代役アンドロイド 水本爽涼
(第202回)
「や、やはり、体育会系の女子は違うね。は、ははは…」
教授の声は笑っていたが、顔は引き攣(つ)っていた。
「ははは…、トイレへ行きたかったみたいです。漏れそうって言ってましたから」
保は咄嗟(とっさ)に出鱈目を言った。自分でも考えていなかった発想だったから、口にした保自身も驚いた。
「ああ…、そうでしたんか。それにしても早かったですな」
アフロの後藤が、のんびりとした口調で言った。教授も但馬も合点したのか頷いて笑みを浮かべた。
「それじゃ、昼にしよう!」
保は沙耶の手弁当を開け、三人は外食で研究室を出た。
その後は夕方まで事もなく順調に時は巡り、昼までの出来事が嘘のような静けさで推移し、LED電灯が灯る頃となった。
「それじゃ、お先に…」
「お疲れ! 偉く早いな岸田君。ははは…キャド、頼んだぞ」
教授は意味深な笑顔で研究室を出る保に声を投げかけた。
「えっ? ああ、はい!」
後ろ姿の保は驚いて振り返ったが、昼までの話はすっかり忘れていたのだった。保はマンションへ戻ると、玄関ドアを開けるなり言った。
「じいちゃん! どうだって?」
その声に僅か2秒で沙耶が現れた。