tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円安と企業の果たすべき役割(3)

2013年01月30日 12時22分17秒 | 経済
円安と企業の果たすべき役割(3)
 政府経済見通しが出ましたから、それの実現に邁進するという立場からその中で企業労使はいかなる行動をとるべきかを考えてみましょう。

 まず、前回、10円(約10パーセント)の円安で、日本経済はドル建てでいえば10パーセントほど縮小したことになると指摘しました。放っておけば、日本経済は円建てでは10パーセントのインフレになって、それで終わりです。しかし、そうはならないでしょう。それは、企業がそれをビジネスチャンスとして新しい取り組みを始めるからです。

 輸出企業の場合を考えてみましょう。ドル建てで輸出していたものは円建てでは10パーセント値上げしても売れるわけです。1ドルで売っていたものは80円だったのですが、今度は円に換えれば、90円になります。この10円をどうするのかということになります。
 利益に計上する、値下げして売り上げを伸ばす、R&D、設備高度化、雇用増、賃金引き上げ、下請け単価の改善などなど。現実にはこれららのベストミックスに使うでしょう。

 1ドルで輸入していたものは、80円だったのですが、今度は90円払わなければ買えません。単純に値上げする場合、90円払うんだったら国産品が85円だから国産品を買おうという場合、改めて輸入から国内生産切り替えもあるでしょう。
 国内生産でコストダウンで頑張ったが、輸入品に負けていたのが、輸入品より有利になる場合もあるでしょう。
 こうした場合、円安による円ベースの価格変化ををそのまま受け入れたのではトータルではインフレになって終りですが、企業は必ずこれをチャンスに生産活動を活発化します。円安で増加した円建ての付加価値はこうした生産活動の活発化、それによるGDPの増加になって、利益増、雇用増、賃金上昇を生み、実体経済の改善、経済成長につながります。

 これらはすべて、円高の場合と逆の動きですから、円高が如何に経済成長を阻害するかは自ずと解ります。残念ながら、円高の時に、この円高の働きを熟知して、政策を助言した経済・経営学者は居らず、円高の恐ろしさを誰もが過小評価していたというのが、失われた20年の悲劇を生んだようです。
 
 このブログでは、企業発展の原動力は「付加価値」、その成果も「付加価値」、増えた付加価値を使って付加価値をさらに増やすのが経済成長と述べ続けていますが、それを突如可能にするのが「円安によって与えられた付加価値」です。

 一言でいえば、円安によって自動的に新たに与えられた(円建ての)付加価値を使って、更に新たな付加価値を創造する(経済成長を実現する)、というのが、過去3回のテーマ「円高と企業の果たすべき役割」です。


平成25年度の政府経済見通しを見る

2013年01月29日 15時04分13秒 | 経済
平成25年度の政府経済見通しを見る
 昨日、平成25年度の政府経済見通しが発表になりました。全体から見て、新政権は、「日本経済再生にいよいよ本気だな」と感じられるものになっています。

 もちろん、行き過ぎた円高が20年以上も続いた長期デフレの後で、急激に円高を是正し、デフレ解消、多少インフレになってもいいから成長経済を取り戻すという「大技」をやるわけですから、簡単ではありませんし、誰も経験したことの無い事ですから「見通し」を建てるのも容易ではありません。

 すでに、「円安誘導は怪しからん」などという見当違いの発言も入り、まだ円高是正の成否も不明確ですから「とらぬ狸の毛皮の値段」論じるのも多少気が引けます。
 ただ、これで、日本の本気度を確りと示し、「何があっても今までのような理不尽に屈するつもりはない」という確固たる意思表示が読み取れなければならないというのがこの経済見通しの使命でしょう。
 
 その意味では。この経済見通しは「ほぼ合格」なのではないでしょうか。最下欄の「経常収支対GDP比」は、私は、思い切って±0でもいいと考えていましたが、災害復旧と原発処理に金がかかった昨年度の0.9から1.0パーセントへというのも、まあまあでしょう。赤字にして外国から借金するようなことはしない、という日本らしい所の表れと言えば、後は、それをどう諸外国が判断するかでしょう。

