tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

令和3年度(2021年度)の政府経済見通しを見る

2020年12月30日 23時50分19秒 | 経済
令和3年度(2021年度)の政府経済見通しを見る
 いよいよ明日は大みそかですが、今年の日本は、コロナにかき回されて、何かすべてやりかけなのに、暦だけは確り年末で、この1年の纏めとか来年の見通しとか全くわからない中での年越しのような感じです。

 それでも政府の来年度経済見通しは、一応出ていますので、これは年度ベースですが、政府がどの程度のことを来年度について考えているのか、ご参考までに見ておきましょう。

 日本のGDPは、来年度政府経済見通し(名目値)によれば、
令和元年度  559.7兆円 (実績)
令和2年度  536.1兆円 (実績見込み)
令和3年度  559.5兆円(見込み)
 という事になっていまして、今年度は4.2%のマイナス成長ですが、来年度は4.4%の成長で、ほぼ昨年度のGDPに戻るということになっています。

 いわば、今年度はコロナ禍で苦しみましたが、来年度にはその落ち込みを埋めて昨年度並みの水準に戻ると見ているわけです。

この回復を支えるのは何かと主要項目の伸び率を見ますと、
民間最終消費支出  4.0%
民間住宅      2.7%
民間企業設備    3.2%
財・サービス輸出  12.5%
という事で、抑えられた消費が回復する事、それに輸出主導的な形になっています。
 しかし、民間の需要は、消費が伸びると言ってもGDPの成長の4.4%には追い付いていないのです。

 では何で4.4%主張するのかといいますと、これは成長寄与度の方に出ていまして、
内需寄与度      3.6ポイント
 (うち民需寄与度   2.6ポイント)
 (うち公需寄与度   1.0ポイント)
外需寄与度      0.7ポイント
という事で、合計が4.3%(四捨五入のせいで0.1ポイントのずれと思われる)になるわけです。

 つまり、民間の力だけでは 2.6%成長しかできないが、政府財政で1ポイント分支出、貿易黒字が0.7ポイント分助けてくれて、漸く4.4%成長が達成出来ているということになっています。

 今年度の実績見込みでは、民需寄与度はマイナス5.0ポイントでしたからその半分強復活するという見通しで、政府支出は今年度も来年度も同じ1.0ポイント、後は外需(輸出―-輸入)がふえるということになっています。

  来年度については、そのほか消費者物価上昇率0.4%、GDPデフレータ0.3%と物価上昇率はかなり低めの見通しです。

 民間の調査機関などの成長率予測は、もう少し控えめのものが多いようですが、政府の数字には、最近往々希望的要素が入り込むようですから強気です。

 実際には、コロナ第3波の行方、ワクチン普及の見通しやその効果、そして、東京オリンピック、パラリンピックが出来るかどうかといった難問がありますので、どうなるのでしょうか。

 今年は何か、日本ではあらゆることがやりかけで年を越してしまうようですが、まさに心から、来年は、もう少し落ち着いて、ある程度先の見える年になってくることを、皆様とともに願いたいとおもっています。
・・・・・・・・・・・・
 今年の後半のこのブログでは、自分の関心に偏った論考が多かったようで反省していますが、そこで得たものも含めて、気軽に読んで頂けるようなブログにしていきたいと思っています。

 来年も、何卒、宜しくお願い申し上げます。

土地と株:バブルにもいろいろあって・・・

2020年12月29日 22時59分20秒 | 文化社会
土地と株:バブルにもいろいろあって・・・
 今日も日経平均は上がってバブル崩壊以来の最高値を更新しました。
 コロナのお蔭で経済成長率はマイナスなのに、こんなに株が上がるのはバブルだという方も増えています。
 
 素人の常識からすれば、経済がリーマンショックを上回るような落ち込みをしている中で、株だけが順調に上がっていくというのは「やっぱりバブル?」と考えるところですが、証券界の専門家はだいたいバブルとは言わないようです。

専門家が「バブルではない」というのだからバブルではないのかというと、経済学者の中には、「政府と日銀がこれだけの赤字財政、目いっぱいの金融緩和をやっているのだから、株が上がるのは当然、実体経済と全く違った方向を向いているのだからこれはバブルです」という方もいます。

 30年前、日本はバブルの崩壊を経験しました。1990年には株の暴落、1901年には地価の暴落が始まりました。日本経済は平成長期不況に入りました。

 この時のバブルは株、土地、書画骨董、ゴルフの会員権、そのたいろいろなものが値上がりしました。中でも、 最も日本社会に問題を起こしたのは「地価の上昇」でした。

 当時思ったのは、「株やゴルフ場の会員権が値上がりしても、それで一般サラリーマンに実害があるとは限らない」しかし、「地価が上がると、若いサラリーマンは家が持てなくなる」つまり「サラリーマンの生活設計そのものが成り立たなくなる」もともと「人間は土地の上に住まなくてはならないのだから、生活の基盤である土地を投機の対象にして、マネーゲームをやるのは良くない」だから「政府は地価のバブルだけは起きないようにすべきではないか」といった事でした。

 今回の株価上昇を見ますと、株の上がり方も為替の動きを見ながらかなり慎重ですし、地価上昇は一部に限られ、ゴルフ場、リゾート会員権、書画骨董など特に目立った動きはないようです。おそらく前回のバブル崩壊の経験から多くのことを学んでいるのでしょう。

 それにしては株価だけが例外的に上っているのはなぜかといことになりますが。そこには前回のバブルと違った特殊な状況があるからと言えそうです。

 前回は、 土地神話があり、地価の上昇は企業の含み益を大きくするという事も踏まえて、企業収益(特に大銀行の)の好調、それを支える日銀のアメリカの示唆による金融緩和につられ、専門家から素人まで、投機に参加したようでした。
 今回の株高のベースは、円高阻止のための異次元金融緩和と政府の国債大量発行を日銀の既発長期國債購入で可能にすると同時に、アメリカの量的緩和に対抗するための日銀のETF購入という、いまの日本に絶対必要な為替政策に乗ったものです。

 そんな意味で、今回の株高は、国際情勢にも振り回されかねない微妙な問題も含みながら、日銀の上場企業の大株主化を見込んだ、いわば玄人だけの舞台という事になっているのではないでしょうか。今回の相場では、素人が大儲けという例は余りないようですし、 GPIFでさえ簡単に利益は出せないようです。

 いわば、投資専門機関、あるいは玄人筋中心の限られたバブルでしょうか、ただこの株高を何としても維持したい政府のNISAやiDeCoの推奨もあり、経済政策がうまくいかず、賃金も上がらない中で、自助努力で資産蓄積をという政策が、今後どの程度のものになるかこれも見る必要があるのかもしれません。

