tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

人材と人財

2007年05月31日 22時31分03秒 | 経営

人材と人財

 もともとの言葉は「人材」ですが、人材というのは単なる労働力とは違った意味を持ってる言葉でしょう。労働力の中ででも、何か特に優れた能力を持っているとか、将来そうした能力を発揮する可能性を秘めている素材とかいった労働力が、きっと何か良い仕事をしてくれるだろうと期待されて人材と呼ばれるのではないでしょうか。

 この人材というい言葉が、最近良く「人財」と書かれて使われています。時に説明もしてあって、「当社では、従業員を単なる素材とは考えていない。企業の大切な財産という意味で「材」ではなく、「財」を使うことにしている。」というようなことが述べられています。確かに英語でもヒューマン・キャピタルという言葉もありますし、人間を大事にする日本企業ならではの表現だと感じるところです。

 これはこれで大変よろしいのですが、これに対する反論も聞かれます。「財」というのは、貝偏だから「カネ」のことだろう。人間をカネにたとえるのは、日本的経営のようなカネよりも人間を大事にする経営思想からすると適切とはいえない。」というような趣旨の反論です。

 「でも、木材よりカネのほうがいいだろう。」とか、「材というのは木偏だが今日では特に木を意味するものではない」などという議論になると、さてこれは困ったことだというようなことになってしまいます。

 ところで先日中国に行きましたら、中国では、日本の「人材」や「人財」に相当する言葉は「人才」でした。今の中国は、難しい漢字を簡単な漢字や略字に置き換えて使っていますが、この「人才」もうまいものだと感心した次第です。

 「人材vs.人財」論争が激化するようでしたら、いっそ「人才」はいかがでしょうか。

 


NPO「いたごち」と食育

2007年05月24日 22時56分44秒 | 食育

NPO「いたごち」と食育

「いたごち」というNPO法人があります。「いたごち」というのは「いただきます」「ごちそうさま」の意味だそうです。健康に関することをいろいろやっているようで、HPもあるので見てみると。食べ物と健康や、ウォーキングなどいろいろ出ています。

 本来が、食事のときに「いただきます」と「ごちそうさま」をきちんと言いましょうという趣旨のNPOだそうですが、私も大賛成です。食事の前と後に、こうしたことをきちんと言うのは、私の知っている範囲では、日本のほかにありません。フランスでは「ボナペチ」というではないかなどというご意見もあるでしょうが、「いただきます」とは天と地ほどの意味の格差があります。

 というのも、昔は、多くの親が、「いただきます」の意味を子供に教え、それが立派な食育、ひいては家庭教育、子供の人格形成に役立っていたと思うからです。

 「いただきます」の意味は、勿論、食事を用意してくれた人への感謝もあるのですが、その奥には、もっともっと深いものがあります。われわれの食べ物になっているのは、動物や植物です。その生きていた動物、植物の命をわれわれがいただいて、初めて、われわれが生きることが出来る、だから「食物の持っていた命を私がいただきます」という心からの感謝の気持ちを表す言葉だと昔から日本人は教わってきています。

 すべての動植物の命に等しく「霊」を感じる日本人の繊細な心が、こうした言葉になっているのでしょう。そして、改めてそれを認識しなおすことが、今日の世の中で「生命連鎖」についての理解を深め、命の尊さを知り、人間の生き方や、 地球環境問題について考えることにも繋がっていくわけで、これはまさに「食育」の基本ではないでしょうか。

 

 


ファンドの増配要求

2007年05月17日 21時41分16秒 | 経営

ファンドの増配要求

 株主総会がだんだん近づいてきます。最近の新聞記事を見ていて気になるのは、上場企業の株を取得した○○ファンドといったようなところが、企業に増配要求を突きつけるといった動きです。

 ファンドにしてみれば、手っ取り早く収入を得るのは、増配させるということでしょうが、問題は、そうした増配要求が本当に経済社会の役に立つのか、それとも単にファンドが安易にカネを欲しいからか、どちらの意図から生まれているかです。

