tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

食糧価格とマネー資本主義  (2)金融の役割

2011年02月26日 14時25分12秒 | 経済
食糧価格とマネー資本主義  (2)金融の役割
 金融機関の役割とは何でしょうか。これは金融の歴史を見てみればわかります。
 貨幣(おカネ)というものが生まれて、モノや仕事にはそれぞれ値段がつき、物々交換は売買になり、おカネを持つことが豊かさになりました。貨幣の主要な3つの役割「価値尺度」「交換の媒介」「価値の保蔵」が確定したわけです。

 しかし人間はおカネそのもので生きているわけではありません 。衣服を着、食物を食べ、家に住むという実物の世界で生活しているのです。これが「実体経済」です。この実体経済は通常「GDP」という形で示されます。GDPが増えるのが経済成長、経済水準の向上です。

 金融は本来、この実体経済の成長発展をよりスムーズに促進するために生まれてきた機能です。特に、おカネの貸し借りに、「金利」が定着してからは(『ベニスの商人』では金利を取ることは悪いことでした)、銀行が生まれ、実体経済の発展に大きく貢献しました。
 お金が余っているが活用の仕方が解らない人のお金を集め、仕事をしたいが、おカネがない人に貸す事で、生産の増加、経済発展、生活の向上を促進したわけです。

 金融というのは本来こうした形で、実体経済の発展に貢献することこそがその役割なのです。ところが、おカネがあまりにも便利なものなので、いろいろな使い方を考える人が出てきます。

 例えば、食糧品が足りなくなるという予想の場合、生産者にお金を貸して、生産を増やし、生産者も、消費者も、金融機関もみんなwin-winの関係になるという方法もあります。 しかし、食糧品を買い占めて、値上がりを更に激しくし、高値で売って利益を上げるという方法もあります。この場合は自分はwinで、あとの人たちはloseということになります。経済成長は阻害され、社会全体としてもloseということでしょう・

 金融機関はどちらの人におカネを貸すべきなのでしょうか。当然前者でしょう。しかしここで「2種類の利得(gain)」の問題が出てきます。「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」 です。
 インカムゲインは、GDPを増やし、その分配として利得を得るものです。一方、キャピタルゲインは、値段の変動で稼ぐ、単に他人の持っている経済価値を自分の所に振替えるというものです。

 この、自分のところに「経済価値を振替移転させる」というのが、マネー資本主義の基本原理です。実体経済はどうでもいいのです。実体経済のことなど考えていたら、売買のチャンスを逃して、資金提供者から背任の罪に問われかねません。実体経済とは全く別基準の世界なのです。

 そして今、このマネー資本主義が、実体経済を混乱させ、世界経済の安定成長を阻害しています。今回の食料価格、原油価格の高騰で、国際投機資金の流れが注目される理由です。


食糧価格とマネー資本主義 (1)

2011年02月23日 11時04分20秒 | 経済
食糧価格とマネー資本主義 (1)
 「大工殺すにゃ 刃物はいらぬ 雨の3日も 降ればいい
 江戸川柳ならぬ江戸都都逸です。江戸の職人は「カネは腕に仕込んである。仕事をすればいつでもカネは入ってくる。だから宵越しのカネなんざぁ持もたねぇ」と粋がって、貯蓄率ゼロ、今の日本人とはかなり違っていたようです。 まぁ、落語で知る世界ですが。

 そうした職人気質を揶揄したのが上の都都逸で、「粋がってるのはいいけれど、雨が続いて3日も仕事がなければ、お前ら飢え死にだぞ(野暮な説教)」という事なのですが、これは後世いろいろに言い換えられています。
 「噺家殺すにゃ 刃物はいらぬ 欠伸ひとつで 即死する (某落語家)
 「株屋殺すにゃ 刃物はいらぬ 寄り引け同値でザラバ無し(某相場師)  などなど。

 ところで、ここでのテーマは、一番後の都都逸です。つまり株の値動きが全くないのですから、それでは株屋(今なら証券会社、○○ファンドなど)は仕事になりません。
 止まない雨はありませんが、値動きのないマーケットもありません。マーケットは、需要と供給のバランスがとれたところで公正な価格が決定されるための市場経済の中の最も重要なメカニズムで、マーケットが機能しなければ、市場経済、もっといえば、公正な経済は成り立たちません。

