tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

縮小均衡経済からの脱出:その6

2010年02月27日 11時15分58秒 | 経済
 日本円が健全な通貨だと評価されていて、そのために円高になりがちだという事は、日本経済の健全さの表れかというと、必ずしもそうではないようです。皆さんも実感しておられますように、日本経済は何となくジリ貧です。

 ジリ貧の原因は、何かというと進む円高です。円高が日本人の節約を呼び、それが円高を促進するという悪循環、「経済力低下なのに円高」という パラドックスについては前回書かせていただきました。
 今のデフレも、もし円が$1=¥110ぐらいで止まっていてくれれば、日本経済はリーマンショックを克服して「いざなぎ超え」路線に復帰していたのではないでしょうか。日本経済復活の鍵は、出来るだけ円高を招かないような経済活動を行うことに尽きるでしょう。
 
 円高になりやすい原因は、当面2つ考えられます。
ひとつは、日本の物価が下がり続けていることでしょう。物価では優等生と見られるドイツの消費者物価指数は2000年~2009年の間に、14.4パーセント上がっています。その間日本の消費者物価指数は2.2パーセント下がっています。前にも書きましたように2006~2008年の3年間は円レートが$1=¥110~120だったので、3年間で消費者物価指数は2パーセントほど上がりましたが、2009年は、円高進行で大幅下落です。

 もうひとつは、日本経済が常に経常黒字 だからでしょう。これについては縷々書いてきました。

 ところで、この2つのうち、前者、消費者物価指数が下がっているというのは、現実の問題としては円高が原因です。円高と物価下落(デフレ)の悪循環という形です。そして、 政府、日銀の願望もむなしく、円高のもとで消費者物価指数を引き上げる政策手段はありません。

 ならば、取り組みの方向としては、日本経済の万年黒字体質を改めることが必要になります。もちろん、これをやれば、「必ず」円安になり、デフレがなくなると確言できるかというと、そうではないかもしれません。しかし多分そうなるでしょうし、他にまともな方法はありません。

 具体的には、繰り返して述べていますように、日本国内で創り出したGDP は、国内で全部使ってしまおうということです。使い残して海外に貸したりせず、自分たちで稼いだ分(GDP)は自分たちで、国内の消費と投資で使い尽くそうということです。

 これが出来れば、貯蓄超過は消え、貯蓄超過と経常黒字は同額 ですから、経常黒字も消えます。 貯蓄超過が消えた分だけ内需が増え、日本経済は縮小均衡から脱出出来ます。
 そして、万年黒字が止まれば、円高圧力も止まるでしょう、というのが狙いです

 それが出来た時、日本経済にどういう変化が起こるでしょうか。 そして、どうすればそれが出来るでしょうか。
 この2つが、そして特に後者が日本経済の最大の問題でしょう。


縮小均衡経済からの脱出:その5 経済力低下と為替上昇のパラドックスを考える

2010年02月25日 11時38分20秒 | 経済
縮小均衡経済からの脱出:その5 経済力低下と為替上昇のパラドックスを考える

 縮小均衡経済からの脱出:1~4までで明らかになってきたことは、失われた10年以降の日本経済の中での経済主体(消費者、企業など)の行動は、先行きの困難を見越して、貯蓄を増やしリスクに備えることが中心になっているらしいという事でした。

 縮小均衡経済からの脱出:1の最後の3行には、「不安が不安を呼んで、さらに消費を削って貯蓄に回す、消費が減れば一層不況になるという事で、結局は、経済活動の縮小過程です。将来のための貯蓄が、経済を縮小させ、将来の収入を減らす、さらに不安になって消費を切り詰める。今の日本はこんな縮小均衡経済のようです。」と書いてあります。

 こうして日本経済はジリ貧の様相を強め、経済的にも社会的にも世界のランキングを落とし、最近では日本経済の破綻を予言して、政府はデフォルト、ハイパーインフレ必至、もう日本株は買えない、などという意見まで日本国内では出ています。

