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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFユーモア医学小説 ウイルス [30]

2023年02月11日 00時00分00秒 | #小説

「仕方なく風呂から上がって、隣の奥さんの話を聞かされる破目に陥(おちい)った・・という訳さ」
「その奥さんの親戚ですか?」
「いや、旦那さんの親戚らしいんだ…」
 益々、ややこしいじゃないかっ! と海老尾は少し怒れた。話をもっとコンパクトに纏(まと)めてくれっ! とでも言いたい気分である。
「旦那さんの親戚の犬ですか?」
「ああ、その家の犬が、数日前、捻挫(ねんざ)したってさっ!」
「犬が捻挫ですか!っ?」
「ああ、散歩の途中で捻挫したそうだ…」
「それで赤鯛に?」
 弱い犬だな…と海老尾は思わず笑いそうになり、グッと堪(こら)えた。
「ああ、診てもらおうと思ってね」
「で、僕から話を?」
「ああ、紹介してもらえると有難いんだが…」
「いいですよっ! ヤツの都合次第ですが、話してみてみましょう」
「有り難う、宜(よろ)しく頼むよ」
「はいっ!」
 海老尾は快(こころよ)く引き受けた。
「私も、とんだ災難だよ、近所というだけでさっ!」
 海老尾は、僕の方が災難ですっ! と内心で思ったが、そうとも言えず、笑って暈(ぼか)した。
「数日以内に頼みたいそうだ…」
「分かりました…」
 海老尾は、すぐに動物病院へ連れてった方が…と、思った。加えて、犬が可愛そうだろっ! と怒れた。

                   続


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