代役アンドロイド 水本爽涼
(第201回)
「お前さ、解析システムで、じいちゃんがなに考えてるか分かるか?」
ここは微笑むところだと感情システムが作動したのか、沙耶は笑みを浮かべて優(やさ)しく言った。
『そりゃ分かるわよ、100%。それが、どうかした?』
「ちょっと、頼みがあるんだ」
『今?』
「いや、今は拙(まず)い。マンションで言う」
『そう、分かった』
目敏(ざと)い後藤に気づかれないよう、保はパソコン画面を見つめ、沙耶は室内を見回しながら呟くように言い合った。保と沙耶はその後、語ることなく、時間が過ぎていった。
「岸田君、この前の飛行車の話、面白かったから、キャドで図面を起こしてくれよ」
「はい、分かりました…」
保は山盛教授に従った。
「頼んだよ。…おっ! もう、こんな時間か」
教授と保の接近を牽制(けんせい)したのだろう。小判鮫の但馬が二人の話に割って入った。
「おお、そうだね。昼にしようか…」
教授が但馬の言葉に釣られた格好で、腕を見た。
『保、私、そろそろ帰るね。じゃあ…』
「んっ? ああ…」
保が言い終わったとき、沙耶はすでに研究室にはいなかった。時速300Km以上の瞬間移動である。ああ…また、やってくれたか、と保はテンションを下げた。保以外の全員は唖然として、しばらく棒立ち、し続けた。