 一番上の、成長経済への明確な復帰、GDPの名目実質の逆転、デフレからインフレへの転換は、まさにこれが本来の目標ですからから。MUSTですね。
 10パーセント円安で、大まかに言えば、日本経済は「ドル建てで10パーセント縮小、それを、1~3年で回復とすれば「年に約々3パーセント」の成長ということですから、円建とドル建てのギャップを、2.7パーセントGDP増と0.2パーセントの物価(GDPデフレータ)上昇で埋めるという計算です。
 資源価格の影響もうける消費者物価は1パーセント上昇。これも妥当でしょう。

 就業者は27万人(0.4%)増え、失業率は0.3%下がり、生産(GDP)は名目2.7パ-セント、実質2.5パーセントの上昇ですから、当然賃金も上がるわけで、この数字は、多分、2パーセント弱で、閣議了解が閣議決定になれば、分配国民所得の内訳として発表されます。

 今、春闘の場で問題になっているのは、定昇問題が中心ですが、こうした成長経済の構図がはっきりすれば、当然、1人当たり雇用者報酬という形で賃金水準の上昇が政府経済見通しの中に出て来るわけで、本来これは労使の問題として、労使間で論議されなければなりません。

 こうしてまともな日本経済の姿が、枠組みだけでも見えてくるというのは、本当に久方振りで、これも基本的には、プラザ合意(1985年)以来の行き過ぎた円高が是正されるのが前提ですから。今の為替レートの決定方式も含む、マネー資本主義というものが如何に世界経済を毒しているかが知られるところです。


円安と企業の果たすべき役割(2)

2013年01月27日 23時22分45秒 | 経済
円安と企業の果たすべき役割(2)
 企業の役割は社会をより豊かにより快適にすること、といつも書いて来ました。有難いことに、円安が定着しそうな条件も出てきました。日本の貿易赤字の拡大とアメリカのオイルシェール産出による財政や雇用の改善、それに日本政府・日銀の確固たる姿勢です。

 個人的には、私は、異常な円高さえ修正されれば、放っておいても、日本企業は、日本経済・社会の修復に邁進すると思っていますが、ここでは、手を付ける順序なども含めて企業(企業労使)は具体的にどうすべきかを考えて行きたいと思います。

 改めて確認すれば、経済成長の中では、労使の努力によって、生産性が向上し、その結果、加付加価値が増加すれば、増加した付加価値は、努力した労使に、人件費と利益という形で分配されます。そしてその一部は税・社会保障負担として政府に納入されます。
 
 当面円安による「円ベースの付加価値増加」は約10パーセントです。10パーセントの経済成長と同じです。これは1~3年ほどの時間をかけて、売り上げ増、付加価値率の向上となり、円建ての物価体系を通じて、次第に国内経済に全般に均霑するのでしょう。

 今までは「円高で失われた付加価値」を、広く国民全体で負担してきたわけですから、今度はその逆で「取り戻した10パーセントの付加価値」を、広くみんなで分けることになるのは当然です。

 その分配の担当者は、申し上げてきたように、「企業の労使」です。そして政府が、税、・社会保障負担の増減という形で、後からそれに参入するわけです。
 しかし、いずれにしても主たる担当者は「労使」ですから、労使は大変に重要な役割を果たさなければならないというわけです。

 労働サイドは、まだそこまで、明確に認識していないかも知れません。しかし企業の付加価値増として実現されるものは、必然的に労使で分配を決めなければならないのですから、否応なしに、担当者になっていまいます。
 
 新政権がやらなければならないことは、はっきり言ってしまえば、円高にも円安にも振れ過ぎない「為替環境の整備」だけで、それでいいのです。現在の金融・財政政策は「円高の是正に役に立て」ば、それで十分です。うまい具合に早期に、$1=¥100辺りまで行ったら、後はその維持・安定に万全を期すという事でしょう。異常な円高は解消ですから。

 そして、円安で生まれる円ベースの付加価値増で、失われた20年の間に歪みに歪んだ分配構造の是正にいかに取り組むかが、これから始まる労使の課題です。
 ですから、これから大事になるのが、企業の労使がその自覚を共有して、十分な話し合いをする体制をきちんと作ることでしょう。

