幽霊パッション 第二章 水本爽涼
第二十七回
「なんか、病院の投薬みたいだなあ…」
「えっ? なんぞ云ったか?」
「いや、別に…」
「そうか。では、そのように、よろしく頼む。一週間、様子を見てみるから、勤めが終われば寄りなさい」
「はいっ!」
滑川(なめかわ)教授は上から目線で云い、上山も逆らうことなくその言葉を素直に受けた。
『その完成は、いつ頃になるんです?』
幽霊平林がスゥ~っと携帯に近づいて呟(つぶや)いた。むろん、彼には自分の声が教授に聞こえないことは分かっているのだが、思わず近づいたのだ。
「平林が、その完成はいつ頃になるのかと偉く気にしてますが…」
「そうか。いや、出来るだけ早く完成してもらい、完成物を届けるようにする、と伝えてくれ」
「届けるって、どうされるんです?」
「君の家へ宅急便の速達で送ることにする」
「そんな…」
上山は困ったような声を出した。
「難(むずか)しいことじゃなかろうが。君は幽霊のナントカ、…そう、平林とかいうのを呼び出して手渡せばいいのさ」
「手渡すって…。平林は幽霊ですよ?」
「だから、佃(つくだ)君に霊磁波を照射してもらってマヨネーズを中位相(ちゅういそう)にするんじゃないか」
「中位相?!」
「そうだった。君には皆目(かいもく)、分からんだろう。中位相物質とは霊界と我々、人間界の中間の位相に存在するんだよ。分かりやすく云えば、どちらの世界も共有し得る物質なんだよ」
「はあ…。それを手渡した段階で、どうなるんです?」