tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経営の要諦は経営資源を無駄にしない事

2012年11月30日 12時03分04秒 | 経済
経営の要諦は経営資源を無駄にしない事
 経営学で最初に習うのは、「経営とは何ぞや」で、答えは「目標に向かって、もてる経営資源を最も有効に活用すること」たなっていて、だいたい誰もが「その通り」と納得しています。
 ということで、「経営資源とは何か」といえば「人、モノ、カネ、情報」と言われます。

 人については、人間関係論、動機づけ理論、リーダーシップ論などの行動科学が発達し、従業員の持てる能力・意欲の最大限の発揮が期待されるわけです。女性の活用・登用なども男女の能力に差が無ければ女性管理職が少ないのは、女性が活用されていない、勿体ない、という所ところから来ているのでしょう。

 モノについては、原材料の無駄をなくす、オシャカの撲滅、製造・流通段階の無駄を省く、リサイクルなどなどがQC、VA、JITなどで理論化され、遊休資産の処分や活用も学ばれて実践されます。
 カネについてはコスト削減、B/S調整、レバレッジの活用、種々の財務分析手法など様々なアプロ―チがされます。
 情報については、休眠特許の掘り起しから、ICT時代、様々な最新情報、獲得競争が行われると同時に、独自ノーハウの創造・育成、秘匿、メンテ・継承など著しい情報戦の時代です。

 これは企業経営で学ばれ実践されていることの例ですが、一国経済を経営する場合でも基本的は同じことが考えられます。
 ということで、日本経済に、持てる資源の無駄遣いがないかと考えれば、何と無駄が目立つことでしょう。
 国家予算の無駄遣い、問題になっている議員定数問題から公務員給与、天下り、赤字を垂れ流してきた箱モノ建設、その陰で老朽化する基礎インフラ、などなど枚挙に暇なしです。

 中でも今までほとんど指摘されてこなかった巨大な無駄、それはGDPの2~5パーセントに及ぶ「経常黒字」です。このカネは今までほとんど生かされて来ていません。
 これを政府・国民が知恵を絞って十分に活用すれば、日本経済はその金額以上の経済成長を達成(2~5%以上の成長)することが出来、しかも、万年経常黒字国ではなくなって、日本ばかりが限りない円高を繰り返すようなバカげた結果を招くこともなくなるでしょう。

 これが、このブログが繰り返し「GDPを使い切ろう」と主張する理由です。


円レートの安定で企業は安心して投資

2012年11月28日 11時54分55秒 | 経営
円レートの安定で企業は安心して投資
 日本の企業へのアンケートで「経営計画をお作りですか」と聞くとだいたい8割の企業から「作っています」という答えが返って来ていました。おそらく今もそうでしょうが、同時に「経営計画が立てにくい時代だ」という感想が付くのではないでしょうか。

 もちろん経営計画には、大変精緻なものから、「それなりのもの」までいろいろあるでしょう。立てていないと答えて居られるところでも、経営者の頭の中には何か目標があるはずです。
 目標がなくて経営をするというのは、登る山を決めないで、歩きはじめるようなもので、どちらに歩いていくべきか解らないはずです。

 ところで、山に登るといっても高尾山からエヴェレストまであります。当然自分の力に応じて目標の山を決めるのですが、さて企業が、経営目標を決める場合、今の国際化した企業環境の中で、自らの力を知り、次はこの製品を主力に育てようと考え、そのためのR&Dや生産設備、市場開拓への投資を決めます。

 その際、その生産や販売が始まる2年後あるいは3年後、5年後、円レートが90円なのか、80円なのか、70円なのか、60円なのか、はたまたどなたかが言われる様に50円にまで円高になっているのか、解らなかったら、思い切った投資が出来るでしょうか。

 今の日本企業の置かれた情勢は、まさにこうした不安定な状況そのものです。勢い、企業は本格的な投資には躊躇することになり、短期的な投資をして後は様子見ということにならざるを得ません。
 
 日本経済の、競争力、成長力は、基本的には、企業の技術開発、設備投資、市場開拓に依存します。そのいずれもが、円高によって、大きく影響を受け、20年以上にわたり苦杯をなめ続けてきたのですから、企業が消極的になるのは当然で、その結果として、日本経済がマイナス成長を続け、次第に縮小するのも、まさに当然です。

