tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経済成長を取り戻す方法 その7  結果オ-ライはあるか?

2010年04月28日 15時22分16秒 | 経済
経済成長を取り戻す方法 その7  結果オ-ライはあるか?
 これまで、いろいろな面から日本経済を見てきましたが、日本経済が成長路線を取り戻すためには、どうも、2つの条件が必要なようです。
繰り返しになりますが、
1、 GDPを使い残さないで、日本国内の経済活動で使いきること。
2、 デフレ不況の原因である円高を何とか阻止すること。
そして多分、「1」のほうをきちんとやれば、国際経常黒字はなくなるので、多分円高も止まるだろう、ということです。

 今、円が$1=¥110~120 という事になったら、デフレは止まり、主要企業は設備投資、研究開発投資、人材育成投資にカネを使えるようになり、雇用も増加し、定期昇給は着実に実施され、ベースアップすらも多少は可能になり、一部のエコノミストの大好きな「インフレターゲット」を現実味を帯びたものになるでしょう。

 問題は、毎年日本経済が(国債発行をしてもなお)使い残している10~20兆円を、誰がどのようにして何に使うかということです。
 使うことの出来る経済主体は、家計(消費者)、企業、政府しかありません。今までは、消費者も企業も使わないから、政府が使ってきていたわけですが、政府は借金が嵩みすぎて使えなくなっているのはご承知の通りです。

 望ましい順番から言えば、一番金を持っている家計がカネを使い、消費需要が増えて、企業が投資にカネを使うようになり、日本経済が縮み志向を脱却し、経済成長が始まり、政府はカネを使わなくて済んで、税金だけ余計入って来る。そして、財政のプライマリーバランス回復の方向も見えてくるという順番でしょう。

 正式にはそのための方法論を検討すべきですが、その前に、半分冗談で考えれば、政府の借金が嵩みすぎて、日本政府に対する信用がなくなり、PIIGSの顰に倣っていえば、円の価値が1~2割下落し、お蔭で円高デフレ は止まって、企業が息を吹き返し、雇用も増加、賃金も上昇、家計は将来に希望が持てるようになって消費を増やす、という「結果オーライ」方式も可能かもしれません。

 そのためには、もう少し財政赤字を放置するという「ウルトラC」 はどうでしょうか。首相が「消費税を当面あげない」といっているのは、それを狙っているのでしょうか。 


白川総裁の勇気ある発言

2010年04月23日 11時12分51秒 | 経済
白川総裁の勇気ある発言
 G20出席のためニューヨークを訪れている白川日銀総裁が、22日、現地のエコノミック・クラブで講演し、その際、質疑に答えて人民元切り上げ問題について発言したという報道がありました。
 
 一言で言えば、「アメリカは人民元切り上げの圧力を強めているが、人民元の切り上げだけではアメリカの貿易赤字問題は解決しない。」という趣旨のことを明確に発言されたという報道です。

 一部ビデオもあって、訥々としながらもはっきりした口調で、「日本がアメリカから円高の圧力をかけられた時のことを思い起こせば・・・」と説明を始めたようですが、ある意味では、アメリカのやっていることを、真正面から批判した発言であるだけに、勇気のいる発言だったのではないかと強く感じたのは私だけではないでしょう。

 このブログでも、プラザ合意 の問題と、中国の 人民元切り上げ問題は、何回も論じてきていますが、関連して、日銀は「為替問題には口を閉ざして語らず」といったことも書いてきました。

 今回の白川総裁の発言で、日銀が為替問題について、何を考えているのかが見えてきたことは、本当によかったのではないかと思われます。

 余計なことを付け加えさせていただけば、アメリカの貿易赤字はアメリカ人の消費活動を含む経済活動全体が、まともだった昔 に帰らなければ、何をやっても解決しない問題でしょう。そして、それがアメリカの経常赤字を資本収支でファイナンスしなければならないという問題を引き起こし、今日世界が迷惑しているマネーキャピタリズム、今の資本主義の歪みの大きな原因にもなっているということではないでしょうか。

