tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「力による現状変更は認められない」を現実に

2022年06月09日 15時12分50秒 | 国際経済

ロシアのウクライナ侵攻問題で、最近よく目にする言葉に「力による現状変更は認められない」があります。

ざっと見てみましても、この通りの言葉が国際法にも国連憲章にも書いてあるわけではないようです。

しかしこの言葉は、今や世界の「まともな」国では多分ほとんど例外なく受け入れられているのではないでしょうか。

今現実にこの言葉を認めない国はロシアであり、また、認めない事を実証しそうな国は中国という事になっているようですが、この2国は国連の常任理事国5か国のうちの2国で、国連の常任理事国は拒否権を持っているので、この言葉を正式なものにしようとしても多分できないでしょう。

という事になると、やっぱりこの二国に「それが良い事なのだ」と思ってもらったうえで、この言葉を世界共通のルールとして正式なものにして、今後そうしたとたらブルが起きないようにするしかないのでしょう。
 
ところで、以前にもちょっと書きましたが、ロシアが、というよりプーチンが(世の中は変わっているのに)昔のようにユーラシア大陸の東半分の「皇帝」になりたくて、隣の国の領土をガリガリ齧るようなことをするより、巨大な資源大国として、世界と自由に交易し、平和で裕福な経済大国として繁栄と発展をした方がよほどいいと気づけば、世界は大きく変わるでしょう。

中国も、生産力、技術開発力を活用して好調な経済成長を続け、香港を一国二制度で経済面で大いに活用し、台湾とは同文同種の友好関係で、相互の公益・投資関係を活発にした方が、台湾経済を破壊するより余程順調な発展が可能と理解すれば、インド太平洋は平和と繁栄の海となって、世界は経済的にも社会的にも安定するでしょう。

こういう考え方は、日本では、既に大正時代に石橋湛山が日本について的確に主張していたものです(小日本論)。日本の軍部はそれが解らず、太平洋戦争に突っ込んで、その結果、日本は一度廃墟になりました。
そして戦後まさに小日本国になって、経済的には大成功をおさめています。

こんな経験を持つ日本は、非合理的な思考や行動が蔓延する現在の国際舞台で、「本当に人類が望むのはこういう世界ではないでしょうか」と、一貫して経験に則った発言をして行く役割を担うべきではないでしょうか。

新しい東西対立のはざまで、自らの経験をベースに世界の平和と安定に貢献することも無く、徒に国内の些事に右往左往するのでは、あまりに情けないような気がするのですが、戦後、世界経済の発展をリードした時代の日本人の気概は、今はもう失われてしまったのでしょうか。

何か大変勿体ないような気がするのですが、これも世の移り変わりと諦めてしまっていて良いのでしょうか。

IPEFとは何か、日本の役割は?

2022年05月19日 16時39分29秒 | 国際経済
明日から5日間、アメリカのバイデン大統領が、日本と韓国を歴訪ということだそうで、その中で、IPEF(インド太平洋経済枠組み)の設立を提唱するということだそうです。

アメリカは今、民主主義諸国の盟主として、大変大きな役割を担うことになっているようです。

というのも、ロシアのウクライナ侵攻という、歴史が100年近く巻き戻されたような事件が起き、ウクライナは勿論、ヨーロッパ諸国からも、更に広い意味では、世界の民主主義の国々から、やはり頼りになるのはアメリカ、と言うことになって来てしまったからでしょう.

民主主義諸国がそう考えるのも当然で、ウクライナに進行したロシアは、典型的な専制主義国家で、プーチンという独裁者の下でその意のままに動くという恐ろしい国であることが明らかになったのです。

改めて独裁国の恐ろしさを見せつけられ、ロシアの隣にはもう一つの独裁国かもしれない国中国があって、中国は陰に陽にロシアを支援しているという状況を見れば、またその2国が、国連の常任理事国5か国の中に入っていて、拒否権を使って常任理事会の意見がまとまらないようになってしまっていることも解っているわけです。

ロシアの西に隣接するのはウクライナですが、東に隣接するのは日本で、日ソの間には北方領土という問題もあるので、世界の人は、日本も大変だなと思っているかもしれません。

アメリカがどう思っているかは知りませんが、戦争をしない日本、世界が平和でナイト系座愛的にも立ち行かない資源小国日本は、海に囲まれていますから、太平洋からインド洋まで、周りが平和な海でないと生きられない国でしょう。

ならば、インド太平洋諸国の平和な経済の枠組みはにほんにとっては極めて重要な構想ということになるのでしょう。
アメリカもそのあたりは確り読んでという事でしょうし、日本も両手を挙げて賛成と言わなければならないでしょう。

ところでIPEFの「枠組み」の中身ですが大きく「サプライチェーンの強化」「脱炭素の推進」「国際課税の調整」などで、TPPの主眼の「関税引き下げ」などは入っていないという事のようで、アメリカはアメリカなりに、考えている様子がかが得ます。

ロシアも中国も入って「みんな仲良くやろう」という時代のAPEC(アジア太平洋経済協力機構)などはどうなるのかわかりませんが、IPEF構想の中身は、アメリカの利害に直結するもの、民主主義圏と専制独裁国の対立のなかでという匂いが強いようです。じ
こう考えてきますと歴史的に外交下手の日本にどんな役割が可能かという問題は大変難しそうです。

今迄は、アメリカのトランプさんともゴルフで仲良く、ロシアのプーチンさんとも二十数回会って、自分の田舎にまで招待したけれども、結果は何もなかったという安倍外交や、ロン・ヤスの親密関係を結んだと思っていた相手に「プラザ合意」という強力な下剤を飲まされて、30年も日本経済を痩せ細らせた中曽根外交もあったわけです。

アメリカは親切でよい国でもありますが、本当は手ごわい国なのでしょう。瀬秋を2分する対立がおきるかもしれないといった難しい局面の中で、日本の本来の役割が果たせるような外交が可能か、TPPから抜けたアメリカという現実も考えながら、誤りのない道を選んでほしいものです。