 企業が消極的になり、経済が成長しなければ、雇用は増えません。 賃金も増えません。国民の意識は低迷、諦めムード蔓延、社会は次第に劣化、わけも解らないような犯罪が多発します。こうして社会は劣化は進むのです。

 従来超優良企業と言われた所でも、利益が減り、賃金が減り、雇用も減り、正規雇用は賃金の安い非正規に置き換わり、日本経済自体がじりじりと縮小する中で、医療、介護、年金といった社会保障にしても、環境問題にしても、政府の言う国民生活の向上にしても、どこに財源を求めるのでしょうか。国民の懐を当てにした増税でしょうか。経済が縮小する中ではできることは限られています。

 今回の選挙では、すべての政党が異口同音に、国際社会に向かって、為替レートの安定を主張するぐらいの気概を持ちたいものです。いま日本の抱える問題の根本原因は、日本国内にあるのではないのです。


日本の国債残高は多すぎるか?

2012年11月26日 20時09分19秒 | 経済
日本の国債残高は多すぎるか?
  今年のはじめ、「国債残高:資産か負債か」を書きました。結論は、政府にとっては負債、国民にとっては資産ということで、問題は政府がその負債をきちんと返済するかしないかだということでした。

 野田民主党は、かつてのマニフェストーを180度変更、財政健全化のために消費税増税を推し進めようとしています。政府は増税の方がいいでしょう。
増税でも国債発行でも政府にはカネが入りますが、国民にはどうでしょうか。今多くの日本国民は、国債の方を選んでいるのだと思います。

 何故でしょうか、国民はカネを持っています。そして、政府に貸すならいいけれど、ただ差し上げる(増税で取られる)のは嫌だ、と思っているのでしょう。
 あげてしまえば、何に使われるか解らない、しかし、貸しておくのなら、将来返してもらって、自分で使える、その方がいい。政府の無駄づかいが心配なのでしょう

 日本のような「アリ型」の国では、これは、それなりに良い所があると思います。政府は借金なのだから無駄遣いしにくいし、国民には安全確実な貯蓄手段を提供出来ます。特に国民に安全確実な貯蓄手段を提供することは今の世の中では大事なことです。

 政府の借金が増えて不健全というのはアメリカやヨーロッパのように、外国から金を借りる国の話で、日本は国民が喜んで貸してくれるのですからそんなに不健全でもありあせん。国民の貯蓄がある日本の常識は欧米とは違うのです。
 国債残高が多過ぎるかどうかを決めるのは、国民自身です。国民が喜んで引き受けているうちは多すぎるとは言えません。
 
 政府は無駄使いをしないと認めて国民が高福祉高負担をOKしているヨーロッパでも、高齢化で年金財政などが行き詰まり傾向にあります。賦課方式では高齢化には耐えきれません。勢い、積み立て方式が再び注目される様相です。そうなると今のような、不安定な貯蓄手段しかないと問題は深刻です。

 根底にはアメリカによって作り変えられた今の資本主義、マネー資本主義の問題があるのでしょう。
 金利差を利用したデリバティブで儲けようとしたら、金利は変動した方が良いでしょう。それで元本が短期的に大きく変動することが必要です。しかしそれは経済活動を著しく不安定にします。(国債残高問題をもっと本格的に考えようと思ったら、政府の信用、マネー資本主義の問題も併せて論議すべきでしょう。)

 「恒産無ければ恒心無し」は古い諺ですが、経済活動の主流が、キャッシュフロー、つまりは「日銭」などということになって、経済や経営に長期ビジョンも、安定発展も失われることが進歩ではないはずです。


円暴落、ハイパーインフレ、国債紙屑? 決めるのは「労使の態度」

2012年11月22日 12時52分27秒 | 経済
円暴落、ハイパーインフレ、国債紙屑? 決めるのは「労使の態度」
 先憂後楽という4文字熟語があります。ご承知の通り後楽園の語源ですが。先憂園ではないですね。杞憂ではないですが、起こりそうにもないことを心配しても、まさに取り越し苦労です。
 
 言っては申し訳ないですが、今の日銀の発言を見ていると、まさにそんな感じです。しかもインフレで日本経済を破壊するとすれば、それは日本人自体がやるかやらないかで、問題は自分で制御できるのです。
 
 はっきり言って今からインフレを心配するなどはやめた方がいいと思います。
 繰り返しますが、そこまで行くプロセスで、日本は「円高解消」というという時点を必ず通ります。つまり日本経済が国際投機資本に飲まされている「実力以上の円高という毒薬」から解放され、健康を回復する段階です。