 もうひとつ付け加えれば、白川総裁は、「バブル当時、物価が安定しているので、安心して金融を緩めすぎた(そしてバブルをひどくした)」という趣旨の発言をされたようですが、物価は金融をジャブジャブにしても、実質国民経済生産性以上の賃上げをしなければ上がらない(ホームメイドインフレ は起こらない)事がわかっていれば、そういう失敗はなかったはずだったと申し上げたいと思います。

 関連して言えば、今の中国は、不動産の価格高騰と、消費者物価指数の上昇の原因の区別がついているようなので、当時の日本より適切な政策が取れるのではないかと感じていますが、どうでしょうか。

 いずれにしても、アメリカが、双子の赤字を拡大してでも、消費を拡大させれば、「景気回復」と喜ぶようなマネーマーケットのビヘイビア、今日の利益は考えても、明日の世界経済のあるべき姿などは眼中になさそうな マネー経済理論はもう終わりにしたいものです。

経済成長を取り戻す方法 その6

2010年04月22日 15時37分26秒 | 経済
経済成長を取り戻す方法 その6 
 これまで見てきましたいろいろな面から感じることは、日本経済の低迷の本当の原因は多分、国民が政府を信頼しなくなったことから来ているのではないかということです。 
 政府が当てにならないから、自分の身は自分で守らなければならない、だから少しでも貯蓄をして将来に備える。 これが今の日本人の多くの心情ではないでしょうか。

 戦後の復興期からバブル崩壊まで、日本人は先行きに期待を持てるときには企業も家計も活発に投資・消費を行ってきました。1980年代には、日本人は、海外からはジャパンアズナンバーワンといわれ、自分たちに自信を持っていました。

 当時は、車は高級車から売れ(シーマ効果などという言葉がりあました)、列車の席はグリーンから埋まるなどといわれたことをご記憶の方も多いと思います。
 しかし、豊かさが本物だったのは80年代前半までで、1985年のプラザ合意による円高とバブル(二大失政)の時期以降は、過大評価された「円」と金余り故の錯覚の豊かさでした。

 80年代後半には、賃金は世界一高くても、物価も世界一高いから生活は必ずしも豊かでない、サラリーマンがいくら働いてもまともな家は持てない、といったひずみが膨張していました。そして1991年、バブル崩壊で奈落に落ちたのです。まさに政府の経済政策の失敗によるものです。

 そして次第に日本人は、政府を信頼しなくなってきたようです。家計は貯蓄をし、企業は生き残りをかけて技術開発に専心するのですが、生活は苦しくなるばかり、高度技術の製品も価格が高すぎアジアの低価格品に負ける、といった状況になり、出口の見えない「失われた10年・20年」となります。

 政府を信頼しなくなった国民は、新しい政治のリーダーシップを求めて、小泉改革に雪崩を打ってみたり、格差拡大という幻滅から今度は、民主党への政権交代を選んでみたのでしょう。
 しかし新政権も、あんなに素晴らしかった日本経済が何故こうまで落ち込んでしまったのか、どうすればここから脱出できるのか、国民に示せていません。

 このままでは、国民はまた幻滅し(すでに幻滅途上か?)、ますます防衛的になるでしょう。国民の「縮み志向」は、容易に止まりません。これでは経済活性化は夢のまた夢です

 今、国民が欲しているのは、成長経済に復帰するための具体的な方法を明確にし、解りやすく国民に示して、国民に協力を要請することでしょう。
国民がそれを理解してその気になった時、日本経済の復活は緒に就くはずです。


経済成長を取り戻す方法 その5

2010年04月19日 10時23分12秒 | 経済
経済成長を取り戻す方法 その5
 前回の計算で、消費税を今の4倍から6倍に増やさないと、GDPは使いきれないらしいという事は計算できたのですが、これは消費税率を20~30パーセントにするということです。

 丁度今の北欧諸国の水準がそのようなところです。日本の政府にそんなことが出来るかどうかですが、そこにはまた別の問題もあるような気がします。

 こんな大幅な消費税の増税は、多分一度には出来ないでしょうから、段階的にやることになるのでしょう。
そのたびに、消費者物価が上がります。年金や医療、学費や子育て支援がすぐに安心できる水準に改善されるわけではありません。かなりの時間がかかるでしょう。