解らないから怖い? 恒大問題と中国経済の影響

2021年09月29日 22時05分26秒 | 国際経済
中国の巨大不動産業の恒大集団の経営不安がいわれてからもう半月になります。負債総額33兆円、有利子負債11兆円というのがマスコミが報じた数字です。

当面の問題であった人民元建ての社債の利払いについては支払いが終わったという事でまずは安堵感もあったようで、上海総合、香港のハンセン指数などは安定を取り戻した様子も見えましたが、次に控えた米ドル建ての社債については、期日は来ましたが、1か月の猶予期間に入っているようです。

種々のニュースがいろいろな事を教えてくれますが、恒大集団も、持ち株の処分などいろいろ資金繰りの努力をしているようすが、簡単ではなさそうです。

共産党一党独裁の国ですから、最大の問題は政府の態度という事になるのでしょうが、33兆円と言われる恒大集団の債務総額が、中国政府や、中国人民銀行の動きによって、救済の方向に向かうのか、株式市場の動きでは、大幅下げで始まった香港のハンセン指数は午後に入って僅かにプラスに転じて来ていますが、上海総合指数は、一時1.5%を超える低迷を続けています。

中国市場はこれまでの感覚では、かなり投機性が高い市場のように以思われますので、最大の不安は、恒大集団だけではなく、他の不動産大手なども、引き締め政策の中で、多少とも経営不安の部分を持っているのかどうかといった可能性でしょう。

一部には、アメリカ政府がリーマンブラザーズを見捨てたように、中国政府が恒大集団を問題の象徴として一罰百戒(?)の様な形で見放すかこの辺りが、中国中枢部の判断が中国経済を、そして、中国経済を警戒する諸外国の懸念がどうなるか決めることになるのでしょう。

もちろん中国のこうした問題は、単に金融界の問題といったものではなく、中国経済の不振は、実体経済の面でも巨大なマーケットであり、また巨大な生産基地でもあるわけですから、、日本の高度な工作機械産業への製品需要、半導体製造装置も同様ですし、また製品としての半導体その他電子部品の供給問題に繋がることになるのはご承知の通りです。

イギリス筋では、恒大集団の問題は、国際的な問題というより、かつての日本における北海道拓殖銀行の破たん問題の様な中国の問題という見方もあるそうですが、隣国であり・実体経済でも密接な関係を持つ中国の今後の動向には、深甚な関心を持つ必要がありそうです。

日米関係に気を遣う中で、この所、中国とは何か疎遠になり十分な情報も得られないといった気配の日中関係ですが、隣国であり、世界最大のマーケットでもある中国との関係を、もっと、もっと、緊密で、親密で、種々の情報交換もでき、相互理解の可能な国として付き合っていくことがますます必要になるのではないかと思うところです。
急成長の減速、成長一辺倒から共同富裕へ、金融緩和で不動産バブルの発生、日本も経験して来た事です。親密に話し合えば、お互いに役に立つことも沢山あるのではないでしょうか。

中国発金融・経済問題は起きるか 

2021年09月16日 17時13分49秒 | 国際経済
中国恒大集団(不動産業大手)の経営が問題になっています。

中国では急成長する企業が多い事は目を 瞠るものがありますが、恒大集団もそのひとつでしょう、マンション建設などで急激に業績を伸ばし、最近は電気自動車などへの多角化も進める勢いでした。

然しここへきて、中国の金融引き締めで、不動産融資に規制をかけることになったことが、きっかけになり巨額の債務が問題視され、9月に入って、信用問題が取りざたされることになったようです。

中国もコロナ対策で、景気維持のために金融を緩めてきましたが、それが不動産バブルを生じる懸念があるという事で、融資規制に踏み込んだようです。その中で借金の多かった恒大集団の経営不安が言われ、米系の格付け会社などが格付けを引き下げたことも不安に拍車をかけたようです。

格付け会社というのも、リーマンショックの時もそうでしたが、先見して注意報を出すというよりは、問題が発覚してから格付けを引き下げるので、窮状に追い打ち、泣き面に蜂のような役割をします。

恒大集団のB/Sは解りませんので、マスコミの報道によりますと、有利子負債は11兆円、負債総額は33兆円という事ですから、リーマンの60何兆円の半分以下の程度のようですが、リーマンの時は、サブプライム関連損失が100兆円を超えたと言われました。

あの時は、世界中のサブプライムローンの組みこまれた債権、証券を持っていた金融機関などのB/Sに大穴がありて、世界金融恐慌かなどと言われました。

恒大の場合は債権者は、外国より中国関連が多いと思われますが、それだけ中国の経済が傷むでしょう(成長鈍化?)。金融引き締めと同時ですから中国経済の成長に影響すれば、取引の大きいアメリカ、日本をはじめ、アジア国々の企業や経済も影響を受けざるを得ないでしょう。

そんなこんなで、今日は日経平均も大幅下げです(引けにかけ少し持ち直したようですが)。

中国は、政治は、共産党一党独裁で自由主義圏とは別建てになっていますが、経済の方は社会主義市場経済で、海を隔ててもいわば地続きですから、影響はダイレクトに伝わってきます。

さて、この収拾を中国がどんな形でやるのかは解りませんが、どうでしょうか。政治的に一党独裁で対応するのか、社会主義市場経済で対応するのか、注目したいと思います。

アメリカの経済政策は成功するか

2021年08月11日 21時13分56秒 | 国際経済
トランプ大統領が4年の在任中に、どこに行くのか解らないようなアメリカにしてしまった後を受けて、バイデン大統領の、アメリカ正常化に着手が始まりました。

先ずは、民主と共和の分断ですが、インフラ投資の規模に見られますように、8年で2兆ドルの計画を5年間1兆ドルに修正し共和党からの賛成も得るなど柔軟性を見せながら着実に動いているのではないでしょうか。