 そうなっても、「円」はまだ円高でしょうか、多分「円」は暴落、金利暴騰という事になるのでしょうが、もちろんそんなことが一夜にして起きるわけではないでしょう。そのまえにIMFなどから種々の警告が為され、投機筋も不安に思い、そのプロセスで円安が進むはずです。
 円安が進めば、多分日本経済はそれだけで体力を回復するのではないでしょうか。現在でも日本産業の技術力は高く、問題はほとんどコスト高の一点に集中しているからです。

 今日本経済が閉塞状態なっている最大の原因は、「経済がジリ貧になりながら、円の価値は上がる」という、まともな経済学から見れば、まさにパラドックスと言うべき状態にあることでしょう。
 同時にこれは、政府の累積債務が世界のトップクラスの国の通貨の価値が常に切り上げを予想されるような状態にあるという点からもまさにパラドックスという表現も可能でしょう。

 最近マスコミに書かれるギリシャやポルトガル、一部の中東欧の国と違って、「円」は大変健全な通貨だと、国際的な金融マーケットでは認識されているのではないでしょうか。
 でも、本当に日本経済は健全なのでしょうか。


政府、日銀の物価に関する発言

2010年02月21日 23時22分40秒 | 経済
政府、日銀の物価に関する発言
 昨年12月に日銀が、消費者物価指数について「ゼロから2パーセントの間で、マイナスは許容しない 」という趣旨を表明していることに触れました。
 先日は、菅副総理から消費者物価指数は1パーセント程度の上昇が望ましい、と受け取れる発言が衆院予算委員会であったようです。

 マスコミによれば、菅副総理のこの発言はインフレターゲットを視野に入れたものということで、また、日銀の独立性は認める由も報道されていましたが、政府と日銀の関係どうこうは別として、言われていることはまさに「大差ない」もので、「何とかしてデフレを脱却したい、しかしインフレ率は最小限がいい」と言う切実な気持ちの表れといおうことでしょう。確かに誰でもそう思います。問題はそれをどう実現するかです。

 消費者物価指数というのは、為替レートと違って、要人が発言したからといって、全く動いてくれません。仰言られたご本人たちが、当面デフレはやむをえない、とお考えだからこそ、いわばこうした「夢」が発言になるという事なのでしょう。

  デフレ インフレ の要因については、このブログでも、戦後日本の具体的な経験について、それなりの分析をしてきましたが、一言でいってしまえば、デフレは日本の物価が国際価格に比べて高いから、それが国際価格に鞘寄せする過程で起こるのですし、一方、インフレは、輸入品の値上がりを原因とした輸入インフレか、国内コスト(主として賃金)の上昇によるホームメイド・インフレという形で起こる、というのが現実です。

 日本の消費者物価指数は1999年度から2005年度まで毎年マイナスでした。これはプラザ合意による円高(世界一の物価高)の調整過程でした。2006~8年度は0~1パーセント程の上昇に転じました。これは日本の物価水準がほぼ国際水準に鞘寄せ出来たからで、そのときの為替レートは$1=¥110~120でした(2005~7年、)。
 
 為替レートが消費者物価指数に影響するまでには半年から1年のタイムラグがあるという事でしょう。2008年から$1=¥90程度の円高になり、消費者物価指数は2009年から再び下げに転じました。

 これでは政府や日銀の「軽度なインフレ状態が望ましい」という願望は「夢のまた夢」という事になりそうです。

 こんな事になってしまうのも、何かあるとすぐに円高になるという「国際通貨の中で『円』の置かれた立場」、あるいは、国際経済の中で、「日本経済の置かれた立場」によるのではないでしょうか。

 結局こうした問題の根は、このブログで論じて来ている「経済力はますます低評価されているにも関わらず、常に円高の恐怖から抜けられない日本経済」という、「経済力低下と通貨価値上昇のパラドックス」にあるわけで、それを解かなければ解決はないのでしょう。
 引き続き何とかこの問題にアプローチしてみようと思います。


2010春闘:定昇論議の問題点

2010年02月18日 12時48分33秒 | 労働
2010春闘:定昇論議の問題点
 打ち続く不況の中での労使交渉に大変なご苦労をされている労使の担当の方や責任者の方々を差し置いて、余計なことを申し上げる失礼をお許し下さい。
 今春闘が定昇中心の論議になっていることは、マスコミに連日報道されていて、定昇を実施せずとか、定昇の凍結といった言葉が使われています。現場の労使間でもそうなのでしょうか。

