更には日銀が、膨大な株やETFを買い、現状では大変な含み益を得ているでしょう。

日本は1990年代初頭のバブル崩壊の経験も持っています。崩壊の直前まで世界の金融市場を闊歩していたジャパンマネーは忽然と消えて日本は30年不況に突っ込んだのです。

今の東京市場は上場企業の時価総額で落ち目の上海市場を抜いたなどと言われています。現在の株価がバブルなのかそうでないのかには議論もあるようですが、出来れば上ったものを下げない方が、日本経済にとってもプラスでしょう。

前回も述べましたが、それを可能にするのは実体経済としての日本経済が、確り成長する事です。上述のイザナギ景気の経験とバブル崩壊の経験を持っている日本経済です。ここで如何なる経済運営をしなければならないかは自明でしょう。

しかし客観情勢は決して容易ではありません。今年度の政府経済見通しでは、実質経済成長率は昨年度より低くなっています。現状の月例経済報告も明るい物ではありません。

一方政治不信は相当な重症ですし、総理の発言もうつろに響くようで、例の「火の玉発言」も投書欄で揶揄されるような状態です。

アメリカでは国賓待遇でしたが、それがアメリカの経済政策にも反映されることはないでしょう。かつて「ロン・ヤス」と親密だった「レーガン・中曽根」関係の下で、日本は「プラザ合意」で円高を要請され、30年不況の根因を受け入れさせられています。

今、金融政策の流れとしては、アメリカは政策金利の引き下げに向かう状況にあり、日本は政策金利を引き上げる情勢にあります。今、アメリカはドル高が有利なのかもしれませんが、いずれ金利引き下げ動き、日本も引き上げの動きを見せれば、円安は一転円高に転換でしょう。円高が日本経済にいかなる影響を齎すかは誰もがよく解っているはずです。日銀は、常に慎重な動きでしょうが、対応は容易ではないでしょう。

こうした状況の下で、日本に必要なことはまず内需を活発にし、内需中心の好況、高めの経済成長率の実現でしょう、そのためには非正規雇用の大幅削減、賃金水準の国際レベルへの回復、それを支える企業レベルの生産性の向上の促進といった高度成長期と同じ経済循環を、新しい技術革新で世界をリードするような産業構造の高度化の中での再現が必要でしょう。

そしてこうした活動を現場で担うのは日本の企業、企業の労使でなければならないのです。

政府・日銀は企業がそうした活発な活動をするための環境整備に万全を期すべきでしょう。

過去の歴史から学べば、経済外交の失敗(プラザ同意など単純なアメリカ追随)、金融政策の遅れによる円高の容認、不要不急な防衛予算の拡大などには十分留意すべきでしょう。

1985年のプラザ合意以降の失敗の連続から学ぶ事はいくらでもあるはずです。


経済政策にジニ係数の活用を!

2024年04月24日 20時02分57秒 | 経済

何処の国でも、国民は、基本的にその国の「GDP」(国内総生産)で暮らしています。ですから、国民にとって最も関心のある経済指標はGDPでそれが年々何%増えるかという「経済成長率」は最大の関心事といってもいいでしょう。

高度成長期は良かった。それに引き換えこの30年は殆ど経済成長が無く、「一人あたりGDP」はかつての常時世界のベスト10入りから、今や世界30位以下に転落しているというのは、日本人が身に沁みて感じているところでしょう。

勿論GDPの配分としてのサラリーマンの給料にしてもGDPと同様増えない時代が続き、「賃金統計」でそのあたりも歴然です。

賃金統計と言えば、関連するのは「消費者物価統計」です。賃金の上昇率より物価の上昇率が大きければ「実質賃金」はマイナスで、生活のレベルは下がるという事はわかっていますし、そういう状態が23か月も続いているといことはマスコミでも報道します。

こうして経済関係の統計は国民にいろいろなことを教えてくれます。国民は政府がきちんと経済政策をやってくれているのかどうか、選挙演説とは別に、客観的なデータとして、正確に判断する資料を持つことが出来ます。