 しかし、歴史の経験から言えば、株式市場の盛況は、 所得格差、資産格差の拡大という結果が一般的なようですので、経済政策の王道としては、もう少しまともなものが次第に必要になるように思われるところです。

 バブルというのは、潰れて初めて分かるという事が多いようですが、今回は、コロナ後の経済回復、恐らく国際的に同時的なものになると思われますが、その中で日本経済も成長軌道を取り戻すという「将来の回復の先読み」というかたちで、「バブルじゃなかった」 と巧く終わる事できればベストでしょう。

 問題はそのために、今の政府に何ができるかという事のようです。

民主主義社会の成立条件としての政党政治

2020年12月28日 20時50分38秒 | 文化社会
民主主義社会の成立条件としての政党政治
 私はもともとが、政治は、あまり勉強したこともありません。
 ところが今、日本では政治が大問題になっていますし、アメリカでも選挙の結果は出ましたが、トランプさんの残した政治問題はいろいろとこれからも大変でしょう。

 大学には大体政治という専門分野があって、先生は研究と教育に精を出し、学生は一生懸命勉強しています。
 一方、現実の政治は、国家を運営する人(たち)とその国に住む国民が日々直接に関わりを持つ日常の生活分野の問題でもあります。

 その意味では、学問としての政治はそれとして、国民の誰もが政治の影響を大きく受けるのですから、より良い政治の在り方について、ある程度の常識と、現実の政治についての判断力を持たなければならないのでしょう。 
 エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」をひくまでもありませんが、国民がそれぞれに自分なりの判断をせずに(出来ずに)、他人の判断に従うようでは、民主主義は成り立たないのでしょう。

 最近、ポピュリズムが民主主義を破壊しているという意見は多いようですが、ポピュリズムというのはもともと「人気」がべー スで、人気というのは浮気者ですから、ミスコンや株価と同じで、急騰したり暴落したりするのです。

 ところが政治は国民の実生活に直結していますから、それでは困るのです。
 例に引いては恐縮ですが、「アメリカ・ファースト」で人気が出ても、まともな政治が出来ない人が、ポピュリズムに乗って大統領に当選する場合もあるのです。

 政治というのは、国民生活に密着ですから、「安定」が第一義でしょう。GDPや物価、社会保障や賃金水準がジェットコースターのようでは、国民の生活には大迷惑です。

 前回の、民主主義社会には二大政党が望ましいというのもその視点からですが、それが望まれるのは、古今東西を通じて、大方何処でも共通する一つの法則があるからです。

 ではその法則とは、「権力は腐敗する」という法則です。例外は極めて少ないようです。私の知る限りでは シンガポールのリークァンユウさんは素晴らしい例外です。

 共産党一党独裁の国は別としても、民主主義の形を取る国においても、権力が腐敗し、国の行き先がおかしくなる(なった)例は、 枚挙に暇がありません。
 今日の世界を見渡しても、ロシア、ベラルーシ、ベネズエラ、中国の支配下になった香港などなど、その在り方は、民主主義には馴染むものではありません。

 そして、困ったことに、腐敗した権力は、その腐敗の度合いに比例して権力維持への執念が強くなるようなのです。


 そこで本論に入ることになるのですが、多くの場合権力の腐敗が「避けられない」とすれば、民主主義のルールによって、腐敗に気づいた国民が、選挙によって政権の交替を実現するというのが、民主主義の独裁政治への変異を止める正常な方法でしょう。それが遅れると、暴動や革命や内戦が必要な状態になることが多いようです。

 そういう意味では、二大政党の対立という形で、政権の行き過ぎを適時に阻止するという方式が常に機能するアメリカやイギリスが独裁国家になる可能性は極小でしょうし、ヨーロッパの主要国も同様ではないでしょうか。

 多分、民主主義の成熟というのは、その国の国民が、どう間違っても独裁的な国の在り方は必ず阻止するという意識と行動を実現できること、それが国民の生活の中での常識になっていくプロセスの到達点といえるのではないでしょうか。

 その意味では、戦後常に一強多弱という政党の地図が変わらない日本というのは、成熟した民主主義国の中の例外適な在り方(自民党の中での政権交替で腐敗に対応)なのか、それとも成熟した民主主義国とは言えないのか、どう定義した良いのか迷う所です。

 考えてみれば、与党内部は安倍一強で官僚も含めて「忖度一色」になった現状は、かなり危険な状態なのかもしれません。

アメリカは良かった、日本は?

2020年12月27日 23時19分27秒 | 文化社会
アメリカは良かった、日本は?
 世界の今年の10大ニュースを挙げれば、その中には恐らく、「アメリカの政権交代」が入るでしょう。

 トランプさんも、自分の意識としては、アメリカのために頑張ったという気持ちなのでしょう。しかし、世界の多くの国や人々は、トランプさんのままでは困ったものだと感じていたのでしょう。
そして、最も大事なことは、アメリカの人達が、「これでは困る」と考えていていたのでしょう。

 アメリカの多くに人がそう感じていたという事は、すでに下院選で共和党が多数を取れず、民主党が多数を制したことに表れていたように感じられたところです。

 しかし本番の大統領選では、やはり現職の強みとうのがあるのでしょうか、大接戦というか、アメリカを二分しての大激戦になって、決着するまでには本当に大変だったようです。

 その経緯はともあれ、民主党が勝った、そしてバイデンさんが次期大統領に決まったという事は、世界にとっても良かったと思う人が多いのではないでしょうか。
 
 こうして政権交代が起きるのは、矢張りアメリカでは成熟した二大政党があり、4年に一度は政権交代のチャンスがあリ、国民にしてみれば、成熟した二大政党のどちらにでも、その時に応じ、政権を任せて安心できるという長い経験があるからでしょう。

 そんなことを考えながら、日本の政治情勢を見てみますと、これ迄もずっと政党の勢力の図柄は「一強多弱」でした。自由党と民主党が自由民主党になって以来、野党は離合集散を繰り返し、国民の意識の流れの中で時に政権を取ることはあっても政権党としての成熟や安定にはほど遠く、短命に終わり、再び離合集散をくりかえすといったことの繰り返しになってしまっているというのが現実です。

 客観的にみれば、いまの日本の政治情勢の中で、成熟した野党があり、これだけ大きな声になっている安倍・菅政権への批判を、巧みに掬い上げるような総合的な政策ビジョンを掲げ、国民に、コロナ征圧、低成長経済からの脱出、格差社会化の是正、老後不安・将来不安への対応の可能性などを、具体的で、極めて解りやすく、共感を得られるような形で訴えかければ、政権交代はかなりの可能性を持ったものになるでしょう。

 そうした目で見れば、今の野党のリーダーたちは、自分の党の存続には強い関心を持っていても、本来の目的、これからの日本をどう創るか、そのために何ができるかを国民に明示するところまでには、なかなか手が届いていないように思われます。