 その基本方針を全国の企業労使に示せるよう、経団連と連合の協力と真摯の話し合いがまず必要になるでしょう。


円安と企業の果たすべき役割

2013年01月25日 12時44分13秒 | 経済
円安と企業の果たすべき役割
 前回の最後の所で、「円安の恩恵を、この20年劣化を続けてきた日本社会の復元に使会うべきだ」という趣旨の事を書きました。この点を、企業が社会で果たすべき役割という視点から、もう少し敷衍したいと思います。まず、円高のおさらいです。

 円高とは日本の国内コストと価格が一律に「その分(円高の率)」上がるということです。グローバル化した社会では、一国の価格水準は、国際価格の水準にさや寄せしていきますから、円高で高くなった日本の物価は国際水準に向かって下がります。これが「デフレの正体」です。

 しかし、コストの7割ほどを占める人件費は、急には下がりません。例えばプラザ合意で2倍の円高になっても、賃金は「定昇維持」ということですぐには下がりません。しかし競争力のなくなった輸出商品は、輸出価格を引き下げざるを得ませんし、国内商品の価格も輸入品との競争で下がります。

 当然賃金も定昇ストップとか、ベースダウンでじりじり下がりますが、物価の下落の方が早いので、企業の利益は出なくなります。これが「円高デフレ不況」の正体です。
 賃金が下がらない分は人減らしで賃金コストを下げますが、日本では、正規従業員を非正規に置き換えることで平均賃金を下げました。これが「格差社会・就職氷河期の正体」です。

 まともな生活設計ができなくなる家庭が増え、家族の中で精神的・肉体的な問題の増加がみられる様になります。社会は歪み、犯罪や自殺も増ました。これが「社会の劣化の原因であり正体」です。

 こうしてプラザ合意(1985年)で2倍になった円高(物価高、コスト高)を国際水準に合わせるのに2002年までかかりました。これが「失われた20年の正体」です。
 こうした犠牲を土台に、日本経済は少し安定します。これが「いざなぎ越えの正体」です。もちろん劣化した社会の改善までには至りません。

 2007-2008年に、サブプライム・リーマンショックが起こり、また30パーセントを超える円高になりました。その後、ユーロ問題で円高の幅はさらに広がり日本経済・社会は「存亡の危機」に直面することになりました。

 事ここに至って、「なにかあると日本だけが円高を押し付けられ、犠牲を払うのはもう止めよう。国際投機資本による勝手な円高はもう容認しない。」と円高是正に取りかかったのが新政権です。
 さて、その緒戦の成果である約10パーセントの円安は、企業にとっては、10パーセントの生産性向上と同じです。さて、この突然の余裕を日本企業・日本社会はどう活用すべきでしょうか。その点への合理的なアプローチを考えようというのが次号からの課題です。

 という事になるのですが、まず大事なことは、また円高に戻って、元の木阿弥、捕らぬ狸の皮算用にならないように、政府が万全の方策を講じることでしょう。


1割の円安で何が出来るか(何に使うか)

2013年01月22日 08時55分30秒 | 労働
1割の円安で何が出来るか(何に使うか)
 現状、円安は行き詰まりの様子です。$1=¥90に爪先がかかったり外れたり、どうしたこの階段1段を登れるかという所でしょうか。
 口先と金融で、実体経済が動くには、それをよく理解した企業の具体的な行動がなくてはなりません。政府は、企業が本気で行動を起こすために何をしなければならないか、1月29日に閣議決定する来年度予算の中で、企業に伝えていかなければなりません。

 企業、そして国民は、「頑張れば頑張るだけ円高になって苦しむといった時代は終わった」と確信した時、必ず積極的な活動に入るでしょう。そうした「国際為替環境」を作るのは政府・日銀の役割で、それをベースに成長経済を取り戻すのは、企業の役割でしょう。

 いくらまで円安にすればいいのか、というのは、私も良く受ける質問ですし、テレビで(安倍総理のブレーンと言われる)エール大学の浜田教授も記者の質問を受け「$1=¥100」辺りと答えて言うのを見ました。

