tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

人生の3つの時期の変化と社会的調整

2022年10月31日 11時47分34秒 | 経済
日本人の平均寿命が世界トップクラスの長さになり、年金問題は国民にとっても政府にとっても深刻になっています。

これは、素直に、客観的に見れば、日本人の順調な平均寿命の延び、健康寿命に延びに対して、社会制度的な制度設計が追い付いていない事によるという事でしょう。
子どもが大きくなっているのに、これまでと同じ服を少し手直しして着せ、「うまく合わない」といっているようなものだと言えるでしょう。

過去の経緯から見れば、戦後、高校・大学への進学率の向上によって出生から就職までの期間が長くなり、子育ての費用が増えましたが、これは主として親の負担で、奨学金制度などで対応して来ています。法律や制度は余り関わりがありませんでした。

そして、今の問題は、引退の時期をどこにするかという事で、定年や年金制度と言った法律や制度が、日本人の寿命の延びによって合わなくなっているという問題です。

昔のように、定年はそれぞれの会社で決め、老後は退職金で、という事ですべて企業レベルで決まっていれば(今でも定年制のない会社は結構ありますが)、その辺りは民間の柔軟性で対応したでしょう。

しかし、政府がいろいろと世話を焼くようになり、定年制も法律が出来たり、公的年金制度も充実して、国民もそれに頼るようになり、次第に近代国家になってきたのです。
それによって国民生活は安定したというのが現実ですが、他方で問題も生まれました。

子供が大きくなったら年々衣服を大きくするような柔軟な対応、つまり日本人の寿命の伸びにおうじて柔軟に法律や制度を見直すことは極めれ困難な問題なのです。

という事ですから、問題解決の鍵は、当然解っていて、就職から引退までの期間を長くすることで、自分の蓄積も増やし、年金で対応する期間が一定以上伸びないようにしなければならないのですが、これが大変なことなのです。

結局のところ、定年制、公的年金設計という法律制度を、今日これからの日本人の寿命の伸びに合わせなければ問題は解決しないというのがこのブログの基本的な考え方です。

多分、誰もがそう考えているからこそ、政府も定年を延長したり、年金支給開始年齢を遅くしたりしてきていますが、前回指摘しましたように,55歳定年の定着期から2040年までに日本人の平均寿命は20年ほども伸びる(厚労省推計)のです。

あ、それならば、もう現状のつぎはぎはやめて、現状は勿論、これからの日本人の寿命の伸び(伸び率は大分低くなっていますから)も勘案、全く新しいサイズの服に着替えるのが良いという事ではないでしょうか。

それが出来て、はじめて国民の将来不安、老後不安が解消され、国民生活が安定し、日本社会全体が安心して将来に向かって頑張れるという、国民にとって基本的な必要条件整備が出来るという事でしょう。

ところで、このブログが主張するのは、定年年齢や年金支給開始年齢を何歳にすればいいとかいった具体的な数字の問題ではありません。

大事なことは、だれが中心になって、この問題に取り組めばいいかという事、もう一つは、それが適切に決まれば、日本経済社会は改めて大きな発展のポテンシャルを持つことが出来るのではないかという可能性を生む雇用労働市場についての指摘です。

次回はそれらの点について日本経済の明るい展望とともに見ていきたいと思います。

人生には3つの時期:転換点は2度あります

2022年10月29日 15時50分11秒 | 経済
3つの時期というのは(一般的なパターンですが)
① 出生から就職まで 
② 就職から引退まで、
③ 引退から人間卒業まで
人間卒業後は誰にも解っていませんので、ここでの転換点には入れません。

このブログは「付加価値」概念を中心にしていますから、この3つの時期を付加価値という見地から見ますが、「出生から就職まで」は、他人の生産した付加価値で生活します。「就職から引退まで」は、自分、家族、社会のために付加価値を生産します。引退から「人間卒業まで」は、自分の生産した付加価値の蓄積と他人の生産した付加価値で生活します。

最初の転換点、付加価値の非生産者から生産者への転換は、日本では「学卒一括採用」という形で行われるのが一般的で、これは、世界の中で見ても大変上手く行っている転換方式と言われています。

ところで、この最初の転換点について、「政府の働き方改革」の中では、新卒一括採用方式について再検討の要があるように言われていますが、学生も企業もこれを辞めようという人はあまりいませんから将来、自然に変化が起きるまで、政府は口を出さない方がいいでしょう。

という事で、ここで取り上げようとしているのは第2の転換点です。

第二の転換点については今まで、企業もいろいろと苦労して考え、政府も苦労して、後追いではありますが、何とか対応しようと努力して来ています。
しかし、ここ来て、後追いの対応では、対応しきれない状況が明らかになり、それに、日銀の長期のゼロ金利政策の継続で、その限界が見えそうになって来ています。

ここで、冒頭に掲げた「人生の3つの時期」をベースにして、第2の転換点について基本的な理念を確立し、抜本的で、状況変化に柔軟に対応できるような本格的なあり方を衆知を絞って作り上げておかなければならないように思われるところです。

それには、まず問題発生の根本原因を確り見極め、それに的確に対応できるような「基本設計」が必要と考えるのが望ましい本格的アプローチでしょう。

そこで先ず、事の起こり、原因を客観的に見ますと、平均寿命が延びてきたことが原因であることは誰でもわかります。

平均寿命の推移をみますと。もはや戦後ではないと言われ、高度成長の出発点になり戦後の日本の雇用制度が固まってきた1955年には男63.6歳、女67.8歳でしたが、厚労省による2040年の予想では男83.3歳、女89.6歳です。

つまり定年55歳という戦後の定年設計の背景は、当時の感覚ですから平均寿命男63.6歳といった状況だったのでしょう。それが今後は男83.3歳、女89.6歳を前提にする必要があるという事になっているのです。

つまり起きている問題は、③引退から人間卒業までの期間が20年ほど伸びているのです。そして、この期間は「自分の生産した付加価値の蓄積と他人の生産した付加価値」で生活する期間なのです。(ここではゼロ金利、貯蓄に利子がつかない事の弊害も出て来ます)

