tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

縮小均衡から成長経済へ

2010年03月28日 21時30分40秒 | 経済
縮小均衡から成長経済へ

 日本経済をここまで苦しめたプラザ合意が、世界経済にとってプラスだったのか、それとも日本経済を順調に繁栄させておいたほうが世界経済にとってプラスだったのか、国際経済機関や経済学の碩学たちは確り検証すべきでしょう。 
それはまさに今日的問題である「 人民元切り上げ問題」の世界経済への影響に直結する問題です。(注)

 そして日本に課せられた役割とは、100年前はソーシャル・ダンピングといわれ、今は為替切り上げ要求という形で出てくる「国際為替戦争」を、いかなる合理的な対応で未然に防止するかを「平和憲法 」を持つ国として「経済戦争の防止」という面からも、先ず、現実を分析、正論を構築し、自ら実践し、世界に発信して、世界経済の安定的発展に貢献することでしょう。

 「いざなぎ越え」で小康状態になった日本経済は、今また、リーマンショック以降の円高傾向($1=¥120から$1=¥90)で、また、就職氷河期とデフレ経済を強いられています。そして日本人は、更なる「縮み志向」、消費切り詰め、貯蓄積み増しでこれを凌ごうとしています。
これはまさに「いつか来た道」ではないでしょうか。

 今、日本人は、自分を守るだけの縮み志向から脱却し、健全な国際経済の繁栄に役立つための経済政策手段を見つけ出さなくてはなりません。使い古された財政金融理論に依存するだけでなく、経済学の新機軸 を含む新たな発展を模索すべきでしょう。

 そのためには、われわれが今考えるべきことは大きく2つあるように思います。
 第1点は、為替レートを経済戦争の武器にしないためのシステムの検討
 第2点は、日本自体が縮み志向から脱却し、縮小均衡から成長経済に移行すること
この2つが、今やらなければならないことでしょう。
 ということで、ここでは、日本経済の成長経済への移行の問題を種々論じることにしたいと思います。

(注)3月20朝日新聞朝刊で、米コロンビア大のJ.サックス教授は、人民元の対ドル相場の緩やかな切り上げという米中の合意が望ましいと述べ、「プラザ合意による円高のような急激な上昇はダメ」、「向こう1年で5~10パーセントの切り上げが妥当」と述べています。


長期デフレの経済・社会への影響

2010年03月25日 11時20分20秒 | 経済
長期デフレの経済・社会への影響
 プラザ合意を無条件で受け入れ、為替レートを国際金融資本の為すがままに放置し、しかも金融緩和で内需拡大というアメリカのアドバイスを鵜呑みにして実行し(新前川レポート)、お蔭で土地バブルとその崩壊を経験したのが20世紀末の日本でした。

 その日本経済が、何とかバブル崩壊の後遺症を処理し、「失われた10年」といわれたデフレ経済の中で徹底した生産性向上とコスト調整 を行い、21世紀の初頭にいたって、$1=¥120という環境への適応に何とかめどをつけ、ようやく病み上がりの体で前を向いて歩き出したのが「いざなぎ越え」の日々でしょう。

 日本がこの試練に耐えたのは、日本人の我慢強さを象徴するもののように感じるのですが、その副作用は決して小さくはなかったようです。

 多くの方々がお気づきのように、この間、日本の経済社会はかなり劣化しました。
 対抗する手段がほとんどコスト削減に絞られるといった状態の中で、企業のとった策は、コストのドル化(海外調達)、それに、国内コストは7割以上人件費ですから、人件費を中心に徹底した削減しかありませんでした。

 その結果、最も影響を受けたのは雇用でした。長期安定雇用を旨としていた日本企業も、已むにやまれず雇用削減に走り、コストの安い不安定雇用(非正規従業員)を多用 せざるを得ませんでした。倒産して何もなくなるよりはまだ良い、というサバイバルのための選択です。

 しかし『日本人とユダヤ人』ではありませんが、「水と安全はタダ」と同じように「安定雇用は当たり前」と思っていた日本人、特に若者に対し、就職氷河期、不安定雇用の拡大、格差社会の到来は巨大なネガティブ・インパクトを与え、 メンタルヘルス問題の多発、さらには犯罪の増加にまで至るような社会の劣化をもたらしました。