 企業の経営者、企業で働く方々の感覚からすれば、企業が 「これなら、国内に投資してもやっていけそうだ」 と思うところがまさにそこです。
 そして、日本の企業は、本来、従業員を最も大事にする伝統を持っていますから、多少無理をしても、出来ることなら国内で生産しよう、国内の仕事を増やそうと努力するはずです。そして、従業員・労働組合は、それに応える気持ちは確り持っています。
 
 為替レートが正常な水準に戻れば、何が出来るか、そして労使は何を優先すべきか、こうした議論が早く復活することを願うところです。
 経済学で図式的に言えば、雇用賃金の改善と言いう事でしょうが、今の日本では、もう少し、具体的に現実的なポイントを見ておくべきでしょう。

 それは、円高デフレ不況で、どこに最も皺が寄ったかを直すことから出発すべきでしょう。端的に言えば、企業はこの十数年、コスト削減のために、やってきたことの裏返しです。10パーセントの円安は、日本国内のコストが国際的には「10パーセント下がった、」ということです。これは順次、労使双方に均霑されるべきものです。
 まずは、非正規雇用の是正、非正規雇用は本来、正規雇用で働きたくない人のための制度です。就職氷河期問題、新規学卒の安定採用の復元、教育訓練費の徹底削減から新入職員の導入教育の徹底、安全から始まる現場・管理者教育の再興、生産性上昇に応じた賃金の引き上げの復活、・・・・。
 日本の安定した労使関係は、こうした問題への取り組みを、労使の信頼関係の下で話し合うことを可能にするでしょう。

 これらが出来て初めて、失われた20年の中で劣化を続けてきた日本社会が、以前の安定した日本社会に戻る体制が整うのではないでしょうか。


円安誘導は怪しからん?

2013年01月20日 15時15分27秒 | 経済
円安誘導は怪しからん?
 安倍政権の新政策に対して、円安誘導は怪しからんという意見が、海外の一部から出ているようです。

 これを聞いて即座にい思ったのは、矢張り海外関係というのはこんなもので、他国の頼みを「黙って」聞いていれば、結局は損ばかりさせられるという厳しい現実です。やはり日本は、問題を感じたらはっきり発言すべきだったのでしょう。
  例えば、プラザ合意の際、「あなた方のふしだら、不行跡(自家製インフレ・スタグフレーション)のしりぬぐいに、真面目にやってきた日本に犠牲を払えというのなら、その借りはいつかは返す覚悟をしてほしい、それが高くついても絶対文句は言ってもらいたくない」ぐらいのことははっきり言っておくべきだったのでしょう。

 サブプライム・リーマンショックの時にも、「おかげで日本は3割も円高になって、大変な苦労を背負い込むが、同じ被害を受けた中で、日本だけが、こんな円高を強いられる今の変動相場制は、主要赤字国の反省とともに、制度的にも、見直されるべきだ。日本としてはこんな制度のを放置を許すべきではないと思う。」程度の事ははっきり表明しておくべきではなかったのでしょうか。

 国際会議では発言のことをよく「貢献」と言いますが、こうした国際的発言こそが、マネー資本主義の蔓延する今の資本主義をまともな実体経済中心の資本主義に正していくための貢献と心得、確りと言っておかなければならなかったと思います。

 G20もIMFも、今の国際金融システムの在り方は、見直さなければならないとコミュニケをだし、FSBなどを作りながら、本音はアメリカをはじめ、赤字をファイナンスする必要を感じている国が多い所から、実行を伴うことには二の足を踏むという状況であれば、なおさら日本からの発言は大事だったはずです。

 現に$1=¥360から75円まで切り上げさせられるようなことになった国は日本だけで、その日本がとうとう、これ以上の円高は対応の限界を超えると言ったとたんに円安誘導は怪しからんなどというのは、他国の犠牲や苦労など感知していられないという今の国際関係を、如実に示したものと言えるのかもしれません。

 それを承知で、日本に、切り下げ競争は怪しからんというのであれば、「皆さんが切り下げをやらなければ、日本は決してやりません。 その証拠に(戦後アメリカが理想としたように)、固定相場制で行こうというのなら、いつでも大賛成です、とはっきり言いうべきでしょう。要所要所での明確な発言は是非やっていただきたいと思います。