 今までの経験で言うと、その間、日本人は、相変わらず将来不安を感じ続け、その結果、将来のために備えて貯蓄を増やす可能性があります。国民が貯蓄を増やせば、またGDPは使いきれないことになります。増税と消費縮小の悪循環のようなことが起こりそうです。

 それでは日本経済の縮小均衡は変わらないことになってしまいます。さらに、貯蓄超過は経常黒字になって、日本経済を最も苦しめている円高圧力も変わらないことになってしまいます。

 こんな事になってしまうのも、「失われた10年」(現実には20年?)の中で、日本人が、将来への自信と国への信頼とを見失ってしまっているからでしょう。

 経済は人間がやっていることですから、人間が何を考えているかで決まると何度も書いてきたのも、こうした現実を、経済理論だけで解決できるという考えが誤ったものだという事を理解して頂きたかったからです。

 プラザ合意以降、日本の政府も日銀も、日本経済運営について大きな過ち を続けてきました。円高を放置したり、極端な金融緩和をやってバブル経済とその破裂をもたらしたり、その結果、経済成長のないデフレ経済を20年も続けてしまって、しかも、国民に「これは、政府のこれこれの失敗が原因でした」「今後は失敗しないようにします」という説明をしていません。

 国民は、もう余り政府、日銀に信頼感も期待も持てなくなっているのではないしょうか。縮小均衡経済は、国民が政府を信用しなくなった 結果 なのかもしれません。


経済成長を取り戻す方法 その4

2010年04月16日 10時16分43秒 | 経済
経済成長を取り戻す方法 その4
 経済成長をするには、ヒト、モノ、カネ、技術が揃っていなければ巧くいきません。揃っているだけではなくて、それを人間が巧く使わなければなりません。

 日本は、資源がありませんからモノは外国から買います。モノはカネで買えます。技術はヒトの頭や腕にはいっています。つまり経済は人間と資本の働きで動くのですが、資本は自分では動きません。ヒトが動かして、原材料を買ったり、加工して生産設備にしたり、金融に回したりしてGDP創出のために使います。 結局、原動力はすべてヒトの働き 次第なのです

 ところで、経済成長というのは、生産したGDPを、巧く活用して(例えば、米の生産であれば、「食べる米」と「種籾」に分けて、元気な労働力と、豊富な種籾を用意し、来年はもっと収穫量が増えるように活用する)、翌年、より大きいGDPの生産(経済成長)を実現することです。

 そのためには、今年の生産物を十分に活用しなければなりません。たくさん食べて体力を作り、種籾もより多く用意して、初めて翌年の農作業は、より多くの収穫を可能にします。

 ところが、日本経済は、このところ、毎年生産したGDPを10~20兆円使い残しています。500兆円のGDPの2~4パーセントを使い残しているという事は、それだけで、成長の可能性を2~4パーセント減殺しているという事になります。
 同時にそれが万年経常黒字になって円高をもたらし、日本をコスト高の国 にしています。

 今、政府が考えなければならないの、この使い残し分を何とかして国内で使うように経済を刺激して、縮小均衡をとめ、円高圧力も弱めるという事です。 
そのための方法について、現状、大きく分けて2つの議論があります。
・  国債を発行して国が借金し、国が財政支出で使う(これまでの方法)。
・  増税(消費税)して国の収入を増やし、国が財政支出で使う(消費税増税案)。
いずれにしても、「国が使うこと」しか考えていません。そして、最初の方法が、すでに行き詰まりつつあるということで、2番目の増税案が浮上しているというわけです。

 単純に計算すれば、これまでの消費税負担(消費税5パーセント=10兆円強)に加えて、「これまでの国債発行水準(20~30兆円)」と「それでも発生していたDGPの使い残し分(10~20兆円)」の合計を一度政府の懐に入れて、財政支出拡大で使いきる、という構図です。

 合計で消費税何パーセントになるのでしょうか、現在10兆円の消費税を、40兆円~60兆円に増やさないとGDPは使いきれません。
 そんな増税ができるでしょうか、また、やったらどうなるでしょうか。


