海老尾は仕事帰りに赤鯛へ携帯をかけた。
『ああ、分かった。もうすぐ終わるから、エントランスで待っていてくれ。10分ほどで行くから…』
海老尾はエントランスの椅子に座り、赤鯛を待つことにした。よく見るセキュリティ会社の警備員、平目(ひらめ)が愛想よい笑顔で海老尾に一礼する。平目は常駐らしく、週に二、三度は必ず見る警備員だった。
「誰か、お待ちですか?」
「ちょっと、友人を…」
「さよ、ですか…」
それ以上、平目は訊(き)かなかった。
しばらくして、赤鯛が早足でエントランスへ出てきた。
「すまん、すまん! 待たせたな」
「いや、なに…」
二人は話しながら研究所を出た。
「で、話というのは?」
「実は所長の頼みで、お前にひと肌、脱いでもらいたいんだ」
「ひと肌でもふた肌でも脱ぐが、いったいなんだ?」
「いや、そう言われると、どうも切り出しにくいんだが…。所長も頼まれたらしい」
「誰に?」
赤鯛は鬱陶(うっとう)しそうな顔をした。
「隣の家の奥さんだそうだ…」
「で!?」
「正確には、隣の奥さんの旦那さんの親戚なんだが…」
続