この平均寿命の20年の伸びに対し、政府は、雇用面では、定年年齢を60歳とし、65歳までの雇用努力義務を決め、5年乃至10年の雇用延長で「付加価値生産期間」を伸ばして対応を図ってきました。

そして、社会保障の面では年金の支給開始年齢を5年遅くして何とか辻褄を合わせようと努力してきた事はご承知の通りです。

然しこれではとても対応できそうにないという事は誰が見ても歴然でしょう。「③引退から人間卒業まで」の時間の伸び20年に対して、5年10年の調整では足りません。年金は部分積立方式ですから、ここでもゼロ金利問題は深刻でしょう。
結果として、いま日本が抱えている最大の問題の1つは、ここにあるという訳です。

しかし政府は、国民に厳しいこと言うと、政権からからずり落ちる可能性が高いという惧れから、問題解決には踏み込めず、言葉では「全世代安心の社会保障システム」「100年安心」などという響きのよい言葉だけを作って、何とか出来そうなふりをしているといことではないでしょうか。

「嘘は罪」という歌がありますが、嘘はいつかはバレます。老後生活に2000万円足りないのか、3000万円足りないのか、審議会の答申を、担当大臣が受け取らないなどというバレバレの隠し立てなどをしているから年金問題が政争の具になるのです。

誰がやっても出来ない事は出来ないのですから、国民にすべて本当の事を見せ、政府も(与党も野党も)企業も、国民も、みんなで力を合わせて取り組むしかないのです。

このブログも真面目に、解決に必要なことを追ってみるつもりです。

見えて来た「構造的賃上げ」の意味

2022年10月28日 17時06分14秒 | 労働問題
岸田総理が「構造的賃上げ」というのでなんだろうと思っていました。
賃金の解説書にも、賃金事典にもありませんし、賃金問題にも長く関わっている私自身も今まで聞いたことのない言葉です。

「新しい資本主義」という言葉が出て、「成長と分配の好循環」と説明(?)があった時も具体的にどんな「資本主義」を意味するのか解らず、多分こうではないかなどといろいろ忖度してこのブログに書いた覚えがありますが、未だによく解りません。

中身が解らないと肯定も否定もコメントが出来なくて困るのですが、「構造的賃上げ」については、先日こんな説明(?)がありました。

「年末にかけて新しい資本主義など、これまで議論してきたさまざまな政策を実行に移していくための正念場を迎える。実現に向けて最優先で取り組むべきは構造的な賃上げだ」
という発言に続いて、
「現代の経済社会はこれまでにないスピードで変化を続けており、非連続的なイノベーションが次々と生じる時代だ。成長分野に円滑な労働移動がなされるからこそ経済成長と賃上げが実現できる。人への投資、労働移動の円滑化、所得の向上の3つの課題の一体的な改革に取り組んでいく」

これで見ますと「新しい資本主義」の中身の実行の正念場だが、その中の最優先は「構造的賃上げ」で、新しいイノベーションがどんどん出て来るので、労働力への教育投資を充実、教育した人材を成長分野に移動させる。

つまり、再教育した人材を成長分野に円滑に移動すればそこは賃金が高いだろうから所得の向上(賃上げ)になる「再教育、労働移動、高賃金職種に転職」こそが「構造的賃上げ」の中身だというのです。

これが「構造的賃上げ」という言葉で言いたかったことで、新しい資本主義の最優先課題なのだと理解できます。

こうしてようやく具体的な説明が聞けたのですが、用語法が適切かどうかは別として、これなら「人間中心の資本主義」(資本が中心ではない)という事で、高度成長の中で日本がやってきたことそのものという事でしょう。(ただし「移動」より「異動」が一般的:注)

技術革新をベースに(当時は導入技術、今は自主開発)、人に投資し、産業教育による人材育成に注力、それによって高付加価値経済を実現して、産業・企業の成長、着実な経済成長を実現、結果は当然一人当たり国民所得を高める(構造的賃上げ)というかつての日本の姿を再現するという経済社会発展の王道を選択することで、国民も皆大賛成でしょう。

勿論、このブログも全面的に賛意を表するところです。
本来、日本の資本主義が欧米の資本主義とは違うという指摘は、日本の高度成長時代から一貫して言われて来ているところです。

日本は資本主義ではない、社会主義に近いなどといった意見も聞かれました。日本国内でも、資本主義というより「人本主義」と言った方がいいという意見もありました。

「新しい資本主義」が、資本が人間を振り回すような資本主義ではなく、あくまでも人間が中心の資本主義であることが明確になれば、岸田総理の思想体系も、余程解り易くなるでしょう。

そして、その日本が何を間違って、30年もの長きにわたり、まともな経済成長も出来ない状態に堕していたのかが本格的に問われ、今後の新しい発展の道への挑戦がは決まるでしょう。

かつての円高不況の二十余年と円高是正後のアベノミクスの8年余という長期不況を齎した経済政策の失敗を岸田政権がいかにして正し、あるべき日本の経済社会への道を開くか、岸田政権の正念場でもあるという事ではないでしょうか。
   
(注) 政府の言う「移動」というイメージは、A社を辞め、例えばデジタル関連のリスキリングの期間を経てB社で新職務に就職するというイメージが強いですが、日本の場合は、企業在籍で新技能の再教育を受け、企業自体が新分野に進出して新部門に「異動」という形が一般的で、より効率的と見られています。

物価と賃金問題について国民のコンセンサスが必要では?

