tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

このままでは景気は腰折れか?

2023年08月21日 11時23分35秒 | 経済
岸田総理は訪米から帰ってすぐに、福島へ。お忙しい事は解りますが、国内の重要課題である景気の先行きに蔭りが出て来ている事にお気づきでしょうか。

政府と日銀の関係がどうなっているのか解りませんが、日銀も消費者物価の上昇には「注視」だけのようですし、政府は、4-6月の四半期GDP速報が年率6%の成長で気を良くしているのでしょうか。

確かに昨年は、コロナ終息の予測の中で、消費の活発化が見られましたが、今年に入っては物価上昇に食われて連続のマイナス化、家計は財布の紐を締め始めたようですが、物価の方は今後、公共料金(電気など)や10月予定の一斉値上げの予告など、生活必需品を中心に値上がりが続きそうです。

春闘賃上げがこれまでより多少高かったのも、最低賃金の4%上昇と物価上昇の深刻化で、霞んでしまったような感じです。

更に加えて円安が異常な進み方で、これが物価上昇圧力になる可能性が高く、日銀は円安を放置、輸出関連企業は為替差益で増益かも知れませんが、それがすぐ賃金に還元されるわけではありません。

円安の異常進行を一時的と見るか基調変化の部分もあると見るか、日銀は無言ですが、このままいけば、アベノミクスの初期、円安で景気回復と思われましたが、結局消費不振で「幻滅のアベノミクス」だったのと同じことになりそうです。

今回はそれに加えて物価も日本としては異常な上昇傾向で、家計はすでに、生活防衛に舵を切り始めているようですから、景気の腰折れは一層早い可能性も出て来ます。
日銀の物価は早晩沈静という予測は、そのままで良いのでしょうか。

円安の時はその分だけ日本の国際競争力が自動的に強くなるわけですから、その分賃金も引き上げないと消費需要不足から景気は良くならないのです。

それに加えて、輸出大企業の収益が、自動的に高まり、企業の財務体質は改善するのですがPBRが低くなって、海外投機資本から文句が出るのは昨年来経験済みの事です。

ついこの間やったのと同じ失敗を繰り返すのは、あまりにも情けないのですが、賃上げは来春闘が来ないと上がりませんし、物価上昇は続きそうな気配です。後は円安がどこまで続くかですが、これは日銀の金利政策(口先介入も含めた)次第でしょう。

日銀は、ここで金利を上げて円安を早期に解消するといった事には、それが景気の腰折れにつながると恐れるかもしれませんが、それは何処まで円高にするかというテクニークの問題でしょう。

若しかしたら、政府も日銀も、アメリカが何というか気にしなければならない立場なのでしょうか。日本は日本独自の都合で、金融政策を取っていいのではないでしょうか。
もともと今回の円安は、アメリカのインフレ抑制から発したもので、アメリカの勝手な都合で、他国に迷惑をかけているのです。

4-6月のGDP速報で見ましたように、日本経済は急速に元気をなくしています。岸田さんは、何かというと補助金を出しますと言って、支持率を継ぎ止めようとしているようですが、何故か基本的な考察がお留守のような気がして、心配です。

日本の国際収支は大丈夫か?

2023年03月07日 20時44分20秒 | 経済
先日(2/27)に2022年度の貿易収支が大幅な赤字になったことに触れました。
最近の円安傾向が、単に日米金利差によるだけでなく、日本の輸出競争力が落ちて来ていることの反映でもあるともみられるところからです。

先日2023年1月の国際収支統計が発表になり、1月は経常収支も大幅赤字になったことが報道されました。

このブログでは、日本は、経常収支は万年黒字、アメリカは万円赤字と書いて来て言いますが、日本は第一次所得収支(海外からの利子配当などの受入れ)が、毎年20~30兆円の黒字なので、貿易収支が赤字でもそれで埋め合わせて経常黒字に出来ています。

所が今年の1月は、貿易収支の赤字が大きすぎて第一次所得趣旨では埋めきれず、経常赤字になってしまったのです。

経常収支が赤字になれば日本もアメリカと同じ、財政も赤字、国際収支も赤字という「双子の赤字国」になってしまいます。

アメリカは基軸通貨国で有利ですが、日本が双子の赤字になれば、国際的な信用は失墜し、円や国債の価値は暴落、国債紙屑への第一歩、などと心配の声も出て来ます。

という事で、昨年来の月別の貿易収支と経常収支の動きを先ず見てみました。
       貿易収支と経常収支の推移(億円)

                      資料:財務省

茶色の貿易収支の柱はゼロより下、つまり赤字ですが、青の経常収支がゼロより上、つまり黒字という事は、第一次所得収支で埋め合わせているという事ですが、昨年も今年も1月は経常収支も赤字で、今年は特にひどい赤字です。

1月は休みが多く輸出が伸びないという事もあるようですが、それにしてもこの1月の経常収支の赤字は3兆円と大きいです。これが1年続いたら、第一次所得収支ではとても埋めきれません。赤字国日本になります。

そこで、貿易赤字を輸出と輸入のバランスで見てみます。

       輸出額と輸入額の推移(億円)

                        資料:上に同じ

茶色の輸入額の方は原油価格の下落等で減って来ていますが、輸出額の落ち込みが大きいことが解ります。
1月だという事もあるのでしょうが、この落ち込みが、一時的なもので、2月から復活するかどうか、そのあたりが問題です。

半導体不足とかの、サプライチェーンの不具合といった面が中国などとの関係で深刻になる可能性が問題になったりすると些か心配です。
2月以降の数字がどうなるかを見極めなければなりませんが、要注意でしょう。

大局的にみれば、国際資源価格の落ち着き、円安の定着といった状況であれば、日本の輸出は伸びる可能性は高いと思われますが、それには国内生産が必要です。工場は海外ではなく生産設備の国内回帰が必要です。それには国内の熟練度の高い技術者・技能者が欠かせません。