経済成長を取り戻す方法 その3

2010年04月13日 10時55分32秒 | 経済
経済成長を取り戻す方法 その3
 消費税論議が活発になっています。財政健全化は日本経済の長期安定的な発展に必須な条件ですから、大いに論議していただきたいと思います。

 しかし、最大の目的は、日本経済が長期に安定して発展できることで、財政の健全化はそのための手段の1つです。この点は重要で、ともすれば、「財政健全化が目標」と勘違いするケースもありえますので、十分気をつけるべきでしょう。
 この点はまた論じることにします。

 ところで年々縮小していく日本経済を、経済成長路線に引き戻すために何が必要かですが、先ず大切なことは、日本人が、日本経済・社会の先行きに自信を持つことでしょう。もちろん理由もない自信を持つのではなく、どういう社会を作ろうという目的意識 を明確に持つこと、そしてそれを実現するため行動する行動力を取り返すことでしょう。

 高齢化社会です。年金人口はますます多くなります。そういう人たちも、本気で日本経済・社会の前進のために行動しなければなりません。わたしも高齢者ですが、今の高齢者はかなり元気なので、いろいろな活動に参加できると思います。

 「未だそんな事やらなけりゃいけないの、もう、十分働いたから、のんびり暮らすだけでいいでしょう」 という方も居られるでしょう。 そういう方でも、簡単に日本経済の成長に貢献する方法があります。
 それは積極的に「消費」に参加していただくことです。要するに「出来るだけ金を使ってください」ということで、消費が増えれば、日本経済は活性化します。

 今までも書いてきました「 GDPを使いきれない日本」、「所得以下の消費・投資支出」つまり「縮み志向の日本」から脱却するためには、先ず消費の拡大が必要なようです。
 企業が国内で投資をしないのも、国内のコストが高い(円高で)ことと、国内の需要が小さいからです。 当面、この2つを「同時に解決できる可能性」があるのが、国内消費の拡大です。

 国内消費が盛り上がれば、企業の国内投資も動きます。それでGDPを使いきれば、経常収支の万年黒字はなくなり、円高は止まって 、『国内需要の活性化』と『円高によるコスト高』が一挙に解決できる可能性が出てきます。

 政府の『日本経済長期成長戦略』には、先ずこの視点が必要です。
 これは、アメリカの回復が、再び、所得以上の消費に引きずられる不健全なものになっていることの是正にも、回りまわって役立つ可能性もあります。


経済成長を取り戻す方法 その2

2010年04月11日 19時47分14秒 | 経済
経済成長を取り戻す方法 その2
 今回は「経済成長を取り戻す方法」の「その2」ですが、もう1度、「こうなったら成長を取り戻すことは容易でない」というシナリオを、そうならないことを願いながら、見てみたいと思います。

 今、日本経済は、その年に創り出したGDPを、消費と投資で使いきれないという縮み思考の縮小均衡型 で来ています。使いきれなかった分は、経常海外余剰となって外国が使っています。
 外国が使ったのでは、日本のGDPも雇用も増えませんから、それは、国内で使った場合に比べて経済成長のマイナス要因、雇用不振の要因になっているわけです。

 そこで、国内でもっと使おうという事になるわけですが、消費者も企業も消費や投資を増やしません。そこで、政府が国民から金を借りて(国債を発行して)、それを公共投資などいろいろなことに使って景気テコ入れをしているわけです。

 その結果が財政赤字の累積で、中央・地方政府の国民からの借金は、GDPの2倍近くに膨れ上がり、もうこれ以上借金は無理ということで、財政の「仕分け作業」などで節約を心がけますが、焼け石に水で、国債残高は膨れ上がる一方です。「もうダメだ」ということで消費税増税の検討に入ることになります。

 消費税を増税すれば、日本財政は少しは健全化するでしょう。その際問題が2つあります。
・ 1つは、増税で消費がさらに縮小しないかという問題です。国民の理解と対応が鍵です。
・ 2つは、日本の財政が健全になったということで、円高になる可能性があることです。
本当に重大な問題は2つ目の方です。