 日本経済は、先ずそこまで行かなければなりません。安倍さんの口先介入で、その兆候は出ています。貿易収支の赤字が援軍になっています。経常収支はまだそこまで行きませんから、口先介入の効果が薄れ、貿易赤字の一時的部分が消えれば、また円高に戻る可能性があります。

 今は、それをさせないことが最も重要です。口先介入をますます「真実味を帯びた」ものにし、貿易収支の赤字化を徹底的に宣伝することでしょう。出来れば政府支出で経常収支も赤字化の懸念ぐらい言いたいところです。
 国際投機資本を円安に走らせることです。

 そのあと、政府に残された仕事は、経常収支を「±0近辺」で止める政策です。その時こそ官僚に頼らない、「政治主導」が必要な時です。官僚には財政という水道の蛇口を左に回すことは出来ても「右に回すこと」は出来ませんから。

 その時、インフレが加速するかどうかは、労使の態度で決まります。インフレが加速する(あるいはスタグフレーションが深刻化する)かどうかは、労使の賃金決定次第です。
 日本の場合、第一次オイルショックでは大失敗しましたが、第二次オイルショックでも、土地バブルでもそんなインフレは起こっていません。労使が「生産性基準の賃金決定」を生真面目に守っているからです。これこそ世界に冠たる日本の成熟した労使関係の成果です。

 日銀も、先日の発言で、「バブルの時でも日本のインフレは1パーセントだった」と言っています。
 どうでしょう、これでも日本の将来のハイパーインフレを心配し、先憂後楽に賛成ですか?


経済成長の回復と投資分野

2012年11月21日 15時11分34秒 | 経済
経済成長の回復と投資分野
 総選挙への舌戦が始まる中で、安倍さんの金融緩和論が現実の効果をもたらしています。2~3パーセントのインフレターゲットを掲げて、無制限な建設国債の日銀直接引き受けを、という発言は、国際投機資本への当面の影響はあったようです。ドル/円は81円30銭あたりで、後は様子見のようですが、日経平均も連騰、流行のマネー経済の性質が丸見えです。そうした性質を巧く利用するのが勝ちということかもしれません

 日銀の神経質な反論にもびっくりですが、そんな根回しもない発言なのかということにもびっくりです。 
金融さえ緩めれば、インフレになるというのが、正しいかどうかは別として、問題は円高是正なのですから円安効果のあることは大いに利用すべきでしょう。
 その上で、本当の日本経済の再建政策は着実に確りと舵取りをするのがいいようです。

 現実には、建設国債を日銀に引き受けさせると言葉では言っても、実際にそれをするまでには、かなり「余裕」があるのではないかと思っています。というのは、日銀が買う前に、まだまだ国民が自力で引き受ける力があるように感じるからです。

 貿易収支が月により赤字になったりしていますが、経常収支で見れば、今年度も多分何兆円かの黒字というのが日本経済でしょう。復興国債が引き受けられ、赤字国債法案が通っても、まだ経常黒字が出るのなら、建設国債発行で経常黒字を吸収すればよいと思っています。日銀の無制限引き受けは、当分、アナウンスメント効果の段階でしょう。

 ところで、建設国債を活用しなければならないと思われる分野はいくらでもあります。日本国内各所で、橋梁や道路などの基本インフラの老朽化が指摘されているようです。現在活用されている基礎インフラの老朽化は大問題です。耐震対策の遅れも頻繁に指摘されています。

 新規に何か建設する方が格好良くて目立つでしょう、しかし要らないものを作って、維持費ばかりかかり、役人の天下り先確保などと批判されるのではない、本当に必要な投資分野は、いくらでもあるでしょう。
 金融資産として残し、アメリカに貸したりして目減りさせるカネがあるならば、耐久性のある強靭なインフラという実物資産として、子孫に残すことの方を出来るだけ選択すべきでしょう。

 さらに余裕があれば、初期投資はかかるが、後からは低コストで利用効果の高い、再生可能エネルギーのための設備、さらに進めば、そのために必要な研究開発投資などの形で着実に子孫に「発展する日本経済の形」を残すことを選択すべきでしょう。
 日本経済が順調に回れば、従来であれば、年に10兆円とか20兆円とかの経常黒字が出ていました。多分現実に日銀に頼ることはないでしょう

