水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第二章 (第三十ニ回)

2011年10月06日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第二章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             
    
第三十ニ回

「こちらです!」
 佃(つくだ)教授の先導で滑川(なめかわ)教授がその後方に続く。
「あっ! 君達、アレ、頼むよ」
「はいっ!」
 四人の助手達は筆を止めてそう云うと、椅子を立って早足で装置室と書かれたドアを開け、中へ入っていった。少し遅れて二人も続いた。
 中には馬鹿でかい奇妙な装置があり、助手達は各自の持ち場へと散っていった。佃教授は、霊磁波を照射すると思われる先端の延長線上にある照射台へ、ゆっくりとマヨネーズを置いた。
「いいか、君達。じゃあ、カウントダウンを始めるぞ。5! 4! 3! 2! 1! ON!!」
 佃教授が声を発するのと同時に、装置は奇妙な音を立てて動き始めた。そして、しばらくすると、先端がオレンジ色に輝き始めた。
「よし! いいだろう。照射!!」
 ふたたび、佃教授の指示が飛んだ。一人の助手がハンドルレバーをグイ! っと引くと、先端からオレンジ色の霊磁波が閃光(せんこう)を放って発射された。マヨネーズは、もろに照射を受け、微かに動いている。そして、照射は五分ばかり続いた。
「もう、いいだろう。ストップ!!」
 佃教授が助手達を見ながら、ひと声かけた。照射されるオレンジ光が消え、辺りが何もなかった時の状態に戻ると、滑川教授は思わず照射台へと駆け寄った。しかし、照射台の上に置かれたマヨネーズには何の変化も起こっていなかった。教授は容器を手に取りシゲシゲと見つめたが、やはりマヨネーズに変化が生じた兆候は、まったく認められなかった。
「別に何も変わってないようですがな…」


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