 多くの日本企業はまだまだ財務体質が弱いことは世界的にも知られています。しかも、資源も何もなく、人間の働きによる生産性の向上だけが命綱の日本の経済・経営です。軍事力はもとより、政治力にもあまり頼れない日本企業なのです。国際競争の中で生き残るにはコストダウンと生産性向上しかないのです。

 失われた10年の中で労使協力してコストダウンをし、ようやく収益が上向いてきた日本企業ですが、この収益向上による資本蓄積は、生産性向上を支える技術開発に振り向けて、初めて世界をリードする生産性向上、国際競争力確保が可能になります。特に昨今の地球環境問題も含め、技術革新のグローバルな急展開の中では、資本蓄積→開発投資が企業の将来を明確に左右します。

 その大事な資本を、ファンドに配当してしまったらどうなるでしょうか。ファンドは10年20年株主でいてくれるわけでありません。配当が増えて株価が上がれば株は売ってしまうでしょう。残るのは資本蓄積の不足で、技術革新投資に遅れた日本企業です。

 配当というのは、法人税を払った後の利益の中から払うものですから、ほぼ2倍の経費負担に相当します。労使で一生懸命経費を節減しても、その効果は雲散霧消です。それなら、配当を増やす分の2倍人件費予算を増やして賃上げしたほうが、企業の将来にとってはまだましかもしれません。このあたりは、労使で協力してよくシミュレーションして、企業の将来、雇用・賃金の将来を考えてみたらいかがでしょうか。◇


アメリカ経済好調の秘密

2007年05月08日 22時54分05秒 | インポート

アメリカ経済好調の秘密

 日本経済は、長期低迷を脱して史上最長の好況ということになっていますが、アメリカ経済にはとてもかないません。アメリカ経済は、グリーンスパン連邦準備制度理事長の絶妙といわれた金融政策に支えられ、さらには当初危ぶむ声もあったバーナンキ議長の下でも相変わらず好況を続けています。

 今年の暮れには低迷の可能性もなどといわれましたが、このところまた強気が目立ち、株価の史上最高をマークしているようです。

 経済運営というものはやりようによってそんなに巧くいくものかと感心したり、日本でも出来るのかな、出来るならぜひやってほしいなどという希望もあるようですが、よく考えてみるとアメリカの好況は、どうもアメリカしかできないもののように思われます。

 理由は簡単で、通常、経済が好調であることの最大の条件の1つである「国際収支の健全性」(黒字基調であること)がアメリカでは必要ないことになっているからです。

 通常は家庭でも国でも、支出が収入を上回ったら「これは大変だ」と生活を引き締めます。つまり不況になります。理由は生活費が払えなくなるからです。ところが、アメリカは巨大な国際収支の赤字を積み上げながら、繁栄を続けています。なぜでしょうか。

 アメリカでは、「アメリカが赤字になれば、どこか他の国が黒字になっているはずだ。その黒字がアメリカに還流すれば、アメリカは使う金に困らない。」と考えられているようです。

 確かに、かつて対米大幅黒字の日本も、現在大幅黒字の中国も、アメリカの国債(財務省証券)をたくさん買っています。つまり、喜んで黒字分をアメリカに貸しているのです。当面返してもらうつもりもないようです。返してもらっても代わりにどこで運用するか困るからです。

 赤字でも、資金繰りに困らないから、どんどん需要(消費や投資)を刺激して好況を維持する。これなら経済政策もかなり簡単なものになるようです。

 

 


個人情報と墓地

2007年05月03日 13時57分25秒 | 社会

個人情報と墓地

 最近叔父のお墓参りに行きました。親戚の家に電話して霊園の名前と場所を聞いて、霊園にたどり着きました。10年ほど前、奥さんが亡くなったときに一度来ていましたが、その後、山の斜面を開発して随分広くなったようで、様子も変わっているように思われたので、本堂へ行って、これこれの家の墓だどの辺ですか、と聞いたところこんな返事が返ってきました。