 円高阻止という対抗策を持たない(持とうとしない?)日本は、10年を超える「ただ耐えるしか手段のない」中で、次第に深刻な縮み志向になって行ったようです。

 例えていえば、「子供手当は、子供の将来のために貯金します」という発言がTVインタビューで聞かれます。老後の準備が、投資信託の目減りで減れば、利息のつかない預貯金を増やすといった行動も明らかです。

 この貯蓄超過が国債の国内消化を支えているのですが、これでは「国債発行、財政支出」で国民経済を支えるしか方法がなくなってしまいます。それが今、日本経済が問われている最大の問題点ではないのでしょうか。


プラザ合意後の日本の物価(長期デフレ)

2010年03月23日 13時56分30秒 | 経済
プラザ合意後の日本の物価(長期デフレ)
 自国の為替レートをわずか2年ほどで2倍に切り上げられた時、その国の経済・社会に何が起こるかを現実の経済社会で実験してみるといったことは通常できることではありません。
 しかし、こんな経済史上でも稀有なことを現実に体験してしまったのがプラザ合意後の日本です。これは日本人として、正確に検証して経済史上、経済学史上に確り記録と分析を残す義務があるでしょう。

 プラザ合意(1985)後1年ほどで、日本では「土地バブル」が起きました。これは為替レート切り上げでコスト高になった製造業などの海外移転による内需の縮小を防ごうと内需拡大のために行われた異常な金融緩和政策のためです。

 しかしバブルが長続きすることはありません。土地バブルは1991年に崩壊しました。その後の、いわゆる「失われた10年」の原因をバブル崩壊のためと考えている人は多いようです。しかしそれはどうも誤りのようです。この辺りは「 ダブルデフレ」として書かせていただきました。

 日本経済がまさに10年以上の長い期間をかけなければ調整できなかったのは、プラザ合意後2年ほどで$1=¥240が、$1=¥120になったという急激な国際経済環境の変化への対応調整(順応)でした。バブル崩壊だけなら3~4年で十分だったでしょう。

 理由は単純です。グローバル化している経済の中で、円高により、世界一物価高の国になった日本は、その物価水準が世界並みに下がる迄、毎年コストを下げ、物価を下げる努力を続けなければなりません。つまりその間デフレ経済に耐えなければならなかったという事です。
しかし現実問題として、毎年3パーセントも5パーセントも物価を下げることは出来ませんでした。せいぜい1~2パーセントがやっとです。

 実際に起こったことをイメージ的にいえば、日本の物価が年に1パーセントほどのデフレで、諸外国が2~4パーセントほどのインフレで、多分50パーセントぐらいあった、彼我の物価の差が、10年以上かけて、何とか似通った水準になったということでしょう。

 これは、購買力平価などの推計からの検討で可能なはずですが、残念ながら、この種の推計は余り正確なものがないようです。
しかし現実にヨーロッパやアメリカに行ってみて、「日本の物価もそんなに高くないな」と感じるようになったのは2000年代に入って少したってからでしょう。

 2003年辺りからは、消費者物価指数の下落幅も僅少になり、日本経済は「いざなぎ越え」といわれた微弱な回復期に入って行きます。本来は、これで、調整完了のはずでした・・・・。


日本経済低迷の発端はプラザ合意

2010年03月18日 12時14分19秒 | 経済
日本経済低迷の発端はプラザ合意
 歴史的に見れば、二度のオイルショックを乗り切って、ジャパンアズナンバーワンといわれた日本経済が、急転してバブルとその崩壊、失われた10年に転落していた発端はプラザ合意 による円高受け入れでしょう。

 それまでの日本は、いわば「欧米何するものぞ」といった気概を持っていました。典型的には、このたび閉鎖の方向になっているNUMMIの事例でしょう。GMの最悪の工場といわれたフリーモント工場を日本の経営技術、生産技術、それに日本的労使関係を移植すれば、必ず立ち直らせることができるといった自信をもち、現実にそれをやってのけています。

 こうした日本が、守り一辺倒、縮み志向になっていったのは、それまで、頑張れば明日は明るいという認識が、頑張るほど円高が進むという環境の中で、明るい明日が否定されてしまったからといえます。