 そこまで行くのに最低限必要な「円高阻止」実現のために当面必要ならば、言い換えれば、国際投機資本の日本に対する見方を変えるために必要ならば、言葉のアヤもあり得ます。
 日本経済が経常黒字を出さない(GDPを使い切る)しかも酷いインフレなどを招かない健全な状態に上手に繋げることは、改めて円レートが正常に近づいた時に考えればいいでしょう。日本の場合、それはそんなに難しいことではないはずです。


為替レートを選挙の争点に

2012年11月19日 12時08分18秒 | 経済
為替レートを選挙の争点に
 12月16日の総選挙が決まって、群小政党・政治家が離合集散のゲームをしていますが、政策の話はなかなか出てきません。

 今の日本に、先ず何が必要かが確り把握できていない政治家が多いのでしょう。新しい日本の前途を開こうとか、デフレを脱却して経済成長を取り戻そうとかは言っていますが、なぜ今のような事になってしまったのか、どうすればデフレが脱却できるのかをしっかり説明する人はいません。

 私は、個人的には「これ以上円高にはしません」と公約する政党があれば、選びたいと思いますが、皆さんはどうでしょうか。
 そんなことは枝葉末節ではないかという方もおられかもしれませんが、実はこれは枝葉末節ではなく、日本のあり方の根幹だと思うからです。

 理由を申し上げれば、これは、「日本は為替レートを市場任せにはしません」ということで、それは今の国際政治・経済関係の在り方は問題だらけだから、日本は日本として新たな世界秩序を提唱しますという意思がないと出来ないからです。
 もっとはっきり言えば、マネー資本主義は否定します、それを必要とするような今の国際・国内の経済の在り方を変えましょうという提言にほかなりません。
 更に言い換えれば、NGRをベースにした、もっとまともな国際・国内経済の関係を作りましょうということです。

 日本に関して言えば、デフレ脱却、経済成長の復活もそこから始まります。学卒就職難、格差社会化による日本経済・社会の劣化に終止符を打つのもそこからです。これ以上の円高を認めつつ、それらを実現することは不可能です。

 そのベースは、こうして世界の中の日本が平和憲法を掲げながらも他国追随をやめ、毅然とした主権国家として、自らの考える形で積極的に世界の役に立つ日本として生きようとすれば、日本国民は、そのために必要な人としての資質を確りと保有しており、その実行のための態度や知識も十分に備えていると信じているからです。

 それは、縄文以来の日本の伝統文化、和を貴び、争いを好まず、自然を育て、自然と共存し、謙虚という態度を基本にしながら多様な知識・文化の共存と発展に寛容でしかも貪欲な伝統文化こそが日本人の本性と考えるからです。
 繰り返して指摘すれば、それは、世界を驚かせた大震災後の日本人の整然たる態度・行動にも垣間見ることが出来るでしょう。

 日本人は改めて自らに自信を持ち、その自信を具体的に維持・発揮できる最低の条件を、国民と世界の国々に闡明すべきであり、そのための第一歩、そして最重要な「鍵」が、一国の通貨価値の安定の重要性を日本が明確にする事にあるからです。


シェールオイルとアメリカそして日本

2012年11月16日 12時44分05秒 | 経済
シェールオイルとアメリカそして日本
 久しぶりに為替が、$1=¥81円台をつけました。
 色々な事が言われています。今度の選挙で自民党が政権をとり、安倍首相が実現し、安倍さんは金融緩和論者だから日銀に大幅な金融緩和をやらせるだろうとか、いよいよ日本も貿易赤字になり、世界情勢から回復は難しく、万年経常黒字が怪しくなるからとか、アメリカがシェールオイル・シェールガス開発を進め、2017年には世界最大の産油国になって、ドルが強くなるからとか・・・。

 いずれにしても、円高がストップするとすれば、日本にとってこんな有難いことはありません。何にしても日本はこのチャンスを生かすようにしなければなりません。
 このチャンスを生かし、1ドル80~85円といった円の水準を安定させ、日本経済復活のきっかけとすべきでしょう。

 1992年から1998年(サブプライム・リーマンショックが発生するまで)、$1=¥120前後の為替レートの下で、日本は、微弱な回復ですが、「いざなぎ越え」と言われたそれなりに長期の景気回復過程を経験してきました。

 企業業績も株価もある程度の回復を見、何よりも雇用・雇用条件はゆっくりですが改善方向に動き、非正規労働者の割合も上げ止まりから低下の方向が感じられるようになり、企業の中でも、非正規を正規に転換しようといった動きも出て来ていました。

