代役アンドロイド 水本爽涼
(第203回)
『ああ…長左衛門ね。なかなか手強(ごわ)そうよ。保が怪獣って呼ぶだけのことはありそう。あのメカの技術力は半端じゃないわね』
「だろ? だから俺もビクビクなんだよ」
さすがにドアは閉じたが、保は玄関で靴を脱ぐのも忘れて話していた。
『長左衛門が作ったアンドロイドの程度までは私の言語認識システムで解読出来なかったわ』
「怪獣が作った長ロイドか…、末恐ろしいな。当分、田舎には帰れんぞ」
『そんなこと、ないわよ。私がいるじゃない』
「ああ、そうだったな。沙耶に調査してもらうか、ボランティアでな。ははは…」
沙耶のフォローで、保は少し気分が楽になった。
『私と同じアンドロイドを作るって、相当、手強(ごわ)いわね』
「じいちゃんは、あれでどうして、ただの昔人間じ」ゃないから怖いんだ。工学技術は恐らく俺以上だろう。ただ、最新のメカ情報や技術は俺の方が一枚上だと思う。でも、じいちゃん、90だぜ。普通、90でPCをプログラム出来る年寄りって、そういないだろ?」
『ええ、そりゃそうだよね…』
沙耶も長左衛門の力量は認めざるを得なかった。
「こんなこと言い合ってても埒(らち)が明かないからやめよう。迎撃は沙耶に任せるとして、俺は作戦を練ろう。まず、アンドロイドを家のどこに隠してるかだ。ニ、三、心当たりはあるけど、まあ、兄さん夫婦や里彩が出入りするとこじゃ作れないし隠せないからな」
保はいつの間にか靴を脱いで上がり、冷蔵庫から缶ビールを出してプルトップを引いていた。シュパッ! と、いい音がした。グビグビと、ひと口ふた口飲むと、保の疲れはドッと消えた。