 今、日本国民の多くは、日本の先行きに多くの不安を持っています。そして安倍政権にその不安の解消を期待したのでしょう。しかし残念ながらドナルド・シンゾー関係も、アベノミクスもその解消にはつながりそうもないと悲観しているのです。
そこにコロナで、その対応もマッチ・ポンプだったり赤字国債大増発だったりで、将来不安は更に深刻化の様相です。

こんな時に野党が、成熟した二大政党の一方として存在してくれていたら、と思う人は多いでしょう。
 
今の日本の経済・社会の低迷は、自民党の責任という事になるのでしょうが、見方を変えれば、野党があまりに成長しないので、与党の緊張感が失われ、その結果がこんな状態という、野党責任論も可能という見方もできるのではないでしょうか。 
 
今の状態は、野党が一皮むけ、成長していくには、またとないシチュエーションだと思うのですが、何か少しは変化が起きるのでしょうか。

庶民には理解できない安倍さんのお話

2020年12月26日 20時44分59秒 | 文化社会
庶民には理解できない安倍さんのお話
 テレビで、安倍さんがサクラを見る会に関わる説明をしていました。何時も安倍さんは、言葉ははっきり喋りますが、話の内容は理解に苦しむことが多いのですが、冒頭からお詫びしますなどといっていましたが、中身は今回も同じでした。
 
 基本的には「全部秘書がやったことで私は秘書のいう事を信じていた」それで結局、国会も国民も騙したことになって「深くお詫びします」、しかし「私には法的責任はない」という事を回りくどく説明したという事でしょう。

 安倍さんは以前から、「私は法に触れるようなことはしておりません」と言っていますが、一国の総理の地位にある人がそれでいいのでしょうか。
 
 秘書が「うそ」の報告をしたのを鵜呑みにして、「国会でその通りの説明」をしたというのですから、会社で決裁書に、いわゆる「眼の不自由な人」判を押して、「中身は見なかったが部下を信用した」と言ってもそれは通らないでしょう。

 同様の質問は国会の場でもありましたが、「信用していいた」のだから自分には責任がないで通るのでしょうか。
 本当にコロっと騙されて、国会や国民に間違ったことを堂々と答えたというのであれば、騙されたことが解った途端、烈火のごとく怒り「総理の俺に国会でうその答弁をさせるとは何事!」と即座に放逐でしょうが、何の注意もしないようです

 こんなことは前にもありました。加計学園の件ですが、「総理が『いいね』とった」という加計氏の嘘で、大学が出来たという事になった時も、安倍さんは加計氏に文句や注意をしたとか激怒したとかいう報道は全くありませんでした。 

 それは安倍さんが細かいことは気にしない「大人物」だからでしょうか。そんなことはなくて、国民よりも友人や秘書の方が大事だという事でしょう。あるいは、すべては打合せ済みで、お互い解っていたことだから、怒る必要はないという事かもしれません。
 客観的に見ている我々にはそんな風に感じられるのではないでしょうか。

 それにしても数100万円といった額のお金を銀行から降ろして秘書に預けておくのですから、日常の活動の中で、随分なカネが動いているわけです。

 秘書に預けた分が足りなくなれば、また安倍さんが銀行から下ろして秘書に預けるのでしょうが、そんな時に、金額が大きいが何に使ったのかぐらいのことは秘書としては、必ず説明するのではないでしょうか。秘書の説明がなければ、普通は安倍総理が「主な支払いは何?」などと質問すると考える方が常識的です。

 銀行から下ろすのも、振込みか現金ですが、現金だと50万円以上はなかなか下ろせません。振込なら「どこからどこ」と分かりますし、現金でも入出金の記録は残ります。

 安倍総理は、ご自分の預金通帳からの出金の行方について記録について無頓着で、全く見ないという事のようですが、政治家にとって、票とともに最も大事な金について、チェックしないという事ですと、鷹揚というよりは、金銭管理の感覚の欠如、あるいは監督不行き届きという事になるのが当然でしょう。

 政治の世界の事は良く解りませんが、いくら説明を聞いても、我々庶民の感覚では全く理解不能の事ばかりです。

 「疑わしきは罰せず」というのが刑法の原則だそうですが、これだけの複雑で大きなカネの動きの中で、総理と秘書との関係が如何なるものであったのか何も証拠が出て来なかったという事は、逆に、余程確りした打合せが出来ていないと不可能ではないかなどと、ついつい勘ぐってしまうのは、これ正に「下司の勘繰り」なのでしょうか。

 今回もまたこんなことを書いてしまいましたが、一介の庶民がこんなことを書かなくていいような政治情勢、政治家が「李下に冠を正さず」に則った行動を心がけるような社会に是非なってほしいものです。

「親の代より貧しくなる」でいいのか

2020年12月25日 23時11分10秒 | 文化社会
「親の代より貧しくなる」でいいのか
 勿論家庭によって状況は違うのでしょうが、最近、我々の次の世代(50歳台前後)の人達から、「我々の老後は親の代より貧しくなる」という意見を聞きます。

 確かにこの30年という長い間、異常な低成長で、春闘も「定期昇給程度」に限りなく収斂しているような状態ですから、そんな声が聞かれるのも当然かもしれません。
 さらに、政府が年金財政の困難さを強調するほど、心配は募るようです。

 かつて、アメリカでもそういわれた時代がったようで、それは1980年代辺りの事のようです。
 その後アメリカはIT革命を起こし、そうした暗い雰囲気は消えたようですが、今に至るアメリカ経済が順調に成長しているとは言えないようで、トランプ政権の下でもぎくしゃくが随分目立ちました。

 おそらく、かつてアメリカを支えた工業地帯は「ラストベルト」になって、マイクロソフトやGAFAといった巨大企業が育ち、マネー資本主義が盛行する一方で、社会の冨が一部に集中するという格差社会化が進んでいることにアメリカの不安定の原因があるようです。

 日本を見ますと、経済成長率そのものがアメリカに追いついていない状況の中で、格差社会化が次第に進んでいるようです。
 格差社会化で富が一部に集中すれば、経済成長がなければ、一部の人以外の大多数の人たちはより貧しくなるわけです。

 こう考えてみると、何はともあれ、経済成長を取り戻すことと格差社会化を防ぐことの2つがまず必要という事でしょう。
 ところが、為替レートが正常化した後のアベノミクスの期間を見ましても、真面目で勤勉な日本人がみな経済成長を望みながら、どうも思うようにそれが実現出來ていないのです。
 