こうした点では手を抜いてきた日本(非正規の多用など)には些か心配な面もありますが、これからの日本企業の頑張りに期待したいところです。

2月以降の数字の動きを追うとともに。もう一つあまりきずかれていない赤字の原因についても、出来れば次回取り上げていきたいと思っています。

輸入インフレへの対応策を整理する

2022年03月23日 20時41分25秒 | 経済
企業物価がこの2月は、対前年同月比で9.3%上がりました。原因は原油などの国際価格が上昇したからで、輸入物価指数を見ますと昨年11月には(同)45.3%も上がり、この2月には原油価格が少し下がって34.0%の上昇になっています。

輸入物価が上がれば、企業物価が上がり、いずれ消費者物価も上がると誰もが考えます。消費者物価はこの2月で、未だ0.9%の上昇です。
政府は、輸入価格が上がったたら、その分は価格を引き上げなさいと言っていますが、ガソリンが1ℓ=160~170円になって困っているようです。

円安も進んでいます。去年の2月は$1=105円台でしたが今日は121円になっています。
輸入するものは殆どドル建てですから円安になると円安の分値段が上がることになります。

輸入価格が上がっている上に円安になりますと、ダブルパンチで円表示の輸入価格は上がり、最終的には、消費者物価に影響してくることになります。

という事で今からインフレが心配されています。
あまり影響が出ないうちに、原油価格も下がり円安も元に戻ればいいのですが、経済評論家やマスコミはこれは構造的は変化で、今後インフレになるなどと指摘します。

具体的な話では、原油が上がって、ガソリンが上がったから、政府に補助金を出せとかトリガー条項を適用せよという意見が出て、政府は検討をしています。補助金の方はもう出ています。ただしガソリンなど燃料だけです。

なにか場当たり的な対策のようですが、こういう場合はどうするのが一番まともかという議論は一切ありません。本当はどうすればいいのでしょうか。

という事で、輸入価格が上がった場合の、誤りのない対処法を考えてみます。
実は、これはすでに、1970年代のオイルショックの時に、理論的には結論が出ていて、当時の日本は、政府も解っていたのですが、忘れてしまったり、当時のことを勉強していなかったりで、また、議論になっているのでしょう。

原油価格の上昇については過日取り上げましたので、基本的には同じことですがもう一度整理したいと思います。

輸入品が上がった、円が安くなった、とはどういう事でしょうか。
それは、外国からモノやサービスを買う時、自分の稼ぎの中から今迄より余計に払わなければならないという事です。

日本の場合稼ぎというのはGDPです。つまり、同じだけ輸入しても、GDPの中から、今迄より余計支払うことになるのです。その分、日本は貧しくなるのです。

これが輸入物価上昇の「真実」です。日本が貧しくなったのですから、国内でどうやっても元の豊かさには戻りません。政府に補助金を出してもらっても、政府のカネは国民からの税金か借金ですから、結局、国民が不公平な形で負担することになるだけのことです。

一番公平なのは、輸入品値上がり分はきちんと価格転嫁して(便乗値上げはいけません)輸入品を余計使う人が沢山負担し、少し使う人は少し負担するとい価格メカニズムに従って負担することでしょう。

そして、海外に高く売れる商品を開発して、高く売って取り返すという事を日本はやって、オイルショックの後「ジャパンアズナンバーワン」になったのです。

産油国は石油を一時高く売っても値下がりするときもあります。そして、いつかは再エネの時代になるのでしょう。最後は頑張った国が勝つのです。それが最善の対策です。

(円安の場合については、少し違った要素が入ってきますが、基本は同じです。)

世界経済混乱と日本経済の立ち位置

2022年03月22日 17時35分26秒 | 経済
コロナから始まり、原油価格の高騰、そしてロシアのウクライナ侵攻問題と、世界経済に異常事態が重なってきてしまいました。

最も心痛むウクライナ問題の早期の解決を願いながら、混乱する世界情勢の中で不透明化する日本経済の立ち位置と今後について選択肢の予備的考察しておきたいと思います。

絶対条件はウクライナ問題が破局的な状況に発展しないという事です、プーチンのロシアが自らの異常な時代錯誤に終止符を打つ日を待ちながらです。

コロナ問題は本来景気下押し要因でしょう。しかしこの所、そろそろコロナも征圧がされそうだという事で、欧米諸国も日本も経済対策に力を入れ始めているようです。
これが予想通りいって、コロナ終息が本物になれば、経済は回復基調に入り、本来ならば経済急回復というところでしょう。

しかし、現状は原油高、ロシア制裁問題で多様な混乱が起きる可能性もあり、景気回復がサプライチェーンの混乱でインフレ要因になることも考えられます。

原油価格問題はもともとインフレ要因ですが、石油やガスの主要供給国の1つであるロシアへの制裁問題とその他の産油国の動向などからエネルギー価格の上昇は長引くのではないかとみられているようです。

ロシアのウクライナ侵攻問題はたとえ戦端は止んでも制裁問題などの行方は簡単には見通せません。種々の混乱は続きそうです。

こうした種々の制約要因が考えられる中で、経済活性化への動きが強まった場合、資源価格の上昇などが一層強まる可能性もあり、結果的にインフレ傾向が強くなるのではないでしょうか。

典型的には今のアメリカの状態にみられるような現象が更に広く発生した場合、世界経済、そして日本経済にいかなる影響があるかという事でしょう。

無資源国日本の立場は容易でないかもしれません、ロシアとは国交回復の動きも中断になりましたし、中国との関係も、これまでのようにスムーズにいくかどうか状況は微妙かもしれません。

しかし、経済回復は急がなければならないという中で、日本は従来から上手ではない経済外交を本気で上手にしなければなりません。
勿論、無手勝流ではやれませんから、必要なのは、相手の役に立つもち札如何です。

従来は、真面目に経済協力をする、平和憲法を持って、役には立つが「人畜無害」というのが日本のセールス・ポイントだった事が大きかったと思います。
その辺は、このところ、日本を見る目も些か変わって来たのではないでしょうか。