 国際投機資本がどう判断するかですが、もし「財政赤字がなくなったから、いよいよ日本は健全だ」と判断して円高になったら、これは大変です。これ以上の円高は日本経済には致命傷になりかねません。「 円高とデフレのスパイラル」で失われた10年が20年になり、30年になったとき、日本の生命線である技術開発への投資、企業の教育訓練への投資がますます先細りになるでしょう。
 今でも企業は技術開発投資の財源に苦慮し、教育訓練への投資は大幅に削っています。

 その結果、日本の唯一の競争優位だった「人材と技術力」がジリ貧になると、「縮み志向」の中で日本経済は「茹で蛙 」になってしまう危険性が極めて大です。

 それなら、茹で蛙にならないうちに、「日本は財政破綻だ」といわれて円安になり、その結果、デフレも終わって日本企業は大いに収益を上げ、経済は活発化し、内需拡大で縮小均衡型経済から脱出するほうが余程いいようにも思われます。
 因みに、$1=¥120なら、日本航空も何とかやれたのではないかと思ったりします。


2009年10月~2010年3月までのテーマ

2010年04月06日 16時09分10秒 | インポート
2010年3月
縮小均衡から経済成長へ   長期デフレの経済・社会への影響   プラザ合意後の日本の物価(長期デフレ)   日本経済低迷の発端はプラザ合意   日本経済成長路線復帰の条件    アメリカ・ギリシャと日本の違い   赤字財政と租税弾性値   正常な日本経済の形: GDPを使い切れば   最近の円高に思う  

2010年2月
縮小均衡経済からの脱出:その6   縮小均衡経済からの脱出:その5 経済力低下と為替上昇のパラドックスを考える   政府、日銀の物価に関する発言    2010春闘:定昇論議の問題点   縮小均衡経済からの脱出:その4   縮小均衡経済からの脱出:その3   縮小均衡経済からの脱出:その2   縮小均衡経済からの脱出:その1    カナダG7(2010/2)と金融規制論議   日本経済低迷の理由:その4、縮小均衡型経済   

2010年1月
日本経済低迷の理由:その3、2010春闘と円高   日本経済低迷の理由:その2、余談   日本経済低迷の理由:その2、円高デフレ   日本経済低迷の理由:その1、コスト高   日本経済成長戦略と ヒト、モノ、カネ    新しい経済社会態勢への芽   閣僚の為替レート発言に思う   新政権の経済成長戦略に期待する   人民元切り上げ問題 (2010年)   

2009年12月
2009年末、経済ニュース2つ   新たな「坂の上の雲」:脱化石燃料   坂の上の「雲」、舶来から国産の「雲」へ   消費者物価「マイナスは許容しない-日銀-」の意味   10万円消費拡大運動:国民のやるケインズ政策   貯蓄は美徳か       経済対策への期待、どこまで?   円高ストップ、介入の効果   

2009年11月
恐ろしい円高とデフレのスパイラル    デフレと円高:最悪状態の日本経済   デフレ、金融政策の限界   デフレ3悪    日本の貿易相手国、主役は米中交代   技術開発に注力する日本   EVAも付加価値概念?   経済学の役割   自然エネルギーと電力会社   始まるか?正規、非正規の賃金調整   

2009年10月
連合、賃金より雇用優先-2010年春討-   矢張り深刻なアメリカ経済の回復   仕事と賃金   脱化石燃料の夢:25%削減のその先    円高の影響は輸出入産業だけ?   「失われた10年」と労使関係   日本の経営者は何をしてきたか   戦後日本の労働運動   一味違う日本の労使関係


雇用統計は先行指標?