デフレもインフレも心配

2013年01月15日 17時45分02秒 | 経済
デフレもインフレも心配
 報道によれば、日銀も2パーセントのインフレ目標を受け入れたようですが、こうした数字は、いわば気持ちの問題で、1パーセントならニコニコしていて、2パーセントになったら躍起になって抑えにかかるといったものではないでしょう。

 消費者物価についてそんなゲージで測るようなコントロールができ訳のものではありませんし、生鮮食品の分は除外しますとか、消費税引き上げの分は除外しますと言ってもそれほど正確には計れません。
 ただ、「長期に亘る」デフレとか「累進的に上昇する消費者物価」といった場合、出来るだけ早めに手を打つといったことを、十分心がけておくことは必要と思います。

 その為には、そうした質の悪いデフレやインフレの原因を熟知し、適切な判断を常に心がけることは大事でしょう。
 解り易く言えば、長期に亘るデフレの原因は殆ど為替レート(円高)にあり、傾向的インフレの場合は殆ど生産性の上昇を超える賃金上昇にあるといったようなことです。

 そういう意味でも、現状はまだデフレ傾向の方が強いと思われますが、$1=何円ぐらいデフレの傾向が消えるかなどは、差当たって論議の必要があるようです。
 多くの人が、それほど円安の進行が速いことに驚いているということかもしれません。
 とはいえ、こんなに簡単に円安になるのならもっと早くやればよかった、そうすれば、失われた10年はなかったと言えるようなものでもないようです。

 円相場も$1=¥90円の手前で足踏みしていますが、90円から3ケタ(100円)の大台を越える道のりはまだ手探りでしょう。
 インフレへの本格的な配慮はそれからという事でしょうが、今年の春闘でも、労働組合の態度は極めて慎重ですから賃金コストの問題は来年度は起きそうにありません。

 影響が出るとすれば、円安による輸入物価上昇の影響ですが、日本の輸入依存度はちょうど1割ぐらいですから、単純計算すれば、1割の円安が、そのまま全部国内価格に転嫁されたとしても国内価格への影響は1パーセントです。

 物価統計は輸入物価から、企業物価、小売物価、消費者物価まで、毎月発表されます。多くの人の目がそれを見れば、より真実に近いものが見え、本物の理解が進むでしょう。
 インフレにしてもデフレにしても、「一謙虚に吠える」ようなマスコミやミニコミの報道に惑わされるような事態が避けられれば、あまり心配するようなことはないと思っていいのではないでしょうか。


安倍政権、滑り出し順調

2013年01月11日 16時47分03秒 | 経済
安倍政権、滑り出し順調
 本当に有難いことに、新年になっても、日本経済は順調に動いているようです。それを感じさせるのは、何と言っても、株価の順調な回復です。 
前々から、日本の株価は諸外国に比べて出遅れているという事でした。世界経済がリーマンショックから回復に向かっても日本の株価は上がらないなどと言われていました。

 やれやれと思っている人は多いでしょう。自分の働く会社の株が上がってくれば、多分会社の業績が上がるという予想があるからだろう、となんとなく気分が明るくなるといった感じでしょうか。

 それにしても、これほど急速に株価が上がるとは、予想外という方も多いでしょうし、安倍さんが日銀に働きかけただけでこんなに違うのかと驚く人も多いでしょう。何か、もっと本質的な変化がどこかで進んでいるのではないか、と探っておられる方も多いと思います。

 多くの方が気づいておられるのは、昨年暮れから$/¥が大きく円安に振れているということです。口先介入だけでこんなに変わるは異常でしょう。安倍総理は自分の手柄だと言いたいかもしれません。確かにそれもあるでしょう。

 加えて、日本の貿易収支の赤字化もありましょう、消費税論議の混乱も、積極財政の展開による財政赤字の拡大もあるかもしれません、このブログも、(円高が)ここまで来たら、日本も当面黒字国であることを止めたらと言ってきました。