もう一つは、先端技術分野での優位性です。アベノミクスが研究開発費を増やさなかったこともあるでしょう。企業が即戦力採用に傾き、教育訓練費を絞ったこともあるでしょう。
ワクチンでは100%外国依存、先端分野でも中国、韓国、台湾に後れを取ることが増えています。

こうした状況に気付いたのでしょう、岸田政権は研究開発の促進について力を入れ始めています。しかし成果が出るまでには、それなりの時間がかかるでしょう。

こうした中では、日銀の異次元緩和継続の結果の円安で、日本製品の価格が安くなり、外国の消費者は喜び、輸入資源、輸入物資等の高騰から日本の消費者は苦しむという事で、当面を凌ぐという事になりそうな気配です。

いずれにしても、落ちた競争力を回復するためには、それだけのエネルギーを使わなくてはならないというのが、経済活動の原則のようです。
日本人は、ここでもうひと頑張りしなければ、という事になるのでしょうか。

アメリカにスタグフレーションの恐れ、日本は?

2022年03月18日 20時27分53秒 | 経済
ウクライナ問題の深刻化で、世界からそのリーダーシップが注目されていつアメリカです。
現状、バイデン大統領は冷静に、そして適切にその役割を果たしつつあるように思います。

こうした国際的な危機への対応は、流石にアメリカという所でしょう。残念ながら日本などとはその情報も諜報も、判断力も、実行力も桁が何桁も違うようです。

しかし、経済について見ますと、我々から見ても、何か危うく見えて来ていて心配です。

今、アメリカ経済で起きていることの要点を整理しますと、

1 原油価格上昇などで、物価が急激に上がっている
2 景気回復で企業の求人意欲が高い
3 物価と景気の上昇で賃金上昇率が高まっている
4 FRBが景気過熱防止のために金利の引き上げを行う
といった所でしょうか。

順番に問題点を見ていきますと、物価が急激に上がっていることは確かでしょう。2月の7.9%上昇というのは、40年ぶりと言われているようです。
原因は第一に原油の値上がりで、それにサプライチェーンの混乱、関連商品への波及、国際社会の混乱など国際的な原因が大きいようです。

一方アメリカの景気は世界に先駆けて回復していて、求人が活発です。それにコロナ感染で、要員不足も多いようです。

そうした事から賃金の上昇圧力が強く、業績の良い企業で物価上昇のカバーの要請も強まり最近の賃金上昇は、従来の4%程度から7%レベルに上がってきているとのことです。

FRBは、景気の回復から金利の正常化(ゼロ金利脱出)を目指していていましたが、インフレの加速から、金利引き上げ0.25%→0.5%を行いましたが、今後も連続して引き上げを考え、加えて量的引き締めで、インフレと、景気過熱を未然に防止ししたいという姿勢のようです。

こうした状況から見えてくるのは何でしょうか。
鍵になるのは何といっても、インフレの高進と賃金上昇の関係です。
原油の上昇もコロナや国際情勢の混乱によるサプライチェーンのトラブルも、少し長い目で見ると一時的なもので、いずれは正常な状態に戻るでしょう。

金融引き締めで企業の行き過ぎた行動を抑え、一定時期が過ぎれば経済は正常状態に戻るのです。

然し、原油、コロナ国際情勢といった一時的な要因で上がった物価を、賃金の引き上げで補填すれば、上がった賃金は下がりませんからインフレはアメリカ自体のコストである賃金に組み込まれ、今度は賃金上昇がインフレの要因になります。

この賃金インフレを、また賃金引き上げで補填すれば、いわゆる賃金・物価のスパイラル現象が起きる可能性が高くなります。

一方、引き締め政策としての金利の引き上げは、ドル高を齎します(今の円安はアメリカの金利引き上げの結果でしょう)。
アメリカの国際競争力はドル高の分だけ落ちます。これはアメリカ経済にとっては停滞要因です。

こうして起きるインフレと景気停滞の併存は、まさにスタグフレーションで、すでに1970年代、主要先進国が先進国病として苦い経験をしたものでしょう。

アメリかに、世界のために大変重要な役割を担って頂かなくてはならないこれからの時期に、アメリカ経済がスタグフレーション化したら、これは心配なことです。

同時に日本にとっては、このまま円安が進むような事になれば、アメリカからの円高要請(プラザ合意の再来)が起きる可能性もないとは言えないでしょう。
これはかなりありそうなことです。ならば、誰がどう気を付ければいいのでしょうか。

円安が進んでいますね

2022年03月15日 21時40分59秒 | 経済
今日、円レートを見たら118円台になっていてビックしりしました。

去年の桜の咲くころは107円台だったといった記憶ですが、1年たって10円の円安です。昨秋から円安傾向が出て、またこのところ何やら不安定な感じで円安が進んでいる感じです。

事の起こりは、アメリカの中央銀行に当たるFRBが、金利の引き上げを言い出してからのことと思われます。
それに加えて、この所のインフレ昂進に対応の金融引き締めでしょう。

FRBが15,16両日の会合で多分0.25%の引き上げで0.5%にするであろうという予測が118円に繋がっているのでしょうが、日本としてはどう考えたらいいのでしょうか。

アメリカは物価の上がりやすい国のようですし、日本は物価の上がりにくい国の代表のような存在です。

原油や穀物、各種資源などの国際価格の高騰で、アメリカの消費者物価が7~8%ほども上がっている状況では、もともと金利正常化の基本方針を持っているアメリカですから、インフレ対策としての金融引き締め、金利引き上げに動くのは当然でしょう。

アメリカは海外インフレを賃金引上げなどを通じて国内インフレに転嫁しやすい国ですが、日本はと言うと、海外インフレを国内インフレに転嫁するのが容易でない国のようです。

日本は春闘で賃金が決まりますが、アメリカはその時の労働需給によって、物価が上がれば賃金も上がるといった傾向が強く、このままでは賃金も物価も上がる可能性が高く、当然インフレ対策が必要になります。