 実態を見れば、国民は将来不安から自助努力の貯蓄に励み、個人貯蓄の残高は世界有数ですが、そのカネが生きて使われ経済成長を実現するという循環になっていないのです。

 国民はカネを使わない、そこで政府がそれを借りて(国債発行)使い、経済成長を実現しようという事のようですが、多分、政府のカネの使い方が、いたって効率が悪く、経済成長に殆ど繋がっていないというのが低成長の原因でしょう。

 昔の日本には、米沢藩の上杉鷹山、長岡藩の小林虎三郎(米百俵の故事)もいましたが、いまの政治家は膨大なカネを使いながら、当面の人気取り、後追いのバラマキ給付ばかりに熱心です。

 日本の将来を見据え、経済を長期安定的に成長させるカネの使い方をご存知の政治家が早く出てくれないものでしょうか。

コロナ第3波の深刻化の原因は何処にあるのでしょう

2020年12月24日 22時46分59秒 | 文化社会
コロナ第3波の深刻化の原因は何処にあるのでしょう
 世の中、奇妙なことは沢山ありますが、今回のコロナ対策についての政府の発言や行動を見聞きしていると、ここにも随分奇妙なことがあります。
 
コロナ第3波は、予想外の深刻度です。毎日夕方のニュースを聞くたびに、最多数更新とか(今日の東京は888)、何曜日としては最多だとか、聞かされ、もうそろそろ減少傾向に入ってくれないかと思うのですが、この状況がいつまで続くのでしょうか。

 考えてみれば、この秋になってから、国民も些か我慢疲れでしょうか。少しは出歩いて解放感を味わいたいと思い始めたのでしょうか。それに呼応するかのように、政府のGoTo トラベルのキャンペーンが盛んになり、政府のお墨付きという誤解(?)もあって、盛り場や観光地は人出が一時かなり回復したようでした。

 「もしかしたら危ない」と言う人もいましたが、総理はじめ閣僚や自民党の要人は、GoToトラベルでの感染者は60人だとか100人以下などとテレビカメラに向かって言っていました。

 この発言には、私も引っかかって、そんな数字が取れるはずはないので、責任あるお方が数字を言うときには、数字の出所(根拠)を言うべきだとこのブログでも書きました。
 結局報道された範囲では、出所の説明はありませんでしたので、根拠のない数字を政府の要人などが言われるのは、困ったことだとだと思っていました。

 ところが現実の方は、11月辺りから感染者集が著増という形で、政府の分科会もとうとう我慢の限界にたっしたのか、GoToは中止すべきだと言うようになりました。そして結局は中止になったのですが、その際も菅総理は、GoToでコロナ感染者が増えたという「エビデンス」はない、と発言していました。

 「エビデンス」というのは証拠という意味でしょうから。おそらく、数字を言えば「出所は何処だ」と言われるので、言い換えられたのでしょう。「証拠はない」と言えば、GoToで増えたといった方で証拠を挙げて説明しなければならないので、説明責任の所在を置き換えるようにしたのかなと感じました。

 分科会は直接それには答えずに、感染は「人と人の接触」で起こるのだから、人が出歩かない事がこの際は大事です」という説明で、これはまさにその通りでしょう。

 総理は「証拠はない」といわれたあと出席した会議で、GoToトラベル中止を決めました。これは何とも奇妙なことでした。

 GoToトラベルが感染拡大につながらないのであれば、それを中止してみても感染拡大の抑制効果は期待できない可能性の方が高いという事になるはずです。

 いずれにしても、GoToトラベルは中止、再開のめどは立っていません。

 もしかしたら、これで感染拡大が収まらなければ、「やっぱりGoToトラベルのせいで感染が広がったのではなかった」ということで、GoToトラベルは間違いではなかったという説明が準備しているのかもしれませんが(これは憶測のし過ぎかな)、こうして、原因究明を「藪の中」のようなものにしてしまいまうと、国民にはの理解も納得もできない奇妙な議論の展開で、本当のことは何も解らないという事で終わってしまうことになリます。

 それにしても、慎重に考えて賢い行動を選べば、多分ずっと小さく抑えられたであろう第3波がこんなに酷い事になった原因は何だったのでしょうか。
政府のGoToキャンペーンのせいでしょうか、それとも、やはり国民の行動のせいで、国民の責任なのでしょうか。

政治が堕落すると国民も判断力が鈍る?

2020年12月22日 23時41分55秒 | 文化社会
政治が堕落すると国民も判断力が鈍る?
 アメリカはバイデンさんの勝利が確定したようで、恐らくアメリカ自身の良識も、また世界の多くの国々も、これで一安心という気分でしょう。
 トランプ政権の4年で、アメリカは分断され、アメリカの評価も随分落ちたように思いますが、これからは挽回でしょう。

 翻って日本を見ると総理大臣は変わりましたが、政治情勢は相変わらずです。モリカケサクラの問題は来年のお花見までも続きそうです。

 考えてみれば、この数年、国会の議論も、マスコミも、「モリカケサクラ」でどのくらいの時間とコストを浪費したでしょうか。(このブログも同罪ですが)

 もしその時間とコストが日本経済・社会の前進発展のために使われたら、日本経済も、もう少し高い成長率を達成出来たのではないでしょうか。
 
 平たく言ってしまえば、安倍さんと安倍事務所が当たり前の常識の範囲で行動していれば、サクラ問題などは起きず。国会が始まれば直ちにコロナ対策や予算の中身、日本経済の成長戦略を論じ、マスコミもその報道をし、国民も日本の経済社会の将来像の議論により興味を持つようになるのではないでしょうか。

 善悪はそれぞれの人間に判断できることなのですが、それを封じ込めて、「誰かの思いを忖度せよ。それが善だ」と思わせるところから、国会やマスコミの時間とコストの浪費が始まるのです。

 最後は法が裁くという状況に近づいていますが、トランプも習近平も三権分立を捻じ曲げようとしますし、それに使われるのが人事権というシステムです。

 そうなると、最後に裁くのは国民で、その手段は選挙です。今回アメリカはやっとまともな判断をしました。トランプさんの最高裁判事の保守派増強作戦は徒労だったようです。
 アメリカ国民はぎりぎりのところで正常化に舵を切りました。

 それでも、かなり多くの国民がトランプについていこうとしたようです。あと4年トランプ政権だったら、アメリカはどうなっていたでしょうか。

 日本もあまりに長く時間とコストの無駄でゼロ成長続けるわきにはいかないでしょう。
 人の意見を自分の意見だと思い込もうとする「忖度」を止めて、政治家も官僚も国民も、自分で善悪を判断することで、民主主義は生き返るのです。

 与党の中でも、官僚組織でも、もう忖度はやめる時期に来ているのではないでしょうか。
 本来人の心を思いやるという美徳に当てはまる言葉を、政治的に使うと、世の中が、いろいろと、おかしくなるようです。