 残念ながら、こうした動きも、リーマンショックによる$1=¥90という急激な円高で、たちまちにして潰え去り、さらにそれにユーロの混乱という追い打ちがありました。今回は何とかして、そういった事態回避のための万全の策を講じ、「いざなぎ越え」をさらに超える日本経済の復活を実現したいと誰しも思っているのではないでしょうか。

 しかし、世界情勢は、いつも油断を許しません。予期も予想も出来ないような事が起こり、またそのプロセスが簡単に破壊されてしまう可能性はいつでもありましょう。
 しかもその原因は、困ったことに、いつも日本ではなく外国にあります。

 外国のやる失敗をどうにかしようと思っても、それは日本にできることではありません。しかし、今世界で起こっている問題の一番根っこにあるのは「アメリカの経常赤字の垂れ流し」「ユーロ加盟国の経常赤字の拡大」ですから、日本としては、あらゆる場を通じて、そうした国々に、「生産力以上に金を使い続けることは止めるべきだ」という当然のことを、たとえ当面嫌われても、忠告し続けるべきでしょう。

 そして日本としては、それに協力するためにも、経常黒字の削減に努力すべきでしょう。すでに述べてきたように、今はいろいろな意味で、フォローの風が吹いてきています。
 このブログでも、本論に戻って、改めて、その方向や具体策を考えて行きたいと思います。


CSRとNGR

2012年11月13日 14時03分59秒 | 国際経済
CSRとNGR
 前々回、円レートの安定実現の方法について書かせて頂きましたが、今回は、そうした問題の根底にある基本的な考え方について、考えてみたいと思います。

 表題に“NGR"と書きましたが、これは私の造語で“Nation’s Global Responsibility”「国家の地球的責任」の略で、企業でいえばCSR、「企業の社会的責任」に当たる言葉です。

 企業の場合、コンプライアンス(法令順守)も言われますが、これも、法令に違反しなければ、何をしてもいいということではないと解釈されています。
 CSRは更に高次なもので、すでに十分に人口に膾炙していると思いますが、企業にCSRがあるならば、国にNGRがあって当然と考えるからです。

 世界は狭くなり、国際関係の進化(深化)、地球人類のグローバル化は急速に進み、企業にとっての社会環境と同様、国にとって、国際環境、地球環境、そして安定した相互協力関係の構築は、ますます重要なものになっていると思われます。
 だからこそ、NGRは今日、「国」が地球上の一員として存在する以上、当然保持すべき基本的な考え方、あり方を示すものと考えてほしいと思うのです。

 企業が「豊かさ・快適さ」を創造して社会に貢献することを目標とするのと同じように国も、世界人類のために、豊かさ・快適さを創造し、地球をより住みよい場所にすることを目的として活動するのでなければなりません。

 そのために先ず、自国民に安定した雇用の場と、改善する生活のための所得の機会を提供する事は、企業が雇用の安定と適正な賃金所得を従業員に提供するのと同じく、最低限の社会的責任でしょう。

 勿論、それらは企業が黒字でなければ出来ないように、国も黒字でなければなりません。赤字を垂れ流して外国から金を借り続け、それで国民に雇用や所得を提供しても、それは「グローバル」に責任を果たしていることにはなりません。

 企業が黒字であって初めて雇用や賃金を安定させ、その上に、顧客に満足を与え(CS)、取引先とはFair Tradeを行い、多様なステークホルダーズと良き関係を保ち、その上に地域社会や広く全体社会のために、より良い地球環境への努力や、多くの社会貢献が出来るのと同じように、国も、黒字であって初めて他国に迷惑をかけることなく、互いに協力・共存し、出来れば、地球全体の発展のために、地球上の開発の遅れた地域の開発に力を尽くすといった幅広い活動が可能になります。

 その意味では、日本などが途上国援助などに広く使うべき金を、世界で最も豊かな国の1つであるアメリカが借りて使ってしまい、その上、ドル安にして、悪い言葉で言えば「踏み倒す」などは、まさにNGRに反する行為になるでしょう。
 愛国無罪なども愛社無罪が通らないのと同様、NGRの視点では通らない言葉でしょう。徒に領土問題などを言挙げし、無用な対立混乱を招くなども、極めて未熟な行為です。

