代役アンドロイド 水本爽涼
(第196回)
京東大学の大学院新館へ着き、三人が入口を潜ると、いつもの老ガードマンが驚きの眼差(まなざ)しで三人を見た。
「おや! 岸田さん。今日はお三人ですか? ああ、いつぞやのお従兄妹さん…。で、そちらは?」
「俺の田舎のじいちゃんです。あっ! それに、こちらは友人の従兄妹(いとこ)です」
「孫がお世話になっとります!」
「いや、こちらこそ。…で、こちら、ご友人の? そうでしたかな…。岸田さんのお従兄妹さんじゃ? …聞き違えてましたかな。ははは…、まあ私にはどうでもいいことですが…。それじゃ、これを」
老ガードマンは外部者通行用の名札を二つ渡した。胸に着けることも首からかけることも出来る仕様の名札である。保が二人に手渡すと、沙耶は前回同様、左胸に着け、長左衛門は首からかけた。いつもと同じルートだが、保はなぜか落ち着かなかった。それも当然で、問題を起こしやすい長左衛門と沙耶を従えて歩いているのだ。それでも、エレベーターや通路を歩いているときは、まだよかった。研究室の入口ドアまで来たとき、保の緊張は、いっきに高まった。
「おはようございます」
「ああ、おはよう…」
但馬はパソコンに向けていた顔をゆったりとドアへ向けた。そして、三人の姿を目にした瞬間、ギクリ! とした。
「なんだ! 今日はお三人さんか。岸田君、だんだん増えるじゃないか」
保にすれば嫌味ともとれた。