『ジャパンアズナンバーワン』とE.ボーゲル

2020年12月21日 22時45分59秒 | 経営
『ジャパンアズナンバーワン』とE.ボーゲル
 『ジャパンアズナンバーワン』-Japan as No.1:Lessons for America -の著者E.ボーゲル氏が亡くなりました。90歳だそうですから日本流にいえば「天寿全う」でしょうか。

 あの時期にあの本を書いてくれたことは日本にとって大変有難かったと思います。ちょうど日本がほぼ成熟に達し、低迷する欧米経済をしり目に、独走状態だった1979年ですから、日本にとっては勿論、アメリカにとってもインパクトはあったと思います。日本語訳は70万部も出たそうです。 

 経済・経営に関して、日本の特徴を意識して書かれたものは、J.アベグレンの「日本の経営」、P,ドラッカーの一連の著作などありますが、掉尾を飾ってくれたのが「ジャパンアズナンバーワン」でした。

しかしその後の日本を見ると、1980年代の後半からは、バブル経済となり、90年代からはバブル崩壊と円高デフレ不況に陥り経済成長はほとんどなくなり、残念ながら今に至っています。

 長期不況のせいでしょう、日本的経営はこのところ人気がないようで、最近は日本政府のやっていることも「働き方改革」をはじめ、日本的経営などはすっかり忘れてしまって、欧米流の仕事中心の考え方を推奨しているようです。

 しかし、ボーゲルは日本的経営の長所を確り見ています。もともと社会学者ですから、日本的経営が日本の文化や社会の在り方をベースに成り立っている事を確り見ています。

 特に企業が、人間中心経営の意識のもと、新卒で採用した人材を、いかに大事に育て、終身雇用で面倒を見ることが企業発展の大きな力となっている点をきちんと見ています。

 この点アメリカとは社会文化的背景が違いますから、Lessons for Americaといっても、勿論アメリが真似しろと言っているわけではありませんが、アメリカで開発されたQC(統計的品質管理)が、 日本の現場にどのように導入されたかといった点には十分注目していたようです。(のちにアメリカに逆輸入されシックスΣになっています)

 ボーゲルの慧眼に気づき、日本に対して恐怖心を懐いたアメリカが、「プラザ合意」で日本に円高を仕掛け、日本追い落としに成功したという「憶測」すら私は持っていますが、日本政府も日本の労使も、もう一度、日本の社会文化的背景と日本的経営につて、徹底した共同研究ぐらいやってほしいものだと思っています。

日本の国債が紙屑になる条件(9)暫定的な纏め

2020年12月21日 00時01分43秒 | 経済
日本の国債が紙屑になる条件(9)暫定的な纏め
 いくら国債を増発してもインフレにならず、国債の価値も安定しているというMMTがどこまで真実かという問題を追いかけ、では日本の国債も紙屑にならないのかを種々検討してみました。

 まず基本的なことを2つ挙げるとすれば、
① 基軸通貨国であればその可能性は在り得る。
② 経常収支が安定して黒字であればその可能性はあり得る。
という2つの条件が考えられます。したがって、基軸通貨国でない日本が経常収支赤字国に転落すれば、円と国債価格が暴落する可能性はある、MMTは成立しないと考えられます。したがって、日本では、国債紙屑の心配には、未だ少し間があるでしょうが、ないわけではないという事でしょう。

 その可能性の原因を探せば、
① 国債発行の無駄遣いが多く、日本経済の体質強化に役立っていない。
② 国民は次第に政府を信用しなくなり、日本経済の先行きに希望が持てなくなってくる。
③ 当然起きるべき政権交代が起きない。国民が野党を信頼出来る状態にない。
といった状態が続くと、次第にその可能性が強くなる。

 現象的には、国の将来を担う産業が海外へ移転し、国内には技術開発力も、産業・企業の現場力も失われていく。つまり産業の空洞化が進み、消費面の活況が持続的な経済発展と勘違いされ、インバウンドやIRの活況が残るような形になる。

 先ずこんな日本経済になり、弱った体質のどこかに国際投機資本が風穴を開け日本売り、円、国債大暴落が起きるという形でしょうか。

 結局、極めて常識的な誰もが考える日本没落のシナリオになってしまいました。
 そこまで真っ直ぐに行くだろうとは考えたくありませんし、日本はどこかで別のシナリオを歩くのだろうと思っていますが、この30年間の経済成長なしの経験に鑑みますと、起こり得ない事ではないとも思ったりします。

 現に、最近のように巨大な国債発行をして、カネの使い方を誤り、逆にコロナを酷くするようなことでは財政の乗数効果はマイナスで、明らかに失敗のシナリオです。
 国債発行で得た金は、世界に先駆けてワクチン開発をするような研究の資金、保健所や医療体制の早急な整備に使うべきだったのでしょう。
 旅行や飲み会はコロナが収まれば自然に元に戻るものなのです。政府がカネを掛ける必要は全くありません。

 今の政府のやり方では、国債発行は親が事業に失敗して子孫に借金を残すようなものです。数十兆カネが後世の役に立たずに消えていくのです。

 土光臨調の時から、子孫に借金を残すなと言われています。しかし国債は国民の資産でもあるはずです。これを資産にするためには、財政支出が新しい研究開発や、社会基盤、生活基盤の整備を促進し、将来のGDPを増やしていくような乗数効果を生んで初めて本当の価値ある資産ということになるのでしょう。
MMTの言うように「いつでも日銀券に代えてくれるのだから安全」というのは「金勘定の上」だけで、実体経済とは全く関係がない話なのです。
 
 最後に、この膨大な国債発行残高をどうするかという問題です。
 これは国債残高が発散するから問題なので、収斂する数列であれば問題ないでしょう。
 現状の日本は、税・社会保障負担率は低いが、税・社会保障負担という形で取らずに、借金(国債)という形で国民から借りているというのが現実です。

 いずれ借金で賄う方式から税金で取る方式にと政府も考えているのでしょう。それはそれでもいいのです。
 例えば。10兆円増税しても、國民の払う授業料や医療費負担が10兆円減ればチャラです。10兆円がGDPを成長させて、春闘で賃金が上がればそれでいいのです。
 問題は、政府が無駄遣いするから国債残高が発散するのです。

 政府の無駄遣いをなくすためには、政府と国民が本気で議論し、納得しあう場が必要です。国会は政治家だけですから、どうしても思考に偏りがあり、無理のようです。
 多分必要なのは、税を直接負担する家計と企業そして政府の話し合いの場でしょう。

 かつて「ジャパンアズナンバーワン」などといわれた日本には「産労懇」という、政府、労働組内、経営者団体が頻繁に話し合う組織がありました。

 今の「決める政府」は、勝手に自分たちで決めて、理由は嘘で固めたり、説明を拒否したりするような状態ですから、結局、国債残高の年々増える数列は発散し、「国債紙屑」に近づいて行くしか無いのではないでしょうか。 

