水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第二章 (第五十回)

2011年10月24日 00時00分00秒 | #小説

幽霊パッション 第二章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  
    
第五十回
「それならそれで、いいでしょう。人間界の社会悪は、私が霊界司様に命じられた問題です。私一人で続けますよ」
「あ、それはまあ、そうしてもらうしか、なかろうがな…」
 なんとも、ややこしく話が絡み込んだので、二人は腕組みをして考え込んだ。
(1) 上山は中位相処理したマヨネーズにより、まず自分の変化
   を観る。そしてその結果、特に変化が観られなかった場合
   は幽霊平林と協力して社会悪を滅する。変化があり、幽霊
   平林の姿が見えなくなった場合(普通に戻った場合)は、社
   会悪の根絶は幽霊平林に委ねる。
(2) 幽霊平林は霊界司、または霊界番人に、人間社会の大悪
   とは具体的にどういうことを指すのかを訊(たず)ね、確認
   する。
 二人はこの二点を決め、別れた。上山の酔いは、すっかり醒めていた。すでに夜中の三時を回っていた。
 上山が佃(つくだ)教授の研究所を訪ねたのは、その二日後だった。もちろん、事前に教授へ電話をし、承諾を取ってからの来訪である。その目的は、幽霊平林と打ち合わせた通り、中位相処理のマヨネ-ズを作ってもらうためである。その日は当然、日曜で、上山は休みだった。
「おお上山さん、どうされました?」
「ああ、教授。…実は、もう一本、これを中位相にしてもらいたいのです」
 上山は手にしたマヨネーズを佃(つくだ)教授に差し出して、そう云った。実は電話では佃教授の都合を確認し、二日後に寄せてもらうとだけしか云ってなかったのだ。
「そんなことでしたか。分かりました。…しかしですな。今日も生憎(あいにく)、日曜でして助手達がいませんので、この前と同様に後日、宅配便で送らせてもらいたいのですが…」
「はい、それで結構でございます。なにぶん、よろしくお願い致します」
「では、そうさせて戴きます。ところで、アチラの方には届きましたか?」
「ええ、お蔭さまで…。それに効果は抜群で、止まれたようです」


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