今、アメリカ経済は、国際的にも順調な回復とみられていますが、これからの最大の問題は中国との経済発展上の競争関係でしょう。

バイデンさんは、米中関係は「競争」との表現を選んでいますが、これは誠に適切な表現だと思います。「経済戦争」という言葉はよく使われますが、戦争というのは相手を潰すことを意味するものでしょう。

それに対して競争は、互いに競い合い、発展を促進する関係を意味します。
今、世界の経済は多角的に多様な相互関係を前提にして成り立ていることは明らかです。アメリカが中国に制裁を課せば、アメリカ企業(アメリカ経済)自体が返り血を浴びるのです。多くのアメリカ企業は中国で、製造・販売をしているからです。

バイデン大統領のアメリカは、アメリカ自体の経済力を強くすることで、中国との競争に勝とうと努力することになるのでしょう。
そのためには、老朽化したインフラの近代化投資が必須という視点から長期にわたるインフラ投資の促進を計画し、産業・生活基盤の整備に注力するのでしょう。

さらに、バイデン政策は、税制改革によるアメリカ経済の活力再生を図っているようです。多様な税制改革については、法人税率の引き上げ、所得税の最高税率の引き上げ、高額のキャピタルゲインについての課税の強化などの政策で2兆ドル超の税収増を打ち出しています。

もちろん、2021年度の4兆ドル台の予算から、2022年には6兆ドル台の予算の編成ということになりますと、増税は不可避ですが、増税の方向は従来のアメリカ型資本主義を修正し、格差社会化を防ぐ税制改革や社会保障費の大幅増額など、社会主義的資本主義の方向に舵取りを変えていくといった様子が見られます。

こうして見ていきますと、バイデン政権は、かつてのルーズベルトの「ニューディール政策」現代版をやろうとしているのかといった感じもしてきます。
ニューディールの大きな柱としては、テネシ-バレー開発などのインフラ開発による雇用創出、労働者の権利拡大(ワグナ-法)、労働条件改善などが知られています。

ニューディールが当時の世界不況からの脱出を目指したとすれば、今回のバイデン政策はマネーゲームの盛行と格差社会化急進展のアメリカ経済を、インフラ整備による実体経済活動の重視、税制改革、社会保障改善による格差社会化の行き過ぎの是正など、基本的には、社会正義を目指しているという共通性を感じるところです。

日本ほどひどくはありませんが、アメリカも財政赤字は(減少しつつも)続くようですが、長期的な経済成長による健全化を意図しているのでしょう。

アメリカ経済社会の安定発展を狙うバイデン政策の成功を願うとともに、日本も日本なりに、本気でニューディール政策を考えなければならないのにと、混乱し日本の現状を嘆くばかりです。

G7の最低法人税率15%合意の進展に期待する

2021年06月07日 20時50分47秒 | 国際経済
G7の最低法人税率15%合意の進展に期待する
 先週、イギリスで行われたG7 で、国際的な最低法人税率を15%とすることが合意されました。
 今後G20、更に140が国程の協議に参加する国の理解を得るプロセスを進めることにあるのでしょうが、こうした国際的な協調、協力体制が進展することを切に願う所です。

 日本の法人税率は現在23.4%ですが、かつての経済成長期には40%を超えていました。その後アメリカのレーガン減税を真似て下げ、アベノミクスになって、景気テコ入れでさらに下げて来たのが現在です。

 アメリカは現在21%、バイデン大統領は、大幅な財政支出の財源に28%を意図しているようです。

 国際的な最低法人税率も、アメリカは最初は20%程度を考えていたようですが、結果的には、より多くの国が合意できるように15%となったようです。

 今後のプロセスも大変でしょうが、G7では各国とも、これまでの(企業誘致のための)法人税率引き下げ競争の弊害を除去し、国際的に健全で安定した企業経営の実現に必須という視点から、一様に賛成で、アメリカFRBのイエレン議長の「世界中で公平性が確保されることになる」という評価は象徴的でしょう。

 従来は収益性の高い企業を誘致し、自国に税収や関連する利益をもたらそうという意図から(典型的にはタックスヘイブン)、法人税引き下げ競争に歯止めがない状態でしたが、こうした国際的なルールが重視されるようになれば、経済面の国際競争はより合理的で公正かつ安定したものになることは明らかでしょう。

 しかし、今後の合意達成のプロセスは、これまでの環境の歯止めのない状況を活用した国も少なくないのですから、主要国やOECDなどの一致した合意への努力が必要でしょう。

 このG7の合意には、もう一つの重要なテーマがありました。それは、いわゆるGAFA等の超巨大な多国籍企業についての法人税制をどうするかという問題です。 

 こうした企業にすれば、上げた利益を法人税の安い国の子会社に移転集中すれば、法人税はうんと安くなるという事でした。
 一方、税金は、実際に収益を上げた国で支払うべきという立場から「デジタル課税」の問題が起きて来ていたわけです。

 子会社などの事業所のあるそれぞれの国が、我が国で出した利益にはわが国で課税するという事で、それぞれにデジタル課税の仕組みを考えるというのが実情でした。

 当然国別に税制が違えば不公平が起きます。これをどうするかという問題が法人税の引き下げ競争と絡んできます。

 この問題についても統一的に処理しようという合意がなされ、各国別のデジタル課税制度については、統一的な課税の在り方と適切に調整する方針が打ち出されています。

 GAFAなどの経営者の間でも、現状では特に異論はなく、国際的に調整された統一システム支持の意向のようで、G7の合意のスムーズな前進が期待されるところです。

 日本から出席した麻生副総理・財務相も、今回の合意については「よくここまで来た」という感慨のようで、日本としては全面協力体制でしょう。

 最近の国際情勢は、何かにつけて自国中心の動きが見られる中で、こうした合理的な国際協調・協力の枠組みを打ち出すことが出来たということは、今後の国際社会の在り方の中で、新たな希望を見出したと考えるべきではないでしょうか。

