なんといっても、人生を送る場合に言えることなのだが、全(すべ)てが充足して満たされた暮らしでも、病気では話にならない・・ということでもないが、二十七話は、そんな元気の四方山話(よもやまばなし)です。^^
とあるどこにでもあるようなフツゥ~の病院である。二人の老人が擦(す)れ違いざま、立ち止まった。
「やあ! また、お出会いしましたなっ!」
「あっ! これはこれは…どちらさんでしたかな?」
「いやですなぁ~。一昨日(おととい)、お話しした私ですよっ! ワ、タ、シ!」
「束子(たわし)さん? ああ、ゴシゴシと擦(こす)る、あの束子の束子さんですか?」
「ははは…束子じゃありませんっ! 私(わたし)ですっ!」
「はて…?」
「塩辛(しおから)ですよっ! シ・オ・カ・ラっ!」
「ああっ! トンボの塩辛さんっ! お元気そうでなによりですっ!」
「ははは…馬鹿なことをっ! 身体の具合が悪いから、こうして来てるんじゃありませんかっ! 一昨日、お話ししたと思いますが…」
「ああ、お聞きしてましたか。ははは…」
「ははは…じゃありませんよっ! お宅こそ、お元気そうじゃありませんかっ! …ところで、どちらさん、でした?」
「甘口(あまぐち)ですよっ! 確か、一昨日、お話ししたはずですがなっ!」
「? …そうでしたかな? ははは…私も元気じゃないみたいですなっ!」
「ええええ。それで、ここの診察を受けられるんでしょ?」
「そうなんですか?」
「嫌ですなぁ~。ですから、二人ともここで待っとるんでしょ!」
「ああ! そうでした、そうでしたっ! で、どちらさんでしたかな?」
「甘口ですよっ! 今、言いましたっ!」
「ええっ! そうでしたか? 元気だった頃が懐かしいですなっ!」
「ええええ。元気だった頃が…」
二人は遠い昔の元気だった頃に思いを馳(は)せるのだった。
今日の二十七話は、ボケて懐(なつ)かしむ、元気をテーマにした四方山話(よもやまばなし)でした。^^
完