2022年10月27日 21時13分21秒 | 経済
国際情勢に伴う原油やLNGの値上がりをはじめ、原発の停止問題も含めて、電力料金の大幅アップに対して、政府は対策として電力会社への補助金による表面的な価格上昇にならない方法を考えているようです。

欧米の10%近い消費者物価の上昇とは比較になりませんが、日本もこの所消費者物価の上昇傾向は止まらず、3%を越えて行きそうというので、政府は慌てているようです。

消費者物価上昇率を少なく見せるためでしょうか、マスコミに「生鮮食品を除く総合」の数字を書かせているようにしているらしいという政府ですが、電力料金の値上がりでまた消費者物価の上昇に拍車がかかるのを気にしているのでしょうか。

どうせ補助金は赤字国債で賄うのでしょうから(本格的税制改革という動きは見えません)国民は今払う代わりに将来負担という事になるだけでしょう。
そんなにして消費者物価の上昇を低く見せてみてまで、物価上昇を気にしているのなら、もっと他にやること(まず国民の意見をよく聞いて格差社会化を是正するなど)があるのではないでしょうか。

それに物価問題というのは、簡単なようで、結構難しい問題で、例えば、今の物価上昇の中で、①アベノミクスになってからの我慢の反動、②最近の輸入原材料などの値上がり、③円安による急激なコストアップ、さらには、④この際という便乗値上げ部分などが絡まり合っているわけです。

こうした原因を整理して、適切な政策を打たなければならないというのが政府の本当の役割ですが、日銀との関係も悪いし、原因別の影響などはとても解らないし、まとめて特定の業界に補助金を掴みで出して、消費者物価の上昇を低めに見せる事で済ますようです。

補助金はこの春、石油元売りに出しましたが、その後の決算発表で解ったのは、石油元売り会社の好決算で、中には史上最高の利益のところもありました。

電力の場合は政府の監督は確りしている(?)から、そうはならないことを望みますが、キチンと出来ているのでしょか。

各政党の担当者の討論会等でも、消費者物価の値上がりを、輸入原材料の国際価格の上昇によるものと円安によるものを見分けて対策を考えるといった物価についての理解は、私の知る範囲では全く見られません。
黒田日銀総裁も、いい加減愛想を尽かせて、あんな頑固な事を言っているのかと思ったりします。

さらに円安については財務省が困りに困って為替介入を繰り返しているようで、何兆円規模の介入を覆面でやっているようです。
アメリカは、最初は黙認していましたが、先日は「日本からは何も聞いていない」と言っています。

いくらか円高に戻っていますが、相手は国際投機資本全体ですから、それで消費者物価の上昇を抑えられると思っているのでしょうか。悪い円安と言っていますが、輸出企業は大幅の利益増加です。
政府の別の部門は、円安はインバウンド増加のチャンスと言って歓迎しています。

こうしたおかしなことが起きているのも、国際価格上昇、円安、国内物価、産業別の相違、どんな日本経済が望ましいのかなどの明確な理解も目標設定も。勿論コンセンサスもないからではないでしょうか。

ですから 多少物価が上がっても欧米よりずっと低いのに、何で慌てるのか、賃上げが少ないからというのなら、労使と相談すべきで、労使が適切な賃上げで合意する可能性を探る方がよほど適切な政策という意見のあるようです。

いずれにしても、欧米ほどの消費者物価の値上がりは起きないでしょうから、インフレといったも限度があります。もし労使が適切な賃上げ(5%程度の平均賃金水準上昇)で合意出来れば、2%程度の自家製インフレが実現して、日銀の金融政策の見直しの環境も生まれる可能性もあるでしょう。

日本の場合には、政府に解らない事、出来ない事は、「労使に相談」することが最良の道だと過去の経験は教えてくれているのではないでしょうか。

イタリア、不思議なほどに柔軟な国

2022年10月26日 14時57分49秒 | 文化社会
イタリアで右派連立政権が発足しました。
首相になったジョルジャ・メローニさんは、マスコミによれば、イタリア初の女性首相という事で、イタリアというお国柄からすれば、「えぇ、初めての!」と思われる方もおられるのではないかといった感じです。

そのイタリアでマスコミの前評判と言えばメローニさんは「極右」で、第二次大戦でイタリアを率いたムッソリーニのファシスト政権の流れをくむ「イタリアの同胞」党の党首です。

掲げる主張は「自国優先主義」、極右と極左は通じるところもありで、ウクライナ侵攻問題のある中で、EUとの関係、プーチンのロシアとの関係はどうなるのか心配されているなどと言われていたようです。

連立の相手は矢張り右派の「イタリアの力」党でかつてはベルルスコー二首相を出しています。

ファシストはナチスよりも問題があるとか、自国優先という考え方は、何かトランプさんに似たものを連想そうさせるなどとロシアのウクライナ侵攻のさなかでEUの結束に問題が出ることも懸念されるなどの意見もあったようです。

所が蓋を開けてみますと、こうした見方は全くの杞憂であったようで、EUに対してイタリアの意見を強く反映すると主張しつつも「EUはわれら共通に家であり、イタリアはその一員である」と明言、西側の一員としてウクライナ支援は当然」という立場を鮮明にしたようです。

EUも世界も安心という事になったようですが、イタリアというのは不思議な柔軟性を持った国で、嘗ては共産主義者であるベルリンゲルが「ユーロコミュニズム」を唱え、この思想は一世を風靡した感すらありました。

ベルリンゲルはイタリア共産党の書記長を10年以上勤め、共産主義者でありながら、共産主義を否定するキリスト教民主主義と妥協し「歴史的妥協政策」と言われながら連立政権を生むと言った柔軟性を示しています。

その親しみやすい風貌と柔軟な思想の展開で、イタリアばかりか世界の人気を集め、今に至る「ユーロコミュニズム」は世界にその記憶をとどめる言葉になっています。

何故イタリアで、こうした柔軟な、世の中を驚かすような、斬新、特異な思想が生まれるのかはわかりませんが、こうした柔軟性が、極めて教条的な極右の思想の中で生まれて来るというのはその培養地としての、社会的伝統・文化的背景といった何かがイタリアという国、風土にあるのかもしれません。

考えてみれば、イタリアは、ルネッサンス発祥の地でありますし、新しいものでも、古いものでも、教条的なものでもリベラルなものでも、それぞれに何か良い所があれば組み合わせてみようという超柔軟的な考え方が存在しうるところなのかも知れません。

時と場合によるのかもしれませんが、リーダーにはブレない事も必要ですが、時に柔軟性が必要なこともあると改めて考えさせられたところです。

公的な立場と本人の判断基準

2022年10月25日 13時32分08秒 | 政治
最近、マスコミを賑わす困った問題が沢山あります。

多くの人が、新聞やテレビを見たり聞いたり読んだりしていて、違和感を持ったり、不愉快になったり、不安や困惑を感じたりすることが、何か、だんだん多くなって来ているように感じる世の中になって来ているのではないでしょうか。

