「ああ…」
夢が覚(さ)めたとき、憶(おぼ)えてるだろうか…と、夢の中の海老尾は素直に感じた。だが、このこと自体、夢である。そうは返したが、一人と一ウイルスが出会うタイミングである。勤務中は無理だとして、人がいる場所では無理に決まっている。
「やはり、休みの日がいいな…」
『ですよね…』
「外出中は無理だ…」
『当然です…』
『で、何もしていないとき…』
『それも当然です…』
「となれば、ウトウトして本を読んでいる今か…」
『昼どきですね…』
「または夜、眠っているときか…」
『日曜は勤務に備えて熟睡していただくとすれば、土曜のお休みになられた頃…』
「だなっ! その二つの場合にしよう」
「分かりました…」
ウイルスは自身の都合は言わずに了解した。そのとき、ふと海老尾は目覚めた。読みかけの本がソファーからフロアへ落ちていた。午後二時頃から読みかけたのだが、すでに四時前になっていた。
「ははは…レンちゃんか」
思わず馬鹿げているな…と思え、海老尾は苦笑しながらソファーを立ち上がった。
海老尾は日曜の夜、決まって外食することにしていた。それも、決まって同じファミレスだった。店名をロプスターといった。海老尾が蟹で食事するのである。^^
続