 定期昇給というのは「賃金制度」ですから、それをやらないことは、「賃金制度」を改定するという事になります。 ですから昔は、「定昇延伸」とか「定昇の実施時期を延ばす」という言い方でした。当然、期間は半年とか1年以内です。

 1年たってしまうと、入社2年目からの賃金は決まっていますが、初任給が据え置きですから、入社1~2年が同じ賃金という制度になります。つまり定昇凍結というのは、あくまでも臨時的な処置で、本来は、年度内に賃金体系を見直さなければなりません。

 こんなことになる理由は、「賃金水準」論議と「賃金体系」論議をごっちゃにしているからです。
 これは、戦後、多くの企業が、定期昇給とベースアップをごっちゃにして、毎年10%とか15%といった賃上げをして、賃金体系が収拾つかなくなったのと状況は逆ですが理論は同じことです

 この問題は、昭和29年に、日経連が、定期昇給制度の確立を提唱し、労使共に「ベアと定昇の区別」を勉強し整理することが出来ました。その結果、
・企業の経営実態に即した「賃金水準」を決めるベースアップは春闘で
・仕事と賃金の結びつきなどを決める「賃金制度・体系」は労使の委員会などで協議
というのが常識となり、職能資格制度や職能給も導入され、賃金制度論議が活発になりました。

 今問題にすべきは、経済や企業業績が長期に落ち込む中で、企業の経営実態(広く言えば日本経済の実態)に即した「賃金水準」を決めるべき春闘で、ベースダウン論議をせず、賃金体系制度を崩して「なし崩しに」平均賃金を抑制するといった方向を労使で模索しているという事でしょう。これでは定昇とベア(現時点ではベースダウン)を区別する前の時代に逆戻りです。

 本来は、制度である定期昇給(労使合意で決めたもの)は実施したが、ベースダウンがあったので、個別賃金は余り上がらなかったとか、少し下がったとかいう事になるべきなのでしょう。
 戦後の労使関係の歴史の中で積み上げてきた労使の知恵を無駄にしないで欲しいと思うのは私だけでしょうか。


縮小均衡経済からの脱出:その4

2010年02月17日 16時47分16秒 | 経済
縮小均衡経済からの脱出:その4
 この表題のもとでいろいろなことを書いてしまったので、ここで改めて、日本経済が縮小均衡に陥る悪循環の現状を簡単に整理しなおしてみたおと思います。

「稼いだGDPを使い残す(使い残し=貯蓄超過)経済」 → 「使い残した分、前年より経済活動の総額(規模)が小さくなる」 → 「雇用や収入が減少し将来不安からさらに貯蓄をする」 → 「経済活動の規模が一層縮小する」・・・・この繰り返しになっているようです。 しかも累積した貯蓄がほとんど所得を生まないゼロ金利ですし、リスク覚悟で運用すれば、大抵は損するばかりで、さらに生活を切り詰めざるを得なくなるようです。
 
 それだけではありません。前回書きましたように、「貯蓄超過=国際収支黒字」ですから、
 「万年黒字なので円高になりやすい」 → 「円高で企業はコスト削減に追われる」 → 「雇用・賃金に削減圧力がかかる」 → 「就職氷河期の再来」 → 「生活は一層防衛的になり貯蓄に励む」 → 「縮小均衡経済に拍車をかける」・・・・・この傾向も明らかに見えています。

 実は変動相場制の下、上記の2つの太字部分の悪循環が絡まりあっているというのが今の日本の悪性の不況の特徴でしょう。

 ところで、前回の「注」に見られますように、この貯蓄超過による経済の縮小を財政赤字で食い止めようとするのが「国債発行による赤字財政政策(いわゆるケインズ政策)」です。貯蓄超過ですから国債の発行は国民(銀行)が引き受け可能ですが、それでも貯蓄超過を使いきれません。

 失われた10年以来、国民も政府も、この財政出動に救いを求めてきたのですが、そうこうしているうちに、「国債残高が巨大になって」 → 「財政再建が言われ」 → 「財政赤字の縮小が必要」 → 「これは貯蓄超過を増やし、縮小均衡の促進・一層の不況深刻化」 となるようです。
 それでも借金だらけの国にとっては、財政再建は至上命令ですから、政府は何とか努力すべく必死で取り組むことになります。