大はプーチンのウクライナ侵攻問題や、ごく最近の習近平の3期目政権就任とか、小は昨日報道された山際経済再生相の辞任までの紆余曲折とか、例を挙げれば随分いろいろあるように思われます。

こうした問題がなぜ起きるのかを考えてみますと、事の起こりは極めて単純で、問題発生の当事者である本人の判断基準と、より多くの人の判断基準が違ったものになっているという事なのでしょう。

民主主義というのは、「より多くの人の判断に従うのがいいのだろう」というのが基本になっているのでしょうが、人間が組織を作ったりそれを運営する政治という手法を考え出したりする中で、長い年月を経て、「やっぱりそれが良いのだとう」という事になったのでしょう。

ですから、ある人がより多くの人と違った考え方や行動をすると、社会的な違和感が生まれ、そのある人が公的な立場にある場合には、その社会全体の問題になるのでしょう。

本来であれば、公的な人になるのには選挙があって、より多くの人によって選ばれたのですから、公的な人の判断基準は多くの人のそれとあまり違わないというのが前提でしょうが。現実は往々そう巧くはいきません。

結果、公的な人がとんでもない間違いを犯すことも起こりうるわけで、プーチンはそれをやってしまいましたし、習近平は今後の行動が心配されるのです。

そうした現実が起きてしまった時、多くの人の考え方の方に引き戻す手段というのが、これは大変難しい事で、任期制とか弾劾とかでは不十分なようです。

現実には、世論調査や署名運動もあり、更にデモから革命、内戦までいろいろな手段が出て来るのですが、世論調査や署名運動、デモで解決する事はあまりないようです。

これは公的な立場で得られる権力や経済的利得が大きいので、その地位を手放さない事のメリットが、大きい事によるというのが多くの場合その原因のように思われます。
時にはその権力によって、世論を操作する事も可能になるというのが現状でしょう。

こう考えてきますと、この問題に対応する効果的な手段というのは公的な立場によって得られる権力や経済的利得をもっと小さくしていくことが、かなり大きな効果をもたらすのではないかと考えられます。

そんなことをしたら、公的な立場に立とうなどと考える人が居なくなっていまう、という心配もありそうですが、それこそが問題の根源という事でしょう。

世のなかには立派な人も大勢いるのです。損得などは眼中になくて他人のため、社会のために尽くそうという人は沢山います。
そういう人の中に、世界情勢から、国の内外の問題、より身近な人々の生活の問題まで、的確に判断できる人も大勢おられるでしょう。

公的な立場に立つことの本当の意味が、権力や経済的利得によって邪魔されることがない程度のバランスになった時、本人の判断基準は多分、大きく変わることになるのではないでしょうか。

その結果、民主主義の意味が、現状よりも、かなりの程度実効性を増すような社会になる可能性が大きくなるのではないでしょうか。

民主主義のポピュリズム化という問題についても、直接ではないにしても、国費による利益誘導で、票の獲得につなげるといったことが少なくなるという意味で、効果が期待できるかもしれません。

民主主義のトリセツ」にも、こんな視点も加えていかなければならないのかもしれないといった気もしてくるところです。

季節に背いて1輪だけの返り咲き

2022年10月24日 15時30分19秒 | 環境
この所あまり良いニュースはありません。
中国では習近平が、いよいよ独裁体制を固めてきたようですし、ウクライナはロシアが発電所などのインフラを狙ってミサイルで攻撃、人びとの日常生活の破壊を進める様相です。

国内を見れば、政府と日銀の金融政策の食い違いは放置され、政府は効果不明の円買い介入を繰り返し、野党は物価上昇に補助金要求ばかり。与野党とも、まともな政策はなく後追いパッチワークで混乱は深まるばかりです。

岸田総理もあまりの支持率低下に慌て、拉致問題や旧統一教会問題で世論に応えようとしているかに見えますが、本当にやり切る決意なのでしょうか。容易ではなさそうです。

天気の方も2日ほど秋晴れでしたが、今日はまた雨、百日紅やのウゼンカズラの枝を伐ろうと思っていましたが、木の葉も枝も濡れています。
   
枝伐りを諦めたところで気がついたのはオオムラサキの狂い咲きです。
この時期オオムラサキでは毎年ですが1輪から数輪の狂い咲きが見られます。もう今年もその季節か、それにしても天気が悪いなと思いながら今年は何輪かなと探してみましたが、残念ながら1輪だけでした。



狂い咲きが一般的な用語のようですが、小学唱歌の「冬景色」では『げに小春日ののどけしや、返り咲きの花も見ゆ』と「返り咲き」と言っています。
この方が言葉遣いとしては良いような気がしますが、如何でしょうか。

ネットで「狂い咲き」の原因を見ますと、花芽には開花抑制のホルモンがあって、寒さでそれが壊れて、暖かくなると花が咲く、寒暖の異常な変化で起きる、などという解説がありますが、これは寒暖の差などで一斉に咲くような場合で、何輪かだけ狂い咲きという場合の解説はありませんでした。



それにしても1輪だけ、完全な形で綺麗に咲いてくれるのは、何か面白くて大変有難い感じがするものですから写真を撮ったり、ブログに載せたりしたくなります。

習近平氏、力で異例の中国国家主席第3期へ

2022年10月23日 14時02分58秒 | 経済
今日は日曜日、お昼のNHKのど自慢が終わった直後。TV画面に臨時ニュースが出て習近平さんが中国共産党のトップに選出され、国家主席の三期目が確実になったと報じました。

かつて鄧小平さんが、毛沢東の晩年の失政を見、国家主席は2期までと決めました。さらに慣例の定年制があるにも関わらず、まさに力で3期目に就任という状況なのでしょう。

リーダーに力がることは大事ですが、その力をどう使うか、それが力のある個人に任せられてしまうという問題に、習近平さんはどう立ち向かうのか、ある意味ではこれは本人にも解らな問題なのかもしれません。