 「墓地の場所は個人情報に関することなので、それは教えられません。法律で決められていて、教えてはいけないと通達がきているので、ご親戚でもどなたでもだめです。」ということなのです。

 さてこれは困ったと、早速親戚の家に電話しましたが、留守です。10年ほど前の記憶を頼りに端から探していたら日が暮れてしまうだろうし、2時間以上かけてきたのに、お参りしないで帰ったら、もう一度来なければならない。さてどうしたものかと考えているうちに、最近の個人情報に関する考え方は少し行きすぎじゃないかなどと考えはじめました。

 墓の場所を教えたら、どういう問題が起こるのだろうかと考えても、墓に呪いをかけて故人を浮かばれなくするという時代でもなかろうし、あまり問題はないような気がします。しかもこれは個人情報ではなくて「故人情報」じゃないか、何が問題なんだ、とか、交番に行って、友人の家の場所を聞けば親切に教えてくれるのが普通だが、生きている人の住居を教えるほうが墓地の場所を教えるよりよほど問題ではないか。そのうちに交番に行っても家を教えてくれなくなったり、町内の家の場所を聞かれた教えたら、個人情報漏洩の罪で罰せられたりすることになるのだろうか、などと考え、何か馬鹿らしくなってきました。

 結果的には、10年前の記憶を頼りに、時間をかけて、墓の場所は見つかったのですが、こういうときには故人のお引き合わせというべきなのでしょうか。

 墓の場所を教えないように通達か来ているというのは法律か条例かわかりませんが、ご存知の方がいらっしゃったら教えていただきたいものです。日本人は何かを考え始めるとそちらに振れすぎる癖があるように思いますが、かつての近所同士みんな知り合いという社会から、隣にいてもなるべく知らないようにしようという、いわゆる匿名社会になりつつある日本、そうした、どちらかというと本来の日本文化に似つかわしくない匿名社会を前提に、諸種の迷惑行為や犯罪を防止するために作られた個人情報保護法というものの性格や意義をを考えると、何か言いようのない違和感を覚えるのは私が歳をとったせいでしょうか。


中国の最低賃金大幅引き上げ

2007年05月01日 14時03分47秒 | 労働

中国の最低賃金大幅引き上げ

 昨年来、中国では最低賃金の大幅引き上げが行われているようで、中国に進出している日本企業でも気にしているところが多いようです。

 上げ幅は大変なもので、上海や北京などの先進地域では一桁ですが、東北部や西の内陸地域、南の経済開発が遅れている地域では30から40パーセントの引き上げになっているようです。

 1994年、人民元の為替レート一本化(実質大幅切り下げ)以降、賃金の上昇を抑え、物価上昇を抑制して「中国はデフレです」などという声が聞かれる様な状態を続けながら、圧倒的な低コストで、圧倒的な国際競争力を維持し、世界中に物上昇価抑制の効果をもたらすほどの影響力を持った中国ですが、このところ、政策変更の動きでしょうか。

 こうした最低賃金の大幅引き上げについての正式な説明はなかなか聞こえてきませんが、「中国はもう低賃金国家ではないという意思表示ではないか」とか「国内で発生している大幅な所得格差を放置すれば社会不安が激化しかねない」などの論評が聞かれ、特に後者は、中国通の人のなかでも多く支持されている見方のようです。

 しかし日本の進出企業も気にしているように、大幅な最低賃金の引き上げは、企業経営の視点からは大きな問題でしょう。そんなに大幅に引き上げられた賃金を、経済開発の遅れた地域の企業は支払えるのだろうかと誰もが考えます。中国は共産党一党支配の国ですから、政府が決めた最低賃金を企業が払えるように、その地域に政府が大規模な投資をしたりすることも可能でしょう。しかしそうしたことをいつまでも続けるわけにはいきません。

 巨大な国の巨大な実験ですが、最近、最低賃金の大幅引き上げ論が出ている日本としては、中国の今後を十分注視する必要があるのではないでしょうか。