tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

混迷深まるトランプ劇場、世界情勢、日本

2016年11月30日 11時22分09秒 | 国際関係
混迷深まるトランプ劇場、世界情勢、日本
 トランプ氏が次期大統領に決まっとき、「トランプ氏の勝利宣言の演説は、ビックリするほどまともなものでした」と書きました。その後はどうでしょうか。

 重要な視点は3つほどあるように思います。
第一に、トランプ氏本人の発言や行動が選挙戦の中でのものからどう変わっていくか、
第二に、共和党の主流派との関係がどのように収まるのか、
第三に、反トランプ・デモの今後、「アメリカの融和」がどう進行していくのか。

 さらに言えば、ロシア、中国、EU、日本などとの関係がどんなところに落ち着いていくのかという巨大な問題が控えています。

 こうしたものは全て第一のトランプ氏自身の「次期大統領」としての言動に大きく依存するところですが、このところ、トランプ政権の人事の進捗などから見ても、未だ収斂の様相は簡単には見えていないようで、さらに加えて、選挙結果の再集計問題などが出て、先行きに新たな混迷の要素も加えたりしています。

 おそらく、こうした混乱の終息にはかなりの時間がかかるでしょう。こうした問題が起きるのも、覇権国としての力に衰えを見せたアメリカがなお覇権国の地位にとどまらざる得ないような現在の世界情勢があり、そうした現実に対して、アメリカ内部からその負担に耐えかねるといった大衆の本音が噴出し始めたことによるものでしょう。

 「大国の興亡」か「覇権国の交代」か、言葉の適切さは解りませんが、今日のアメリカの状態がこうしたものである確率は高いと思いますし、もしそうであれば、問題はまさに巨大であり、短期間にどうこうといった問題ではないでしょう。
 まさに世界史の大きな転換が始まった所と理解すべきではないでしょうか。

 大事な事は、そうした難しい時代に、日本のような、ある意味では特殊な国(普通の国ではないという意味)がどういう選択をすべきか、でしょう。

 日本は決して大国ではありません、覇権などには全く縁遠い国です。小さな国土に多少多めの人口を持ち、世界に有用な経済発展や先進技術の開発に常に注力し、そうした面で多くの実績とノーハウを蓄積し、その結果、世界3位の経済力を持ち、しかも平和憲法を持って、戦争をしない国です。こんな国はほかにありません。
 
 そして、大事な事は、そうした特殊な国であることを世界から認められ、ある意味ではそれなりの評価を受け、多くの新興国が「日本を見習おう」としてきているような国なのです。

 アメリカは勿論、中国、ロシアも、勿論EUも、日本という国を世界で有用な国として確実に認識しているのが現状でしょう。
 勿論、現在の国際関係ですからえげつないことも随分あるようで、経済力、技術力をもつ日本を巧く利用しようとするところも沢山あるでしょう。

 勿論、日本自身も、その経済力・技術力で世界に貢献し、なかんずく途上国の健全な発展に協力し、共生、共栄を旨として、力を貸すことは国としての使命と心得ています。

 こうした日本が、現在の揺れ動く歴史の1ページの中で、「普通の国」になるのか、「特殊な国、日本」として、「日本らしい」世界への貢献を目指すのか、今、日本人はその問いに対する答えを確り持つことが要請されているのでしょう。

2017春闘の連合の賃上げ基準

2016年11月29日 11時04分10秒 | 労働
2017春闘の連合の賃上げ基準
 連合は来年の春闘に向けての基本方針を春闘共闘連絡会議 で決め、11月25日意発表しました。
 基本線はほぼ今春闘と同様で、当面、この方針が現状ではベストと考えているようです。
 「経済の自立的成長」「持続的な社会」の実現のために所得向上と消費の拡大を図ることが必要で、そのためには、総ての働く者の賃金の「底上げ・底支え」「格差是正」が必要という主張です。

 具体的な賃上げに関わる数字はベースアップ2パーセント基準、定期昇給相当分を加えて4パーセントという事のようで、昨年のベースアップ2パーセント以上(と記憶しますが)を、経済情勢を勘案多少緩めた感じす。

 賃上げについての重要なな視点として掲げているのが「サプライチェーン全体で生み出す付加価値の適正配分」との指摘です。
 そのためには、大企業中心ではなく、地場の中小企業も、また正規、非正規を問わず、さらに労働組合のない職場で働く人々含め、処遇改善、格差是正のために日本全体の賃金決定のメカニズムとしての春闘の意義を強調しているようです。

 かつて日本経済が、世界が羨む健全さで、 日本的経営、日本的労使関係が世界から注目されていたころ、当時の労使を代表する連合と日経連が、「春闘は年1回の全国規模の労使相互の教育と学習のシステム」と言っていたのをチラと思い出したりするような極めてまともな指摘のように思います。

 日本経済の全体としてのサプライチェーンが生み出した付加価値を適切に配分し、格差是正を図るといった表現は、よく言われる「連合は正規従業員の利害を代表する組織」といった批判に対するものでしょう。