マスコミは権力の集中体制が人事配置を見ても、確りと確立されていると見ているようで、恐らく習近平さんの個人の考え方が、今後、全面的に打ち出されていくのでしょう。

毛沢東が突っ込んだ文化大革命という失敗は、当時の国際情勢から、当然ですが、中国内部の問題が大部分だったのでしょう。

しかし今の中国は違います。その一挙手、一投足が世界に大きな影響を与えることになる大国です。

リーダーの周辺の人事配置がチェック・アンド・バランスの効果を持つ場合は組織として安心できますが、多分中国の国内、国際的な政策についてのチェック・アンド・バランスは習近平さんの頭の中でしか働かないといった状況が心配されます。

これからは、習近平さん自身の中で、適切なチェック・アンド・バランスが働くよう、習近平さん自身が、自らの行動を客観性を持って観ることが出来るような真の大人になられることを願いつつ、この現実の今後を見守っていきたいと思っています。

経済分析における賃金の役割

2022年10月22日 14時46分28秒 | 経済
賃金の定義と言えば「労働への対価」という事になっています。人間が働いてその価値に応じて支払われる金額という事になるのでしょうか。

賃金を支払う側から見ればその通りですが賃金を受け取る側から見れば、それは所得です。所得というのは人間が生活をする原資です。

企業が生産しているモノやサ-ビスは、人間の得た所得によって購入され、それによって企業は存続しているのです。

つまり、賃金は企業にとってはコストですが人間にとっては所得で、その所得によって人間は消費生活し、企業はその消費をあてにして生産をしているのです。

これが最も単純化した「経済」の循環の形です。
こう見てきますと「賃金=所得」が、生産活動と人間生活をつなぐ役割をしていることが解ります。

ところで企業活動にはもう1つの側面があります。それは経済成長を実現するための資本の蓄積(=投資)です。成長経済には投資が必要になります。

そこで、企業活動の成果(付加価値)は、賃金と利益(資本蓄積=投資)に分えけられます。
ここでは、利益が少ないと技術革新投資が遅れ経済成長が遅れるという問題と、賃金が少ないと消費需要が伸びず経済成長が遅れるという問題があります。

技術革新投資で、生産性が上がるスピードと生産性向上によって賃金が上がり所得が増え、消費が増えるスピードのバランスが取れている事が求められます。
ここでも、賃金の上昇を見ていけば、そのバランスが取れているかどうかが見えてきます。

つまり、経済がいくら複雑になっても、賃金の動きに注目することによって、経済活動がうまく回っているのか、回っていないのかが見えて来るのです。

賃金の動きを見、経済全体の中で、賃金(=所得)の動きを中心に経済全体のバランスが取れているかどうかを見ていけば、経済の動きが順調なのか、不具合があるのかが見えてくるという事になるのです。

ではなぜ、「賃金」がそんなに重要なのでしょうか。
これは経済活動の原点にさかのぼってみれば解ります。

社会を作っているのは人間で、その人間が、日々の暮らしを「より豊かで快適なもの」にしようと経済活動をしているのです。
端的に言えば「人間が資本を使ってより多くの付加価値(GDP)を生産)」しようと頑張っているのがこの経済社会ですから、経済活動の目的はより高い賃金水準に端的に象徴されるという事です。

その前提が、より高い賃金水準が実現することが、人間の経済社会を「より豊かで快適」にしていくための必要条件という現実があるからでしょう。

生産活動と消費活動をつなぐ最も身近な「賃金=所得」を中心に経済を見ていくという視点を活用すれば、今の日本経済の閉塞状況の原因なども見えてくるのではないでしょうか。

この所このブログではその点を重点に、現状を分析しているところです。

消費者物価9月、上昇傾向は続きそうですが

2022年10月21日 11時26分25秒 | 経済
今朝、総務省から9月分の消費者物価指数が発表になりました。
例月通り消費者物価の動きを追いかけてみましょう。

マスコミでは前月2.8%の上昇だった日本の消費者物価上昇率(年間)が3.0%になったという見出しが多いようですが、実は8月から「総合」指数は3.0%で9月も同じという事です。

      消費者物価3指数(原指数)の動き

                  資料:総務省「消費者物価指数」
政府は少しでも低い方がいいという事でしょうか、この頃「生鮮食品を除く総合」の数字を好んで使うようですが、家計費では生鮮食品は当然入って来るのですから「総合を使った方が正直という事でしょう。
      消費者物価3指数の対前年同期比の推移

                       資料:上に同じ
最近は生鮮食品と言っても天候に左右されるよりはハウス栽培で灯油の値段次第という事もあるようで、大体「総合」の方が0.2%ほど高くなっています。9月は、グラフで見ますように、昨年の9月の「総合」指数がちょっと高かったもので、その分今年の「総合」の対前年同月比が低くなって、「生鮮を除く総合」と同じ3.0%になったという事です。

全体的な傾向を見ますと、上の原指数のグラフのように、上昇基調が続いていて、これからも原油やLNGの価格上昇があれば消費者物価は上がり続ける気配です。

更に、此処で気を付けておかなければならない事は、一番下の緑色の線「生鮮食品とエネルギーを除く総合」の動きです。

この指数はエネルギー価格の上昇は入っていませんから、日本の中で自家製インフレが起きているかどうかを示すものです。

昨年あたりは下がっていました。輸入原材料などの価格が上がっても、国内価格に転嫁するのは良くないという雰囲気で、輸入部門が損を被ったり、政府が補助金を出したりで、値上げを抑えて来たのです。

そうした雰囲気が続いた中で、もう我慢できない、値上しなければやっていけないという事で今年に入って、加工食品や調味料など何万品目をメーカーが一斉に値上げ宣言を始めました。

業界によっては、何年もの我慢を続け「もう限界」という事で上げていますから、この動きは次第に、対個人サービス、配達から理美容、その他、多様なサービス料金といった分野にまで広がって来ています。

ただ国際比較をしますと、欧米ではこの分野の上昇率が5~6%に達しているもが一般的ですが、日本は上がって来たと言っても年率1.8%程度ですから、未だ輸入品の価格転嫁は、遅れていて、今後は2%を越えて、上がる可能性はあるのではないでしょうか。

こう見てきますと物価上昇はまだ続くと思われますが、グラフのメモリを見て頂けば分かりますように、日本の場合は8%とか10%と言ったことにはならないという真面目な国民性ですから特に心配することはないように思われます。

心配するとすれば、こうした物価の上昇にきちんと対応するような「賃金の引き上げ」を来春闘にかけて企業がどこまで真面目にやるかでしょう。

そこで企業が、今迄のように賃金を出し渋ると、景気は一層悪くなるでしょうし、それを政府がカバーしようと一律10万円と野党の一部が要求するような補助金で辻褄を合わせようとすると、政府の財政破綻がますます深刻化するでしょう。

インフレが進んだとしても、外国より低い率であれば、日本経済に実害はありません。逆にあまりインフレ率が低いと、また外国から「円高にしろ」という要求が出る可能性が強まりそうで、その方がずっと日本経済にとっての危険は大きいでしょう。

連合の頑張り、経営者の従業員の生活を守る決断が期待されるところです。

今、日本経済再活性化のカギを握るのは連合では?