 CSRを国に当嵌めるNGRを基準に判断すれば、今の歪んだ、国際関係、二国間関係、さらには国内問題についても、多様な問題点が改めて浮彫りになるのではないでしょうか。
 さらにより多面的に、本気で考えてみる必要がありそうです。


シジュウカラと巣箱、その後

2012年11月10日 10時09分53秒 | 環境


シジュウカラと巣箱、その後
 今年の4月の19日「この巣の主は?」というタイトルのブログを書かせて頂きました。その際、庭にかけた巣箱にシジュウカラが巣を作りかけた、ということの報告をし、その結果は後程ご報告をしますと書きました。

先日、ひょんなことからその結末が解ったので、ご報告したいと思います。

 巣箱を架けた豊後梅はことしも徒長枝が伸びて、いつか切らなければと思っていましたが、先々週の暖かい日、思い立って、徒長枝を全部切りました。その際巣箱を架けた紐を過って切ってしまい、新しい紐を通して架けなおすことなりました。

 そこで、巣箱を下に下ろして、ついでに屋根の板を片方外し、中を見てみることにしました。片方の屋根板は、もともと螺子釘で止めてあり、簡単に外して巣箱の掃除が出来るようになっています。

 空けてみるとビックリでした。中は、シジュウカラが地面から集めた苔で立派な巣が出来ており、そのうえ、巣のくぼみには、小さな卵の殻が1つ、先端に穴が開いて残っていました。

 多分ここから一羽の雛がいつの間にか巣立って行ったのでしょう。なるべく見ていたつもりですが、全く気付かず、巣作りを途中でやめてしまったとばかり思っていたのですが、案に相違して、シジュウカラは雛1羽ですがきちんと子育てをしていたのでした。

 早速、鳥の巣の作り方を教えてくれた専門家に報告しましたら、
「多分、途中でやめてしまったと思った時は“抱卵”の時期だったのでしょう。雛が孵って餌をやるときは、とても素早く出入りするので、雛が1羽ぐらいだと、なかなか気が付きません。それにしても、雛が孵っておめでとうございます。私も嬉しいです。」と書いてくれました。

 巣箱は掃除して、同じところに架け直しました。来年も期待したいと思います。卵は、そっと抓んでみたのですが、残念ながら潰れてしまい、写真が取れませんでしたので、巣箱の写真を載せました。

ところで「この巣の主は?」の方の主はメジロだそうでした。そういえば、この2~3日、山茶花の花が咲き始め、その花粉をつつきにメジロが来ています。


日本にとって円高阻止の方策とは

2012年11月09日 14時22分38秒 | 経済
日本にとって円高阻止の方策とは
 プラザ合意から27年たって、日本国内でも、「行き過ぎた円高の進展は日本経済にとっての大きなマイナスだ」ということが大多数の共通意見になってきました。ずいぶん時間がかかりましたが、結果的には良かったと思います。

 ただ、残念なことに、「円高阻止なんて無理ないんじゃないか」とか「良くないことじゃないのか」といった考えを持つ方は、まだかなりおられるようです。
 しかし、考えてみれば、円高で損する国があれば、得する国が当然あるわけで、推理小説でいえば、「この事件で得する人をまず疑え」というのが原則ですから、そう考えれば、円高誘導の構図というのが、自ずと解り、阻止が必要なことも当然解るということではないでしょうか。

 円高阻止にはいろいろな方法があります。すでに論じた超金融緩和は別にして、典型的な形を挙げれば、 
 最も物理的で、端的な方法というのは、アジア通貨危機の際にマレーシアのマハティール首相が採った政策、資本取引規制、固定相場制採用です。
 もう少しソフトな方策は、為替介入、円売り政策です。スイスの採ったユーロリンク等も無制限に介入するというのですから、この類型でしょう。最近では、巨大なファンドを作り、為替安定のために、ファンドが介入するといった方法も提言されています。
 そしてもう1つは、日本が経常黒字国でなくなる政策をとることです。 

 この中で最も文句を言われないのは、3番目でしょう。国際資本市場が独自の判断で、「円高にすると損する可能性が大きい」と判断することになるからです。

 方法が複数あるのであれば、状況に応じて、それらの政策を組み合わせて採ることも当然有効です。そしてその場合の錦の御旗というのは、「為替の安定こそが、国際金融秩序、国際政治の安定に寄与し、今日の世界の混乱の解決に役立つ」というものです。

