皆さん、知らず知らずに、つい、やってしまうことってありませんか?^^ 癖(くせ)とまではいかない、つい、やってしまう話を二十九話の四方山話(よもやまばなし)にしたいと思います。勝手にすればっ! とお思いの方は、ツマミで一杯、飲んでいて下されば、それで結構です。^^
時は江戸時代、とある番屋である。目明しの半次がお縄にした掏摸(すり)の又八を取り調べている。
「親分っ! 仕方ねぇ~じゃありやせんかっ! つい、やっちまうんですからっ!」
「又八! つい、やっちまうってのは、言い訳になんねぇぞっ!」
「へぇ! そりゃ、もう…」
「おっ! いけねぇ~やっ! かかぁ~に頼まれたサンマ、買ってかねぇ~となっ!」
「そういやぁ~親分、よく飲みなさるそうで…」
「よく知ってるじゃねぇ~かっ! おめぇ~、それを誰から聞いたっ!?」
「さあ、誰でしたかねぇ~。あっしの耳は、地獄耳でしてねっ!」
「いゃ~なにっ、つい、いつもの屋台で壺入(つぼい)
りしちまってなっ!」
「それで、ついやっちまう訳ですねっ!」
「ああ、つい足が向っちまうって寸法よっ!」
「つい、屋台へ座っちまうって訳ですねっ!?」
「ああ…つい、座っちまうんだっ、この両足がっ! 」
「仕方ありやせんねぇ~。あっしの指と変わらねぇ~じゃございやせんかっ! 」
「だなっ! 同じ穴の貉(ムジナ)ってことだっ!」
「ははは…さよ、ですねぇ~」
「馬鹿野郎っ! 笑うんじゃねぇ~やっ! それよか、次は、つい、やっちまわねぇ~ようになっ!」
「親分もっ!」
「ああ…。馬鹿野郎っ!」
二人が大笑いした声は、番屋の外まで聞こえた。
「何が可笑(おか)しいんだろうねぇ?」
「さあ~?」
通行人達は首を傾(かし)げて通り過ぎるのだった。
二十九話は、つい、やってしまう江戸時代の四方山話でした。^^
完