tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本的経営

2007年09月23日 23時01分20秒 | 経営
日本的経営の再評価
 このところ政治も混乱の度を深めていますが、企業経営のあり方にも混乱が見られます。日本の企業経営は戦後多くをアメリカから学んで来ましたが、このところ、アメリカの経営は資本原理主義というかマネー中心主義というか、日本人の考え方と相容れない面が多くなってきました。

 しかし、日本にもその波は容赦なく押し寄せ、それにかぶれる経営者も増えたのかもしれません。しかし、ライブドアや村上ファンドが馬脚をあらわし、スティールパートナーの活動も失敗し、世のなか資本(カネ)が総てといった考え方や、敵対的買収で狙った企業を征服すると言った考え方は、日本社会には合わないということが次第に明らかになりつつあります。

 日本には日本の伝統的な文化に根ざした日本的な経営のあり方があります。資本と人間の関係では、人間が主人公で、人間が資本を活用して社会をより豊かで快適なものにするのが企業の役割といった考え方です。
 これは多くの優れた企業や企業グループの社是社訓、戦前戦後の日本経済の発展期に活躍した優れた経営者たちの語録などに明らかです。

 企業と企業の関係では、相手企業をつぶしたり買収で征服するのではなく、共存共栄(共生による共益)を第一に考えるといった思考方法でしょう。
 これは企業グループの思想であり、ある意味では談合の土壌ともいわれますが、談合は政府の予算と官僚の天下りと結びつくから問題なので、民間のみのデザイン・インや企業グループの協力の考え方とすれば全くまともなものです。

 かつて日本的経営の特徴は、年功序列、終身雇用、企業別組合だといわれ、その後、これらは現象面のもので、その根にあるのは、人間重視と長期的視点に立つ経営という2つの要素だとも言われました。

 これらはそれぞれにその時点では適切な見方だと思います。しかし今経営というものの役割が、アメリカ、ヨーロッパ、BRICsなどのそれぞれの大きな動きの中で、経済成長と環境問題も含め、多面的に問われているのが現実です。
 ならば、そうした面でそれなりの実績を挙げてきている日本の経営のあり方を、改めて「日本的経営」という視点から再吟味、再評価し、21世紀の日本企業、日本経済の進路を考えるための一助としてみることも大切ではないでしょうか。

 

雇用ポートフォリオ

2007年09月18日 10時53分17秒 | 労働
雇用ポートフォリオの再検討
 ポートフォリオというのはもともと「紙挟み」のことですが、転じて、投資家が自分の債券、証券、権利証などを一冊の紙挟みに入れておいて、常に何にいくら投資しているかが解るようにしておくという意味から、「投資内容の組み合わせ」の意味使われるようになったようです。
 さらには言葉の便利さから、いろいろな分野に転用され、「プロダクト・ポートフォリオ」といえば、わが社ではどういう製品を何パーセントずつ生産するかという組み合わせに、また標記のような雇用の組み合わせにも使われるようになりました。
 
 「雇用ポートフォリオ」は、正社員、パート・派遣、契約社員、定年後の嘱託社員などを、それぞれ何パーセントぐらいの組み合わせで雇用すれば企業にとってもっとも有利かといった意味で、1980年代後半から日経連(現日本経団連)が使い始めたようです。
 1995年に日経連が出した「新時代の日本的経営」という提言の中で、バブル崩壊後の長期不況の中では、正社員重視を見直し、パートや契約社員などを適切に活用しないと経営が困難になると、詳細な解説をつけて主張したことで、急速に一般化しました。

 その後、日本企業は、なかなか賃下げの出来ない正規社員を、退職者不補充や希望退職募集などで減らし、替わりにパートなどの非正規社員を増やして平均賃金水準を下げ、コストの削減、物価の引き下げに努力して来ました。非正規従業員の数は大方の予想を大幅に超え、雇用者全体の35パーセントほどまで上昇しました。

 こうしたコスト引き下げ努力で、今世紀に入ってからは、世界一高いといわれた日本のコストや物価も、国際水準に近づき、製品によっては国内で生産したほうがアジア進出より有利といったケースも出てきました。
 これはある意味では、非正規社員の賃金 が低いから可能になったという面もあるわけで、 正規社員の賃金水準では、なかなかそうはいきません。

 このところ、正規社員と非正規社員の賃金格差が問題になっています。そうした中で、これまでのコスト引き下げで多少収益力も回復した企業では、非正規社員でも仕事が出来れば資格も時給も引き上げるとか、選抜して正社員にするといったことも増えているようです。

 日本経済の回復基調とともに、これまでの非正規社員重視の「雇用ポートフォリオ」のあり方も、その中身となる人事制度のあり方も、次第に見直しされていくのではないでしょうか。企業の自然な努力で、格差問題の改善が進むのを期待したいと思います。


雇用の発生

2007年09月08日 11時07分58秒 | 労働
雇用の発生の条件
 アメリカではサブプライムローンに関係した金融や建設などの企業の人員削減で雇用が4年ぶりに減少に転じたと報道されています。幸いなことに日本では、新卒求人に典型的に見られるように現状、雇用は堅調です。しかしアメリカ経済の影響を受けやすい日本ですので、先行き心配もあります。

 どこの政府も雇用の拡大を最重要な政策目標の1つに掲げていますが、では、雇用の発生の条件とは何でしょうか。

 端的に言って、その人が「給料以上に稼いでくれる」可能性が大きければ、その人は雇用されるでしょう。給料分だけ稼いでくれるのではだめで、給料プラス資本費(利益や借入金の利息や減価償却費など)の分も稼いでくれないと企業は存続していけません。通常、付加価値(稼ぎ)の7割以上を人件費に払うようでは企業はキツキツで、60パーセント台になると何とか一息というところでしょうか(この7割とか60パーセントというのが「労働分配率」です)。

 不況になると、売り上げも落ち、企業の生産する付加価値も減りますから、人件費も減らさなければ企業はやっていけません。そういうわけで、アメリカでは不況になると従業員を削減します。いわゆるリストラです。当然失業率が増えて、不安が増大します。

 日本では以前は、残業やボーナスを減らしたり、一時的に賃金をカットしたりして人件費を削減してしのぐことが多かったのですが、長期不況の中で、人員削減も見られました。同時に日本の場合は、正規従業員を非正規従業員に置き替え、平均賃金水準を下げるという方策も採られました。おかげで、日本の失業率は欧米のように上がらずにすみました。しかし「格差社会」といわれる問題を残したことも事実です。

 雇用問題は社会問題としては非常に複雑ですが、「私は100稼ぎますが、60から70頂ければ結構です」ということになると通常、雇用は成立するということでしょうか。
 ところで私は一体いくらぐらい稼げるのかな?