 それにつけても、主要国にリーダーには、世界を困らせるような人が居てほしくないと、平和と安定を求める大部分の地球市民は、つくづく感じる所ではないでしょうか。

RCEPを大切にしよう

2020年11月17日 20時45分10秒 | 国際経済
 RCEP(東アジア地域包括的経済連携)が11月15日は参加15か国の合意、署名が行われ、世界最大の自由貿易圏が誕生することになりました。
 残念なのは、当初から交渉に加わっていたインドが 参加を見送ったことですが、それでも人口規模では世界の3分に1に近い規模です。

 付け加えますが、インドが、早く参加できるように、最大限協力し努力するのも、日本の大事な役割でしょう。

 RCEPは、ASEAN10か国に日中韓、オーストラリア、ニュージーランドの15か国で、いずれインドも参加することでしょうから、21世紀はアジアの世紀と言われる今後の地球世界を支える大きな力になると思われます。

 この ブログでRCEP を正面から取り上げるのは今回が4回目かと思いますが、日本としては経済外交上の最高の舞台として、その重要性を認識し、その発展に力を尽くさなければならないと思っています。

 というのも、RCEPにはアメリカは入っていません。TPPを離脱したアメリカが、バイデン新大統領の下でTPPに復帰をするとしても、RCEPは別という事になるでしょう。

 という事は、この経済連携協定は、すべてがアジア流の考え方合で行われる可能性が高いという事です。
 アメリカが参加しますと、大統領が誰かとは関係なく、覇権国アメリカの力と思惑で引っ張られる可能性が高く、そのアメリカが相変わらずの万年赤字国という、困った条件が付いて回ることにならざるを得ないとみるからです。

 21世紀はまだ80年ありますから、その間に世界は随分変わるのでしょう。多分中国やインドが世界1、2の経済大国になるのでしょうし。アメリカは、多様な技術革新力やアメリカ的文化を残しながら、覇権維持と肩肘張らない、文化国家になっているかもしれません。

 かつて、東アジアでは、欧米列強に植民地支配される中で、何とか富国強兵政策で列強の一角にまで背伸びし、それなりの立場を築いた日本は、植民地支配から脱しようとする国々からリーダーとなる人々を受け入れ、共に学ビ、協力した経験があります。

 中国からの孫文、インドからのチャンドラ・ボースなどは歴史に残る所です。
 しかし、残念ながら、当時の日本は富国強兵政策の真っただ中、結局は欧米に戦いを挑むという無謀な行動に走り、アジア諸国にも多大な迷惑をかけたうえで、自国も殆ど廃墟に帰すという結末を迎えたのです。

 その愚かな失敗を反省し、人類の平和と、地球社会の経済・社会・文化の発展を目指す国となった今、RCEPにおいて日本は何をすべきかを考えれば、答えは自ずと出て来るのではないでしょか。

 富国強兵を捨てた今日の日本が力を持つとすれば、それは「 ソフトパワー」以外にはありません。

 あらゆるソフとパワーを自ら磨き育て蓄積し、それを駆使して、戦争のない世界で、世界各国がオリンピックのような「 競いの文化」で互いに競い合う社会の実現を目指して努力することが、日本の役割ではないでしょうか。

人間同士の無理解による破壊(戦争)を避け、経済、社会、文化の水準を高めていくという点において、先ず、身近で共通な文化、思考方法を共有しうる東アジアで、それを確りと実践していくことです。

こうした役割を果たすことは、今日の、これからの日本人にとって、頑張れば十分に可能ではないかと思われます。

アメリカに誘われて、インドやオールトラリアとともに、インド洋での軍事訓練に勇躍参加といった行動が、将来必要でなくなるかどうかは、日本の「ソフトパワー」次第といった思考回路がいつか必ず日本の政府に必要になってくるだろうと思う所です。

主要国中央銀行の協調体制の成果 2:その限界

2020年03月17日 11時02分46秒 | 国際経済
主要国中央銀行の協調体制の成果 2:その限界
 昨日、午前中に、アメリカの利下げと同時に、主要国中央銀行の協調による世界的金融緩和政策が打ち出されたことに触れて、その成果として為替レ-トの乱高下が避けられたのではないかと書きました。
 昨夜その補遺を書こうと思って始めましたが時間切れになってしまったので、今日になりました。
   
 現状では、何とか、為替の安定は確保されているように思われます。日本に関しては円高は多少進みましたが、リーマン・ショックの時とは比較にならないような小幅です(現在106.円台前半)。ドル/ユーロも極端な動きはない様です

 しかし、東京市場の株価の方は、昨日乱高下の後、結局、日経平均は終値で440円ほどの下げでしたが、今朝は寄り付きから)からさらに500円がらみの下げになり、その後少し持ち直して300円ほどの下げになって元気はありません。(午前10時前)

 一方、NYダウの方は大変深刻で、昨日は未曽有の2997ドルの下落で、マスコミは利下げの効果が全くないと驚きに見出しが躍ったようです。
 CFDでは現状500ドル程度戻しているようですが、戻りは鈍い状態です。

 トランプ大統領がパウエルFRB議長に、しつこく金利の大幅引き下げを言っていたのは、ダウ平均の下落を止める、更に反転上昇させるという意図があったことは容易に想像されるところですが、現実は、トランプさんの思惑とは全く反対の結果になっているのです。

 原因は、多分、今回の米国金利の引き下げが、米国の単独行動ではなく6つの主要中央銀行の協調のもとに行われたという点にあるように思います。

 日銀もECBすでにマイナス金利政策をとっていて、金利引き下げの余地はほぼないという事でしょう。(FRBはマイナス金利は、アメリカには馴染まないという、いわば正統派の説明をしていますが)

 それでもここで協調体制をとらなけれならなかったのは、実体経済へのテコ入れよりも、世界金融市場に無用な混乱を避けるためという意味合いが強いでしょう。

 例えば日銀の対応は、「必要あらば即時に大規模な流動性供給を行う」といったことになるわけで、これは(リーマン・ショック以来一般化していますように)、金融緩和は自国通貨の高騰(日本なら円の独歩高)を避ける手段となっていることと裏腹です。