国民と政府の経済的な関係では「国民負担率」という数字が発表だれています。これは、国民の働きが生み出した国民全体の所得である「国民所得」(≒GDPから「減価償却費」を差し引いたもの)に占める「税金+社会保険料」の割合で、国民は(企業も含め)自分たちの稼ぎの何%を政府に納めているかを示します。

「国民負担率」が高い国(訪欧諸国など)では政府のサービスは手厚く、アメリカの様にあまり政府に頼るなという国の「国民負担率」は低く、日本はその中間です。

ところで、いま日本で問題になっているのは「格差社会化」のようです。非正規従業員が増えた事が原因と言われたり、高額所得者が増えたからなどとも言われます。

格差社会化が進んでいるかどうかについても統計があります。それは「ジニ係数」という指標です。「ジニ係数」0~1の数字で格差が大きくなると数字が増えます。

所得の分配が完全に平等なら「ジニ計数」はゼロです。1人の人に所得が集中していればほぼ1でゼロに近いほど格差の少ない社会です。

ところで日本での「ジニ計数」はどうなっているのかですが、厚生労働省が総務省の「家計調査」をベースにした「所得再分配調査報告書」というのを2年おきに出していて、そのなかで当初所得の「ジニ係数」と税・社会保険料で所得再分配を行われた後の「ジニ計数」を計算しています。

その最新資料(令和3年)によりますと

という事になっています。

この間、所得格差は増えたが、税・社会保険料で再分配した結果、格差社会化は進んでいないという結果です。

この報告書はOECDに報告するために作られている資料のようですが、OECDでは世界各国の所得の「ジニ計数」を発表しています。

それによりますと日本のジニ係数は主要国の中では低い方ではありませんし長期的に見れば高まっているようです。

格差問題がいろいろな場で議論されている今日の日本です。「ジニ係数」を積極的に活用してより豊かで快適な日本経済実現に役立てたら良いのではないかと考えるところです。


消費者物価2024年3月微妙な動きに

2024年04月23日 13時20分07秒 | 経済

先週金曜日4月19日に、総務省統計局から3月の消費者物価が発表になりました。少し遅くなりましたが、例月通りご報告をしたいと思います。

先ず下のグラフの様に、原指数の動きとしては、先月までほとんど横這いになって来たかと思われた赤、青、緑の線が、3月ははっきりと上がっていることが解ります。

     消費者物価原指数主要3指標の動き

 

グラフに数字が入らなくて申し訳ありませんが、前2月に比べて総合の赤が0.3ポイント、生鮮食品を除く青も0.3ポイント、生鮮とエネルギーを除く緑が0.2ポイントの上昇です。

3月から4月にかけて、エネルギー関連や生鮮食品、一部の加工食品などの値上がりが見られていますが、毎月0.3ポイント上がれば1年では3.6%の上昇になりますから2%のインフレ目標にはとても届きません。

生鮮とエネルギーを除く総合が0.2%の上昇にとどまっていてくれることが、消費者物価の基幹部分のいわゆるコアコアは何とか落ち着いて来ている事を示していると見れば、物価は沈静基調という事になるのですが、些か心配です。

消費者物価の動きを対前年同月で見ますと下の図です。

 

エネルギー関係の補助金の影響を受ける赤と青の線も下げていますし、コアコアを示す緑の線も順調に下げてきているので、大変結構に見えますが、これも昨年3月の上昇が急激だったことを受けているという面がありますので、昨年の上昇基調に較べれば沈静という面もあり判断は微妙です。

何とか沈静基調を保ってほしいと思う消費者物価ですが、インバウンドの盛況という事で下がらない、典型的には宿泊料のようなものもありますし、これから、春闘の結果の賃上げの価格転嫁もあるでしょう。理論的にはそんなに大きなものとはならないとも考えられますが、そう簡単ではないようです。