 私の記憶では、この表現は、昨年の連合の春闘白書から使われ始めたと思いますが、昨年も、春闘の総括の中で、中小でも大手を上回る賃上げ率が見られたと評価していたことが思い出されます。

 ところで、連合としては、春闘の賃上げは自分たちの専管事項で、「官製春闘」などと言われるように、政府に主導権を握られては面目が立たないという気持ちもあるでしょう。税府とは無関係という立場をはっきりさせたいようです。

 矢張りこの辺りは政府の出しゃばり過ぎでしょう。政府の役割は別にあるはずです。 
 政府が受け持つのは、労使の配分の結果も受けて、国としての税制や社会保障制度による国民所得の再配分をどうするかでしょう。

 景気回復のためにと政府は毎年賃上げ率先奨励することに熱心で、本業ので国民所得の再配分を適切にして、財政が苦しいなら苦しいなりに、国民が先行きを安心できるような政策を打つという政府の本来の役割が(前回も取り上げましたように)ゴタゴタでは、何か政府のおやりになっていることが、本末転倒のように見えて仕方がないのですが・・・。

矮小化し混迷する年金論議

2016年11月28日 09時08分38秒 | 政治
矮小化し混迷する年金論議
 年金改革法案を巡って論議は紛糾、強行採決か会期延長とかでもめているようです。

 今度の法案では、今まで物価が上がっていれば、たとえ賃金が下がっても年金額は据え置きという事だったのですが、物価が上がっていても賃金が下がれば、それに合わせて、年金額を下げることになるようです。

 またマクロ経済スライドという、日本経済や人口構成の全体の動きとの調整のための制度を厳しく運用するという事です。
 この制度は、高齢化が進むために、保険料を払う人は減って、貰う人は増えますからその分支給額を減らさなければ制度がもないという事で、年金財政が悪化するのを、一定の減額率決めて、給付の減額で防ぐというものです。

 この制度も従来は適用を甘くして、デフレの時には減額を見送り、景気が回復したらその時に上乗せして取るようにしていたのですが、この度はデフレの時もきちんと適用しようという事です。ですからデフレの時は賃金スライドで下がり、マクロ経済スライドでも下がるというダブルの減額になるようです。

 そんなこんなで国会は混乱という事のようですが、考えてみれば、どちらかというと「朝三暮四」のような側面もあり、一番わかりやすい「日本経済が縮小すれば年金も減ります」「高齢化・平均余命の伸びで、払う人が減って受取る人が増えれば年金は減らさざるを得ません」といった、最も基本的な現実への理解の問題は論じられません。

 本来年金というものは日本経済を発展させて、その中から、社会保障費を確保し、年金財政を健全なものとして機能させていくというのが王道でしょう。
 円高不況で経済が成長しないような(失われた20年) 大失政をやり、今度はやっとゼロ金利で円安にして、景気が回復したら、株のギャンブルで年金資金を稼ごうとし、稼いだら喧伝し、損した時は「年金財政に影響を与えるようなことはない」(そんなことはあるはずがない)などと言い張って、基本認識から目をそらし、国民には目をそらさせてきたツケ回しに年金議論を矮小化させているのが現状のように思えて仕方ありません。

 GPIFの内外株式運用を大幅に増やすなどという事で年金財政をつなごうなどとしているから、どうせやるならもっと巧く運用してもっと年金を払えるようにしろなどという意識が出て、単純に「給付減額反対」などという事になるのではないでしょうか。

 「マクロスライド」などという言葉も、マクロというのは日本経済(GDP、国民所得),の事ですが、国会の年金論争の中で、日本経済の成長と、あるべき金利政策、それと年金の現状やあるべき関係の議論は聞いたことはありません。

 先ずは日本経済を健全な成長経済にしなければなりません。それが金利上昇にもつながり、自然と金積立金にもまともな利息が付くようになり、年金財政は基礎ができるでしょう。
 2%インフレだけを到達目標にして、貯蓄にはゼロ金利で、賃金が下がれば(多分非正規従業員の増加が原因)年金も下げる、などという小手先論争で事で済ませてはいけない問題なのではないでしょうか。

何故円安で株高、解ったようで・・

2016年11月24日 14時49分45秒 | 経済
何故円安で株高、解ったようで・・
 北から強力な寒気が南下したという事で東京も朝から雪です。東京で11月の降雪は50何年振りとか。都下国分寺では正午には場所によりますが、3~5cmの積雪でしょうか、 本格的な降雪に驚きます。異常気象はいろいろな形でやってきます。

 反対に、今日も株式市場は熱い様です。先週から連続して上げていて、「モウはマダなり」がいつまで続くのかわからない状態です。
 原因は言わずと知れた円安でしょう。トランプさんが次期アメリカ大統領に選ばれてから、なぜか円安。世界中が「アメリカ経済が強くなる」と信じているのでしょうか。

 それはそれとして、今日の問題は、日本の株価は「円安になると無条件に上がる」という現象がなぜ起きるかです。

 確かに輸出産業にとっては、ドル建てなら、黙っていても円安分だけ円建てコストは安くなり、利益は増えます。
 しかし、株価が上がっているのは輸出産業だけではありません原材料を輸入している電力やガスその他の輸入原材料依存の企業でも株価が上がります。