一方日本は、前回の日銀の政策決定会合でも、黒田総裁は、異次元金融緩和政策は当面続けるという事で、「現状では円安の利点の方が大きい」という趣旨の発言でした。
そして政府は、ガソリンの価格が上がれば補助金を出して上昇を抑えることに熱心で、企業は輸入品の値上がりを価格転嫁を抑えて、合理化や利益減で吸収する努力をします。

国際金融理論でいえば、円安になれば物価が上がるですが、日本の場合は円安になってもインフレはひどくならず、国際比較すると、相対的な物価水準はどんどん低くなる傾向があるようです。

今年の春闘も、政府は補助金で物価を抑えながら、賃金はなるべく高めに引き上げなさいと旗を振っているのですが、労使は賃上げに慎重です。
多分春闘の結果もそれほど大幅な賃金上昇にはならず、物価上昇もアメリカの様にはとてもならないでしょう。

多分こういう状況が続きますと、将来、世界の人的・物的交流が活発に戻った時になって、日本はどんな立場になるか、日本の政策担当者は頭の片隅のどこかに入れておいた方がいいように思います。

多分その時日本の国際競争力は、インフレを起こさなかった結果強化され、日本の物価は安く、インバウンドは改めて大盛況になり、海外から、特にアメリカから、日本は少しやり過ぎではないかといった意見を聞くことになりそうです。

この儘いきますと、状況はプラザ合意の前に似てくる可能性があることに早めに気づく必要があります。
為替レートとゴルフのハンディ」も書きましたが、為替レートは低すぎても高すぎても、都合が悪いのです。舵取りは結構多様で微妙です。
プラザ合意の失敗を繰り返さないためにも、普段から不断の注意が必要なのではないでしょうか。

2022年1月 家計調査、消費動くか

2022年03月11日 17時13分51秒 | 経済
今日、総務省より「家計調査」の今年1月分が発表になりました。

毎度書いていますように、今の日本経済の問題点は、政府が財政で支援しても、日銀が異次元金融緩和を続けても、個人消費支出が伸びて来ないということにあるようです。

ご承知のように、個人消費支出、活計調査では所帯単位の消費支出が調査対象ですが、いずれにしても、GDP統計をみれば、GDPの半分以上が家計最終消費支出ですから、これが伸びない事には経済成長率は高くなりません。

しかも、これが伸びないのは、今はコロナのせいもありますが、コロナがなかったアベノミクス時代もそうだったわけで、日本経済の痼疾のようになっているものですから、このブログでも長期にわたって、勤労者世帯の「平均消費性向」を中心にずっと追いかけているところです。

ところで、昨年の年末商戦もあまり盛り上がらずだった消費支出が1月に至って、少し動いてきたのかなといった感じが今回の家計調査で出てきたように思います。

1月の消費支出は、2人以上全所帯で実額287,801円で前年同月比で名目7.5%、実質6.9%のかなり大幅な上昇になっています。  
昨年の10月、11月、12月が、いずれも、前年同月比マイナスで-0.3%、-1.6%、-0.2%だったに比べると減少から増加に転じて、それも鬱憤でも晴らすように大幅増という所でしょうか。

消費支出の10大費目で見ましてもマイナスなのは水道光熱(公共料金)と教育(塾などコロナで休み?)の2つだけで、あとはすべてプラス、伸びが大きいのは交通通信(ネット・自動車関係費など)、教養娯楽などで、久方ぶりの増加です。

消費支出だけでなく収入と支出の両方の数字がとれ、収支の関係が解る2人以上勤労者所帯について見ますと、実収入は479,805円で名目2.2%実質1.6%と小幅ながら安定的な増加です。

これから税金や社会保険料などを除いた可処分所得は396,098円で消費支出はこのうち314,358円ですから、消費支出を可処分所得で割った「平均消費性向」は79.4%で昨年1月の77.5%より1.9ポイント高くなっています。

因みに一昨年の1月を見ますと78.9%ですから、昨年は下がりましたが、今年は一昨年よりも高くなったということになります。
   
一昨年の1月は、まだコロナをそんなに気にしなくてもいい状態だったことを考えますと、この1月は、個人消費の動向に何か変化が表れてきたのかという見方も可能かと思いたいところです。

勿論それはまだまだ今後の数字を見てからの話ですし、その後発生したウクライナ問題がまた家計の消費行動にも、経済全体にもマイナスの影響を持つのでしょうから、「平均消費性向」で日本経済の先行きを占うのも、当分は紆余曲折の中にあるという事になってしまうのでしょう。


春闘は順調な出足、個人消費回復は?

2022年02月24日 14時09分15秒 | 経済

2022春闘も、そろそろ個別企業の交渉の時期を迎えていますが、順調な滑り出しのニュースも流れて来ています。

春闘の所謂パターンセッターは時代と共に変わりますが、今は何といっても自動車産業でしょう。

自動車産業も、この所の世界的な混乱の中で、国内ではコロナ禍、海外関係では原油の高騰だけではなく、国際的なサプライチェーンでの問題から部品供給も思うに任せず、更には、米中貿易戦争などいろいろなトラブルの影響を直接間接に受けながら、円安という助けもあって、多様な努力の末の増益基調といった状況のようです。

日本の自動車産業のリーダー、トヨタでは、既に、労使の話し合いが始まり豊田章男社長から「賃金・賞与について会社と組合の間に認識の相違はない」と、驚くような前向きの発言が聞かれたことが、組合側からのニュースで入ってきています。

勿論自動車産業の中でも事情はいろいろでしょうし、日本の産業全体を見れば、コロナ禍もオミクロン株の予想外の猖獗で、終息の目鼻はまだまだつかず、深刻な打撃を受けているところもありますから、結果を予想するのは早すぎるでしょう。

しかし、多くの人の希望的観測から言えば、連合のいわば控えめな要求に対し、政府の賃上げ奨励、加えて経団連の賃上げ肯定の意思表示もあり、結果は高めと予想されるのではないでしょうか。

このブログもそんな感覚を共有しながら、その先の、高めの賃上げの個人消費への反映、それによるGDPの増加(経済成長率の上昇)、日本経済の停滞状況からの脱出といった夢を描いたりしています。

