レンちゃんの従兄弟(いとこ)という例えは分かり辛(づら)いが、要するにレンちゃんの分身で+アルファの存在力を持つウイルスだったのである。
『僕をより強力にすればいいだけの話ですよ』
「それは、どういう手法で生み出せるの?」
『カクカクシカジカです』
「なるほど…カクカクシカジカだったのか。僕も所長もカクカクだけでやってたからなぁ~」
『それでは無意味です。シカジカのプロセスをしないと…』
「半年も、なぜ気づかなかったんだろっ?」
『ははは…まあ、いいじゃないですか』
あなた方の才能が足らないからですよ、と思わず言いそうになったレンちゃんだったが、言える訳もなく、笑って暗闇へ姿を消した。だがそれは、飽くまで海老尾の夢の中の出来事なのだ。
その後、夢は一転、研究所へと舞台を変えた。海老尾はレンちゃんが見守る中、試験管のウイルス培養液をスボイドでスライドガラスの上へ数滴、垂らしていた。そして、そのスライドガラスにカバーガラスを乗せ、海老尾は出来上がったプレバラートを電子顕微鏡へと移動操作した。
「こ、これは…!」
『見えるでしょ。それが僕の従兄弟です。残念ながら僕なんか、とてもとても…っていうほど力強いんですよ』
「この従兄弟のウイルスだと、どうなるんだい?」
『どうなるもなにも…彼なら、ウイルス関係はすべて治(おさ)められるでしょう』
「そうなのかいっ!?」
『はい、そうなんですっ!』
レンちゃんは自信あり気に言い切った。
「よしっ! これは夢だったな…。起きたらこの操作をやってみるよ」
『夢から覚めて、忘れないで下さいよっ!』
「ああ、分かってるさっ!」
海老尾はレンちゃんに念を押され、忘れまいと決意した。
これがチームリーダー海老尾が新ウイルスを思いついた経緯(いきさつ)である。
続