 急激な場合には為替介入、極端な円高ならば資本取引規制、安定着実な方法は経常黒字の解消でしょうか。
 中でも最後の方法は、まさに王道をゆくもので、誰にも文句を言わせないだけでなく、日本としても、経常黒字分GDPが増えて、経済成長路線への復帰の見通しが立つという利点もあります。

 これらについては、すでに、「頭を使った経済政策」、「国民のやるケインズ政策」、「GDPを使い切れば」などのキーワードで書いてきています。
 ただ、その内需拡大の具体的な方法の選び方は結構難しいと思います。
 その辺りも多少考えてみたいと思います。


金融資産保有が安全でなくなった理由

2012年11月07日 10時10分12秒 | 経済
金融資産保有が安全でなくなった理由
 一国経済が稼いだカネを金融資産として保有し、それが安全である社会というのは、どのような経済社会システムを持つ社会でしょうか。
 最低限の必要条件は、為替が安定していること、そして金融がギャンブルに走らないということでしょう。

 これはアメリカが世界に広めてきた、変動相場制、金融自由化、マネー資本主義とは正反対のシステムです。固定相場制を原則に、国民の生活水準は生産性の上昇が基準で、金融機関はインカムゲインをベースに活動をするというイメージです。
 まさにそれは1960年代までの世界経済、ジャパンアズナンバーワンに至る日本経済社会のイメージです。

 今アメリカでも、一部に野放図な金融自由化と金融機関の巨大化への反省が出ているようですが、それも当然です。
 実は、アメリカも、第二次世界大戦のさなか、それを考えていたのです。第二次大戦が終わる前年、いわゆるブレトンウッズ体制を構想する中でアメリカが考えていたのは、こうした実物経済の健全な発展をベースに据えて、金融は実物経済の安定した発展のための潤滑油の役割を果たすという堅実な経済社会像だったと思われます。
 それこそがこうした悲惨な戦争を繰り返さないための世界経済社会の体制だ、と考えていたからこそでしょう。

 しかしこのブログでも繰り返し述べて来ていますように、アメリカ自体が、この健全経済路線を踏み外し、赤字国に転落し、ポピュリズム化した政治の下では、その矯正が至難だと思い始めた時、つまり1970年のニクソンショック以降、アメリカは嘗て自ら選んだ道を捨て、今日のような誤った世界経済の在り方を選択することになってしまったと言えるでしょう。

 つまり、赤字の国があるのなら、黒字の国がある。黒字の国の蓄積資産がアメリカに流れ込むような体制を作れば、良いのではないか、という路線です。
 そのために世界経済、国際金融システムは、国際会計基準も含め作り直されていきます。
 変動相場制・為替自由化の推進、財務健全性よりキャッシュフロー重視、時価会計原則、キャピタルゲインとインカムゲインの非差別化、金融の自由化・規制緩和の推進、そして金融工学の開発・活用などなど。

 全ては周到に構想されたようです。自由化や規制緩和は、もちろん正当な論理も含みます。自由化・規制緩和こそが正義という理論も大いに活用されました(されています)。

 こうして、世界経済社会は「良識と健全なディシプリン」という資本主義を支えるべき人間性やモラル(アダムスミスの言う道徳情操、福沢諭吉の「論語とそろばん」の論語の部分)を欠いたものに堕すことになったようです。

 結果は皆さんご経験の通りです。国際経済の不安定化、国際・国内での格差社会化の拡大、社会の不平等化の進展、ひいては国際関係そのものの不安定化です。


金融資産を残すという失敗

2012年11月04日 09時56分39秒 | 経済
金融資産を残すという失敗
 日本人は、基本的に貯蓄に励む国民のようです。基本的に、「アリ型」です。「キリギリス型」には、なかなか、なれないようです。こうして日本人は世界も驚く1400兆円の個人貯蓄を積み上げてきました。

 価値の保蔵には何が便利か、といえば、それは「貨幣」です。もっとも使い勝手がいいからです。かつて「土光臨調」の際、土光さんは「子孫に借金を残すな」と言われました。
 確かに国債は政府にとっては借金ですが、国民にとっては「資産」です。そして日本国トータルとしては、巨大な貯蓄を積み上げて来ていたのです。土光臨調の問題は、国内問題で、官公と民間との配分アンバランスという問題だったのです。