 ここで再び引かなければならないのは、聖徳太子の17条の憲法の第17条です。
「夫事不可独断」(それ事は独りにて断ずべからず)と書いてあります。

2020年10月「平均消費性向」対前年比で上昇

2020年12月19日 22時31分46秒 | 経済
2020年10月「平均消費性向」対前年比で上昇
 このところずっと政府の赤字財政問題を追って、MMT(新時代の貨幣理論)や「国債紙屑問題」を論じてきていましたが、気が付けば12月8日に10月分の家計調査が総務省から発表になっていました。

開いてみますと、10月に至って、家計消費に、微かながら変化も見て取れそうな気もしますので、遅ればせながらご報告申し上げます。

 新型コロナの勢いは止まりませんが、消費者・家計の方は、巣籠りや我慢に次第に疲れ、何か羽根を伸ばす対象はないかという感じも出ていたような気もします。
 そこに政府のGoToキャンペーンがあって、一部の人々の発散したい気持ちと重なった面もあるのでしょう。

 GoToの奨励で、旅行や飲み会に多少安易になり外出も増えたが、他方コロナも拡散するという面があったようです。しかし、家計の動向で見ますと、旅行や飲み会より確り増えたのは、いわゆる「巣ごもり需要」の方だったことも解ります(後述)。

 やはり我慢疲れがあるのでしょう。何かで少しは羽根を伸ばしたいという気持ちの表れでしょうか、10月の消費支出需要(二人以上世帯)は1年以上の前年比マイナスから、微かながらプラスになっています(下図)。

      2人以上所帯の消費支出の伸びの推移(対前年同月比:%)

               総務省「家計調査報告」

 流れを追ってみますと、昨年10月は消費増税による6月駆け込みの反動で前年比5ポイントほど減り、持ち直すかと思った所が年末年始の商戦が不発で、2月になって持直すかに見えましたがその後は、完全にコロナ対応に入って5月には前年比マイナス15%です。

 緊急事態宣言明けの6月、例の一律10万円支給集中の月は多少の効果はあったでしょう、然しワーケーションの掛け声も空しく夏季需要は低迷、GoToはあったものの、9月には前年比10.2%のマイナスでした。

しかし10月に至って様変わりで、前年比プラス1.9%です。
昨年10月は駆け込み需要の反動減でも前年比マイナス5%でしたから、9月のマイナス10.2%から10月のプラス1.9%への12.1ポイントの変化は、何か家計の意識変化を感じさせるように思えるところです。

 という事で、その中身を見ますと、最大の伸びは「家具・家事用品」で41.0%、第2位の保健医療の15.3%を大きく引き離しています。第3位は矢張り巣ごもり系の住居関係で13.7%です。

 マイナスになっているのは交通・通信と教養娯楽でともにマイナス3.9%、最大のマイナスは「その他の消費支出」で、交際費のマイナスが響いているとのことです。
 交通・通信はマイナスですが、その中でも自動車関係費はプラスです。公共交通は空いていて、車での移動が多いことは皆様ご存知の通りです。

 コロナからの防衛を十分に考えながら、その中での生活スタイルに対応する消費需要が増えているといった様相が見えてくるところではないでしょうか。

 ところで肝心の二人以上勤労者所帯の平均消費性向ですが、これは、可処分所得の増加2.1%、消費支出の増加2.3%で、このところ続いていた可処分所得増、消費支出減の殻を破って、僅かですが支出が所得を上回って伸び、平均消費性向は昨年の68.4%から68.5%と0.1ポイントですが上昇を記録しました。

 ごく微かな上昇ですが、コロナの猛威の中で、コロナ化を避けながら消費を伸ばしたという点では、何か、消費者・家計の「新しい生活の在り方を探そう」という気持ちの表れだと見られないこともないような気がしています。

 11月12月と、コロナ第3波が深刻になっていますが、今後の展開がどうなるのか、皆様の家計の消費の動向を反映する「家計調査]の統計数字で確かめたいと思っています。

日本の国債が紙屑になる条件(8)社会構造の部

2020年12月18日 22時43分51秒 | 文化社会
日本の国債が紙屑になる条件(8)社会構造の部
 今日の時点での日本社会の最大の問題は、いかにしてコロナの第3波を早期に食い止めるかでしょう。
 第3波を深刻にしているのが、政府のやることが、国民の望んでいることと食い違っている(GoToトラベル問題など)という困った事態です。

 しかし、もう少し長期で見ると、矢張り少子高齢化、人口減少の問題でしょうか。これも政府と多くの国民の意識にはギャップがありそうです。

 そしてもう一つ、最近コロナの中で問題意識が鮮明になって来たことに政府の意図するものではないと思いますが、結果的に格差社会化の進展があります。

 標記テーマに関して言えば、基本的には、私は日本の社会(国民)が自ら「国債は紙屑」になるようなことはしないだろうと考えていますが、これも政府如何という事になりそうです。

 国債紙屑の始まりはおそらく経済のインフレ化でしょうが、いま世界を見渡してそうした危険に直面している国は、主要国ではあまりありません。アメリカは危ない国ですが、基軸通貨国ですからドルの独歩安でインフレ進行といったことはないはずです。

 日本は現実には、そうした状態から最も遠い国という事になるのでしょうが、長い目で見て注意しなければならないことはいくつかあるような気がします。

 先ず、少子高齢化、人口減少の問題ですが、これを逆手に取って日本経済を住みやすい快適な経済にしていくロいう発想はすでに出ているのです。

 1917年春闘で、労使がともに、「人口減少を逆手にとって日本を住みやすい国にしていこう」と主張していたことをご記憶の方もおられると思います。
 政労使が本気で協力すれば、3者ですから「文殊の知恵」が出るでしょうし、今の日本の力をフル活用すれば、間違いなく国民の望むような結論が出ると思っています。

 次に、格差社会化ですが、これは長期不況の中で次第に進んできました。典型的には非正規労働者の増加(雇用の不安定化)が言われますが、賃金は上がらない、株価は上がるといった状態がこれに拍車をかけ、コロナ対策でも、本当に苦しい所には手が届かず、金持ちにまでバラマキ援助といった格差助長の様相が顕著です。

 かつては北欧と並んで世界でトップクラスの所得格差の少ない国といわれた面影はすでにありません。
 昔だったら、こうした問題は騒乱や革命につながったのですが(国債紙屑の要因)今は政権交代で解決するのが民主主義というものでしょう。

 そういう意味でも、日本経済が進む道を誤らないようにするには、政権交代ができるような社会・政治構造にすることが大事でしょう。

 さらに言えば、かつて石油危機の際に日本が世界に先駆けて官と民の話し合いと協力に成功し、世界が驚いたような「政労使3者の密接な意見交換」といった民主主義社会を安定させるための絶えざる努力が必要でしょう。