 財政健全化には2つの方法があります。
・財政規模の縮小 : これをやると経済の縮小と不況に拍車をかけます(殆ど不可能)。
・増税路線 : 国債発行で国民から借金するのではなく、税金で国民から徴収する(かなり困難)。
 財政規模の縮小は日本経済をもっと不況にします。増税路線は、貯蓄超過を脱出する方法ですが、殆どの国民が大反対です。

 こうして、貯蓄超過の解消策、言い換えれば不況の脱出策はデッドロックに乗り上げています。
状況は八方塞がりのように見えます。さて日本は経済政策として何ができるのでしょうか。


縮小均衡経済からの脱出:その3

2010年02月15日 10時19分18秒 | 経済
縮小均衡経済からの脱出:その3
 前々回、日本人は、折角生産したGDPを使い残していると書きました。年間10~20兆円使い残しているのですが、これは国民経済計算で明らかなように、国際収支の黒字幅(経常黒字)と同額です(説明は下の注をご覧下さい)。

 つまり、日本人が生産したGDPを国内で「消費と投資」に全部使えば国際収支は均衡します。均衡といっても、現実には年によって黒字になったり赤字になったりといった状態で何年か見るとほぼ均衡という事でしょうか。

 日本経済は落ち目だといった声が外国からもよく聞かれます。財政の累積赤字が世界最大だとか、生産性の国際ランキングはどんどん下がっているとか、1人当たりの国民所得はかつて世界のトップクラスだったが今ではG7中最下位だとか世界19位がとか、そんなことで日本の国債の格付けは「安定」から「ネガティブ」に下げられたとか、・・・・・。
 
 自虐的な日本のマスコミが、そんな報道ばかりするからかもしれませんが、現実には「そんな国」である日本の通貨「円」は、変動為替制導入以来、世界中で最も切り上げ率が大きい通貨で、しかも現在でも、何かというと円高が予想される状態です。

 つまり国際金融市場では、「円」は、確りした価値を持っており、円を持っていれば、多分損はないと多くの人が考えているからこそ、円を買う人が多くなってその結果円高になるということでしょう。その最大の理由は、日本の国際収支が万円黒字という事ではないでしょうか。

 そして円高になると日本経済は苦労しなければならないわけですから、思い切って、万年黒字をやめる、言い換えれば、「生産したGDPは全部国内で使いきる」ようにすることが、どうも大変大事で、 円高懸念への最も有効な対策になるように思えます。

 そのためにはどんなアイデアがあるのでしょうか。それこそが今最も有効な経済政策でしょう。

(注)  GDP=消費+貯蓄+税金等   (収入の分配面)
     GDP=消費+投資+政府支出+輸出-輸入  (支出面)
              消費+貯蓄+税金等=消費+投資+政府支出+輸出-輸入
     両辺から消費を引いて、投資と政府支出を左辺に移項すると
         貯蓄-投資+税金等-政府支出 = 輸出-輸入
         (過剰貯蓄)    (財政赤字)        (万年黒字)
 つまり、消費でも投資でも財政赤字でも使い切れないGDPが国際収支の黒字になります。


縮小均衡経済からの脱出:その2

2010年02月12日 10時50分04秒 | 経済
縮小均衡経済からの脱出:その2
 前回申し上げたように、苦しい時のために貯蓄しておいたのですが、苦しくなると、「将来はもっと苦しくなるのではないかと」と考えて、さらに貯蓄に励む 日本人です。
 貯蓄が安定して果実を生んでくれればいいのですが、いま、世界中どこを探しても、昔の確定利付きのような安全で着実に増えていくような貯蓄(あるいは投資)などはありません。

 今回のG7でもそのようですし、オバマ大統領が言い出した金融規制の問題でも、足元のアメリカでも反対論が多く、国際金融は矢張り、国際投機資本のギャンブルの影響から脱出することは困難なようです。

 特に日本のような、国際収支が 万年黒字の国 (次回にでもご説明したいと思いますが、これは日本人が毎年GDPを使い残していることと同じことなのです) の通貨は何かというと高くなり、つまり円高になって、海外投資はその分目減りし、コスト高で国際競争力は低下して、現状のようなデフレ不況をもたらします。