 円安は、輸出産業には有利で、原材料輸入産業には不利、というのが一般的な説明ですが、株価はそうでもないようです。
 この説明には色々なものがあるでしょうけれども、日本経済トータルで見ると、やはり圧倒的に円安が有利というのが本当の所でしょう。

 このブログでもかつて円高になって、日本経済が大変苦労したことは繰り返し書いてきましたが、円安では、当然その逆が起きるわけです。

 その理由というのは、円安になると日本経済のコストも価格(物価)もドル価格では一律円安分だけ下がります。輸入コストはドル建てで円安分だけ上がりますが、輸入は日本経済の14%(2015年)ほどです。

 10%円安になったとしますと、ドルで見れば日本のコストの水準は10%下がり、輸入物価の水準は同じ、円で見れば、輸入物価の水準は10%上がって国内のコスト水準は変わらずとなります。

 国内で輸入物価上昇によるコスト増加分を全部消費者物価に転嫁しても10%×0.14=1.4%の上昇ですがドル建てのコストの方は10%×1.0=10%下がります。
 この分は輸出産業の利益になり、また、輸入品が高くなりますから国産品が有利になり国内市場でも国産品のシェアが高まり多くの企業で売上や利益が増えます。
 外国人には日本旅行のコストも下がり、訪日外国人が増え、爆買いも発生します。

 問題は、円安による利得は、先ずは、ほとんど企業において発生し、国内で生活する日本の消費者には、輸入物資の価格上昇で電力、ガス料金、パンやうどんが値上がりするといった輸入インフレが懐に影響するという事になることでしょう。

 日本全体では圧倒的にプラスが大きいのですが、その配分は均等ではありません。逆に円高の時は、消費者は得をし、企業がひどいことになりました。そして次第に企業の苦しさが雇用・賃金にしわ寄せされ、日本中が大不況に苦しみました。

 安倍さんは、「だから賃上げを」というのでしょう。しかし、労使がともに動きません。現実の経済現象には 色々な原因があるようです。

この節、日本には柔軟な思考が大切

2016年11月23日 11時46分00秒 | 政治
この節、日本には柔軟な思考が大切
 円高が続き、日経平均も連日上昇で喜んでいる人たちもおられる状況ですが、このまま、世界経済も日本経済も順調に上昇を続けると考えるのはどうでしょうか。世の中いろいろ罠があり、そううまく行かないと考えておいた方が・・、といった気もします。

 というのも、安倍政権が無理してでも採決を強行しようとしたTPPが、アメリカでは全く否定されるといったことが現実になりつつあります。
 それだけではありません、ロシアとの領土問題の解決前進を目指しても、先日まで多少交渉余地を感じさせたロシアは、首脳会談が始まる段階にきて国後、択捉の海軍基地化、ミサイル配備方針を打ち出しています。

 国内で、衆参両院で過半数を取り、何でもできる体制ができたといっても、日本にとっての大きな問題はほとんどが外国との、それも世界の超大国との関係で決まってくるものでしょう。国内での過半数の意味は限られてきます。

 安倍さんの得意な言葉、「この道しかない」は国際場面ではなかなか通用しないのではないでしょうか。
 ならば国内でも、過半数や絶対多数を振りかざすことなく、日本として何が最も望ましいかを与野党協力して真剣に模索するといった柔軟な思考回路が必要になってくるように思われます。

 日本国内の与野党の立場の違いなどは、同じ国内でほとんどの利害を共にする日本人同士の問題ですから、アメリカやロシア、中国などとの意見の相違などとは比較にならない程度の問題でしょう。よく話し合えば一致点は見つかるはずです。

 今アメリカは、コスト負担に耐えかねて国の在り方を変えようとしています。ロシアや中国は民主制が徹底していませんから、国民の我慢を前提に中央権力に資金を集中し、版図の拡大や資源の獲得に狂奔しているようです。
 しかしその構図はいつまでも続かいないでしょう。国内社会や国民意識が進化すれば、いつかは財政破綻が必至と思われます。

 それに対して日本は、限られた日本列島の中でも、技術開発と生産性向上さえあれば、いくらでも豊かな国にもなれるという実績と信念を持っている国です。
 日本の政権が目指すべき最低限の仕事は、そのための安定した国際環境を維持することでしょう。
 国際環境が多様に変化する昨今、現政権には益々の柔軟性が要請されているようです。

日本の覇権機構も同様(コスト高)だった?