 かつての日本は、そのための仕組みをしっかり作り(産労懇など)、上手に活用していましたが今は全く違います。

 今の日本は、民間の意見はほとんど無視し、政権は権力を集中して、自分たちの思い付きを押し通すのが「決める政治」だと思っているようです。

 国会でも嘘の答弁から、今度は答弁を控えることにしたようですが、対話のない所に民主主義は成立しません。

 今の政府の態度は独裁政治への道でしょう、国民が止めない限り、何時かは本当に「独裁」「インフレ」「国債紙屑」の時代が来るというのが歴史の教えるところです。
・・・・・・・・・・・
 長い間駄文にお付き合い頂き有難うございました。次回は、何とか纏めにしたいと思っております。

日本の国債が紙屑になる条件(7)円レートの部

2020年12月17日 23時23分25秒 | 経済
日本の国債が紙屑になる条件(7)円レートの部
 円レートの問題は、もともと金融の部に属するのでしょうが、極めて重要な問題なので別にしました。

 今日のニュースに出ていましたが、FRBは金融緩和基調を長期的に維持すると表明したとのことです。
 一昨日、昨日辺りから、円レートが103円台の円高になり、だんだん102円に近づくような情勢で気になっていましたが、今日のニュースで、FRBの発言によるのかと納得した次第です。

 これも今日のニュースですが、アメリカ財務省はスイスとベトナムを「為替操作国」に認定したとのことです。日本については「監視対象」という事の様です。

 この2つのニュースからわかることは「為替操作国」というのは、自国通貨安に誘導するために「自国通貨の売り介入」をしていることを指しているようです。
 
 輸出立国という部分を持っている国は、自国製品の価格競争力を高めるために自国通貨安を願うのは当然でしょう。しかし大っぴらに介入をやれば、まさに為替ダンピング、近隣窮乏化策という事になり、国際的に非難の的でしょう。

 目立たない様にやった積りでも、アメリカの財務省は見ています。これは基軸通貨国の役割でもあるのかもしれませんが、まあ必要な事なのでしょう。

 実は、アメリカも基軸通貨溝ですから表面上は「高いドルが望ましい」などと言いますが、本心はドル安にして輸出競争力をつけたいのです。

 G5の席で日本に円高を押し付け(プラザ合意)たのも、当時最も恐れていた日本の国際競争力を殺ぐためでした。
 それはまんまと成功、リーマンショックのおまけもあって日本は30年も円高に苦しみました。

 アメリカは2匹目の「どじょう」を中国と決めましたが、中国は言う事を聞かないので、為替操作国に認定したり、関税戦争に持ち込んだりという事になりました。

 当のアメリカは如何しているかといいますと、サブプライムローンの証券化で世界中の銀行のバランスシートに大穴を空けたついでに、世界金融恐慌は金融緩和で避けられるというバーナンキFRB議長の卓見でゼロ金利政策を取り、その結果ドルを安くして経済回復を目指しました。

 リーマンショックの時のバーナンキFRB 議長の金融緩和政策(2008年)を見てやっと日銀がそれに気づいたのは2012年辺りで、それに倣ったのは2013年以降です。

 倣ったのは、ゼロ金利政策でドル安が実現できるというアメリカの経験です。
それ以前の金融緩和政策というのは、財政政策と並んで、その国の経済活動を活発にするためのものでしたが、リーマンショック以降は金融緩和の目的は、全く違ったものになりました。

 はっきり言って、金融緩和は自国通貨切り下げの手段になったのです。アメリカに倣った日本の異次元金融緩和は$1=¥80を$1=¥120円に戻すとい円安政策になったのです。
 しかもアメリカはこれは為替操作だとは言わなかったのです。

 以降日本は円高傾向が出ると、日銀が異次元金融緩和の強力な継続、長期の継続、量的緩和も徹底、といった表現で円高を防いできています。

 しかし今度はアメリカが金融緩和の長期継続を言い出したのです。日銀がどう対応するかは知りませんが、2%インフレ目標が実現するまでは異次元緩和を続けるという決心は固いのではないでしょうか。

 ご承知のようにゼロ金利政策はいろいろな副作用(銀行の経営難など)を齎しますが、本来が輸出立国の日本にとっては、円高阻止は生命線です。
 リーマンショック後の円高で、日本経済の基盤はかなり壊れました。典型的には非正規雇用の著増等に表れていますが、長期の円高は、日本のモノづくり産業を「ラストベルト」にしかねません。

 その時は日本国債は紙屑でしょう。
これからどんな世界経済、国際関係になるのでしょうか。そんな形の日本経済を見る目も、これから必要なのかもしれません。

日本の国債が紙屑になる条件(6)金融の部

2020年12月16日 22時50分16秒 | 経済
日本の国債が紙屑になる条件(6)金融の部
 金融の問題は、今日、世界中で未踏の時代に入っていて、アメリカをはじめ、何処の国も暗中模索、試行錯誤を繰り返しているのではないでしょうか。

 かつては、金融は実体経済を支え、実体経済の活動がスムーズに進むようにとの潤滑油の役割をしていました。その金融が、実体経済から独立し、証券の価格の変化や金利の動きを利用して「キャピタルゲイン」を稼ぐマネー資本主義という世界を作り上げました。

 これは概念的には、ギャンブルの一種で、カードの数字やさいころの目などの代わりに実体経済の活動の諸種の指標を利用するというものです。そしてこれも経済活動だと言い張っているだけです。

 純粋にギャンブルならまだいいのですが、マネーマーケットで動くカネが巨大になると、その金の力で実体経済を動かす事ができるようになります。
 例えば特定の会社の株を売り込んでその会社を倒産させたり、経済的に弱い国の通貨を売り込んでその国の経済に致命的な影響を与えることも出來ます。

 ソロスの率いるヘッジファンドの力を見せつけたと言われる、かつてのアジア通貨危機などはその良い例でしょう。

 さて、日本が世界でも異常な巨大な国債発行残高を持っているという事で、「いつかは日本の国債は紙屑になる」という意見が以前から出ていることは皆様も疾うにご承知のことと思います。

 今年度の国家予算は初めて100兆円を超えたと言われましたが、今年度政府が発行する国債は、第3次補正を含めると112兆円になるようです。

 もともと2020年度の予算では、政府の税収などの総収入は70兆円で、国債発行で33兆円を国民から借りて103兆円の予算でしたが、更に79兆円の借金をしてやっとコロナ対策も出来たという状況です。

 正直言って、そんなに借金をして返せるの?という感じですが。元々返す気はなく「出来るだけこれ以上の借金は増やさない」という目標も達成できない(プライマリーバランス回復めども立たず)事は広く知られています。

