代役アンドロイド 水本爽涼
(第191回)
「そうだな…、近いとこで出来ないとな。俺も付き合えないし沙耶も無理だ」
『行動は私一人でなんとかなるから、保は計画とか立ててくれたらいいんだけどね。マネージャーってとこ?』
「ああ、なるほどな…」
沙耶の情報解析には1%の狂いもない。そう信じている保は素直に頷(うなず)いた。事実、沙耶のシステムには寸分の狂いもなかった。
『どんなのがあるかといえば、植物、自然、動物、スポーツ、子供、アート、家事・料理、手芸、点訳、音訳、高齢者、海外、病院、カウンセリング、在日外国人、エイズ、募金・寄付など、たくさんあるわ』
「なるほど…、で?」
『問題は、このマンションからそう遠くなく、保の計画が立てられやすく、私のメンテナンスとかにも影響なく出来るのは? ってことね』
「ああ、そうそう…」
保は、合いの手を入れ、ただの聞く人になっていた。
『保が言ってたなんでも屋の発想を使えば、なんでもボランティアをするってことで出来そうね』
「二極に再編か…。どっかで聞いた構図だ。ああ、政治だったかな。なにも実行できず、風呂屋の釜(かま)になるのと同じだな…」
『風呂屋の釜? なに、それ?』
「湯ばっかり」
「ああ…言うだけの言(ゆ)うばっかりと、お風呂屋さんの浴槽は湯ばっかり、をかけたのね」
『ああ、整えた訳さ、ははは…。でも、そうはっきり分析されると身も蓋(ふた)もない』
『身も蓋もない… … 露骨過ぎて情味も含蓄もない?』