2016年11月22日 12時18分21秒 | 経済
日本の覇権機構も同様(コスト高)だった?
 前回、徳川幕府のことにちょっと触れましたが、日本の覇権機構といえば、やっぱり幕府でしょう。

 代々の幕府の命運を見て来ますと、グローバル(世界)でもローカル(日本)でも大きな違いはないのかな、基本要素は共通かな、などと思ってしまいます。

 鎌倉幕府から始まって、江戸幕府の成立までの過程は、武力による覇権争いの結果、覇権の交代が起きたようです。
 信長の天下統一願望、の真意はわかりませんが、秀吉になると、天下を統一して戦のな国を作るという視点が出てきたように、物の本には書いてあるものもあるようです。農民は武士の世界の戦争で苦労した背景があったのでしょうか。

 家康になると、その目標はかなりはっきりしてくるのではないでしょうか。太平の世の中をつくるという目標がかなり鮮明になっているように見受けられます。
 鎖国令はさしづめモンロー主義でしょうか。

 勿論覇権を維持するにはコストがかかります。幕府には各藩に対する徴税能力はありませんから。金(きん)の採れそうなところは天領にしたり、各藩の経済力が強くならないように、何かあるとお国替え、御取り潰し、所領没収などの法度(ルール)を作り、参勤交代で経済力を消耗させ、いろいろな工事を請け負わせて経済負担を強いるなど、かなり綿密に考えているように思えます。

 「入り鉄砲、出女」など言われたように、おひざ元への武器の移動や人質に類する女性の江戸からの脱出は厳しく取り締まるといった様々な知恵を駆使して、幕府の安泰、それによる平和の維持、を徹底しようとしたのでしょう。

 その成果で江戸幕府は長く続くことが出来たのは確かにそうだと思えます。
 しかし時代は移り、細々ながら、次第に外国からの情報も入り、各藩の意識、一般国民、特に下級武士階級などに多様な権利意識などが生まれると次第に幕府の覇権は浸食されてきたのでしょう。
 
 とどめは黒船来航かもしれませんが、経済・財政的にも幕府の相対的な力は落ち、いわゆる雄藩の主張は強まり、ついには大政奉還(覇権返上)になったのでしょう。

 都合の良いこと日本には、大政を奉還する相手がありました。しかし現実には大政を受け取ったのは、天皇ではなく、天皇を「錦の御旗」に掲げる「諸藩(雄藩?)の合議制」という形になったようです。
 徳川に代わる次の幕府ができるという形ではなく、全く新しい近代国家日本の誕生となったのでした。
さて、アメリカが覇権から降りたら、次はどうなるのでしょうか。

覇権国という役目は割に合うか

2016年11月21日 10時58分37秒 | 国際政治
覇権国という役目は割に合うか
 覇権国の歴史は16世紀ポルトガル/スペイン、17世紀オランダ、18・19世紀イギリス、20世紀アメリカというのが定説になっています。
 こう見てくると覇権国というのは、長持ちしないという事のようです。(日本での「覇権藩」徳川幕府は300年。結構長いですね)

 今、トランプさん言っている「アメリカは世界の警察官ではない」というのはアメリカが覇権国を降りようという意思表示、そして歴史の転換の始まりでしょうか。

 今までの覇権国の交代は戦争に負けるとか、より強力な国が現れとってかわるといった形だったようですが、今回は、まだかなり力のある覇権国が「割に合わない役割を担うのはやめよう」と自分から言い出したようなものでしょう。

 「それなら俺が代わろう」という国があるかもしれませんが、長い目で考えてみれば「やっぱり割に合わない仕事だからやめておこう」と考える方が賢明のように思います。

 かつては覇権国の力は絶大で、何でも思うように出来たのかもしれませんが、20世紀後半以降の世界は、世界中の人間も国も平等の権利を認められ、自由に発言できることになりましたから、こうした新しい世界を纏めるのは容易ではありません。

 アメリカは当初、それを背負う経済力、政治力、軍事力を持っていましたが、それを持ち続けるためのコストを背負いきれなくなったというのが現実でしょう。
 政治力、軍事力は別として、経済力でアメリカを脅やかしたトップバッターは日本だったのでしょう。アメリカは日本にいろいろな要求をしてきました。

 アメリカの貿易赤字の原因は日本だという事で、日米繊維交渉から自動車交渉、半導体交渉までいろいろあり、プラザ合意で円高にして日本経済を低迷させ、さらには金融資本主義を世界に広め、サブプライムローンの証券化で世界中から金を集め、それが破綻するとTPP(ISDS条項を内蔵)で優位性を図ろうとしたのですが、それもうまく行きそうにないので、TPPはやめ、世界の警察官もやめる、日本は自力で防衛せよ・・・、となりました。

 こう書くと多少僻みがかっていますが、世界の国々がそれぞれに平等の立場で主張を始めれば、覇権国といえども無理は通りません。権利・義務が平等になって、世界の面倒を見る役割だけがアメリカに残ったのでは、これは間尺に合わないでしょう。

 では誰が世界の面倒を見るのかという事になりますと、人間も国もみんな平等と定めている国連にその役割を背負わせるというのが本来の道筋でしょう。
 その国連を主導したのはアメリカで(あの頃のアメリカは理想主義で素晴らしかった)、未だ信用されていなかった枢軸国は危ないと(1944-1945年の事ですから)連合国中心で、世界平和を目指して、共同の利益以外には武力を用いない(国連憲章前文)ことも定めています。

 そう言いう意味では、覇権国が世界に面倒を見るという方式はもうやめる、これからは国連中心の時代という知恵を人類が本気で取り入れていくという時期に来ていると考えたい気がします。

