とあるフツゥ~家庭、白浪(しらなみ)家である。この家庭では、家庭捜査研究所、略して家捜研(かそうけん)と呼ばれる組織が存在している。
夏休みが残り少なくなったこの日も、朝から白浪家では兄弟三人による家捜研の捜査が執(と)り行われようとしていた。
「兄ちゃん、細かな破片が落ちているよっ!」
「ど~れっ! これは茹(ゆ)で卵の破片だな…」
兄は卵の殻(から)の破片に虫メガネを近づけて観察したあと、手に取って呟(つぶや)いた。
「兄ちゃん、よく分かるねっ!」
「そりゃ分かるさっ! 破片がベトベトしてないっ!」
「なるほどっ!」
弟は、いとも簡単に納得した。
「誰かしらっ!?」
そこへ、真ん中の妹が現れ、捜査に参加した。
「… ここにいる三人以外の誰か、ということだけは確かだっ!」
「そうねっ! 犯人を突き止めないと、この先も食べられる危険性があるわっ!」
「そうだな…。再犯の危険性は否定できんっ!」
兄は昨夜観た、とある推理ドラマの台詞(セリフ)をそのまま引用し、所長顔で断言した。
「でもさっ!」
「なんだっ!」
「こんなに落ちてるとこを見ると、こっそり食べたとも思えないよっ!」
「おおっ! いいとこに目をつけたなっ、班長! これは我々、家捜研に対する挑戦かも知れんぞっ!」
「そんなこと、ないわよっ!」
すぐに妹が全否定した。
「係長っ! その理由はっ!?」
「だってさ! この食べ方はじいちゃんに決まってるからっ!」
「それも言える…。父さんや母さんが、こんな痕跡は残さんからなっ! それじゃ、すぐ通報してくれっ!」
「誰にっ!?」
「決まってるじゃないかっ! 僕にだよっ!」
「だって、兄ちゃんは今、所長でここにいるから知ってるじゃないかっ!」
「知ってるさっ!所長の僕は知ってるが、刑事の僕は知らないだろっ!」
「…分かりましたっ! …もしもしっ!」
「はいっ、なにかっ!?」
「犯人が分かりましたっ!」
「そうですか…。すぐ、そちらへ向かいますっ! …でっ! 犯人はっ!?」
「離れに潜(ひそ)んでるじいちゃんですっ!」
「ははは…じいちゃんは潜んでないだろっ!」
家捜研の捜査は、あっけなく終結した。
今日の十話は、こんな感じの四方山話(よもやまばなし)でした。^^
完