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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (7)区切り

2021年09月04日 00時00分00秒 | #小説

 こうも世の中が複雑になると、一つの作業もその日のうちに終えることが出来なくなる。そうなれば、その日、また次の日と区切りをつける必要に迫られる。別に区切らなくたっていいだろっ! と言われる方もおられようが、それが許されない今の世の中だから辛(つら)い。下手(へた)に働いてもらえば、法律に触れたり、人間関係がややこしくなる昨今(さっこん)だから困りものだ。まあ、私が困ることもないのだが…。^^ ということで、今日の七話は、そんな四方山話(よもやまばなし)である。^^
 いつやらの短編集にも登場していただいた、とある夫婦の今朝の一コマである。日曜ということもあり、夫は昨日(きのう)やり始めたDIY(日曜大工[正確には土曜大工])の続きをやり始めた。夕方までに完成しよう! と意気込んだものの、不手際(ふてぎわ)もあり完成せず、区切りをつけて今朝に回したのだった。
 妻が起き出す七時頃の二時間ばかり前の暗いうちから意気込まなくてもいいのに意気込んで飛び起きたのだった。
「…それにしても怪(おか)しいっ! どうしても寸法が2cm足らんっ! もう鋸(ノコギリ)で切ってしまったからな…。買いに出るというのも、なんだし…」
 ブツブツと状況を愚痴りながら、夫は腕を組んで思案に暮れた。時はすでに七時になろうとしていた。鳩時計の七時の時報が鳴ると、そこへ現れなくてもいいのに30Kgオーバーの妻が現れた。
「しようがないわねっ! こんなに散らかして…。お食事までには片づけてねっ!」
「ああっ!」
 仕方なく嫌々(いやいや)返した夫だったが、とても片付きそうにもない…と内心では思っていた。
『今日も、これで区切りとするか…』
 30分後である。板の20cm足らずの解決法が見つからず、訳の分からない理由づけをした夫は、この日の区切りをつけることにした。妻の小言(こごと)を避(さ)けたかった・・ということもある。
 それからひと月が経ったが、未(いま)だに、この夫の日曜大工[DIY]は完成を見ていない。
 区切りをつけるのはいいが、先々の目途(めど)を立てていないと、なんの意味もなくなる・・という訳である。
 今日は、こんな四方山(よもやま)なお話でした。^^

                  完


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