 まさに「 確定利付きへの郷愁」ですが、海外投資が常にリスク覚悟でなければならないという事になると、「そんなに宛てにならない外国へ投資するより、真面目によく働く日本人に投資した方がいいのではないか、と思えないでしょうか。

 確かに日本人は真面目によく働きますし、技術水準も、働く人の技能の水準も世界ではトップクラスで、しかも投資するお金があるのです。
 自分たち日本人に投資したのであれば、余り上手くいかなくても納得がいきますし、何より、「それならこうしようか」といった、新しい検討も自分の手で可能です。

 但し、今まではその多くの部分を政府に任せて、無駄の多い、余り役に立たないコンクリートもの(ダム、河口堰、空港、高速道路、いろいろな箱物などなど)に投資していたので、経済成長の役にも立たなかったのですから、今度は、本気で、経済成長を引っ張るような(乗数効果のある)部門に、民間の知恵を生かしてやるべきでしょう。

 バブル崩壊以降の日本人には、どうも頭と行動の切り替えが必要なようです。そのベースとなるのは、日本人自身の自分に対する「自信」であり、未来社会への国としての明確なビジョンではないでしょうか。

 減税や補助金 を効果的に使えば、政府支出の何倍もの経済効果があり、無駄になる投資もうんと減るでしょう。最大の投資対象には「脱化石燃料社会」 という世界の望む未来社会の実現があります。そのための開発技術は世界中に売れるでしょう。


縮小均衡経済からの脱出:その1

2010年02月08日 10時26分51秒 | 経済
縮小均衡経済からの脱出:その1
 日本の経済規模はGDP(国内総生産)でいうと約500兆円といわれています。500兆円を超えたのは2005年で、2007年には515兆円を超えたのですが、このところのデフレで、2008年には494兆円に目減りし、2009年には473兆円に目減りしてしまう見通しです。

 それにしても、日本人が一生懸命働いてこれだけの付加価値を作り出したのですから、自分たちの作り出した成果を確り使いきったらいいと思うのですが、日本人は毎年10兆円から20兆円使い残しています。

 もちろん「使い切る」というのは、何も飲み食いだけに使うわけではありません。教育訓練や、研究開発、新鋭設備投資などといった、将来の経済発展の原動力になる投資に「使う」のも使うことです。
 医療や高齢者介護などの福祉に「使う」のも使うことです。今、高齢化社会で、こうした支出はますます必要になっています。

 しかし、日本人は使わないで、将来のために毎年10~20兆円貯蓄しています。苦しい時のための貯金ですが、苦しくなるともっと倹約して貯金するという真面目な性格 なのでしょうか。
  丁度、家庭でいえば、年間500万円の所得があるのに、毎年10~20万円使い残しているようなもので、そのお金は金融機関を通して、よその人が使っているということです。

 同じことを国でいえば、その貯蓄は、国際金融機関を通じて、外国に貸し、外国が使っているわけです。外国が使うのですから、雇用や所得は外国で増えるだけです。日本には利息や投資収益が入ってくるはすですが、なかなか上手くはいきません。

 貸した金が、なかなか返してもらえなかったり、外国のバブル崩壊でパァになったり、まずい投資で運用損ばかり出たり、円高で目減りしたり、などなど問題は多いようです。
 日本国民は「折角貯蓄したのに損してしまった、もっと節約しなければならない」と萎縮し、ますます国内の経済活動が不活発になります。

 不安が不安を呼んで、さらに消費を削って貯蓄に回す、消費が減れば一層不況になるという事で、結局は、経済活動の縮小過程です。将来のための貯蓄が、経済を縮小させ、将来の収入を減らす、さらに不安になって消費を切り詰める。今の日本はこんな縮小均衡経済のようです。


カナダG7(2010/2)と金融規制論議

2010年02月05日 11時45分56秒 | 経済
カナダG7(2010/2)と金融規制論議
 いよいよ今日と明日、カナダでG7が開かれます。議題はいろいろあるようですが、このブログで取り上げてきている重要問題としては先ずボルカー・ルールと言われるオバマ大統領が提案した金融規制案でしょう。 (人民元問題も出るようですが。)