2022年10月20日 13時07分32秒 | 労働問題
戦後の日本は、物不足インフレから、世界に誇る高度経済成長、原油価格の世界的高騰の二度にわたる石油危機を世界に先駆けて克服する手法の実践、プラザ合意による超円高への対応など多くの経験を積み重ねてきました。

然しリーマンショックによる更なる大幅円高によって、深刻な挫折を経験、その後日銀の政策転換による異次元金融緩和で復活の条件を整えたものの、経済政策の失敗からその条件を生かせず、10年近い無策な低迷状態を続けてしまいました。

長期不況の中での異常な深刻さの体験がトラウマとなって、精神的に萎縮し、過去の日本らしいパフォーマンスの生かし方に迷うといった状況が経済・社会活動の中心的プレイヤーである労使双方に見られるように思います。

一方政治家・官僚においても、30年の不況の経験しか持たないリーダーや中堅が
殆どとなり、世界にはびこる民主主義のポピュリズム化の中で、国の発展という本来の目標より、当面の人気取り、選挙の票勘定中心という傾向が行動の原点になっているように思われます。

このままでは統計が明確に示している日本の国際的ランキング、世界における日本という国の必要度も下がり続ける可能性すら予想されます。

戦後の日本を見てみますと、政治もさることながら、民間の特に労使の努力が国を作って来たという点は明らかでしょう。

特に、インフレ、デフレ、雇用・賃金決定、経済成長といった問題は、殆ど、それらの現場を担当する民間労使の努力によって成果が生み出されて来たのではないでしょうか。

こうした歴史の経験から見れば、今の日本の閉塞状態打破するのは矢張り民間企業労使の努力が最も頼り甲斐のあるものではないでしょうか。

かつてのインフレ時代の経済の健全化には経営サイドの努力と労働サイドの協力が大きな役割を果たしました。

いま日本の問題は長期に亘る、顕著な消費不足であることは明らかです。
政府はこれに対し、インバウンドに期待し、外国人の購買力で消費(統計的には輸出)の増加を図ろうとしているように見えます。(コロナの第8波の危険を犯しても・・)

大幅な円安の中ではそれもいいでしょう。しかしそれが消費需要復活の経済政策の本命ではないでしょう。本命は、国内の1億2千万人の消費拡大でしょう。

この所の長期の個人消費の低迷には、大きく2つの要素がからんでいます。
1つは、賃金が上がらないこと、
2つは、消費性向の長期の低迷です。
幸いなことに、今年に入って、消費性向の回復が見られています。

これを奇貨として、来春闘に向けて本格的な賃上げ体制を実現する原動力になれるのは、「まさに『連合』の役割」という事ではないでしょうか。

このときを逃さず、連合が5%の賃上げ方針を打ち出したことには、このブログは「深甚の敬意」を表するところです。

願はくば、この5%が、「定昇込み」ではなく非正規の正規化なども含む「平均賃金の5%上昇」であって欲しいと思っています。

それで、労働分配率が多少上がっても、自己資本比率が多少下がっても、今後の労使の協力と努力で経済成長率が上がれば、容易に解決する問題でしょう。

またそれで一部に賃金インフレが起きたとしても、日本のインフレ率が欧米より高くなるようなことは恐らくあり得ませんので、実害はないでしょう。値上で調整は「可」です。

その結果、賃金インフレが2%になれば、日銀は約束通りゼロ金利をやめ、銀行預金に利息が付くようになるでしょう。

現状を見れば、全ては「連合」にお願いするよりないと、このブログは考えています。
連合のご活躍に期待します。

円安:補助金ではなく、基本的対応策を考える!

2022年10月19日 14時11分42秒 | 経済
前回は石油など国際商品の価格高騰による輸入物価高騰への本来の対応策の問題でしたが、今回は円安問題についてです。

今日現在、両方が一緒に起きていて、輸入物価が上がるという共通点もあるので、ごっちゃにされて補助金や給付金の話ばかりですが、本格的に整理するとどうなるかです。

先ず、前回指摘のように国際商品の高騰は、輸入国(日本)の富が輸出国(たとえば産油国)への一方的な流出でしたが、円安の場合は日本の富の直接の流出はありません。
(但し、輸入はあるが、輸出はないという国があれば、国際価格上昇と同じです)

日本の場合は、今回の問題が起きる前は輸入依存度、輸出依存度ともほぼGDPの10%で貿易収支もほぼチャラという事でしたから解り易いことになります。

前回と同じように100兆円GDPで輸出入がそれぞれ10兆円と仮定し、為替レートが50%円安になったとします。
第1の影響は、同じ輸入をしても15兆円かかります。その代わり同じ輸出をすれば円にすれば15兆円の売り上げになります。

輸入関連企業は大変で、輸出次関連企業はウハウハです。
これは企業努力の結果では無くて、代表的には日米の金融政策の結果です。
理論的には、輸出関連の差益の5兆円を政府か日銀にプールして、輸入部門の差損の5兆円の補填に充てれば、チャラになる性格のものです。(それが出来なければスムーズな価格転嫁と賃上げを必要な要件として認める、後述)

もう1つの問題は、50%の円安が日本経済にいかなる影響を与えるかです。インバウンドの数は急増するでしょう。国際競争力のなかった日本の商品が、国際競争力を獲得、輸出は伸びるでしょう。

