水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 代役アンドロイド 第204回

2013年05月18日 00時00分00秒 | #小説

    代役アンドロイド  水本爽涼
    (第204
回)
『田舎のお家(うち)って広いの?』
「ああ…。俺が言うのもなんだけど、明治の豪邸だ。部屋数は結構ある」
『お兄さんは何してるの?』
「勝(まさる)兄さんは司法書士事務所をやってる」
『皆さん、頭いいのね』
「ははは…、沙耶に言われりゃ世話ねえや」
 保は笑い、沙耶も感情システムで笑った。最近の沙耶は学習システムがかなり有効に働いて、対応データを蓄積していた。だから普通の人間と比較しても違和感はなく、遜色もなかった。
 とある田舎の岸田家である。保が沙耶に言ったように、この岸田家は明治の時代が歴然と残り、荘厳で閑静な佇(たたず)まいの中に存在していた。その中の一角に、忘れ去られ使われずに放置された、開かずの間ならぬ開かずの部屋があった。部屋の所々には蜘蛛の巣が張ってはいたが、機材は最先端のものが数々、置かれている。そして、長左衛門と保が長ロイドと仮りの名をつけたアンドロイド、傍(かたわ)らには里彩の姿が、そこにあった。
「おお、X-1号よ、話しおったな。…成功じゃ」
『有難うございます。精一杯、務めさせていただきます。よろしくお願いいたします』
「少し挨拶、硬いんじゃない?」
里彩がX-1号に突っ込んだ。


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