端的に言って、23カ月連続の実質賃金の対前年マイナスといった現象が何処で止まるかといったことで、「これで経済も生活も気分が変わる」といった状態になって欲しいというのがみんなの願いでしょう。

そうなることを願いつつ、もう少し観察を続けて行こうと思っています。


変動相場制の問題点、円安にどう対応する

2024年04月19日 14時14分54秒 | 経済

日本では円安がまだ進むのではないかという心配があるようです。円高も困りますが、円安も心配というのが米・日・韓の財務相会談で日、韓の意見のようです。

アメリカにしてみれば、ドル高で円安、ウォン安を狙っているわけはなく、アメリカ自身のインフレを抑えるために政策金利を引き上げているだけだというでしょう。

つまりは円安やウォン安は日本や韓国でそれぞれに対応するよりないという事になるのではないでしょうか。

円安の問題点は、いろいろな形でこのブログでは取り上げて来ていますが、ご質問もあり、ここで纏めて整理しておきたいと思っています。

円安は基本的には日本経済にとってはプラスの方が多いでしょう。これは日本のような加工貿易立国の国では円安になると国際競争力を持つ産業分野が増加して国として国際競争力が強くなるからです。かつては「為替ダンピング」という戦略もありました。

では今の時代、何が問題かと言いますと、輸入品の値段が上がりますから、輸入原材料価格の上昇で、コスト高・収益低下になる部門と、円安差益で利益が増える輸出部門の明暗が生じ、国内での付加価値(GDP)の分配、つまり所得の分配に歪みが生じることが問題なのです。そこで問題はその歪みをいかにして是正するかという議論に発展します。

この問題は世界的に見ても、上手く行かない事が多いようです。例えば、トルコやアルゼンチンを見ますと、輸入物価が上がり国内物価が上がりますと賃上げ要求が激しくなり、物価・賃金のインフレスパイラルの激化で経済が混乱しています。

輸入物価が上がって国内インフレになるのは最近のアメリカ、ヨーロッパにも見られるところです。(米・欧ともに困って政策金利引上げでインフレ抑制に走り、そのとばっちりが日本の円安です。)

日本の場合は例外的で、輸入物価が上がっても国内物価をなかなか上げませんし、賃上げ要求の激化もありません。

その結果は、輸出部門は高収益を満喫、輸入部門は政府が補助金を出して救済、赤字財政の深刻化です。

その中で所得の増えない家計部門は貧困化し、消費不振で経済成長はストップ、増加するのは、国債発行残高と、海外投資収益(第一次所得収支)輸出企業収益という事でした。

今年になって初めて連合も政府も経団連も、何とかしなければと考え、日銀も危機的状況と感じて、分配の無かった家計部門に「賃上げで分配を確保」しようと考え始めました。

今春闘で注目すべきは政府機関の「公正取引委員会」が「仕入れ価格」の上昇と「賃金」の上昇については「販売価格に転嫁を認める」という方針を明確にしたことです。

理論的に言えば、輸入原材料価格の値上がりと、合理的な賃金上昇のコストの価格転嫁が行われれば、円安による国内の付加価値配分の歪みはほとんど解決されるという事になるのです。

ここで2つほど問題が残ります。1つは、年に一回の賃上げで、円レートの変動と賃上げ幅を上手く合わせられるかです。これは連合と経団連の仕事ですが、日本の労使関係では出来るかもしれない(賃金インフレも消費不足も起こさない範囲の賃金決定)と考えます。

もう1つは、為替レートの動きを合理的なものにできるかという問題です。今度の円安も、アメリカの労使が起こしたインフレを、FRBが抑えようとして政策金利を引き上げたためです。

基軸通貨国が自国の都合で行う政策が日本の円安を引き起こし、そうしたチャンスを利用してキャピタルゲインを得ようとする国際投機筋の思惑で揺れ動くのが為替レートです。日本にはどうすることも出来ません。

勿論日本だけではなく、変動相場制であれば避けられない事です。答えはFRBかIMFに出してもらいましょう。