 さて、ここが重要なところです。マーケットというのは、いろいろなものの価格を「公正に」決定する役割を担っているのです。
 では「公正な価格」とは何でしょうか。「需要が多ければ価格は上がり、供給が多ければ価格は下がる」これは正常な価格メカニズムです。価格が上がれば生産が増え、消費が減る、逆の場合はその逆といった形で、需給のバランスを回復させるのが「価格メカニズム」です。

 経済は基本的に、生産者(供給側)と消費者(需要側)で成り立つといわれます。しかし現実には人間はみんな生産者であると同時に消費者です。つまりみんな「生活者」です。
 生活者にとって望ましい「値段」(価格)のあり方とはどんなものでしょうか。需給による価格変動は認めつつも、できるだけ変動の少ない、安定した状態が望まれるのです。生産者として見ても、消費者としてみても、納得のいく値段が公正な値段でしょう。

 問題は、現在の経済社会では、「そうでないビジネス」が、どんどん増えているという事です。値動きがなければ仕事にならない、値動きは大きいほうがいい、さらに、値動きがなければ自分たちが動かしてでも ビジネスチャンスを作る。 これが「マネー資本主義」の基本です。

 マネー資本主義は、安定を望む生活者の生きる経済社会、雇用も物価も賃金も、できるだけ安定成長して欲しい「実体経済社会」とは全く別基準の経済社会です。 そこに問題が発生します。


パリG20、日本は行動で進路を示せ

2011年02月21日 15時02分52秒 | 国際経済
パリG20、日本は行動で進路を示せ
 今回のパリでのG20は、慶州の後を受けて、国際経済バランスの問題が中心だったようで、コミュニケを見ますと、G20が本来取るべき方向が、次第にはっきりしていたように思われます。

 先ず為替レートは経済のファンダメンタルズをよりよく反映するものにすべきと書かれています。不均衡是正のために評価すべき経済指標については、経常収支の不均衡を持続可能な水準に縮小すること(各国の協力で)の重視が必要と書き込まれています。
 目標ではないが、ガイドラインを設けるべき指標として、財政の不均衡、民間資産負債の不均衡、貿易、投資、移転収支などの対外不均衡についても為替レート、財政、金融、その他の政策を考慮し活用する、などとも書いてあります。

 後のほうには、FSB(フィナンシャル スタビリティー ボード)の役割のところで、金融機関の健全性確保のための規制強化も書いてありますが、これにはどうも違和感を覚えました。本来、実体経済とかけ離れた投機資本の規制を考えるべきFSB が、そうした行き過ぎた投機を前提にして金融機関の健全性の方を先に考えるのは本末転倒としか思えません。

 大体こうした国際会議の纏めの文書は解りにくいのが普通ですが(特に意見のまとまらないときは)、中で大事なことを見ていけば、
・ 為替レートはファンダメンタルズを反映したものにすべき
・ 経常収支の不均衡を持続可能な水準に
といったあたりで、その他はいろいろな意見を形だけ盛り込むか削るかと言った駆け引きの結果でしょう。

 ところで、日本代表が席上いかなる発言をしたかはわかりませんが、世界の為替や金融問題に対しては、日本は大いに発言し、貢献できるのではないでしょうか。
 先ず世界で最も為替を切り上げ(させられ)ているのは日本です。それも、ファンダメンタルズとかけ離れた大幅切り上げで、世界で唯一、本格的長期デフレを経験しています。

 また日本は、常に真面目にモノづくりをし、実体経済を中心に経済政策を考え、技術移転を中心に世界の実体経済の発展に貢献してきています。
 そのモノづくり、技術開発、その基礎をなす教育や産業訓練が、円高による日本経済の疲弊で困難になり、世界経済社会の発展への貢献が思うに任せない状態になっているのです。

 こうした日本の現状を確り説明する事で、中国も安心でき、アメリカも他国への理解と 基軸通貨国としての自覚を持つような、単に相互の利害でやりあうのではない、世界経済の安定と発展に貢献するという目的を共有する「より良い選択肢」を示すことができるはずです。