 常識的に言えば、「返せない国債は紙屑」という事になる可能性はあるのですが、他方で、「国民が返せといわなければ問題ない」という見方(MMT)もあります。
 現実に国民は返せとは言わず、資産として持っている積りのようです。実は国債の半分近くはもう日銀が買って持っているのです。

 すでに触れましたように、もしこれを外国人が持っているとすれば、日本の国債は全部売って、アメリカや中国の国債に乗り換えるといったことが起きる可能性もあって、「日本国債暴落!!」もありえますが、外国の保有は1割以下のようです。

 そして何より心強いのは、日本は国際経常収支が常に黒字で、マネーマーケットでは、円の価値は上がりこそすれ下がることはないという見方が定着しているのです。

 日本の国債残高が巨大という問題は、国内問題で、外国から見れば日本は常に黒字の資産大国なのです。

 こう見て来ますと、現状、日本の国債が紙屑になるかという問題は、国内問題としては起こりえても、国際問題としては極めて起きにくいだろうという事が出来ます。

 これも既に書きましたが、もし日本経済が経常収支で赤字になるような状態になれば、円安になり円売りで国債の価値も暴落という可能性もないわけではありませんが、そこに行く前に、現状では、円安で日本の国際競争力が回復し、日本経済が力を取り戻すというプロセスが多分起きるでしょう。

 もし将来、日本の実体経済が完全に弱体化していて、日本の主要産業が、今のアメリカの「ラストベルト」のようになっていたら、その時は多分日本経済破滅、「国債紙屑」の時となるのでしょう。

 なぜ日本は経常収支がいつも黒字なのかについては、 日本人の国民性が大きく影響していることも知られていますが、マネーマーケットがカードやさいころでなく、基本的に実体経済の動きがギャンブルの指標ですから、実体経済における技術開発、生産力の維持が出来ている限り、国債紙屑の条件は成立しないでしょう。

 しかし、今の日本にとって、それが次第に難しくなって行く可能性は、今の様な、先見性のない経済政策が続けられれば、早晩起こり得るのかもしれません。

 繰り返しますが、MMTが成立するのは、日本経済が、技術開発能力と生産力を維持しているからで、今の日本政府に、それが本当の意味で解っているかどうかが心配というのが現実ではないでしょうか。

日本の国債が紙屑になる条件(5)技術開発の部

2020年12月15日 23時34分40秒 | 科学技術
日本の国債が紙屑になる条件(5)技術開発の部
 表題と逆に、国債が紙屑にならないようにするための条件という事であれば、「技術開発で世界に先行」が最も確実で、その故に最も大切な条件という事が出来るように思うところです。

 勿論、私は科学技術については素人で、持っている情報はマスコミ頼りか、状況証拠からの推定といったものです。
しかし、それでもなお、最近の日本の技術開発の状況は、何か、国債を紙屑にする条件の方に入ってきているような気がしてなりません。

 正直言って、少し前までは、おそらくリーマンショック前までは、日本が技術開発、技術革新で、世界をリードすることはあっても、次第に後れを取るような状態になるといった心配はないだろうと思っていました。
 しかし、最近は何か心配になることが多いような気がしています。

 太陽光発電が騒がれ始めたころ、日本は世界をリードする勢いでした。今は違うようです。蓄電技術はどうでしょうか。これから最も需要の多い技術開発の分野ですが、材料、部品の開発も含めて、日本が優位に立つことは十分可能だと思っていますが、大丈夫でしょうか。テスラは、松下の電池購入から自社開発に動き始めたようです。

 心配が始まったのは、 研究開発投資の統計、更には人件費の中の 教育訓練費の縮小といった研究開発に直結する数字を見て、これでは中国、韓国に後れを取るのも当然かと思うようになったことです。

 国家の命運に関わるような技術開発についての失敗:日本の知恵を集めたはずの「 もんじゅ」末路は哀れなものでした。
創られた神話の崩壊:大地震の時は原発に逃げ込めば絶対安全という見学者への説明が結局は創られた神話だったという現実を知りました(小泉元総理も同じ!)。
日本が世界に誇ったディスプレイ産業の衰退:ジャパン・ディスプレイはどうなるのか、有機ELは日本の得意分野ではなかったのか。今は韓国に負けています。
更にはネットワーク社会の進展の中で、どこまで重要な位置を占めるようになるのか解らないスマホの新製品開発の遅れも見えています。
そして、今やデジタル社会化、電子マネーの世界でも、訪日中国人の活用の広がりを見て驚く日本人になっています。

鳴り物入りで走り出したマイナンバー・カードはどうでしょうか。普及は遅々として進みません。お役所はまだまだ紙とハンコ、デジタル化担当大臣の事務所の届けは紙だそうです。

余計なことも書きましたが、このブログで科学技術の流れを追ってきて 大きな転換点になっているのはリーマンショックだったのではないかと考えています。

円高とバブル崩壊のダブルのデフレで始まった平成長期不況でしたが、日本経済は2000年に底入れし、アメリカのITバブル崩壊の影響は受けましたが、2002年か2008年のリーマンショックまでは、何とかジャパンアズナンバーワンの時代への復元を目指して頑張っていたように思います。

 しかし、リーマンショックによる再度の円高$1=¥75~80では日本経済は殆ど死に体でした。2009年から2012年まで、長期不況の最後に瀕死の経済を経験した産業界、一般家計は、節約により自己防衛という殻に閉じこもる消極性の中にサバイバルを見出そうとし、積極策は破綻への道と考えるようになったように思われてなりません。

 投資をするなら海外、国内では儲かるはずがないと考える企業。少子高齢化の進捗の中で、賃金も年金も良くなることは期待できない、大事なのは貯蓄して将来に備えることと考える家計、そして、言葉ばかりが立派でも(一億総活躍、全世代型社会保障・・)、全く実感の湧く政策をとらない政府、こんな構図が出来上がってしまい、2013~14年以降の円安政策の成功の後も自虐的に成長しない経済を作ってしまっている日本になっているのではないでしょうか。

 一つ「頑張る日本」の例を挙げれば、自動車産業でしょう。例えばトヨタは、ずっと「年300万台国内生産は死守」と言い続けています。このブログでは「涙が出るほど有り難い話」と書いた記憶があります。

 国内で、世界トップのモノづくりを続ける技術開発力を維持する、これこそが日本が本来の日本らしさを取り戻す「鍵」ではないでしょうか。

 日本を本来の日本に戻す責任は結局は政府にあるのでしょう。今、 政府は学術を目の仇にしていますが、学術は研究開発の根っこです。
 その意味では学術を自分の意に従わせようと、秦の始皇帝の焚書坑儒の焼き直しをやるのは、自らの手で「国債紙屑」を招いているようのものだと考えています。