その中で当面する最初の問題は、賃金が上がっても可処分所得(手取り賃金)が増えるかといった問題です。
当面増税はないようですが、社会保険料負担はどうでしょうか。年金生活者の場合は、制度改正で、手取りに影響が出そうですが、勤労者所帯の場合はどうでしょうか。

その次の最も重要な問題は、勤労者所帯が、増えた手取りをどこまで使うかという問題です。
これには2段階あるでしょう。第一段階は、コロナ禍の終息です、コロナ感染の危険があるうちは、誰もが行動の制限をしています。皆んなコロナがOKになったら、大いに羽を伸ばそうと考えています。

次の第2段階は、コロナの心配がもう大丈夫となった時に、つまり、日常生活が正常に戻った時に、どこまでそれぞれの個人・所帯が消費を伸ばすかです。

これは、統計上で見れば、将来不安・老後不安からずっと低下傾向だった、勤労者の消費性向、ひいては日本の全所帯の平均消費性向が、何時、日本経済が健全だった頃の水準まで戻るかという事です。

これは、恐らく容易なことではないでしょう。
出生率を始めいろいろな難問がある中で、例えば、日本経済が順調に成長を続け、賃金も年々上がる状態が実現する事、貯蓄をしておけば、適切な利息が付いて、かつてのように年金は「確定給付」が当たり前、といったことも必須です。

これだけ取って見ても日本の政府・日銀に、何時になったらそれが出来るだろうかなどと考えてしまいます。
しかし、出来ないと、日本は救われないので、何卒よろしくお願いしたいと思います。

日銀の金融政策は何処へ行く

2022年02月22日 16時38分18秒 | 経済
去る2月14日、日銀は「指値オペ」をやりました。
10年物の国債を利回り0.25%の価格で無制限に買い入れるというのが内容です。しかし応札は全くなく空振りに終わりました。

その時は「日銀が少し安く買おうとしたんだな。マーケットの方はもっと高かったので、誰も日銀に売らなかっただけのことか」と思っていましたが、どうもそれだけではないようなので、一寸気を付けて見てみました。

世界経済がインフレ傾向を見せる中で、急激なインフレの進むアメリカが利上げ方針を打ち出し、それを受けて、主要国で金利が上昇傾向を見せる中で、日本でも「指値オペ」の直前10年物国債の利回りが0.23%まで上がったとのことで、ゼロ金利を目指す日銀は上限の0.25%以上には上げさせないという強い意思表示をしたという事のようです。

考えてみれば、黒田総裁の基本方針というのは、何はともあれ円安維持という事のようです。先日の政策決定会合でも、黒田総裁は記者に、異次元緩和継続と説明し、最近の円安傾向については、日本にとっては円安のメリットの方が大きいと説明されたようです。 

最近は、円安になると輸入物価が上がって、消費者物価も上がるという事で、賃金が上がらない中でこれは「悪い円安」その結果の「悪いインフレ」だなどという変な経済用語が使われますが、その辺を意識しての発言でしょう。

考えて見ますと、日銀は歴史的に「物価の番人」を自認し、出来るだけインフレを避け、物価安定を維持するために、円の価値を大事にしてきたように思います。

高度成長期は貯蓄増強中央委員会を主導し、国民の貯蓄による資本蓄積の基本を堅持し、高度成長を支える国民の貯蓄を奨励、生産性向上と物価の安定を目指し、固定相場制の中で、円の価値の向上策を推進していたと思います。

1970年代に入り、変動相場制の時代以なると、円の価値の上昇、変動相場制の中では円高という事になりますが、円高こそが物価安定を維持する重要な要素という事でしょうか、円高は、日本経済にとって好ましい物という基本的な姿勢を持っていたように思います。

その延長線上で、プラザ合意による過度な(日本経済の実力を上回る)円高に際しても、これは円の価値、日本経済の価値の高まりを示すもので好ましい物という立場を崩さなかったように思います。

しかし、リーマンショック後、1ドル=75円といった円高になり、当時の白川総裁が円高のデメリットの容易でない事に気づき、円安模索の姿勢を見せた直後、総裁の交替で黒田総裁が誕生、それまでの日銀の基本方針である円高容認を180度転換、異次元金融緩和による円安追求路線に入ったという経緯が読み取れるところです。
黒田総裁は、その後一貫して円安追求路線を取り続け今に至っているという事ではないでしょうか。

戦後一貫してインフレの番人、円の価値の維持向上に邁進してきた日銀が2013年を境に、円安追求に変わった、いわば歴史的転換は、日本をめぐる通貨環境の変化の結果でしょう。

1970~1980年代にかけての欧米主要先進国のインフレとスタグフレーションによる通貨価値の下落の中で一人インフレを抑え、競争力を高めた日本は、プラザ合意でその努力を無にされたばかりか過度な円高で経済の繁栄も成長さえも失いました。

そして今また円安政策を進め、ある程度(2%)のインフレ目標を掲げつつも、現実は、インフレを招かず競争力を強めています。(実施地実効為替レート50年ぶりの低さ)

欧米主要国はこれをどう見ているのでしょうか。資源価格などの値上がりで、インフレ化する国が多い中で、物価安定を維持する日本に、何時か、第2のプラザ合意が待っているのかどうか・・・。
変動相場制の中での物価問題を日銀、そして政府はどう考えているのでしょうか。

2021年10-12月、GDPは回復基調

2022年02月15日 15時59分19秒 | 経済

今日、内閣府から標記の統計が発表されました。
マスコミの見出しは2期ぶり年率5.4%成長ですがこれは対前期比の年率換算で、前7-9月期はデルタ株の最盛期、第5波のピークで経済活動が落ち込んだ反動の面もあります。

実際の感覚から言えば、GDPは、対前年同期比で0.7%増という数字の方が実感に合っているような感じです。
0.7%というのは高くありませんが、前年(一昨年)の10-12月期は政府がGoToなどのキャンペーンをして関連業界は少しは盛況で、経済もいくらかよかったのです。それと比較してですから、余り伸び率は高くなくても仕方ありません。(しかし、その後は、コロナの拡大で昨年1月には緊急事態宣言に入るという状態でしたね)