 そうした説明、そして説得をより効果あるものにするためにも、日本は率先して万年経常黒字を是正することが必要でしょう。


ヒヨドリとムクドリ

2011年02月18日 15時59分12秒 | 環境
ヒヨドリとムクドリ


 我が家では、炊飯器やその他食器を洗う際に、ごはん粒を流しに流さないで、洗った水と一緒に庭に撒くようにしています。スズメが減っているというので、エサでもやろうかというのがキッカケです。
 「鳥の目、虫の目」などと言いますが、鳥たちは何処で見ているのか、本当によく見ていて、たちまち我が家の狭い庭に降りてきます。スズメが一番多いのですが、この所、季節のせいでしょうか、ヒヨドリがスズメを追い払って食べに来ますし、ムクドリもよく来るようになりました。

 鳥にもいろいろ性格があるようで、ヒヨドリが最も警戒心が強く、先ず、塀際の梅の木の枝に止まって周囲を時間をかけて見回し、落ち着くと、そこで糞をします。そしてエサのところにさっと舞い降り、始終左右を見ながらつついています。

 警戒心の強いヒヨドリは同時に戦闘的で、スズメやムクドリが食べに来ると、羽を広げてその鳥たちの至近距離を飛び、追い払います。
 もう少し暖かくなるとメジロが多く来ますが、メジロはヒヨドリが来るといち早く逃げています。

 スズメやムクドリは、ヒヨドリほど警戒心はなく、直接エサのところに下りてきて、平和共存で、一緒になってエサをつついているのが普通です。 ヒヨドリはそれが気に障るのでしょうか、バサッととその上を飛び違って脅かします。見ていると、スズメはあわてて逃げますが、ムクドリは、体も多少大きいせいか、あまり怖れずにエサをつつき続けることが結構多いようです。

 ヒヨドリのほうは至近距離の枝や地上で更に脅しをかけます。両羽を少し膨らませて、細かく震わせるのがどうも脅しらしいのです。スズメの子が親鳥に同じように羽を震わせてエサさをねだるのはよく見ていましたが、同じ動作でもどうも、鳥によって意味が違うようです。

 ムクドリは、挑戦的なヒヨドリに対して、わざと無関心を装っているように見えます。ワレ関せずでエサをついばんでいたり、トコトコと別の方に行ったりで、中にはえさを食べているヒヨドリのほうにまっすぐ歩いて来て(ムクドリは二足交互歩行です)、ヒヨドリの目の前でエサをあさったりするのもいます。そんなときは、ヒヨドリの方が嫌って飛び立ちます。

 ところがたまたま、梅ノ木の上で、ヒヨドリとムクドリが張り合っているらしいと思えるようなしぐさがあって、うまい具合にその写真が撮れました。ムクドリが大きく嘴を広げているのは示威行為でしょうか。
 「みんな仲良くしたら」といってもなかなか通じないようです。 どこの世界も同じですね。 



円高を止める新機軸の経済政策-まとめ

2011年02月15日 11時33分48秒 | 経済
円高を止める新機軸の経済政策-まとめ
 これまで述べてきたことを纏めてみます。
① 日本経済の苦境は、何かというと、実力以上の円高 を強いられていることに原因がある
② 実力以上の円高を強いられる理由は、万年経常黒字という日本経済のパフォーマンスにある可能性が大きい
③ 経常黒字をなくし、円高を阻止出来れば、日本経済はかつての元気を取り戻せる
④ そのためには、内需、特に消費の積極的な拡大が最もよい方法である
⑤ 消費拡大は、年々のGDPを使いきるだけでもいいが、過剰な貯蓄を消費に向けることも望ましい
⑥ 政府が十分な説明と説得によって、家計に消費拡大を要請すれば、内需が拡大、経常黒字は消えて、(おそらく)円高は止まる
⑦日本経済は安心と元気を取り戻す
というものです。

 必要な消費拡大の金額は年間十数兆円、平均で言えば、国民一人当たり月1万円強です。現実には、消費拡大など無理という家計もあるでしょう、他方、政府が本気で頼むならと、200万、300万かけてエコカーに買い替えたり、家のリフォームをしたり、再生可能エネルギー装置を導入する家計もあるでしょう。
そして家計消費が年間20兆円も増えたら、「多分」、円高懸念は解消、円安方向の動きが出て、経済成長率は4パーセント(20兆円はGDPの4パーセント)かさ上げされ、日本経済は様変わりになるでしょう。