黒田総裁が言う「円安になっているが、総合的には日本経済にプラス」というのはこの点を指しているのでしょう。
戦前、自国通貨が安い方が輸出競争力もつき、経済にプラスという事で、為替切り下げ競争があって、これが「為替ダンピング」「近隣窮乏化政策」と言われた所以です。

円安にはこうしてメリットがありますが、円高の場合は、この逆が起きます。日本はプラザ合意とリーマンショックで円を2~3倍に切り上げられ、世界一物価も賃金も高い国になって、30年間の円高不況に苦しみました。

2013~14年、黒田総裁の2発の黒田バズーカによって、円レートが80円から120円(50%)の円安になり、円高不況から脱出できたことは記憶に新しい所です。

この時は、日本経済の実力以上の円高を、実力に合った程度に修正した円安という事で、日本中大喜びでした。

しかし今回の50%近い円安は、同じ円安なのに政府の心配の種になっているのです。
物価が上がるのが心配だと言っても、黒田バズーカの時も2014年には2.8%上がっていますが誰も心配しませんでした。

今回は何が違うのでしょうか。多分前回は円レートの実力に合った水準への修正、今回は実力相応の所から異常な円安への動きだからでしょう。外国の目が気にしなるのでしょうし、物価上昇で実質賃金の低下、政権の人気低迷を恐れるのでしょう。

黒田さんは、いずれ物価上昇も止まる、円安は円高に流れを変えるだろうと読んでいるのでしょう。少し長い目で見ればこの方が当たりでしょう。

なにせ欧米は8~10%のインフレ、日本は3%のインフレですから。放置すれば「日本の物価は安すぎる。もっと円高にすべきだ」とプラザ合意の二の舞になることを恐れは十分考えられるところです。

この対策としては、輸入物価の国内物価への価格転嫁を徹底的にスムーズにすること(これは為替差益と差損の相殺のためです)、その上で、物価上昇と遅れに遅れている賃金引き上げについて、労使と十分な協議、コミュニケーションの徹底が必要でしょう。

折しも、連合が5%の賃上げ要求の方針を出しました。政労使のコミュニケーションの必要性が強く感じられるところです。

賃上げをして、多少インフレになっても、欧米諸国よりインフレ率が高くならなければ実害はありません。その程度のインフレにして、インフレ景気を呼び寄せようというのが、もともとの政府・日銀の「インフレ目標2%」だったのですから。

インフレ昂進の欧米、インフレにならない日本:何が違う?

2022年10月18日 21時49分49秒 | 経済
輸入品が値上がりしても、円安になっても輸入物価が上がって、その影響で、国内物価も値上がりします。今、アメリカやヨーロッパでは大問題です。

日本でも当然同じ影響があるわけで、やっぱり物価が上がっています。しかし、日本の場合は、アメリカやヨーロッパのように大きく上りません。
いずれもこの1年間で、アメリカが8%、イギリスが10%などと言いますが、日本は3%です。
この差は何でしょうか?これがまず1つ目の問題です。

もう1つの問題は、円安になっても同じように輸入物価は上がります。
輸入品の国際価格が値上がりした場合でも、円安の場合でも(円安と書いたので日本の場合という事になりますが)輸入物価は同じように上がりますが、日本経済への影響は違うのでしょうか?これが2つ目の問題です。

そんなことはもう解っているよと言われる方は物価問題の専門家ですからこれからの説明はお読みになる必要はありません。

実は、私もよく解らないので、書きながら、頭の中を整理してみたいと思っているのです。

先ず、GDP100兆円の経済で輸入依存度が10%の経済と仮定し、輸入物価が5割上がったとします。
これまで10兆円 で済んでいた輸入代金が15兆円になります。5兆円は日本のGDPの中から外国に払われますので、今迄と同じ100兆円のGDPを生産すうためには105兆円のカネが必要になります。

この増分5兆円は通常、輸入関連品目の値上げで賄われることになります。「済みませんが、輸入大豆が値上がりしたので豆腐が値上げになります」といった形です。

100兆円のGDPは105兆円になり、値上げで賄った5兆円(5%)は、物価上昇(GDPデフエータの上昇)という事になり実質GDPは100兆円で変わりません。

この5兆円の損を、国内の経済政策で取り返すことは出来ません。翌年から経済成長をし、1%成長なら5年、2.5%成長なら2年、5%成長で1年かけて取戻すしかないのです。

輸入品が値上がりした分だけがきちんと負担されればこれでいいのですが、アメリカやヨーロッパでは、輸入原材料が値上がりしたからと言って余計に値上げしたりする「便乗値上げ」、物価が上がったから賃上げもしろと言って余計な賃上げをするケースが一般的です。そうすると物価は計算上より大きく上ります。

今の欧米の状態は正にそれで、嘗て1970年代の石油ショックの時もそれが酷く結局スタグフレーションになって苦労したので、アメリカではFRBが早期に金利を上げてそうした動きを抑えようとして、後に触れます為替レートの問題に繋がります。

日本の場合は、全く逆で、輸入原材料が値上がりしても我慢して値上げをしない傾向が強かったので、上の例でいえば5兆円が回収できないので、利益が減り輸入も手控えられることもあり経済成長が名目105兆円、実質100兆円にいかないといった経済成長の阻害が起きたりします。

政府は心配して目立つ所(たとえば石油元売り)に補助金を出したり、色々な景気テコ入れ策をやるので国債発行が増えて、国民の将来負担が増え、財政再建などは不可能になりますが、それでも物価は上がらず経済成長の小さい国になります。

欧米の様な便乗値上げでおインフレ景気になる国と、日本のように、輸入品の値上がり分が値上げできず、不況と低成長、政府の赤字が増える国の両極端に分かれています。

ただ日本のような国は例外で、こんなに国民が値上げを気にする国は他にないようです。
ですから金融政策も、欧米は金利の大幅引き上げ、日銀は逆に金融は緩和一筋という逆方向になるわけで、日銀は理屈通りの事をやっているという事でしょう。

しかし、欧米の金融引き締めもすぐにはインフレ抑制に効かないように、逆の日本でも金融緩和がすぐにインフレには繋がりません。

その日本で、最近、輸入原材料高騰だから国内価格もその分上げたいという値上げの動きが起きています。これは正常化への動きですが、その中にはいくらか便乗値上げ的なものも散見されます。

上の例でいれば正確に5兆円分の値上げを正確にやることは不可能でしょうが、余り遠慮したり欲をかいたりせず正直に価格設定をすれば欧米と今の日本の中間の適切な経済に落ち着くと思います。

欧米の「行き過ぎ」、日本の「行かな過ぎ」の結果起きているのが「ドル高、円安」問題です。次回はその困った問題について考えてみましょう。

コミュニケーション不足の岸田政権?