 頑張った国が通貨の切り上げに苦しみ、安易な経済運営をやっていた国がその分楽をするという理不尽な関係の正当化 が、まともな国際通貨政策でしょうか。 そして問題は、それに対して、日本では政府も日銀も、ほとんど何の反応もしていなかったという事ではないでしょうか。

 宮沢回顧録で、宮沢さん(当時総理大臣)は「あの時は、毎日のように大変な円高で本当に困りました。」と書いているだけです。
 一方、日銀の方々とお話しても、プラザ合意の問題は避けて話さないというのが私の受けた感じでした。

 つい最近まで、政府、日銀からは「為替はマーケットで決まるものだから・・・・」といった意見が聞かれました。マーケットは正しい、それに抗うことは良くないといった感覚でしょか。

 頑張れば頑張るほど円高になるというのは、まさに、デフレと円高のスパイラル、最悪の経済状態 でしょう。対策は、デフォルトになるようなことをやって、円安にすることしかありません。

 国際為替市場がおかしいのか、それをずっと認めて何もしなかった日本の政策がおかしいのか、今朝の朝日新聞で、来日中のスティグリッツ博士(元世界銀行副総裁、コロンビア大学教授)が、日本への助言を求められて、技術を生かしたマクロ・ミクロ両面の政策強化をアドバイスした上で、「現状の為替水準では産業の競争力を維持することは難しく、介入してでも円安に誘導すべきだ」といっています。


日本経済成長路線復帰の条件

2010年03月16日 14時34分22秒 | 経済
日本経済成長路線復帰の条件
 経済成長のためのヒト・モノ・カネ・技術のすべてを持ち、しかも国民が真面目に努力しているにも拘らず、世界で唯一、長期のデフレで不況の泥沼に呻吟するという大変奇妙な状況を強いられている日本です。

 誰がどう考えても「これはおかしい」というのが正常な理解でしょう。何がおかしくて日本はこうなってしまっているのか、今の政策当局、経済学者、知的リーダーたちは、一体これをどう理解しているのでしょうか。

 「もう日本はダメだ」と言う事はやさしいでしょうが、だめだという割には、世界の国々が涎をたらして欲しがるような生産要素(ヒト、モノ、カネ、技術)をすべて持っているのです。ダメだといっても、海外諸国の人たちは多分信用しないでしょう。

 日本の国債の格付けを落とすなどと脅かしながら、やっぱり何かというと「円」に逃避したり、「日本はカネがあるからもっと負担を」といったり、日本を当てにしている様子がありありです。にも拘らず多くの日本人は、将来に希望を持てないと感じています。

 こうした状況から脱出するには、日本自身が、他人(他国)の言うなりに生きるのではなく、自分自身の生き方を確立する必要があるようです。 日本は「自らをきちんと整え、こういう形で、自らの選択によって、このように世界に貢献する」という身の処し方を世界に表明すべきでしょう。

 アメリカも山ほど間違いを犯しながらも自分の生き方を主張しています。中国の主張が全部正しいとは思いませんが、明らかに自分の行く道を表明しています。EUもヨーロッパ統合の理念に従って行動しています。

 日本は今何をしようとしているのでしょうか。われわれ国民にも、日本が世界の中でいかなる役割を果たそうとしているのか、よく解りません。単にもがいているだけのように思えてなりません。多分、外国から見ればもっと解らないでしょう。
 カネも能力もありながら何もしなければ(出来なければ)、周りからからかわれたりイジメにあうのが関の山です。

 何が理由でこんな事になっているのか、どう改めていくべきなのか、これまでこのブログで論じてきた中から、政府の長期成長戦略策定を前にして、少し整理していきたいと思います。


アメリカ・ギリシャと日本の違い

2010年03月14日 11時09分30秒 | 経済
アメリカ・ギリシャと日本の違い
 ギリシャの財政危機問題を論議する中で、日本の方がもっと危ないのではないかといった論調もかなり見られます。

 確かに、財政の累積赤字のGDPに対する比率を見ると、ギリシャの120パーセント台に対して、日本はすでに190パーセントを超えていますから数字としては、より深刻なのかもしれません。

 しかし繰り返し述べてきましたように、アメリカやギリシャは、財政と国際収支がともに赤字、いわゆる「双子の赤字」です。日本の場合はこれも繰り返して述べてきましたように国際収支は一貫して黒字です。