 財政再建や、年金問題も、成長経済の中で、少しは明るい論議が可能になるでしょう。若者の就職問題も解決に向かうでしょう。
 これは前にも述べましたように、家計からカネを借りて政府(財政)がその金を使う「ケインズ政策」を、政府は掛け声だけで、家計が自らの手で直接やろうということです。政府でなく、国民が直接行うケインズ政策 です。 当然財政悪化は生じず、逆に改善に向かうでしょう。
 
 日本国民は賢明ですから、政府の解りやすい説明さえあれば、これは十分可能でしょう。そして最も幸いなことに、日本の家計は、十分な貯蓄を持っています。1400兆円の個人貯蓄は、何のためか、今こそそれを活用するときなのです。

 私自身も、政府がこうした政策を本気でやってくれるのであれば、新型の家庭用燃料電池設備を(頭がぼけて振り込め詐欺にあう前に)我が家に入れようと思っています。


円高を止める新機軸の経済政策-5

2011年02月11日 12時17分38秒 | 経済
円高を止める新機軸の経済政策-5
 内需拡大のための補助金政策など書いてきましたが、本当に書きたい「新機軸の経済政策」は
「国民との対話、国民の理解と説得」という経済政策です。

 従来の経済政策というのは、いわば「間接話法」の経済政策です。
・ 金利を上げれば国民は投資を減らし貯蓄を増やすだろう、
・ 財政支出を増やせば、民間も安心して投資などの支出を増やすだろう、
・ 補助金を出せば消費が増えるだろう、
・ 子供手当をだせば、親は支出を増やすだろう、 などなどですが、そうならないこともよくあります。

 国家の緊急事態に際しては、こうした間接話法では、効果が足りないのではないでしょうか。本当に必要なのは、
・ 国はこうした危機的な状態にある。その打開のためには、「これこれ」が必要だから、国民は理解うえ、最大限の努力をして欲しい、
という事を、国が直接国民に訴え、世論を作り、国民一人ひとりが行動を起こすように説得するといった形の「直接話法」の経済政策です。

 中国の場合には、こうした政策は困難でしょうから、為替レートそのものを国が管理して、予想される過度な人民元高による中国経済社会の混乱を防止しています。

 「平成の開国」などといわれますが、日本すでに開国していますから、為替管理は出来ないでしょう。ならばそれに代わる対策を取らなければ、日本経済・社会はプラザ合意による「失われた10年」、リーマンショックによる$1=¥80の下での、投資と雇用の国外流出、国内空洞化、そして何時更なる円高が来るかと怯える萎縮の螺旋階段から脱出できないでしょう。

 このブログで提唱してきている「経常黒字をなくしましょう」「GDPを使いきりましょう」を、政府が「政策の理由を解りやすく説明しながら」国民への理解と説得を実現し、国民の総意として定着させ実行することが、現時点での、救国のための経済政策でしょう。

 国がそういう政策を取ることはかつての国家総動員令のようで、反対、という方も居られるかもしれません。であれば、国に代わって、第1次オイルショック後の、インフレ抑制のための労使合意 のように、労使がリーダーシップをとってもいいかもしれません。
 
 日本経済のコストアップを避けるという意味からは、あの時の賃金決定のガイドラインも、今日の経常黒字ゼロ活動も基本的には 同じ目的(コストアップの阻止)を持つものです。

 必要なことは、日本の円の価値の評価を、「国際投機資本の思惑などに任せない」ということです。その意味では、国際投機資本の跳梁の規制とか、為替レート調整のための国際機関(ゴルフのハンディ委員会に相当)とかが実現すれば、問題は解決するのかもしれません。

 日本人は、「スクラッチで競争」したら、何処にも負けないという自信を持つべきでしょう。これには実績 があります。その自信を回復するために、こうしたことが必要なのです。

円高を止める新機軸の経済政策-4

2011年02月09日 12時38分48秒 | 経済
円高を止める新機軸の経済政策-4
 政府が財政再建に本気で取り組むことは、従来の常識で考えれば、大変結構なことですが、国際投機資本の目から見れば、「円はますます健全な通貨になるので、何かあったら円に逃避しておけば安全」ということになり、何かあるとまた円高、$1=¥50~70になる可能性を高めます。

 そうならないために、日本が取りうる策は、「万年経常黒字の解消」しかないのではないかと「繰り返し」書いてきました
  慶州G20でも、「経常収支の対GDP比を中・長期的にゼロに近づける」ことが謳われましたが、世界で先ず日本がそれをやってのけたら如何でしょうか。