 しかし、まだ海のものとも山のものとも分からのないに、$1=¥90が見えて来ています。株高の原因が円安であることは明らかでしょうし、一方、アメリカでは新しい「財政の崖」がまた目前に迫っているようです。それでもドルは、対円でも、対ユーロでも上がり気味です。

 情報もデータも不十分ですが、tnlabo が注目しているのは、アメリカのシェールガス・シェールオイルです。ヨーロッパでは多くの眼がそこに行き始めているようです。やはりアメリカは資源国だったという事でしょうか。今、資源国の通貨は軒並み高めです。しかもこれは短期問題ではなく何十年という長期問題です。

 新政権も滑り出し順調ですが、頑張ってやり過ぎ、滑り転ぶことないようにして下さい。同時に日本の関係官庁も学者も経済団体も企業も、労組も、十分に情報をシェアし、この辺りを確り見極め、日本経済の健全な回復と発展のために誤りない舵取りをしていってほしいと思っています。


途上国援助か、先進国援助か

2013年01月09日 17時08分12秒 | 経済
途上国援助か、先進国援助か
 麻生財務相がミャンマーを訪問し、ミャンマーが日本に対して抱える5千億円の債務の一部(3千万円)を放棄することを表明、その上で、新たに経済特区の建設などに支援をすることを表明したという報道がありました。
 テレビに映った、ミャンマーのティン・セイン大統領をはじめ、関係者の方々の神妙に喜んだ顔が何となく印象的でした。

 日本はミャンマーの最大の債権国だそうですが、そうした報道も含めて思うのは、戦後一橋大学の小島清教授がアジアに対する賠償の経済論を展開しておられたころから、太平洋戦争についての贖罪の意味も含めてでしょうか、日本は、アジア諸国に対して、黙々と援助・協力を積み上げてきたのではないでしょうか。

 今、中国、韓国を別にすれば、日本がああした侵略戦争をもう一度やるとは考えない国の方が圧倒的に多いように思います。戦後六十余年を経て、そうしたイメージを積み上げてきた努力を、まさに「百日の説法、屁一つ」で台無しにすることがないようにしたいものだとつくづく感じるところです。

 話が最初から横道にそれてしまいましたが、ミャンマーのニュースに並んで、日本がESM債の定期継続購入を決めたことが出ていました。
 さらに考えれば、日本は、対アメリカでも最大の債権国の1つです。
 教科書的に言えば、米欧先進国への資本拠出は、リスクも少なく流動性も高い優良な投資ということになるのですが、本当にそうでしょうか。常識と事実は全く違います。

 さらに思い出せば、嘗てアンクタッドなど途上国援助論議が盛んだった頃、日本は、池田首相だったでしょうか、GDPの1パーセントを途上国援助に回すと発言していました。私の記憶ではこれは結局出来ていません。
 その後、カネが必要なのは、途上国ではなく、先進国になってきたようです。

 昨年12月に「CSRとNGR」を書かせて頂きました。CSRは企業の社会的責任、NGRは国の地球的責任(nation' s global  responsibility)です。
 大企業は、広く社会に役に立つ貢献をすべき、と同じように、先進国は、地球全体の経済発展や環境問題に多様な貢献をすべきでしょう。

 今、多くの先進国が、自分の赤字のやり繰りのために巨額の金を借り、途上国援助は随分遅れてしまっています。先進国の「心がけ」が問われているのではないでしょうか。


様変わりになるか、日本経済

2013年01月07日 16時07分25秒 | 経済
様変わりになるか、日本経済
 円安はさらに進んで、$1=¥88台まで来ました。ほんの短期間に、だれも予想しなかった水準です。
 アメリカはいたって冷静です。安倍総理に「訪米は急がなくてもいい」と言っているようです。

 国際投機資本は予想外の円安に戸惑っているのか、特段の動きはありません。円は未だ安くなるという思惑の方が強いようですが、こんなペースは続かないと思っているのでしょうか。

 $1=¥90というのは、ギリシャ危機でユーロが揺れ始めるときの水準です。世界経済が、リーマンショックからそろそろ立ち直りの一歩を踏み出すかといった時の水準です。
 日本経済の完全復活にはと問えば、リーマンショック前の$1=¥120、という声が返ってくるのかもしれませんが、あれからの厳しさに耐え、日本経済は、コスト低減と体力維持に死物狂いの努力をし、それなりの結果は出しているはずです。