ということで、一昨年に比べて昨年の10-12月は0.7%伸びというのは、まあ結構な情tくぁいという所が本音でしょう

昨年1年の4半期別の対前年同期の経済成長率を見ますと
1-3月   -2.1%
4-6月   7.3%
7-9月   1.2%
10-12月   0.7%
という事で、春が一時的になぜか快調で、あとはコロナ慣れ、巣籠り需要などで、何とかプラス成長に持ってきているといった所ではないでしょうか。

先に昨年12月の家計調査を見ましたが、GDPの細田尾のシェアを占める家計消費は対前年同期比で夏以降はコロナの第5波の影響を受けマイナス続きで12月になってやっとプラス転換という状態でした。

勤労者世帯で見ますと12月も実収入の5%増に対し、消費支出は3%増と小さく消費意欲の停滞県は変わりませんが、年率3%のプラスに転じたという事はデルタ株による第5波が秋以降急速に縮小した事の影響もあるように思われます。
 
コロナは相変わらずで、今度はオミクロンの猖獗ですが、オミクロンについては、デルタまでと違って、われわれ自身の近辺に感染者が出ても、これまでのように大変だと心配しない情況ではないでしょうか。

ワクチン接種の効果もあるでしょうし、オミクロン自体が、感染しても重篤化の心配
をあまりしていない人が多いといった、コロナについての意識変化があるようです。

諸外国でも規制を緩める国が多くなり、日本でも入国条件の緩和も含めて、規制を緩めてもいいのではないかといった意見もでつつ あるようです。

この所の経済は、コロナ次第という状況が実態でしたが,コロナが直撃する個人消費に注目しますと、今回発表のGDP統計で見る限り実質で対前年同期比1.9%増(GDPは0.7%増ですが)になっています。

こうした動きを見ますと、新年以降、少し雰囲気が変わってくるよな気もします。
さて今年はどんな展開になるでしょうか。

アメリカの心配より日本は?

2022年02月11日 17時50分11秒 | 経済
アメリカの事ばかり書いて来ましたが、我々にとっての問題はやっぱり日本ですから、日本の事も付け加えておきたいと思います。

コロナの中でのオリンピックでみんな大変ですが、もっと大変になるかもしれないという問題が動いています。
ロシアの、プーチンさんの動きです。

アメリカは、ロシアがいつウクライナ侵攻に動いてもおかしくないと世界中に警戒を呼び掛け、世界の世論の中でプーチンさんが動きにくいようにと情報戦を仕掛けています。

ロシアは、北朝鮮にミサイルを供給して、北は喜んで花火のように打ち上げ、極東に緊張状態を起こしておいて、本命のNATOとの境界問題に全力を集中できるようにしているように見えます。

独裁国家というのはリーダーの意思でどうにでも動きますから、本当に危険で、困ったものです。

日本としては、出来るかどうかは別にして、問題が有事に発展しないように、あらゆる神経を使うしかないのでしょう。
もし戦争になれば、経済の予想や政策はまず中断という事で、みんなガラガラポンです。

従って、ここで論じることも、全て戦争は起きないという前提です。
アメリカは親切な顔をしていますが、かつても書きましたように、「レーガン・中曽根」の関係が「ロン・ヤス」などと親密という中で、日本に円高を認めさせ、日本を長期不況に陥れています。

余程注意しないと日本にとってとんだ結果になるようなことをシレッとしてやります。
日本のもっと利口になって、日本にとっても良く、アメリカにとっても良いという事ならやりましょうと先回りをして考えておかないといけないようです。

そんな意味で考えますと、日本が今のように将来不安に囚われたの国である状態から早く脱却し、国民は、将来はもっと良くなると自信を持ち、生活にも仕事にももっと積極的になり、子や孫の世代は楽しみだ、と考えるように社会の雰囲気を変えていくことが日米双方にとって良いように思われます。

そのために賃上げをというのは全く成功していません。政府は景気を良くするのは政府の政策だという考えを捨てて、「国民の皆さん、2000兆円になった皆さんの貯蓄を使って景気を良くしてください」「そのためにしてほしい事があったら、政府はその通りやりますから」ぐらいの政策転換をしないと駄目でしょう。

日本人は、やる気になれば、かなりの事をやって来ていますから、政府は自分の考えでなく、国民の考えを実現するためのルール作りの役割に徹するのがいいようです。

例えば、国民の要望には「以前のような格差の少ない社会にしてほしい」という意見は強いでしょう。
政府はすぐに税制や社会保障制度を組み替え、予算額を増やすのではなく予算の配分を国民の意向に沿える様に変えるのです。多分景気拡大効果は大きいでしょう。 

景気が良くなれば経済成長率は高まり、税収も増え、政府も助かるはずです。
そして、そうなれば、国民も企業も将来を心配して貯金や内部留保ばかりするのではなく、積極的な生活、積極的な経営をやる気になるでしょう。

そうすれば、その結果は、日本を、稼いだ分を使わずに貯め込む国でなく、稼いだら使う国に変えることになるでしょう。当然日本の黒字は減ります。

アメリカは、日本が黒字を出すからアメリカの赤字が増えるという文句は言えなくなるでしょう。多分、回り回ってアメリカの赤字も減るでしょう。

日本人は、本気になれば、このぐらいの事は十分できるだけの頭脳も、行動力も持っていると思っています。
これまでの政策が上手く行かなかったのは、政府が国民の力の引き出し方を知らなかったからだという気がしてなりません。

アメリカは基軸通貨国ですから

2022年02月10日 16時03分52秒 | 経済

国際収支というのは、色々な項目から成り立っています。
基本は貿易収支でしょうが、貿易収支の中にもモノの貿易収支とサービスの貿易収支があります。
以前は、この両者を分けて統計がとられていましたが、最近は纏めて貿易収支となったいます。
アメリカは物の貿易収支は赤字でもサービスの貿易収支は常に黒字という状態でした。