 アメリカの経常赤字解消は至難でしょう、中国の黒字解消もなかなかでしょう。ドイツはユーロ下落の中で、その気はないでしょう。
 世界に先駆け、日本がやって、G20の場でも、世界に胸を張って、あるべき国際経済関係の王道を主張するのは如何でしょうか。

 ところでそのための政策ですが、これも繰り返し述べてきていますように、主体は「家計」です。最も金を持ち、しかも有効に活用できていない 「家計」が主役になるべきでしょう。
 特に、貯蓄を持っている高齢者が主役になるべきということになるでしょうが、
「多額の貯蓄を持つ人は、思い切って収入は全部使いきろう。場合によっては貯蓄を取り崩して、 新時代の生活を先取りしよう」
というのが望ましい方向になるのではないでしょうか。

 政府はキッカケ作りのためにも、そうした動きを全面的に支援する政策を打つべきでしょう。例えば、金がないから止めようとしている「家計のエコに対する補助金、減税、エコポイント」などは、本格的な政策として考え直すべきでしょう。
 特に省エネ住宅、未来型住宅を先取りした場合に対する支援を徹底的に行うのはどうでしょうか。現在の30万円という今額はあまりに小さすぎます。

 家電でも自動車でも、1万円の補助金が10万円の支出を呼び、30万円の補助金が300万円の車の購入を促進するのです。
 ソーラー発電や燃料電池、家庭用蓄電池、省エネ型住宅建築・リフォームなどについては、家計が魅力を感じるサイズの、解り易い支援をすべきでしょう。
 LED照明も含め、一世代後の住宅は今とかなり変わったコンセプトのものになるでしょう。そうした先取りに対する支援です。
 森と同じ環境効果を持つ住宅「エクセルギーハウス」などというものも生まれています。

 将来目指す社会の方向に向かう支出を促進することは、将来のための技術開発を考える企業にとっては大きな追い風になり、技術立国日本の基盤強化にもつながります。

 こうして家計が使うべきお金の額は、十数兆円、1500兆円の個人貯蓄の1パーセント程度、本来は貯金を取り崩さなくても、今年生産したGDPを全部使いきるだけでいいのです。しかもそれで、経済成長は3パーセント高まり、円高を怖れることもなくなる、となれば、こんな結構なことはありません。経済は自立的回転を始めるでしょう。

 縮小する経済の運営は大変ですが、経済が拡大を始めれば、運営はずっと容易になります。問題は、プラザ合意以来の円高で萎縮しきった日本の家計のマインドを、通常の成長経済のマインドに戻すことなのです。それが円高を止めることにもなるでしょう。

 政府がどんな日本経済社会の姿を目指しているのか、今の状態では、財政再建以外全く見えません。財政再建は重要と国民はみんな思っています。しかし財政再建で日本は良くなるのでしょうか。財政再建→消費税増税ということで、家計はますます萎縮し、貯蓄性向を高め、経常黒字拡大、円高の危険性増大となるでしょう。これは全く逆の方向です。

 変動相場制時代の経済運営は、過去の前提条件(相場が安定しているという前提)のものとは全く違ったものでなければならないのではないでしょうか。
 次回はこの問題をまた別の面から考えて見ましょう。


デフレと与謝野・柳沢構想

2011年02月04日 11時11分33秒 | 経済
デフレと与謝野・柳沢構想
 消費需要を中心とした内需拡大、GDPを使い残さない日本経済の運営の問題を考えようというところへ、新しい情報が飛び込んできました。

 今回はことの性質上、個人のお名前を出して論じなければならないことになりますが、今朝から報道されている「社会保障改革に関する集中検討会議」についてです。

 菅総理を議長、与謝野経財相を議長補佐にした税と社会保障の一体改革案を纏めるための会議ですが、以前、自民党税制調査会長もやられた柳沢さんが、与謝野さんの頼みもあって重要な助っ人として参加されるという事で朝日新聞が、インタビューしていました。

 政党や人脈がどうかなどはこのブログとしては全く関係ない事で、問題は日本経済を救うのに役に立つかどうかですが、どうしても気なることが書かれていました。

 柳沢さんは、「財政再建は待ったなし、国債の格付けを下げられただけでなく、デフレも収束しそうにない、外国の日本を見る目も変わってしまった。根底にあるのは猛烈な財政赤字だ。・・・・」と仰言っているようです。

