夢の中なのでレンちゃんとの会話は、当然、朧(おぼろ)げな映像である。現実の海老尾はベッドに横たわって眠っているのだが、夢の中ではベッドに腰を下ろした状態で座っていた。
『どうなんです?』
「なにが…?」
『夢の中なんで、分かってらっしゃると思うんですが…』
「ああ、そのことか…。それは、なんとかなったんだ」
『と、いいますと?』
「抗生物質的じゃないことが判明してね」
『効果はズゥ~っと続くということですか?』
「そう! 問題は今後の国の方針次第なんだ」
『治験の進み具合ですか?』
「ああ、国が承認しないと製造許可が下りず、市販されないからね…」
『ですよね…』
「残念ながら薬剤の安全性からか、承認がなかなか下りないんだ…」
『困ったことですね。僕には分からない世界ですが…』
「ははは…僕にも君達の世界は分からないよ」
『お互い、分からない訳ですね』
「そうそう…。と、いうことで、先々のことはお国のお偉方にお任せするしかないと、まあ、そういうところだね」
『分かりました海老尾さん。…海老尾さんは呼び辛(づら)いですね。海老さんでいいですか?』
「ああ、構わんよ」
海老尾は一瞬、油で揚げられた美味(うま)そうな海老を想像したが黙認した。
続