 政府が借りて使ったとはいえ、国民は巨大な資産を積み上げてきましたが、それは、もっとも使い勝手がいい「金融資産」という形でした。
 しかし、残念ながら、自分に使い勝手がいいものは、他人にも使い勝手がいいのです。そして、日本の巨大な貯蓄は世界から狙われるという結果になってしまいました。

 お人好しの金持ちは、親類・縁者、知人などにたかられたり、怪しげな投資業者や振り込め詐欺に狙われたりするのです。国際投機資本が跳梁跋扈し、通貨価値が市場で大幅に変動するような経済社会では、金融資産を保有することは決して安全ではありません。安全とばかり信じていた、お人好しの日本人は、大失敗をすることになったのです。

 皆さんも、お手持ちの金融資産が、どんどん目減りしていくのをご経験ではないでしょうか。株も投資信託も値下がり、銀行預金はペイオフ、頼みの国債は紙屑になるなどと脅かされています。
 日本国としても、金融資産で保有することは決して安全・確実ではなかったのです。それどころか、カネは災いの元だったのかもしれません。

 しかし、日本政府も日銀も、アメリカを始め世界が日本の蓄積資産を狙うなどとは考えもしませんでした。政府は円切り上げを鷹揚に認め、日銀は、国内インフレの防止だけを考えてきたようです。

 その結果、日本は、円高不良債券の購入マネーゲームの失敗、対外投資のカントリーリスクなどなどで、蓄積資産の目減りだけではなく、経済成長実現のための経済社会体制や国民の意識まで毀損することになりました。
 まさに「カネは災いのもと」です。ならばどうしたらいいのでしょうか。


金融政策決定会合、さて次の手は

2012年11月02日 11時24分17秒 | 経済
金融政策決定会合、さて次の手は
 日銀が2か月連続で金融緩和を続ける意向のようです。

 アメリカやEUが金融緩和で「無制限の」という言葉を使っていますが、日銀も企業金融の場で、無制限という言葉を使ったようです。国際投機資本の思惑を牽制するためには、同等の言葉を使わないと、追いつかない(円高誘因要因になりかねない)という配慮でしょう。日本も金融緩和の意気込みは同じだという意思表示でしょうか。
 現状、効果は、円高にはならないが、円安にもならないといったところでしょうか。

 従来もそうでしたが、急激な円高になるのは、何かが起こった時です。リーマンショックとかギリシャのソブリンリスクがきっかけで、10円、20円、30円といった円高になります。これからの課題は、そういった円高をどうすれば避けられるかということになるでしょう。 企業にとっては、それが一番恐ろしいことですから。

 そのためには、更なる方策を継続して考えて行かなければなりません。金融はあくまでも、小手先の対症療法でしかありませんから、国際投機資本に「日本は変わったな」と印象付けるような新たな基本政策が必要でしょう。

 ある意味ではこれが本質的な課題で、その基本視点を決めるのは、金融ではなく、経済政策、日本経済の経済の在り方そのものの変化でしょう。しかもそれを本格的にやるなら、経済政策としても、王道を行くものである必要があります。

 一方、外部環境としては、アメリカ、ヨーロッパ経済は、経常赤字の縮小のために、成長鈍化の可能性は十分にあります。中国をはじめアジア諸国もその影響を受けざるを得ないと考えれば、その中で日本経済が物価をマイナスからプラスに転換させるような変化を遂げるためには、外国経済に頼らず、国内需要に頼る政策を進めるしかないことは明らかでしょう。

 具体手に言えば、経常収支が多少の赤字になっても構わない(巨大な蓄積がある)ぐらいの気持ちで、内需の拡大政策を打つことでしょう。
 政府は国民と共に、今、何にカネを使うべきか、そのカネをどう捻出するかといった問題を本格的に考えるべきでしょう。そしてそれこそが、自力でデフレ不況から抜け出し、日本経済が長期の安定成長を取り戻す道であることを、国民と共に理解し、十分に目的意識や関連情報を共有し、明確な意図のもとに進めることが大切です。

 そしてその分野は、よく見れば、極めて解り易い形で存在しているのではないでしょうか。1つは、災害からの復興・再生です。そしてもう1つは、子孫のために、金融資産ではなく、優良な現物資産を残すという道です。そしてその先には、教育やR&Dを通じて、優れた知識技術やノーハウ、エネルギー溢れる高度な日本文化を子孫に残すような展望が出来る政策です。
 では、何がこれまでの失敗の原因だったのか、今後は何をどう変えていくべきなのか、こんな点を少し考えてみたいと思います。