次に第一次所得収支というのがあります。アメリカは海外で沢山仕事をしています。確かGMの自動車の生産台数は、中国が最も多かったのではないかと思います。

そうした海外進出企業からの配当や利子収入が第一次所得収支の収入の部で、その逆のアメリカに来ている外国企業への配当や利子に支払いが支出の部で、アメリカの場合、これは常に黒字です。因みに日本も第一次所得収支は毎年大幅黒字です。

次に第二次所得収支というのがあって、出稼ぎに来ている外国人への給与や、外国への援助などですから、アメリカも日本もだいたい赤字です。アメリカではかなり大きな持ち出しのようです。

以上の3つの収支の合計が「経常収支」という事になっており、この経常収支が、その国の、経済活動による収入と支出の基本的なバランスを示します。

アメリカは、貿易収支の赤字が多過ぎるので、第一次所得収支が黒字でも結局経常収支は万年赤字という状態です。
日本は、最近は原油など海外資源の高騰もあり、貿易収支も時々赤字になったりしますが、ほぼトントンで、第一次所得収支の分が安定して黒字ですから、万年黒字という状態です。

ところで、赤字国は赤字の分はどうするかです。どこからか借りないと資金繰りがつかなくなります。

アメリカの場合は毎年経常収支が赤字ですから結局どこからかファイナンスして来ているという事になります。

国際収支の構成項目にはもう2つあって、資本移転等収支と金融収支です。
資本移転等収支は、外国の固定資産取得や処分に関わるもので、金融収支は国際間の証券、債券、デリバティブなどへの投資の収支です。 

アメリカの場合は、基本的に経常収支の赤字を、この金融収支の黒字(資金流入)によってファイナンスするという事をずっと続けてきているというのが実態です。

つまりは、外国からの借金で資金繰りをつないでいるという事なのですが、普通の国では出来ないことが、アメリカだから可能になるということがあります。

理由は明らかで、今、アメリカは基軸通貨国です。ドルは世界の貨幣価値の標準(基準)と世界が認識しているのです。

考えてみれば、日本が大幅黒字を出した時、余裕資金をどこに預けようかということになります。いろいろ考えて、政府も金融機関もお金持ちの会社や個人も結局、アメリカの国債などの債券・証券を買うのが一番便利で安全かなという結論になるのでしょう。

世界の国の貿易収支の合計はゼロサムで、赤字国があれば必ず黒字国があります。黒字国は、余った資金の運用先としてドル債を選ぶことが多いでしょう。
かつては日本が米国債の最大の保有国でしたが、今は中国のようです。

政治とはまた違った経済の絡まり合いの中で、アメリカは赤字を減らそうと思っても、それが巧く行かなくても、現状で何とかなってしまうというのでしょうか。
しかし、いつまでもそれでいいという訳にも行かないのではないでしょうか。先行きが心配という意見もいろいろあるようです。

アメリカの貿易赤字史上最高

2022年02月09日 22時27分38秒 | 経済

アメリカの貿易収支の赤字が昨年1兆ドルを超え、史上最高を記録したういニュースが入って来ました。

一昨年より18.3%増えて1兆906億ドルになったそうで、そのほぼ3分の1が対中国の貿易赤字という事です。

アメリカの貿易収支は以前から赤字続きですから「バイ・アメリカン」などといったスローガンは随分長いこと聞いていますし、バイデンさんも国内の労働者のためにも国産品愛用を言っているようですが、国民は安くてよい外国製品を買っているのです。
 
国民は労働者であると同時に消費者でもあるわけで、労働者としては国産品を買ってほしいけれども、自分がモノを買う時はやっぱり安い方がいいという事で中国製ということなのでしょうか。

トランプさんなら一方的に「中国はアメリに物を売って儲けている」「お陰でアメリは損ばかり」と理屈抜きで国民を煽り、また多くのアメリカ人も、多分自分も中国製品を買いながら「中国はけしからん」と信じてトランプさんを支持するのでしょう。

バイデンさんのように、真面目に考えれば、結局アメリカの製品の競争力が落ちているからという問題の原因を見て、財政政策を活用してアメリカの生産力を立て直そうとするのですが、大幅な財政赤字には反対という意見もあり、本当に大変です。

今は昔ですが、アメリカも1960年代辺りまでは、圧倒的な生産力、競争力を持ち、覇権国、基軸通貨国として君臨したのですが、60年代後半になりますと、先ず雑貨などの軽工業製品から香港や日本の製品が安く品質も向上し「 青い目をしたお人形は アメリカ生まれのセルロイド」などと歌われたアメリカ製品に追いつき追い越し、その勢いは、繊維製品に及び、更に鉄鋼などの基幹材料から自動車、半導体におよびました。

こうしてアメリカ製品の国際競争力は低下を続けているので、アメリカの貿易赤字は放置すればますます大きくなります。

これに対してアメリカのとった政策は、為替政策です。1970年代に入ってまず、アメリカは、固定相場制を止め、世界は変動相場制になりました。
競争力の強い国の通貨は高くなり、弱い国の通貨は安くなるといことで、アメリカは競争力を回復しようとしたのでしょう。

然し為替レートはマーケットで決まりますから、必ずしもアメリカの望むようにはいきません。
一方日本などは、競争力を磨き、激しくアメリカを追い上げ、日本はGDP世界第2位になりました。

貿易赤字がなかなか減らないアメリカのとった政策は日本に円高を認めさせることで、これは1985年のG5でプラザ合意として日本も了解し、その後2年間で円は対ドルで2倍に切りあがり、日本は競争力を失い長期不況に陥って未だに経済低迷です。

アメリかの赤字は少し減りましたが、その後アメリカを激しく追い上げているのは中国です。人口14億の超大国で、急速に経済を伸ばしGDP世界第2位になり、世界の工場といわれ、アメリカの貿易赤字の最大の原因国となりました。