インフレと賃上げ、為替レート、生産性の関係

2016年11月19日 10時20分37秒 | 経済
インフレと賃上げ、為替レート、生産性の関係
 前々回、前回でインフレと賃上げと為替レートの問題については、基本的なメカニズムを見て来ましたが、今回は最も大事な生産性との関係について整理しておきたいと思います。

 個人的には日本人は多様な「生産性向上」に優れた能力を持っていると私は信じています。そして前2回述べてきましたように物価(インフレ)問題に「真正面から」「直接に」対応できるのは、生産性の向上だけです。

 例えば、1970年代前半に起きた2回の石油ショックで、原油価格は数倍に値上がりし、第一次オイルショック直後はパニック状態になり、2回の石油ショックを乗り切るためには数年かかりましたが、後から見れば、日本はその間に省エネ技術を開発、蓄積し、経済成長率よりも石油使用量の伸びの方が小さいという実績を作っています。

 最近でも、中国がネオジムの値上げや輸出制限をした際、日本企業は、ネオジムの使用量10分の1で同じ磁力の出る磁石を 開発し、さらには、ネオジムなどの希土類を使わない磁石も開発しています。

 ところで、「生産性」というのは、一般的な定義にすれば、「産出/投入」ですから上の例は、石油の生産性を向上して石油コストを下げた例、次の例は、ネオジムという原材料の生産性を上げてネオジムのコストを下げた例、ということになります。
 1坪の土地で作物が余計取れれば、土地の生産性向上、1人の人がより多くのものやサービスを生産すれば、「労働生産性」の向上です。

 という事で、賃金も1人当たりですから、賃金が上がってもその分だけ労働生産性が上がれば、賃金コストの上昇は起きません。つまり、インフレも起きないわけです。

 という事で、輸入インフレには省エネ、省資源、つまり、資源生産性の向上で、また賃金インフレには労働生産性の向上で対抗できるという事になります。
 さらに付け加えれば、円高になっても円高の分労働生産性を向上すれば、円高によるドル建てのコストアップも回避できることになります。

 しかし、現実には、賃金上昇は年にせいぜい1~2%ですが、円高は10%ぐらいの幅で平気で起こりますから、容易に生産性向上で対応できる範囲を越えます。
 賃上げは国内の労使で話し合って合理的なものにすることは可能ですが、円高は国際投機資本の思惑で勝手に起きますから制御困難です。

 為替レートの乱高下で、特に日本のような万年黒字の国が円高傾向で苦労するのはそのためです。
 為替の安定が実体経済にとっては望ましいのですが、逆に国際投機資本は為替が安定していたら仕事になりませんから、猛反対でしょう。
 余計なことを付け加えれば、これが今日の世界経済を動かすマネー資本主義の問題点です。

円高の可能性がもたらす不安と賃上げ問題

2016年11月18日 11時16分06秒 | 経済
円高の可能性がもたらす不安と賃上げ問題
 安倍・トランプ会談が終わって記者会見がありました。より良い日米関係に向けてよい話し合いが出来たとのことですが、非公式会談なので中身には触れないという事でした。
 新しい日米関係が今後の為替レートにどんな影響を与えることになるのでしょうか。

 ところで、物価と賃金の関係に戻りますが、前回の終わりに、為替レートの問題が絡んでくると書きました。
 為替レートと賃金問題は関係ないように思いますが、実は、経済計算上は「直接の」関係があります。

 どういう関係かといいますと、例えば、10%円高になると、それはドル建てで見れば、日本の賃金も物価もともに10%上がったということになるという関係です。逆に10%円安になれば、ドル建てでは賃金も物価も10%下がるわけです。

 こう考えれば、 プラザ合意の円高で日本経済は大変苦労し、リーマンショックのさらなる円高で瀕死の日本経済になり、2発の黒田バズーカ( 異次元金融緩和)で円安になって、やっとまともな経済状態に回復したこともご理解いただけると思います。

 問題は、ご承知のように アメリカは万年赤字の国、日本は万年黒字の国です。円は世界中から信用されています。ですから、何かあったら資金は安心な円にして持っていようという事になって、円を買う人が多く、円高の可能性が何時も強いことです。

 経営者は常に円高を恐れて企業体質の強化(内部留保の積み増し)を測ります。消費者や労働組合も同じです。何時円高になるかわからない、賃金引き上げは無理できない、企業が倒産したら元も子もない、最大の防衛策は出来るだけ消費を切り詰め貯金に回すことだと考えます。

 そしてこの貯蓄志向が、経済計算では日本の黒字を直接に増やしているのです。これは勤勉で堅実指向の日本人の性格が反映したものともいわれます。結果は「貯蓄増→黒字増→(円高心配)→貯蓄増→黒字増」の悪循環です。

 それだけではありません、これに加えて、日本は超高齢化です。社会保障費は増え政府は民間から巨大な借金をしています。近い将来必ず増税になるでしょう。教育費も上がるでしょう。
 ですから、どこの家計も、貯蓄に熱心です。しかも貯蓄してもゼロ金利です。貯蓄の積み増しが必要です。結果は、 消費性向低下、賃上げをしても消費は伸びないという事になります。