2022年10月17日 17時12分57秒 | 政治
コミュニケーション不足の岸田政権?
最近岸田政権の独走振りが目立つようなった気がします。「聞く耳を持つ」を標榜して出発したと記憶していますが、聞くよりも閣議決定といった形が先行し専横が目立つように感じられます。

古い話で恐縮ですが、菅総理が突如「私が決めました」と言って発表した日本学術会議の推薦者6人の任命拒否問題などは、岸田政権になれば良識ある話し合いで早期に解決されると思っていましたが未だに宙ぶらりんのようです。

一方安倍元総理の国葬問題については、言い出した限りはというのでしょうか、国民世論との対話は皆無で強行、内閣不支持率が支持率を上回る事態となりました。

面倒な問題が起きた時こそコミュニケーションが必要というのが人間社会の基本でしょうが、面倒なことになるとコミュニケーションをしないというのが、この所見られる岸田政権の行動様式です。

国民に話しかけて好評だった「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」といった言葉についても、本人が考えたのか、官僚が考えたのか知りませんが、当初、自画自賛のアベノミクスより何か期待させるものが感じられたのですが、期待していた中身の説明はありません。

多分、古い概念の弱肉強食の資本主義ではなく、格差が拡大してしまった日本経済を、格差の少ないみんなの暮らしやすい日本社会にするための分配と成長の好循環が実現するような方向に変わるのだろうと思っていましたが、その後こうしたスローガンについての国民とのコミニュケーションもありません。

出て来るのは補助金政策ばかりで、補助金政策で格差を小さくするといった弥縫策が「新しい資本主義」や「成長と分配の好循環」ではないと思っても、それ以上の情報は国民に与えられていません。

経済成長を目指しての発言でしょうか、デジタル化やイノベーション重視は多く語られていますが、こうした問題は日本のアカデミアの総本山である日本学術会議との密接なコミュニケーションがなければ、まともには進まない問題でしょう。

身近な所では、マイナカードの健康保険証との24年統合問題が出てきました。国民の多くが無理だろうと言っています。もともとマイナカードは任意です。
余程国民の声を聴き良好なコミュニケーションを持たなければ無理のようです。

保健証でも運転免許証でもマイナカードは国民全体をカバーしないと誤差脱漏では済まない問題が起きるのではないでしょうか。
本気なら、もともと政府が持っている情報ですから納税証明なども含めて政府の持つ情報が全部入った個人別カードを政府が作り、暗証番号と引き換えに国民に配布するのはどうでしょうか。

更に、コミュニケーション欠如で相互理解のない大問題は円安問題における政府と日銀の関係でしょう。G20で財務大臣と日銀総裁がワシントンで同席しても、腹を割ったコミュニケーションがあったようには思われない両者の発言でした。

もう1つ、日本経済を健全にするためには来春闘に向けては、政労使の立場のしがらみを越えた人間的コミュニケーションが必須だとこのブログは考えていますが、今のところその気配もありません。

日本も民主主義の衣を纏った専制国家に変質を進めていくのでしょうか。

アメリカのインフレは鎮静化の可能性、問題はエネルギー

2022年10月15日 12時01分23秒 | 経済
この所アメリカの急激な政策金利引き上げの原因になっているインフレについて見て来ていますが。9月の数字が出て、何と無く鎮静化の気配が感じられるようです。

マスコミはアメリカも追随する日本も、インフレは続くから大幅金利引き上げも続き日米金利差から円安な一層深刻化するといった論調が多いようですが、中身を見ますとFRBの強烈な金利引き上げはかなり効果的で、消費者物価の上昇にはブレーキが効いてきたように感じます。

対前月比で5月1.0%、6月1.3%と加速してきた消費者物価上昇率は7月には0%となり、8月0.1%、それが9月には0.4%になったというのがインフレ再燃の危険性を感じさせたのかも知れませんが、中身は下図の通り

アメリカの消費者物価の中身の動き

                     資料:アメリカ労働省
対前月比の上昇要因になっているのは、低賃金が問題になっていた運送サービスとエネルギー価格がマイナス5%からマイナス2.1%になっただけで、自家製インフレを示すとみられる食料とエネルギーを除く全品目は0%です。

自家製インフレの最大の原因である賃金上昇率は、カンファレンス・ボードの調査では従来の2~3%(年率)が3.9%になっているという説明がありますが、これなら年率6.6%をさらに鎮静させる数字でしょう。

FRBが消費者物価をマイナスに下げようとしているのかどうか知りませんが、下げるのは景気に悪影響が大きいので、もう物価は上がらないという所で目標達成とするならば、現状を維持する政策に切り替えてのいいのでしょう。

問題はエネルギーですが、これは世界共通で、経済問題より国際政治問題です。また余りかは産油奥でもあります。金利政策でどうなるものでもない別問題としましょう。

折しもG20で自国の都合で基軸通貨国が$の独歩高になるような政策を取る事への警戒感の強かったようですから、次の政策金利の引き上げが注目されるところです。

余計なことを書きますが、エネルギー問題に絡んで、通貨価値を変動させる力のある国際投機資本というのは自分たちのキャピタルゲインの極大化のためには、実体経済の都合など考えないという事なのでしょうから、実体経済サイドの行動がよほど整合的でないと、脚を掬われるようです。

今の日本の円高も、国際情勢が落ち着けば、確実に円高に戻る¥を対象にして売り込んでいるのですからこれは固い商売なのだろうなあと考えてしまします。

変動相場制というのは世界中の富をマネーゲーマーの懐に集めるためのシステムではないはずだと思うのですが。