アメリカは中国にも、人民元の切り上げを求めましたが、然し中国は日本の経験を学び応じませんでした。結果は米中貿易戦争に突入ということでしょう。

冒頭のニュース「アメリカの貿易赤字史上最高」というのは、こうした状況の中で起きていることです。
このまま推移すると、どういう事になるのでしょうか、もう少し見ていきたいと思います。

2021年12月、年末の消費も振るわず

2022年02月08日 15時42分01秒 | 経済
今日、昨年末12月分の「家計調査」の結果が総務省から発表になりました。

デルタ株が予想外の沈静化を示していたこともあるので、家計の消費支出も少し活発になったのではないかと思って早速見てみましたが、予想は当たらず、家計は矢張り引き締め基調を維持していました。 

以下、家計支出の名目値について、対前年比の伸び率を中心に見ていきます。消費者物価はあまり動いていませんし、家計支出の感覚は主に名目値で実感されるものですから、数字は名目値の対前年同月比(%)でとっています。

2人以上所帯の消費支出は、デルタ型の中心の第五波のピークだった8月から、マイナス3.5%、マイナス1.7%、マイナス0.5%、マイナス0.6%、プラス0.7%(12月)とずっと前年同月より減少で、年末だけ多少頑張ってみたといった感じです。

年末商戦の12月がの値が1%以下ですがやっとプラスというのが、デルタ型の感染の沈静化と年末(忘年会?)を象徴しているとも思えますが、まさに控えめな消費増です。

この辺りは、オミクロンもあるし、ポストコロナを見据えても、単純に景気が良くなるとは期待できないという最近の日本人の将来を警戒する感覚の表れのような気がして、やはり消費不振の克服は容易ではないなといった感じがするところです。

この点は収入と支出の双方が見られる2人以上勤労者所帯についても言えそうです。
勤労者世帯の昨年8月から12月の収入と消費支出(名目値)の対前年同月比を並べてみます。

       8月  9月 10月 11月 12月
実収入    4.7% 2.7% 0.5% 1.8% 5.5% 
消費支出  -3.4% -2.8 0.1% -0.4 3.1%

勤労者世帯の実収入はずっと対前年で増加です。12月5.5%増はボーナスが前年より多かったのと配偶者の収入が増えたことが大きいようです。

しかし消費支出は常に実収入の増加を下回り、実収入が増えても消費支出を減らしている月が目立ちます。
コロナのせいだけではない消費抑制、将来不安(老後不安)に備えるといった意識は相変わらず強いといった感じです。

結果として12月の2人以上勤労者所帯の「平均消費性向」も前年12月の38.6%から、37.3%に下がっています。

今年の春闘では賃上げ幅は多少大きくなるという予想が多いようですが、それで(GDPの最大の構成要素である)個人消費支出が増えるだろうという単純な発想では今の消費不振の解消策にはならない可能性が大きいような気がします。
また1月からの平均消費性向の動向も、確り見ていきたいと思います。

日本の 経済回復を本音で考えよう

2022年01月22日 18時01分06秒 | 経済

日本(世界も)当面する最大の問題はコロナでしょう。オミクロンの次に何が出てくるか誰にも分かりません。ギリシャ文字もまだオメガまで残っています。

しかし経済は経済で、日本の場合は今までの経済政策ではだめという事は解っています。それならば「何が」が必要なのですが、「新しい・・」だけでは誰にも解りません。
政府も、学者も、国民もみんなで一緒になって、自分のことですから真剣に考ええなければなりません。

このブログでも「少し賃上げをした方が」と言う示唆をしました。しかしそれは必要条件の1つで、十分条件ではありません。

国会の議論を聞いていると、政府が赤字でもどんどんカネを出せば景気は良くなるという意見が殆どで「200兆円出せばいい」などという意見もあります。多分経済とはなにかを全く知らない人なのでしょう。 

今迄も、政府は一律10万円給付をはじめとして、色々な名目でずいぶんおカネを出しました。しかし景気は少しも良くなりませんでした。
コロナでみんな動けないのだからカネを使わないのは当然という事もあります。しかし日本人は、実は、コロナの前から金を使っていないのです。

カネが動いているのはマネーゲームなどで、一律10万円給付も多分7~8割は銀行預金になって、その行く先は金融市場のようで、お陰で日銀の資金循環表によれば、日本の個人貯蓄は2000兆円になりそうだそうです。

日本人は大変なお金持ちなのです。コロナの前も1800兆円と言われていました。世界トップクラスの個人金融資産を保有する国なのです。

それなのに、日本人はカネを使いません。カネを持っている人がカネを使わないと経済というものは動かないのです。これは当たり前のことです。

みんながケチで、おカネを使わなかったら何も売れません、売れなければ作りません。有り余ったおカネは金融市場で空中戦、実物経済はそっちのけで、銀行や証券の口座の残高が増えるのが最大の楽しみ・・・。これでは増えるのは金融資産だけです。

何故こんな事になってしまったのでしょうか。
原因は大きく2つあるように思います。
一つは、今の日本人にとっては、老人にも若者にもかなり一般的なことですが、少子高齢化が進んでだんだん公的年金等があまり宛てに出来なくなるので、若いうちから自力で貯蓄して老後に備えるという考え方が広く一般化していることです。
結果的に消費が伸びないので、消費不振で経済が停滞するという現象が顕著です。

もう一つは、所得税制のフラット化に加えて、30年に亘る長期不況で、就職氷河期などもあり、非正規労働の増加などの結果、日本社会全体が所得格差や資産格差の大きい格差社会になって来た事です。
結果的に金持ちは投資や投機で資産を増やすことに熱心になり、所得の少ない人が100%消費しても、大した額にはならないという、矢張り消費不振で経済が停滞という現象です。

現実にはそれにコロナが追い打ちをかけ消費が伸びないのですが、コロナによる分は、コロナが収まれば忽ち回復するでしょうが、最大の問題は上記の2つの消費不振です。

ハッキリ言えることはこの2つを解決しない限り、日本経済の活性化は至難という事でしょう。