 昨年11月半ばには80円を割り込んでいたことを思えば、この1か月余りで、日本経済は、ドルベースのコストでいえば、1割下がったということです。日本企業の国内コストは、人件費を含め1割下がったのです。もちろん国内経済としては、円ベースですから、何も変わっていません。

 しかしこれは、どこまで上がるかわからない円高の中で、コストの低減と、技術革新の進展という困難な事業を進めてきた日本企業、特に製造業にとっては大変な恩恵です。
 何としてでもこれを立ち直りのきっかけにすべきでしょうし、勤勉な日本人ことです、間違いなくそれは実行されるでしょう。

 世界経済の動きを大きく見れば、今まで、覇権国、基軸通貨国のアメリカが、いつも赤字で、世界中から何とか金を工面する事に汲々としていたのに対し、当面豊富になった国産エネルギーのお蔭で、今までのようにガツガツしなくても良くなったということであれば、これは世界にとっても朗報です。

 願わくば、これを機会にアメリカが万年赤字体質から脱却し、世界経済の安定要因に180度の転換を遂げて欲しいのですが、そこまでは望蜀でしょうか。
 それはひいては、資本主義自体が、マネー資本主義や金融工学という「富の生産より、富の振替えを優先する「鬼子」に牛耳られることからの脱出でもあるはずですが。
 いずれにしても円レートの先行きに十分のご注意をお願いしたいと思います。(円暴落、 国債紙屑などは、まだまだ先の話です。)


アメリカは財政の崖を回避できたのか?

2013年01月06日 11時18分23秒 | 経済
アメリカは財政の崖を回避できたのか?
 報道では、アメリカが当面財政の崖を回避することが出来たようで、その結果、先ずアメリカで株が大幅に上がり、日本でも1月4日の日経平均は大幅高になりました。
 しかしアメリカは本当に財政の崖を回避できたのでしょうか。

 回避できたと言っているのは、アメリカ自身で、自分でやって「出来た、出来た」と自分が喜ぶのは結構ですが、よそから見れば何も出来ていないとしか見えないというのが本当の所ではないでしょうか。

 もともと財政の崖というのは、いつまでたっても双子の赤字が続くアメリカが、いつかは、自分自身の手で歯止めを掛けないといけないと反省し、今回のように、「いついつ」と期限を決めて、財政赤字の縮減を実行する計画を立てたものでしょう。
 しかし1970年代以来、アメリカはそうした決心で自分の赤字体質を改善できたことは(ほぼ)ありません。

 政府が国民にそれを強いようとすれば、国民は政権党を変えてしまいますし、共和党も民主党も野党になるより国民に迎合する方を選びます。覇権国、基軸通貨国ですから、世界中から借金し、ドルをどんどん切り下げて、遣り繰りしてきました。ですから「今回は出来る」と言っても、結局中途半端です。今回も結果を見れば、そうですね。

 根っこは、稼ぐより余計食べてしまう「キリギリス体質」にあるのに、国民は、赤字脱出という大ジャンプを「背伸びしたままジャンプしたい」と言い、政府は、内心はジャンプのためには一度膝を曲げて、背を低くしなければといつも思いつつ、そうは言えず「アメリカが身の丈を縮めれば(自分の生産力に見合った耐乏生活をすれば)世界中に迷惑をかけるので、それはしませんということになり、世界の国々も、「対米輸出が減るのは困る」と言い、結局はアメリカは借金で赤字を糊塗し、当座を済ませるのです。
 だから今回も、また「すぐそこに新しい崖」が待っているなどと言われるのです。

 しかし、今回はよく見ると少し様子が違います。かなり強いドルの反発力が見られることです。日本から言えば円安です。急激に$1=¥90に迫ろうとしています。何故でしょうか。

 私にもまだはっきりしたことは解りません。しかし今起こっている諸要素の中で、1つ今までにない新しいのは、アメリカでのシェールエネルギーの生産増です。アメリカが世界最大の石油・天然ガスの産出国になるという意見もあるようです。

 FRB(アメリカ中央銀行)の中にも、ドル安維持のために金融緩和は継続という意見が多い中で、この円安、ドル高は異常です。安倍さんの口先介入もあるでしょう。しかしそれにしても・・・、異常なドル高ではないでしょうか。

 タイミングが合っているから、この時点で、正確な分析は不可能でしょうが、新しい要素が入ってきたことは明らかです。
 アメリカは背伸びしたままでも、シェールオイル・エンジンをつければ、ジャンプできる可能性が出てきます。日本には大変な朗報です。


インフレの前兆どう見分ける?