 ご承知のように、ボルカー・ルールは、投資銀行の自己勘定取引規制を中心に、プライベートファンド(いわゆる○○ファンド)やヘッジファンドへの投資や所有を規制し、今回の金融危機のような事態、(巨大金融機関が倒産、税金でその穴埋めをせざるをえないような事態)を防ごうというのが基本的な趣旨でしょう。

 このブログ流にいえば、「マネーゲームで キャピタルゲインを求めることが収益の源というような金融機関」は、経済社会とって、本来有害無益なものであるという、極めて健全かつ常識的な視点に立つものと考えられます。

 すでに過去のG20 でもこの方向ははっきりと示されているわけですし、その具体化のリーダーシップをとった良心的な提案ということができるでしょう。

 ボルカー氏は、そういった業務をやっているのはアメリカで数行、世界中でも30か40行、といっていますが、極めて少数のそうした金融機関が世界経済に巨大な変動を起こし、その過程で時にハイリターンを得、ハイリスクに直面すると税金で救済といったことを前提に業務を行っているという現実が見えてしまっている今日、規制は当然でしょう。

 金融機関は本来、付加価値を創る企業を金融的に支援するためのシステムで、商業銀行中心であり、投資銀行も本来の業務は、付加価値を創る企業を育成するために長い目で見て投資を行い、経済発展に(投資によって)間接的に貢献するためのものです。
 
 カナダG7は、7カ国の蔵相と中央銀行総裁の、社会正義実現への良心と、持っている識見の高さ(個人というよりその代表する国のというべきでしょうか)が示される場になりそうです。


日本経済低迷の理由:その4、縮小均衡型経済

2010年02月04日 13時54分41秒 | 経済
日本経済低迷の理由:その4、縮小均衡型経済
 すべての始まりは、1985年の「プラザ合意」だったようです。
 それまでの日本経済は、自分たちが頑張れば、その結果は必ずついてくるという前提の下に行動していればよかったのではないでしょうか。

 成長過程の日本経済の中では、戦後最大といわれた昭和40年不況も財政出動で切り抜け、その後のニクソンショックによる、変動相場制への移行、さらには、2度にわたるオイルショックも労使の協力によって、世界に例を見ない鮮やかさで乗り切って、安定成長移行、低成長移行の中でも健全な経済状態 を維持してきました。

 この健全な経済状態維持の基本は、「ホームメイドインフレ」、もっと具体的に言えば賃金インフレ(コストプッシュ・インフレ)の排除でした。
 第1次オイルショック後の急激なインフレに際して、当時の日経連が桜田武会長の下、今では歴史的文書になった「大幅賃上げの行くへ研究委員会報告」を出版して全国的キャンペーンを行い、それに労働側も応えて、大幅賃上げ(1984年、33パーセント)、大幅インフレ(1984年22パーセント)を3年程度で正常化したプロセスは、いかにしてホームメイドインフレを起こさないかという労使協力、政府後援の歴史的実験で、その成功は世界の注目を集めましたした。

 そうした行動がとれず、スタグフレーションの中でもがき苦しんだ欧米主要国が選んだのは、自分たちもホームメイドインフレ脱出の努力はするが、先行して賃金コスト上昇を抑え、ホームメイドインフレを回避した日本経済を、「ホームメイドインフレをやったのと同じ状態にする」為の政策だったのでしょう。
 考えてみれば、これは円高によって簡単に可能です。ただ問題は、日本が円高を受け入れるかどうかだったでしょう。

 プラザ合意(1985年)で日本は唯々諾々として円高を受け入れました。余り簡単に受け入れた結果、マネーマーケットは極端な(2倍の)円高を実現するに至りました。2年後に日本は賃金も物価もドルベースで2倍になりました。ホームメイドインフレ回避の日本の労使の努力は水泡に帰しました。

 その結果は、繰り返し述べてきましたように、長期にわたるデフレでした。デフレは、インフレより恐ろしい 。日本国民の経済行動は、そして社会行動も、10年以上に亘るデフレの中で大きく変わりました。
 日本経済は典型的な縮小均衡経済になったのです。そしてそこからの脱出のために何が必要かが、いま、模索されているということではないでしょうか。