2010年04月05日 13時46分30秒 | 経済
雇用統計は先行指標?
 アメリカでは毎月、月初めの金曜日に前月分の雇用統計が発表されます。そしてこれが、ご承知のように、「株価」に影響するということで注目されているわけです。

 アメリカは日本より格段に株式投資に関心を持っている個人が多いそうで、デイトレーダーなどもたくさんいて、こうした政府の発表に注目しているのでしょう。
 そしてそれが、日本でも、関連記事、関連サイトなどで報道されているのをよく見かけます。アメリカの株価を見ていれば、日本の株価動向が解るからでしょうか。

 ところで、総務省発表の景気動向指数というのがあります。29の経済指標を集め、そのうちの12を先行系列、11を一致系列、6つを遅行系列という風に分けて、改善している系列数から悪化している系列数を引いてプラスなら景気は改善、マイナスなら景気は悪化、といった形で景気動向を判断するためのものです。

 株価は景気を先見するということで、東証株価指数は先行系列にはいっています。その他、機械受注、消費者態度指数、新規求人数(除学卒)などなどが先行系列にはいっています。
 一致系列は、鉱工業生産指数、大口電力使用量などを筆頭に有効求人倍率(除学卒)などが入っています。
 遅行系列の代表は法人税収入でしょうか、常用雇用指数、失業率(逆相関)はこの中です。

 もともと、雇用というのは景気がよくなることが解って、企業はようやく採用を始めるのだろう、ということで、雇用指標は遅行系列というのが一般的理解でしたが、上記のアメリカの傾向を見ると、非農業雇用者数と失業率(日本ではともに遅行系列)が株価を動かしているようです。

 これでは遅行指標(雇用動向)が先行指標(株価動向)を動かしていることになるわけですが、それはそれなりに意味のある動きではないでしょうか。
 現在のアメリカの景気は「消費支出」に大きく依存しています。クリスマス商戦などに代表されるように、消費が盛り上がれば「景気回復」と認識されるわけです。
 そして、消費を活性化させる最大の要因は「雇用における安心感」でしょう。

 今、日本経済は深刻な消費不振に悩まされています。実は、以前から関連の専門家の間では、消費動向は、賃金ではなく、雇用の安定と強い相関関係を持つことは共通認識です。
そうした中で、雇用動向が景気の先行指標(の先行指標)になっているという現実に改めて視点をあてることも大変大事になってきているのかもしれません。


経済成長を取り戻す方法 その1

2010年04月02日 11時00分57秒 | 経済
経済成長を取り戻す方法 その1
 経済成長を取り戻す方法を考える前に、「こうすれば経済は成長しない」という逆方向の検討を試みることも役に立つかもしれません。

 一番基本的な問題を挙げれば、それは「国民が経済成長への意欲がない」ということでしょう。中世といわれる時期には、何百年に亘ってほとんど経済成長のない状態もあったようです。戦後もかなりの期間発展途上国(developing countries)は経済成長せず 、先進国(developed countries)が経済成長するという時期がありました。

 どちらの時期も、想像するに、国民は、「現状を変えることなど出来そうもないし、方法も解らない」さらには「現状をそれなりに肯定して諦めている」といった状態だったのでしょう。

 それなりに豊かになった日本は、こうした、いわば「成長意欲枯渇の罠」にはまっているような気がしないでもありません。

 しかし、日本人はこれでしょうがないと思っているわけではないでしょう。何とかもう少しましな経済社会になって欲しいとみんな思っています。
 戦後世代 は、そういうときに、自分なりに行動を起こしました。焼け跡ビジネス、闇市から始まったのが日本の戦後の経済成長でしいた。
 お金の面で見れば、金融は常にオーバーローンで、蓄積以上に投資をし、外貨準備はぎりぎりの状態でした。

 今、日本人は巨大な金融資産を持っています。しかしそれを使って行動を起こすことは余りしません。政府が経済政策で何とかしてくれるだろうと期待して「政府を変えてみたり」しますが、余り効果はないようです。

 ここに第二の罠があるようです。それは「他力本願の罠」でしょう。政府にできることには限度があります。熱血先生の力でだめなクラスを立ち直らせるというのはTVドラマではありますが、現実には大変です。財政金融政策が本来の効果を持つのは、国民の意識 を変えられたときです。

 今日本国民は、こうした罠にはまって、リスク・テイクも他人(政府)に任せて、批判はしますが、行動は自己防衛専一になり、縮み志向で束の間の安寧を求めているようです。

 これで経済成長が実現できたら、そのほうが不思議だと思いませんか。