 つまり財政赤字は、すべて国民の貯蓄で賄っているわけで(現状、日本の国債の海外保有率は6~7%程度)、アメリカのように、サブプライムローンの証券化で海外に多大な迷惑をかけたり、ギリシャのように、EUの他の国から支援を渋られたりという事は起こりません。

 問題は、日本の政府と国民の間で起こるわけで、いわば、家庭内の夫婦間の問題のようなものでしょうか。だからといって深刻でないということではありません。夫婦間でも深刻なものは深刻です。
 但しよそ様には迷惑はかけないというのが、まさに「日本の良心」でしょう。

 こんなことがいえるのも、日本人が、将来のためということで、生真面目に貯蓄 をするからです。しかし、今後もGDPが縮小し、雇用が減り、賃金水準が下がり、高齢化が進めば、いよいよ貯蓄も出来なくなる日が来るかもしれません。

 その時は日本も「双子の赤字」国の仲間入りという事になるのでしょう。
 それまでにはまだ少し時間がるようです。時間があるうちに、その余裕を巧く使って日本経済の本格的な経済立て直し策を考えることが今最も大事なことではないでしょうか。
 6月発表予定の政府の「長期経済成長戦略」の中身が国民にやる気を起こさせるようなものであることを期待します。


赤字財政と租税弾性値

2010年03月11日 10時21分20秒 | 経済
赤字財政と租税弾性値
 租税弾性値という概念があります。経済成長(名目)が1パーセントだった時、政府の税収が何パーセント増えるかを「弾性値」として出したものです。

 例えば、経済成長1.0パーセントにつき、税収が1.2パーセント増えるというのであれば、「租税弾性値」は1.2 ということで、経験的には、経済が正常な発展をしているときには、租税弾性値は1.1とか1.2とかで政府は経済見通しを考えていました。
 
 税金の中の大きなものを考えてみますと、
・サラリーマンなどの所得税は、雇用量と賃金水準で決まり、累進課税ですから賃金が上がるよりも多少余計に上がります。租税弾性値は通常1.0より少し大きくなります。
・法人税などは、企業の利益に比例します。企業の利益というのは経済成長が順調で景気がよければ大幅に増え、逆に経済が減速すると大幅に減ったりマイナスになったりします。ですから租税弾性値は大きくぶれて、税収予想は難しくなります。政府の財政は景気に振り回されます。特に長期不況の時は大変です
・一番安定的なのは消費税で、これは現在消費の5パーセントですから、通常は、ほほ消費と同じ伸びで租税弾性値は1.0から大きくはズレないでしょう。

 ということで、高度成長期は法人税重視にすれば、税収は順調に増えて、政府の財政は健全です。しかし、低成長で減収減益が多くなると、法人税は急減するので、政府としては、安定した税収が見込める所得税や消費税、特に最も安定した消費税が好ましくなります。

 不況続きの中で、現政権は、消費税増税を封印していますから、法人税が激減する中で、その分の財源を国債発行で補填しなければならないという事になるのは当然です。来年度は税収より国債発行額の方が大きいのはご存知の通りです

 国債発行や財政支出の組み換え(仕分け作業)で、景気をてこ入れし、景気をよくすれば法人税収も増えるという良い循環になるのを願ってのことでしょうが、財政支援(ケインズ政策)も現状程度では力不足という意見が大勢です。
 といってさらに大きく国債発行を増やすのは反対、というのが、政府をはじめ財政再建を願う大多数の人の意見でしょう。

 増税は出来ない、国債増発もダメ、それでも景気梃入れはしたい。気持ちは解るが、これでは八方塞がりです。カネより頭を使った経済政策 といっても、現状は、エコカー減税、補助金、それにエコポイント程度です。かなり効果はあるようですが、まだまだ足りません。
 どうしたら「日本経済の正常な形」(前回)が実現できるのでしょうか。


正常な日本経済の形: GDPを使い切れば

2010年03月05日 09時50分10秒 | 経済
正常な日本経済の形: GDPを使い切れば
 日本国民は、自分たちで生産したGDPを使い切っていないので、その額が貯蓄超過になり、国際収支の経常黒字になっていると説明 してきましたが、具体的な金額を見てみましょう。