 NYダウの大幅下落は、ドル安が限られてしまった事への失望と、新型コロナウィルスの脅威がどこまで広がるか解らないという恐怖感からの下げという事ではないでしょうか。

 金融政策で為替の安定が出来てしまうと、株価の方は実体経済の落ち込みの可能性により大きな比重をかけた動きにならざるを得ないという事ではないかと考えてしまうところです。

 勿論、現時点では未だ性急な判断などができるわけではないとも思いますが、多様な意味で先見性のあるといわれる株式市場が、アメリカの超金融緩和政策に反応しないという事は、新型コロナウィルスの脅威、その実体経済に対するマイナスの影響力に、相当大きな危機感を持っているという事のように見えて来ます。
 
 世界経済がどこまで落ち込むか、未だに見当がつけられないという事は、新型コロナウィルスとは一体どんなウィルスなのかという事が、未だほとんどわかっていないという事が原因であることは明らかでしょう。

 そう考えてみますと、当面する諸問題への根本的アプローチは、新型コロナウィルスの研究に、早急に、最大限の資源をつぎ込むことが、最優先の課題で、世界経済社会の安定のために、そのための国際協力・協調に、取り組むことが迂遠に見えても結局は近道ということになるのではないでしょうか。

最大の株価対策はなにか?

2020年03月13日 23時30分14秒 | 国際経済
最大の株価対策はなにか?
 昨日のニューヨーク市場は2300ドルを超える過去最大の暴落でした。今日の東京市場も当然その影響を受けるというところで、朝から市場は騒然としていたようです。

 案の定、東京も暴落、後から多少戻しても、先行きは不安ばかりです。その原因は単純で、新型コロナウィルスがどこまで広がるかがまだまだ解らないからです。

 その中で、トランプさんと安倍さんの電話会談が50分にわたって行われたというニュースが流れました。
 
 アメリカでも日本でも、みんなが期待するイベントは中止、遊園地は閉鎖、今シーズンのプロスポーツなども、軒並み開始は延期です。当然東京五輪も、必ず開催できるなどと言える人はいないでしょう。

 こうした状況では経済活動は当然停滞します。経済活動というのは、人間が大勢集まったり移動したりすると活発になるもので、みんなが静かにしていたら、経済は停滞です。景気を先読みする株価は当然下落でしょう。

 この所国際間の人の移動などが大変不自由になっているところに、トランプさんがヨーロッパからのアメリカへの入国禁止と言ったものですから、それが直接の引き金になって昨日の2300ドルを超えるダウ平均の暴落になったというのが解説です。

 トランプさんが何故突如としてヨーロッパからの入国禁止を言ったのか解りませんが、その時、トランプさんは、それで、株価が上がると思ったのでしょうか、それとも暴落を覚悟で言ったのでしょうか。結果は大暴落で、トランプさんは吃驚で困惑の極かなどと考えてしまいます。

 そんな中で、トランプ・安倍電話会談のニュースが入ってきたものですから、さて一体何を話し合ったのだろうかと興味津々でした。
 
 あとから詳しい報道がありまして、会談は米側の要請だそうで、日本の対応策を聞きたかったのでしょうか。安倍さんは学校の休校や財政・金融援助などの内容を説明し、加えて、ウィルスに打ち勝って、東京五輪をぜひ成功させたいと強調したとのことです。(トランプさんが、前日ですか、記者会見で延期の選択にも触れたことを意識?)

 電話会談では、トランプさんは、日本の行動を適切と評価し、今後も緊密に連携していくと言ったとのことです。

 この報道を聞いて、何、そんな事だけ?と感じたのは私だけでしょうか。
もちろん首脳同士が直接話し合うことは極めて大切です。しかし、それはそれとして、もっと重要なことがあったのではないでしょうか。

 アメリカと日本の首脳が直接話し合うのですから、新型コロナ問題の周辺対策や、仮定(新型コロナが制圧できればという)の上での五輪開催努力で合意するよりも、新型コロナウィルスそのものに対する研究、薬品やワクチンの早期開発での両国研究機関の協力の可能性(研究情報の共有化など)などの根本対策へ言及はなかったのでしょうか。

 所詮、首脳会談というのは、政治的な取り組みだけで、本質問題には踏み込まないという事なのでしょうか。

 新型コロナウィルスそのものの性質が解明されない限り、WHOが認めたパンデミックがどこまで広がるかは予測不可能でしょう。
 その中で何を論じてみても、あくまでも仮定の問題(タラレバ=コロナに勝ったら、コロナに勝てれば)でしかないのです。

 仮定の問題を論じ合っても役には立ちません、株価の今後も、東京五輪の開催可否も、いずれ現実になるわけです。黙ってそれを待つのでしょうか。

 当面する株価の問題も、経済社会の安定も、東京五輪の開催も、先立つのは新型コロナウィルスの性格の解明、制圧の可能性の展望でしょう。

 となれば、大事なのは、新型コロナウィルスの研究に、各国が(協力して)どれだけの資金を注ぎ込めるかにかかっているのではないでしょうか。

米中競争、第1ラウンド終了?

2020年01月17日 17時50分32秒 | 国際経済
米中競争、第1ラウンド終了?
 形だけになるのか、実態の変化を伴うのか、見方はいろいろあるようですが、米中の覇権争いの第一ラウンドの関税合戦は、何となく着地に至ったように感じられます。

 結果は痛み分けということでしょうか、アメリカも中国もそれぞれの痛みを負ってさし当たっての妥協に到達です。

 背後には、トランプさんの大統領選の票読み(例えばダウ平均上昇させたいという思惑)や、中国の想定外の食糧・飼料不足といった喫緊の事情もあったかもしれませんが、もっと基本的には、米中の実体経済はリーダーたちの思っているよりもずっと相互依存を強めていたという現実があったようです。

 リーマン・ショック以降アメリカの債券・証券の信用が落ちてアメリカへの資金還流が困難になり、ならば貿易不均の是正は関税障壁でというトランプさんの覇権維持戦略(現実的には米中覇権争い)の第1ラウンドだったということでしょうが、この問題は、まだまだ長い年月をかけて、いろいろな形で繰り返されていくのでしょう。

