代役アンドロイド 水本爽涼
(第187回)
但馬のように出世を考えた上のことではない。保は教授の面子(メンツ)を潰(つぶ)したくなかったのだ。ただ、それだけのことである。
「図面ですか? ですから今、言いましたように、希望といいますか、夢の話ですよ」
「なんだ、そうなのか…。私は実現可能な話だと思うよ。現に、ホバークラフトで空は飛べる時代だから、理論づけと設計で実現可能になると思うよ」
「ええ、俺もそう思うんですが…」
教授と同じ発想から理論を起こし、保はすでに設計図面を描いていた。山盛教授の言葉に、伊達に教授を続けている訳じゃないな…と、少し尊敬した。
夜の東京駅である。
「じいちゃん、あのお店…」
「んっ? そうか…。里彩はあの店がいいのか。よしっ! それじゃ、そうしよう。わしは、さっぱり洋モノは分からんでのう」
「それは里彩に任せておいて」
「分かった…」
怪獣長左衛門とその手下の里彩が、またしても東京へ上陸していた。復刻された東京駅は二人には実に眩(まばゆ)かった。今回は昼過ぎに田舎を出たことになる。二人はとある店へと入った。
「いらっしゃいませ」
水コップとメニュー表を置くと、そそくさとウエイトレスは立ち去った。
「都会の者は水臭いのう。水だけに…。はっはっはっはっ…」
「? …」
長左衛門はダジャレを言ってコップの水を少し飲んだ。