水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (22)どうにもならないとき

2021年09月19日 00時00分00秒 | #小説

 どうにもならないときは、どうにもならない。^^ どうにもならないのに、人は、どうにかしよう! として、やはり、どうにもならなくなって落胆(らくたん)する・・と、まあ、話はこうなる。^^ 今日の四方山話(よもやまばなし)は、そんなどうにもならないときのエピソードである。落胆するのは嫌だから、私の場合はインスピレーション[直感]で出来る、出来ないを判断するようにしています。^^ 途中で、どうにもならなくなり、ゴチャゴチャするのは問題ですから…。^^ と、なれば、そのときにどう対処するか? の見極め力を鍛(きた)えるのがいい・・という結論に至ります。^^
 とある、どこにでもあるような住宅街の一家屋である。この家に住まう男が、家の入口で? を弄(いじく)っている。
「これだったか…? いや、待てよっ! 出がけに二(ふた)つ目のキーホルダーを外してバッグへ入れたよなっ!?」
 男は誰もいないのにブツブツと呟(つぶや)いて、自分に言い聞かせた。
「いやいや、一(ひと)つ目だったか…? いやいやいや、やっぱり二つ目だったはずだ…」
 傍(そば)で他人が聞いていれば、一つ目でも二つ目でもいいだろっ! という話になる。この男が言おうとしているのは、家の棚(たな)に三か所、ネジ釘(くぎ)でキーホルダーの掛け場所が設置されており、そのどれをバッグに入れたのか? ということだ。一つ目が個人用、二つ目が家用、三(みっ)つ目が予備キーホルダーの掛け場所・・となっていた。三つもキーホルダーがいるんかいっ! という素朴(そぼく)な疑問が湧(わ)くが、この男の家は鍵が多かったことと、男自身がキーマニアだった・・という事情があった。
「二つ目だから、この中の一つで閉まるはずなんだが…」
 男は二つ目のはずのキーホルダーをゴチャゴチャと一つづつ挿しては抜き、そしてまた挿しては抜く動作を繰り返した。
「こりゃ、どうにもならんぞっ!」
 十五分後、男は腕を見ながらポツリと呟(つぶや)いた。勤めで遅刻しないギリギリの時間が近づいていたのである。
「よしっ! 諦めよう…。とはいえ、このまま、閉めずに出るというのもな…」
 男は入口を見回した。すると、上手くしたもので、手ごろな植物が茂る植木鉢が左右にあるではないか。男は入口の戸を、恰(あたか)もバリケード封鎖するかのように横一列に並べた。よくよく考えれば、返って目立つのだが…。^^
「ははは…これで、いいっ!」
 戸締りとしては少しもよくないのだが、男にはよかった訳である。
 どうにもならないときは、どうにもならないから、どうにもなるような妥協できそうな状況を作る努力がいる・・ということだ。
 今日の二十二話は、どうにもならないときの四方山話でした。^^

                   完


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