 今回の関税合戦という第1ラウンドは、勿論まだ終わったわけではありません。アメリカの対中関税はまだまだかなりの部分が残っていますし、アメリカの知的所有権窃取の取り締まり強化(中国)なども今後の状況を見なければ解らないといった意見もあるようですから、それなりの時間がかかって漸く結果は出るということなのでしょう。

 しかし、今回の米中交渉での米中の接し方を見ると、いきり立つアメリカよりも中国の方が、大人の態度だったという印象を持った人も多いのではないでしょうか。
領土問題などでは極めて頑なな中国ですが、貿易問題では随分と冷静といった感じをうけます。

 背後には、経済も技術も急速に発展しつつあり、追いつけ追い越せの中国ですから、発展の中で解決するといった、いわば「自身の発展力」への自信もあるのではないでしょうか。

 現代の中国が「愚公山を移す」といったような超長期視点を持っているかどうかはわかりませんが、核の抑止力といった現代地球人類の絶対的な背景条件のもと、中国が、次第にハードパワーからソフトパワー重視へ進化するとすれば、これは素晴らしい事でしょう。

 とはいえ、米中の覇権争いは、今後も長期に亘って続くというのが大方の見方ですし、たとえ国連という組織があっても、覇権争いは、まだまだ地球社会の中で繰り返される問題なのかもしれません。

 であれば、米中の覇権争いにおいても、第1ラウンドの終了は、あらためて、第2ラウンドの出現につながるものなのかもしれません。

 第2ラウンドがどんな問題で、どんな形をとるのかは予測の外ですが、願わくば、双方が、ますます冷静な大人の態度を進化させていくことを願うところです。

金融政策、財政政策で経済は立ち直るか?

2019年11月27日 23時22分47秒 | 国際経済
金融政策、財政政策で経済は立ち直るか?
 アメリカ経済は、トランプさんに言わせれば史上最高だという事のようです。確かに株価(NYダウ)は史上最高ですが、経常赤字は容易に減りそうにもなく、借金しながらの、借金による繁栄という状態は全く変わっていません。
 
 ヨーロッパも大変なようです。米中貿易摩擦の影響とブレクジットのダブルパンチでECBはさらなる金融緩和という事になるようです。量的緩和(国債購入など)とマイナス金利の更なる引き下げ(-0.4%→-0.5)という事のようですが、同時に、加盟各国の財政出動も必要という見方を示しているようです。 
 
 日本も、景気の減速はかなりはっきりしてきている状態で、オリンピックを控え下支え要因はあるものの、対中貿易の減速が長引けば、日本産業自体の技術革新力にも一部翳りが見え始めていいるといった様相もあるようです。
金余りとは言いながら、JDIも海外資金頼みのようですし、有機ELなどの巨大投資も資金不足で進められないといった状況が報道されています。

 もともとは、アメリカが何とか中国を抑え込もうとしていることが原因なのでしょうが中国の場合は日本と違って、簡単には抑え込めないのが実情でしょう。
 日本はプラザ合意以降30年ほど結果的には経済成長せず、アメリカに大きく水を空けられましたが、中国は成長減速といってもアメリカの2倍ほどの実質成長率を維持しています。

 このままいけばGDPでアメリカを追い越すのはまさに時間の問題(あと10年ほどか)でしょう。
 アメリカの焦りは解りますが、今のような方法で中国を抑え込もうとすれば、世界中が迷惑をこうむるという結果がひどくなるだけでしょう。
 
 例えば、中国の拡大する消費市場と製造工場としての役割を活用しながら、アメリカ経済を健全なものに立て直すといったウルトラC的な方法でも編み出さない限り、結果は見えているように思います。

 トランプさんは国内的には金融緩和(ドル安誘導)で、対中国は関税障壁でと考えたのでしょうが、株価は上げられるかもしれませんが、実体経済の健全化はそんなことでは、とても期待できないでしょう。

 アメリカが覇権国としての地位を維持するためには、経済規模ではなく、国家の「質」での勝負でなければならないという時代になっているのではないでしょうか。
 来年の選挙もあり、アメリカの行方は我々には見当もつきませんが、アメリカが賢明な政策を取ってくれれば、世界中が「金融政策」と「財政政策」で、経済をなんとしようなどといった、無理な努力をしなくてもよくなるのではないかと思うところです。

 今のグローバル化した経済は、一国の経済政策より、世界経済社会を、旧態依然の地政学的分析などを超えた、世界人類の平和と安定を軸にしたものに変えてくことが最も有効な経済政策であるという事になると、多くの人たちがは理解しているのだと思いますが、そういうリーダーを選ぶことに失敗しているもが現実のようです。
 民主主義がポピュリズム化した事が原因という説もあるようですが ・・・。

万年経常赤字のアメリカの国際経済戦略

2019年11月07日 14時14分50秒 | 国際経済
万年経常赤字のアメリカの国際経済戦略
 1970年代に入り、覇権国アメリカは経済力の相対的低下を変動相場制で切り抜けようとしたのですが、経常赤字は続きます。国の赤字も家計の赤字と同じように、ファイナンスしなければ(資金繰りをつけなければ)なりません。
赤字の主因は貿易収支で、問題は貿易赤字の解消ですが、アメリカの消費意欲は旺盛で、国内総支出の方が国内総生産を上回るので、経常赤字は消えません。

変動相場制ですから、ドルを大幅に切り下げれば赤字解消になるはずですが、基軸通貨国の面目にかけてもそれは出来ないでしょう。

 当時の日本は、高度成長期で、1968年にはGDPで西ドイツを抜き、アメリカについで世界二位になり、1973年からの2度の石油危機も、石油のほぼ全量を輸入に頼りながら、欧米に先駆けて克服、アメリカ経済を追い上げ、アメリカの貿易赤字の元凶と見られていたようです。