2013年01月04日 20時25分27秒 | 経済
インフレの前兆どう見分ける?
 20年もの間自国通貨の高すぎる評価のために(行き過ぎた円高)のためにデフレ基調の経済が続いた国がインフレになるとき、どれだけの時間をかけていかなるプロセスを辿るかなどは、正直言って、どこの国でも経験ありませんから、解るものではないでしょう。しかし経済学の常識から言えば、何か前兆はあり、それなりのプロセスがあると思われます。

 経済事象の現場を注視していれば、恐らく何か解るだろうと思います。それを正確に読み取り、遅滞なく手を打てば、そんなひどいことは起こらないで済むでしょう。
 プラザ合意のためにデフレになった時も、政府も日銀も、殆どの経済学者も、デフレの原因が円高であることをすぐには理解せず、多くの人達は「デフレだから円高になる」と逆の事を、実はついこの間までも言っていました。それでは手遅れも当然です。

 インフレは多分時間をかけて、ゆっくり遠き始め、ひどくなる時には、はっきりと原因が解るでしょう。多分問題は、先ず分析力・理解力、さらに洞察力の欠如、そして、政策展開の遅れなどに起因することになるではと思われます。 
 現実的には、そうした構造的なインフレよりも投機資本の動きによる心理的なインフレが先行する心配も必要なようで、投機資本の動きを牽制する方が大事になる可能性もあるでしょう。「悪質」な投機資本に対しては、為替管理が最も有効で、日本はそこまでやるぞということを平時からはっきり表明し、主要国の支持を確認しておくことも大事かもしれません。
 
 しかしそれも例えば、現状で、¥が、90円から100円くらいで行きつ戻りつしていれば、特に問題ないでしょうが、120円とか150円を越えて未だどんどん円安になるといった場合には要注意、といった程度の事でしょうか。

 日本は、資源の多くを輸入に仰ぐから、円安がインフレを呼ぶのが心配などいう言説を過大に評価し、心理的に慌てることの方が心配で、この辺は第一次オイルショックの時にはあんなに上がった物価が、第二次オイルショックの時には問題にもならなかった、というあの違いを教訓に、先ず騒ぎすぎないことです。輸入依存度と円安の数字から、正味の物価への影響などは簡単に算出可能です。

 日本経済が構造的なインフレを起こすとすれば、それは円安や輸入インフレが、「ホームメイドインフレ」、つまり賃金コストプッシュインフレに転嫁された場合の事です。
 これには、春闘が活発になり、生産性を超える大幅賃上げが毎年行われることが必須条件ですから、もう日本の労使には良く解っていることで、心配することはないと思われます。

 当面気を付けることは円安のペースということになるわけですが、差当たっては、円高に戻ることの方が心配ですから、落ち着いてよく観察することで十分でしょう。


明けましておめでとう御座います

2013年01月01日 14時21分02秒 | インポート
 明けましておめでとう御座います。本年もよろしくお願い申し上げます。

 今年が、日本経済が良い方向に向かう年になるかどうかは。新政権の舵取り次第のように思います。
 どこまで強く円高阻止、円安加速の決意をするか、万難を排してそのための政策を実行するか、でしょう。
 もうそれに、正面切って反対する人は、殆ど居ないのではないでしょうか。
 気がかりなのは、新政権が、それに、領土問題や、憲法論議を重ねている事です。
 経済問題は、平和を前提にして、初めて良いものになると思っています。
 さて、どんな展開になるのでしょうか。皆様とともに、確りと見守って行きたいと思います。
     tnlabo