 賃上げさえすれば景気が良くなるという思い込みがいかに合理性のないものかお分かりいただけるのではないでしょうか。

 貯蓄志向、消費不振の原因は大きく2つ、「先行き不安」と「 格差社会化」といわれています。おそらく誰もが実感できるところでしょう。
 今必要な経済政策は、この問題の解決に直接切り込むことなのです。このブログで繰り返し述べていますように、賃上げ奨励などとは全く違ったアプローチが必要なのです。

賃上げと消費者物価の関係の正確な理解を

2016年11月17日 15時16分32秒 | 経済
賃上げと消費者物価の関係の正確な理解を
 前回の最後の所でも一寸触れた問題ですが、賃上げと消費者物価の関係については様々な議論がるので、何とか正確な理解をしていただけたらと思い、書くことにしました。

 2017春闘についても、また安倍総理が「働き方改革実現会議」で労使代表に昨年並みの賃上げを要請し、特にベースアップ(定期昇給を超える賃上げ分)の4年連続を要請したようです。それだけならまだいいとして、さらに加えて、来春には消費者物価の上昇も「期待」されるので、賃上げに当たっては期待物価上昇率も勘案してほしいと発言したと報道されています。
 今の政府も日銀も、 2パーセントインフレがいいと単純に信じているようですからこうした発言が出てくるのかもしれませんが、矢張りこれはインフレに対する基本的な理解不足による発言というべきでしょう。

 今の経済社会では、 インフレの主要な原因は2つです。1つは海外物価が上がって起きる輸入インフレ、2つは賃金コストインフレです。(貨幣数量説は通用しません*注)

 このうち輸入インフレは国内経済政策では対抗できません。仕入れ先が値上げ通告をしてきたようなもので、その分は我社も値上げする(輸入インフレ)しかありません。値上げすれば、結局消費者が負担することになります。輸入小麦が上がったからパンもうどんも値段が上がったが生姜ないなというわけです。

 そこで消費者・労働組合が我慢しないで、物価が上った分を賃上げ取り返そうと賃上げをしますと、その分は企業にとって賃金コストアップになるので、企業はまた値上げをすることになり「輸入インフレ」は「賃金コストインフレ」になります。

 今度は、その「賃金コストインフレ」を賃上げでカバーしようという事になり、賃金上昇はエスカレートし「賃金と物価の追いかけっこ」になります。対抗できないものに対応しようとしても不可能です。

 かつてはどこの国でも、こうして「賃金物価のスパイラル上昇」が起きて国際競争力が弱まって不況やスタグフレーションに沈没するというのが現実でした。
 しかし今は先進国ではインフレが起きません。これは、賃金の安い途上国から安い物が入って来るので、インフレにしたら、高い国産品は売れなくなり勤めている企業がつぶれて挙句は失業ですから労働組合も無理な賃上げをしないからです。

 これが今、先進国ではインフレが起きず、インフレの起きているのは賃金の割安の後発国だけ、という実態の原因です。

 もし、安倍さんの言う事に労使が賛成して、物価上昇分も賃上げでカバーするような賃上げをしたら、今の世の中どうなるか是非考えてみてください。

 さらにこれには為替レートか絡んできます。この問題は次回にします。

注)紙幣を沢山刷って市中のお金をジャブジャブにすれば物価は上がるという説、物価はモノとカネの量的関係で決まるからお金の量を2倍にすれば物価は2倍なるとする。

トランプ効果、円安、株高、さて賃金問題は?

2016年11月16日 16時50分52秒 | 経済
トランプ効果、円安、株高、さて賃金問題は?
 先週から今週にかけてマネーマーケットは大賑わいです。 アメリカ国内の反トランプデモも次第に収まるのでしょうが、市場は「偉大なるアメリカ」を先取りして、ドルは独歩高の気配、NYダウは連日史上最高値更新の様相です。

 お蔭様で日本企業にも、日本経済にも好影響があるという事でしょう。さしあたって何はともあれ、円安とNYダウの上昇とあれば日経平均も連日の上げ、明日のトランプ・ 安倍会談の結果ではどうなるのでしょうか。

 安倍さんも、会談が上手く行かなかったとは言えないでしょうし、初対面ではお互い尊重しあうでしょうから、その後の展開がどうなるか、歓迎と不安の交錯するところです。

 現実に決まっているのは、来年1月トランプさんがアメリカの大統領になるという事だけで、どんな政策が展開され、アメリカ経済が如何なる方向に進み、日本経済がいかなる影響を受けるか、未だ中身は何にもわからないというのが本当の所でしょう。

 すべては想像ベースの予測、それに発する思惑というのが、現在の状態です。常識的に考えればあまりはしゃぎ過ぎない方がいいという事のように感じてしまします。

 確かに円安は日本経済にとって大きなメリットですが、それもマネーマーケットの思惑の中での話で、トランプさんの今迄の発言の中には、日本にとって厳しいものも沢山ありました。

 安倍さんが会談から帰ってきて何を言われるかわかりませんが、一番気になるのは、すでに言い出しているように、来年も積極的な賃上げが望ましいといった、従来路線の一層の強調です。