 そこでアメリカは、ドル切り下げはなく、円を切り上げさせて日本の競争力を削ぎ、日本の追い上げをストップさせ、覇権国の権威を守ろうと策したのでしょう。
 それは具体的には1985年のG5の場で「 プラザ合意」による円切り上げ要請でした。

 日本は数々の恩義あるアメリカの要請を快諾しています。さらにアメリカの内需拡大すべしという助言もあって、真面目な日本は、大幅な金融緩和をやり、「バブル経済」を招き、その「崩壊」も経験し、30年近いゼロ成長時代を苦しんで、アメリカの日本追い落とし策は大成功という事になりました。

 そして次に、日本に代わってアメリカ経済を追い上げたのは中国でした。中国は共産党独裁の国で、社会的市場経済の原則を掲げ、経済体制の異なる国です。
 そして、アメリカは勿論、世界中からの投資を受け入れ、急速に生産力を強め、2010年には日本を抜いてGDPはアメリカに次ぐ2位に躍進、世界の工場として、日本に代わり対米輸出のトップになり、アメリカの赤字を増やすことになります。

 中国は日本と違い覇権国を目指す可能性も高いと思われます。そして、アメリカは、対日政策の成功の二匹目のドジョウを狙い、中国に「人民元切り上げ」を迫ります。
 しかし、中国は、すでに日本の失敗を良く学んでおり、「人民元の価値はアメリカではなく中国が決める」と突っぱねます。

 一方アメリカはマネー資本主義という新たな戦略も考えていました。貿易が赤字ならば、その赤字をマネーゲームで埋めればよい、という理論です。
 アメリカは金融工学という分野を打ち立て、その分野でノーベル賞を受ける学者も生み出し、日本でも、理工系の製造業離れ(金融業界志向)といった状況が生まれています。

 この理論を生かしたのが、当時「なぜアメリカ経済は(経常赤字でも)繁栄を続けるのか」といわれた「グリーンスパン・マジック」だったようです。
 この戦略の現実は、サブプライムローンという低信用債権を担保に証券を発行、金融工学で飾り付けてAAA格付けして世界に売り捌くといったことも含んでいました。

 結果的に、サブプライムローンか焦げ付き、AAA格付けの証券は暴落、それを買った世界中の金融機関やその他法人個人の財産に大穴が空き、世界金融恐慌かといわれたリーマンショックが2008年に起きたわけです。
 結果、アメリカの経済価値の拠り所と見られていたアメリカの証券の信用は失われ、アメリカの致命傷になったようです。

 今、アメリカは、また二匹目のドジョウを狙って「 CLO」という証券を出していますが、アメリカ国内以外でまともに買っているのは、日本の金融機関ぐらいではないでしょうか。

 こうして、今に至る万年経常赤字を抱えて、アメリカは、今、トランプ政権になっている訳です。
 もうトランプ政権には、経常赤字を改善するためのまともな手段というのは経済引き締めをして、国内需要をGDPの範囲にすることしか残されていないように見えます。
 しかしそれをやればアメリカは大不況になり、世界もその影響を受けることが当然予想されます。
 トランプさんも悪い時に大統領になったのかもしれませんが、何か八方塞がりの中で、八方破れの政策で無理を重ねているように感じられます。
 
さて、これからトランプさんは何をやろうというのでしょうか。そしてトランプさんの来年の選挙はどうなるのでしょうか。
 次回もう少し考えてみたいと思います。

戦後の覇権国アメリカは何をして来たか

2019年11月06日 23時41分20秒 | 国際経済
戦後の覇権国アメリカは何をして来たか
(毎日アメリカの事ばかりで済みません)
 第二次世界大戦までの覇権国は7つの海に君臨したイギリスでした。しかし急速に経済力をつけたアメリカは、圧倒的な強さで太平洋戦争を制し、原子爆弾を持つ軍事力、経済力共に抜群の大国として新たな覇権国になりました。

 戦後のアメリカは、巨大な生産力を民生品や海外援助に活用し、「バターも大砲も」といわれるゆるぎない覇権国でした。
 さらに、戦後のアメリカは寛容で気前良く、国内では「アメリカン・ウェイ・オブ・ライフ」を確立し、ヨーロッパににはマーシャルプラン、日本にはガリオア、エロア資金といった復興援助をする自由世界の良き覇権国だったと思います。

 しかし、1960年代も終わりに近づくころには、東西冷戦という環境下で、60年代半ばからのベトナム戦争もあり、自由経済圏の覇権国として出費がかさむと同時に、世界では60年代の西ドイツ、日本などの経済成長も著しく、アメリカの相対的経済力は次第に落ちてきたようです。

 この経済力の変化は、1971年のニクソンショックに象徴されるわけですが、ニクソン大統領は基軸通貨国の象徴であったドルと金の兌換を停止します。
 ドルはペーパーマネーとなり、ドルの信用はアメリカ経済の健全度によって(基本的には)決まるという事になったわけです。

 アメリカ自身、経済力を強くしなければという責任感は強かったでしょう、ケネディ大統領は、「国民は国が何をしてくれるかではなく、国のために何ができるか考えてほしい」と訴えています。

 しかし、覇権国というのはコストのかかる役割です。それを賄うだけの経済力の回復は残念ながら容易ではなかったようです。

 しかし、基軸通貨であるドルを勝手に切り下げるわけにはいきません。基軸通貨国の権威に関わります。ドル価値は変動相場制の中で次第に下がるのですが、アメリカ自身の「強いドル」への郷愁もあるのでしょうか、なかなか下がりきらず、1971年以降もアメリカの経常収支は、今日まで一貫して赤字です。

 その後のアメリカの国際経済場裏での最も重要な仕事の1つが、「経常赤字対策」になったようです。
 日本の経験では、日米繊維交渉から始まって、アメリカの貿易赤字の縮小策に苦しめられることになるわけです。

 戦後の世界トップの経済力を持つアメリカにとっては、固定相場制をベースにした自由貿易体制が最も有利ですから、当時のGATT、IMF体制、いわゆるブレトンウッズ体制を敷いたのですが、その後の世界経済情勢の変化(アメリカの国際競争力の低下)によって、これが次第に邪魔になってくことになり、変動相場制に逃避したのですが、それでも経常赤字は解消しないという厄介な状態が続くことになったわけです.。