 直近の数字は2008年度で、12.3兆円、GDPの2.5パーセントです。前年度の2007年度は24.5兆円でGDPの4.8パーセント、過去10年ぐらいを見ると、ほとんどの年度で20兆円近く使い残しています。
 この分は、GDPを使い残しているわけですから、残さないで全部国内の消費と投資で使えば、国内の消費活動、投資活動は20兆円分だけ活発になります。経済成長で言えば、ほぼ4パーセント分です。

 国内経済活動が活発になった分だけ雇用にも良い影響があり、賃金上昇の可能性も出てきます。経済が縮小しないとなれば、企業は縮小均衡脱出を目指し、生産を増やし、雇用も雇用者の収入も増え、それによって消費も増え、経済は、消費が投資を呼び、投資が企業活動を活発にし、雇用・賃金を増やして経済が成長するという正常な循環に戻るでしょう。

 このとき、日本製の物価やサービス料金が国際比較で高ければ、日本企業は競争に負け、売り上げを伸ばせないかもしれません。しかし、すでに経常収支の黒字は消えているわけですから、円高圧力も円高によるデフレ圧力も多分なくなります。これが大変重要です。

 これまでのように円高が進むたびにコストや価格を引き下げる必要はなくなり、生産性向上の成果は外国に移転することなく、国内の企業と従業員が享受できる事になるわけです。
 円高・デフレのスパイラルはなくなります。

 何だ、そんな簡単なことなら今すぐやればいいじゃないか、という声が聞こえてきそうですが、それが出来ないからこそ日本経済は困っているわけです。

 出来てしまえば、簡単で、実はこちらの方が正常な経済状態で、今までのように、いつも円高に追いかけられてコスト削減ばかりしなければならないとい状態こそが異常な経済状態だったという事なのでしょうが、どうやってそこに行き着くかが問題です。

 問題は、先ず第一に、日本の消費者と企業が、年々自分たちの生産したGDPを全部使うことが出来るかどうかということでしょう。 実は企業は、基本的には余り無駄な溜め込みはしないシステムですが、問題は消費者(家計)です。


最近の円高に思う

2010年03月02日 10時23分59秒 | 経済
最近の円高に思う
 ギリシャの経済混乱でユーロが安くなっています。
 16カ国もの国がユーロに加盟しているのですから、そして通貨の管理権限は各国にあるのですから、ルールが決めてあっても、中には放漫な国家の財政や経済の運営をして問題を起こす国が出るのも当然という見方もできましょう。

 政府は景気をよくしたいし、そのための手段は、放漫財政をはじめとして各国政府の手にあります。政権は人気取りのためにそれを使う誘惑に駆られる可能性は常に付き纏います。

 しかし、結果は双子の赤字(財政と国際収支の赤字)となって、基軸通貨国のアメリカででもない限り、たちまちの破綻が待っています。特に金融危機などの場合は待ったなしです。

 デフォルトは大問題です。EU内のほかの国が援助することになるのでしょうが、余程きちんとしないと、「放漫財政で破綻しても援助してもらえる」というモラルハザードも起きます。といって、ユーロから締め出して自己責任という事に出来るかどうかはきわめて難しい問題でしょう。

 双子の赤字と言えばアメリカもずっとそうですが、そろそろ限界でしょう。家計でも企業でも一国経済でも、自分の経済力(所得獲得能力)以上の生活をいつまでも続けることは出来ません。

 それが解っていて、失敗を繰り返すのが現実の世界ですし、過大なマネーの投機マーケットがその失敗の結果を増幅して世界中にリスクをばら撒いているのも現実です。

 こうした危険性を常に内蔵している国際通貨のマーケットの中で、財政は赤字でも、国際収支は一貫して黒字を続ける日本の通貨「円」は、「何はともあれ、当面、安全な通貨」ということで、シェルターかラスト(テンポラリー?)リゾートとして買われ、そのたびに円高になるようです。
 こうして「それなりの健全経営」をしている日本は、常に円高、その結果の「デフレ不況」で苦労することになります。

 モラルハザードを「リスクは他人が背負ってくれると多寡を括って勝手をすること」というのなら、日本は「リスクは常に自分で背負うことと自覚し、常に健全を目指して頑張る国」という事になります。これこそ「モラル」そのものでしょう。 しかし、現実は、真面目すぎると割を食うようです。