 消費支出の不足が、日本経済の成長力のブレーキになっているのはその通りですが、今迄のアベノミクス路線のように、「消費喚起には賃上げしかない」といった思い込みがさらに強くなって行くようなことになると、結果は望むところと反対になる可能性も出て来そうです。

 マネーマーケットは別として、実体経済を見る目は、是非冷静であって欲しいと、余計なことかもしれませんが、今のうちに要望しておきたいと思ったりしています。

GDP 2016/ 7~9月速報瞥見

2016年11月15日 12時02分46秒 | 経済
GDP 2016/7~9月速報瞥見
 昨日、内閣府から2016年7~9月のGDP速報が発表になり、実質GDPは対前期比0.5%の伸び、年率換算2.2%の伸びで経済成長は比較的順調といった報道がありました。

 消費不振のせいで、我が国の経済成長は、このところ緩やかな成長だったり足踏みだったりと、あまりさえない状況で、アベノミクスもこれまでかなどと言われていましたが、現実の日本経済は一応底堅く成長路線を維持しているように見えます。

 四半期統計の「対前期比」伸び率は、昨年の10-12月はマイナス0.4%と下げましたが、0.5%、0.2%、0.5%とプラスを維持して、低空飛行ながら着実に成長路線を維持しています。

 いつも見ているところですが、これら各四半期の「対前年同期比」、つまり1年前と較べてどのくらい伸びているかという数字を見てみますと、今年に入って、1-3月期、4-6月期、7-9月期は0.2%、0.6%、0.9%という数字になっており、だんだん上げ幅を拡大している様子が見られます。

 一応この数字からは低いながら順調さがうかがえますが、やはり気になるのは家計最終消費支出の不振です。
 今年の1-3月期、4-6月期、7-9月期は -0.3%、0.4%、0.0%で、ことしの7-9月期は、昨年の7-9月期に比べて伸びていません。


 では、今年7-9月期に、昨年7-9月期に比べて何が伸びたのか見てみますと、民間住宅7.1%、民間企業設備0.3%、公的需要1.0%、輸入が大きく減った(-0.6%)といったという事になっています。

 低金利による民間住宅建設、政府支出の増、資源価格低下による輸入の減などが0.9%の成長に寄与しているというのはでは、中身はあまり感心できないという事でしょうか。

 矢張り何とかして家計の消費行動を活発にしていくことが「安定的」な経済成長のための必要条件でしょう。
 7-9月の雇用者報酬は実質で3.0%伸びています。支出を抑えること(消費性向低下)の理由は、将来不安が最大の要因と言われます。政府が我々庶民の家庭の将来不安心理に手が打てていないというのが根本問題でしょう。

アメリカで最低賃金引き上げ競争か?

2016年11月14日 16時40分56秒 | 経済
アメリカで最低賃金引き上げ競争か?
 このところ、アメリカの最低賃金の引き上げが話題になっているようです。おりしも、トランプ次期大統領の登場と時期を同じくするようなことになってトランプ氏登場による株価の大幅上昇などと似た動きのように感じたりしてしまいますが、それとこれとはあまり関係ないようです。

 日本では、最低賃金は毎年公労使の三者構成の審議会で都道府県別に改定されていますが、アメリカでは連邦の最低賃金は大統領令によってきめられているようで、2014年までは2009年に決められた時間当たり7.25ドル(当時の1ドル80円では580円)だったようです。

 オバマ大統領は、物価上昇で大きく目減りしている状況を改善しようと2014年に、2015年以降時間当たり10.1ドルで、それ以降は物価上昇に従って引き上げるという大統領令を出し、それが動き出しているようです。

 アメリカの最低賃金は、連邦最低賃金のほか、州が決めるもの、市が決めるものなどそれぞれのレベルがあって、日本のように、原則として全労働者に適用ではなくて、仕事や企業規模によって、適用除外もいろいろあるようで、柔軟性もあるようです。

 州レベルや、特に市レベルなどになると、最近の報道のように時間当たり15ドルに引き上げるといった大幅引き上げの動きもあるようですが、勿論、2018年かけてとか2020年までにとか、中期引き上げ計画で景気が後退したらやらないといった、いろいろな形もあるようです。

 しかし報道などによれば、今後のアメリカ経済への期待もあって、何か市レベルの最低賃金などは引き上げ競争といった気配(マスコミ報道)も出て来そうです。
 もし労働運動などにも無理しても賃金上昇を積極化する気配が広がり、トランプ景気を先取りして、改めて過度な賃金上昇に波及するような動きが出てくる可能性を何となく危惧します(心配のしすぎ、杞憂であることを願いつつ)。

 このところほとんど沈静化していたアメリカの労働運動ですが、かつてその力を誇ったAFL・CIOがどんな動きをするのでしょうか。
 
 トランプ景気の先取りでNYダウは最高値を付けたりしていますが、トランプ景気はまだ絵に描かれただけで、それを先取りするのはかなり危険でしょう。
 これまでも自らの失態で世界に随分迷惑をかけてきたアメリカ経済です。「アメリカ・ファースト」「偉大なアメリカ」が同時に「健全なアメリカ経済」指向であって欲しいと思っています。