 マスコミの報道が本人の意思を正確に伝えているかどうかは解りませんが、これで見ると、財政赤字を減らし、財政を再建していけば、国債の格付けを下げられるようなこともなく、デフレも収束していく、とお考えのように、私には読めてしまうのです。 もし「財政を再建すればデフレも収束する」といったご理解であれば、そこには、もう少しその実現のための条件などの説明(例えば、社会保障の安定で国民が安心し、消費を増やすから日本の万年経常黒字はなくなるなど)がないといけないような気がします。

 単純に財政も健全化、経常収支も万年黒字といった状況ですと、日本はますます円高になりやすくなり、それは即、更なるデフレに苦しむ可能性を高くする、ということになるでしょう。財政の健全化は、あくまで中間目標で、最終目標は「日本経済の健全な成長」でなくてはなりません。

 そうならないためには、税社会保障の一体改革(つまりは国民負担率の引き上げ)をやりながら、消費支出を中心に内需を拡大し、GDPを使い切り、経常国際収支を均衡させる(あるいは他の先進諸国並に多少赤字にするぐらいの)政策が確りと併行しないといけないのではないでしょうか。

 国際投機資本が跳梁する今日の変動相場制の世界と、日本経済が健全性を謳歌できた固定相場制(あるいは安定相場)の世界とでは、一国の経済行動の原理は全く違うはずです。

 財政、国際経常収支の健全性、マネー資本主義、円高、デフレ経済、マイナス成長、雇用・将来不安、国民貯蓄の動向といった循環的に影響し合う条件を、総合的、有機的に見た上で、部分、部分の政策を、全体との関係で考えていかないと問題が解けないような難しい世の中になっているように感じるのですが。


円高を止める新機軸の経済政策-3

2011年02月01日 10時43分37秒 | 経済
円高を止める新機軸の経済政策-3 
 さて、ここでいよいよ、円高を止めるための新機軸の経済政策を考えることになります。

 内需拡大性策として通常指摘されるのは、財政支出増と、賃金の引き上げですが、これは両方とも副作用 のほうが大きすぎて、適切な方法ではないだろうという事はすでに見てきました。
 ですからこそ、何か、副作用が少なく、確実に効果のある新機軸の経済政策を「考え出そう」という事ですが、実はこのブログでは、すでにそうしたアイデアをいろいろ出して来ていますし、政府も、ソーラー発電の補助金やエコカー補助金・減税、エコポイントなどの合理的な政策を打っています。

 ただし、問題は、政府自体が、本気で円高をとめる気があるのか、あるいはあったとして、どうすれば止まるのかといいうはっきりした問題への理解や認識がないまま、中途半端なことで済ましていしまっているという事にありそうです。

 しっかりした問題意識と問題への理解があれば、多分、毎年十数兆円の経常黒字を出すような「政府経済見通し」は出さないはずです。
 経常収支は「プラマイゼロ」という政府経済見通しを出せば、日本経済は3パーセント以上成長率が高まり、税収も、雇用・賃金も、企業収益も増えて、国民生活も改善し、かなりパフォーマンスの良い日本経済の姿が描けるはずです。

 その上に、そのアナウンスメント効果だけでも、円安に振れるかもしれません。下手な介入よりもずっと効果的な円高対策になる可能性もあります。
 ただし問題は、その経済見通しを実行しなければならないことです。1年経って、相変わらず十数兆円の経常黒字が出ていたら、「あれはただのジェスチャーだったのか」で終わりです。

 ここからが本当の問題で、日本は、総力を挙げて、経常黒字を出さないための政策を考え、実行するのでなければなりません。
 この十数兆円の内需拡大の担い手は、国でも、企業でもなく、家計です。日本で最もお金を持っているのは家計ですから。

 問題は、どうすれば、家計に年に十数兆円のお金を余計に使ってもらえるかで、それを考えるのが、この新機軸の政策の課題です。

 かつて日本が成長途上で、好況になると貿易赤字で外貨が足りなくなり苦労していた頃、何とか赤字をなくしたいと努力したのと同じように、黒字をなくす努力をすべきでしょう。
 慶州G20 で、対外バランス回復努力の必要性が論議されたあのは、まさにこの事だったはずです。