 その後のアメリカは、弱った経済力をあらゆる手段を使って何とかカバーし、覇権国の地位を守りたいという事に専念するようになったのでしょうか。
 ニクソン大統領からトランプ大統領まで、その努力は続きますが、そろそろこのままではどうにもならないような世界経済情勢になってきているようです。
 長くなりますので、その後の経緯は次にします。

RCEPの重要性と日本の役割

2019年11月03日 10時56分20秒 | 国際経済
RCEPの重要性と日本の役割
 RCEP(東アジア地域包括的経済連携)は確か2013年から構想の実現についての話合いが始まり、今年で何とか決着したいという参加各国の合意があり、明日11月4日に、今回のバンコクでの閣僚会議だ何とかまとめにこぎつけ共同声明を出そうという点で一致を見ているという報道です。

 このブログでも2017年、 RCEPの会合が神戸であった時、日本の役割に重要性を指摘していますが、今回はいよいよ大詰め、経産大臣の交代などもありますが、それはそれとして、日本の大事な役割はしっかり果たしてほしいと思う所です。

 問題は8割がた纏まっているといことで、論点の詳細は報道されていませんが、難関と思われるのはやはり二大大国、中国とインドの意見がなかなか一致しないという事のようです。

 いまや中国は世界の工場、モノの生産能力は巨大で、製品のレベルも目覚ましく上がっています。
 一方、インドはIT大国などといわれ、IT技術の面では急速に発展してきていますが、モノの生産という面では、中国にはちょっと太刀打ちできないようです。

 折しも対米貿易問題を抱える中国は、13億の人口を擁するインドへの輸出の積極化は至上命題でもあるのでしょうが、インドの方は、すでに対中国で大幅な輸入超過・貿易赤字を抱えるという状態のようで、RCEPの目的である、貿易の自由化を、あまり急速に進められない事情にあるという事でしょう。

 この辺りは、恐らく「日本の出番」と頼りにしている国も多いのではないでしょうか。
 中国が対米貿易問題で「自由貿易促進」の立場を強めているというのは大変結構なことですから、自由貿易の理念と現実を十分に考慮しつつ、東アジア経済圏の30年、50年先のバランスのとれた経済発展という世界経済史の変化でもあろう過程で、いかなる長・短期の政策バランスがより良い選択かを、参加国全員に理解してもらうような行動が必要でしょう。

 特に中国に対しては、途上国においての経済支配を強めるような拡大政策は長い目で見れば、決して良い結果を齎さないという現実を十分理解してもらう必要があるでしょう。
 さらにこれからの覇権国は、いずれの国がなるにしても、名誉や権威はあっても、経済的には持ち出しの多いものにならざるをえないというのが、これからの国際関係だろうという事を理解するような話し合いが必要のように思います。

 残念ながら、日本の現政権は覇権国追随といった選択に終始しているようですが、アジアの中では、これからアジアの役割が地球社会で、ますます重要な地域にならざるを得ないことを前提に、新しい、あるべき世界秩序に向けて、確りと行動することが必要でしょう。

縄文時代から日本が築いてきた「多様の共生による平和と安定そして発展」の実現という 日本の伝統文化は、そのために大いに役に立つ指針を提供してくれるのではないかと思っています。

日米貿易交渉は纏まったようですが・・・

2019年09月26日 17時09分25秒 | 国際経済
日米貿易交渉は纏まったようですが・・・
 日米貿易交渉は何とか共同声明に漕ぎ着け、政府筋からは、TPPの範囲内で収まった
いった解説がされています。
 アメリカではトランプ大統領が、農業団体を集めて、日本は70億ドル分の農産物の市場開放をする報告、出席者から、賛辞やお礼の発言があったそうです。

 コメの輸入枠設定などではアメリカの譲歩もあり、自動車の関税問題は当面いじらない、といったことで、日本側は当面ほっとしたところでしょうか。
 アメリカの報道では農業者も納得したようですが(賛辞やお礼は「さくら」発言かも・・・)、先行き何が起こるかわからないにしても、一応無難な幕引きだったということでしょう。

 それならアメリカは何でTPPを離脱してわざわざ二国間交渉を選んだのかというむきもあるようですが、やはりトランプさんは、みんなで一緒にというのはお嫌いということでしょうか。

 まあそれで結果がよければいいのでしょうが、これまでの実績を見てみますと、ほとんど、トランプさんの望む成果は出ていないといった方がいいような状態です。
  
 先ずはアメリカの貿易収支ですが、トランプさんの就任する1年前の2016年から2017年18年と赤字幅を増やしていますしペースも速まっています。2019年はまだ出ていませんが、傾向は変わりそうもありません。

 序でに財政収支を見てみますと、2017、2018、2019年(予算年度)と財政赤字の増加はペースを速めています(米予算局)。2019会計年度の財政赤字は対前年度比15%増加ということで、勿論、対GDP比も上昇です。

 財政収支の悪化には、トランプ減税の影響の大きいようですが、減税で消費が拡大して、人気は出ても、その分は、財政や貿易の赤字の増加になっているという実態は明らかでしょう。

 つまり、ポピュリズムの政治という意味では政治的にはそれなりの人気は出るしにしても、経済や財政の内実は経済原則に従うということでしょう。

 レーガン減税の時は、財政と貿易収支の「双子の赤字」削減のためプラザ合意で日本を長期不況に陥れ、その後、サブプライム・ローンで景気を保たせた後は、リーマン・ショックで、世界中の金融機関(結局は各国経済)に大迷惑をかけるといったことの、新バージョンでの繰り返しの方向に向かっているのではといっても、あながち否定できない状況のように思われるのです。

 当今の政治は、当面はポピュリズムでも動きますが、実態経済は、ツイッターや人気の演出では動きません。少し長い目で見ると、かなり怖い気がします。