やっと「メジロ」の巣を発見

2016年11月13日 11時12分39秒 | 環境
やっと「メジロ」の巣を発見





 今年の8月21日、「 やっぱりメジロの雛でした」を書きましたが、その時は、一体どこに巣があるのか、全くわかりませんでした。
 「ハナミズキの葉が落ちるのが待ち遠しい」と思ったことが最後に記されていますが、もうその時期です。

 毎日、ハナミズキの落ち葉を「焚くほどは風の持てくる落ち葉かな」などといいながら、また「今は落ち葉焚きも出来ない時代か」などとつぶやきながら家内と交代で掃いています。

 葉っぱのフレディーの仲間が少なくなって、そろそろメジロの巣のありかが分かるのではないかと毎日探していましたが、昨日やっと見つかりました。
 久しぶりに真っ青な空になったので、青空に透かして端から端まで探して見付けました。

 早速その足で二階に上がり、ガラス戸も網戸も開けて上から見ましたが見付けるのに少し時間がかかりました。

 2012年の4月に初めてハナミズキの枝に小鳥の巣があることに気が付いて、「この巣の主は?」と書いていますが、その時の巣より少し小さいような気がします。しかし綺麗に丁寧に作ってあるなという感じです。

 写真を2つ並べましたが、最初の写真は肉眼で探している時の感じ、もう一つはズームで確り撮りました。

 庭の梅の木の架けた巣箱は、毎年シジュウカラとスズメが領有権争いをし、しかも雛の誕生に結びついていませんが、メジロは人工の巣箱には見向きもせず自然の中で自力で巣を架け、雛を育てています。
 鳥にもそれぞれの生き方があるんだなと、感心したり納得したりです。

安倍政権は変化に巧く対応できるか

2016年11月11日 14時42分50秒 | 国際関係
安倍政権は変化に巧く対応できるか
 安倍総理は、アメリカの新しい情勢に即刻対応し、17日に首脳会談という事になったとのことです。
 アメリカに大きな変化が予想される中で、その変化を演出する張本人であるトランプ次期大統領に早期に会うことはどの国のリーダーにとっても大切なことでしょう。安倍総理の即断即決は評価されるべきでしょう。

 トランプ氏と安倍総理の話し合いがどんな展開になるかは、多くの人がハラハラ・ドキドキしながら見守ることになりそうです。私自身も、いかなる日米関係が我々を待っているのか、さらには、いかなる展開がアメリカと国際社会の関係で生まれていくのか、アメリカの国民は如何なる対応、行動をとるのか、すべてが良い方向に動くことを念願しながら、確りと見守っていきたいと思っています。

 基本的には、トランプ氏の選挙戦の中での言動と本来のトランプ氏の人となり、さらに、トランプ氏の主張と共和党の理念の収斂過程、当面の問題としては、アメリカ社会の反トランプ意識の帰趨、などなどアメリカ自身の変化が如何なるものになるかが見定めなければならない問題ですが、安倍政権がそのあたりに如何に柔軟に、的確に対応しきれるかが大事なところでしょう。

 偶々国会でのTPP 問題が終盤を迎えていて、TPP反対が旗印のトランプ氏の勝利にも拘らず、採決を急ぎ、日本がまずTPP承認の意思を明確にし、態勢を整えて、アメリカに積極的に働きかけ、自由貿易のフロンティアを広げる先達をするといった意気込みのようです。

 従来のアメリカであれば、日本はよくやってくれると評価されるところでしょうが、どうもトランプ氏の立場は、やみくもに自由貿易を進めることはアメリカにとってプラスではないという現実論に依拠しているようです。

 アメリカが世界を支配する中では、アメリカ流を世界に広める貿易、資本取引、法律制度、会計制度などもろもろのアメリカンスタンダードでの統一がアメリカにとってベストの策で、それを目指すことが大切だったかもしれません。

 しかし、トランプ氏の中にあるのは、典型的には「世界の警察官であることをやめる」という表現に見られるように、無理して余計なコストをかけるからアメリカは貧しくなる、アメリカだけのことを考えれば、アメリカはずっと豊かになれる、という考え方があるのではないでしょうか。

 日本は、自力で国を守れ、アメリカに頼るのであれば、経費は全額負担せよという考え方もその中のものでしょう。日本も従来「思いやり予算」などという奇妙な名目でそれなりの負担をしているのでしょうが、これが「重い槍予算」になるかもしれません。
 これは、トランプ大統領のアメリカが今後、中国、ロシア、北朝鮮などとどのような関係を持つかにも大きく依存するでしょう。

 アメリカは覇権国を降りようとするのか、もし、覇権国が自らその座を降りようと考える場合何が起きるか、誰が次の覇権を持つのか、日本は従来「国連中心主義」を標榜してきましたが、国連中心という理想と現実の差が縮まるのか・・・、疑問は尽きません。

  安倍政権は「この道しかない」などと発言して世論から揶揄されることがありますが、TPPの問題などから見てもどうも柔軟性に欠けるところもあるようです。
 これからの難しい時代、一層の柔軟で巧みな対応が切に望まれるところです