代役アンドロイド 水本爽涼
(第204回)
『田舎のお家(うち)って広いの?』
「ああ…。俺が言うのもなんだけど、明治の豪邸だ。部屋数は結構ある」
『お兄さんは何してるの?』
「勝(まさる)兄さんは司法書士事務所をやってる」
『皆さん、頭いいのね』
「ははは…、沙耶に言われりゃ世話ねえや」
保は笑い、沙耶も感情システムで笑った。最近の沙耶は学習システムがかなり有効に働いて、対応データを蓄積していた。だから普通の人間と比較しても違和感はなく、遜色もなかった。
とある田舎の岸田家である。保が沙耶に言ったように、この岸田家は明治の時代が歴然と残り、荘厳で閑静な佇(たたず)まいの中に存在していた。その中の一角に、忘れ去られ使われずに放置された、開かずの間ならぬ開かずの部屋があった。部屋の所々には蜘蛛の巣が張ってはいたが、機材は最先端のものが数々、置かれている。そして、長左衛門と保が長ロイドと仮りの名をつけたアンドロイド、傍(かたわ)らには里彩の姿が、そこにあった。
「おお、X-1号よ、話しおったな。…成功じゃ」
『有難うございます。精一杯、務めさせていただきます。よろしくお願いいたします』
「少し挨拶、硬いんじゃない?」
里彩がX-1号に突っ込んだ。