水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFユーモア医学小説 ウイルス [22]

2023年02月03日 00時00分00秒 | #小説

 フラッシュ・メモリーをパソコンのUSB口に差し込み、Enter Keyを押す。すると、すぐ、入力したデータのアスキー・ファイルが立ち上がった。ひと月ほど前、プログラムしてバイナリ・セーブしておいたファイルをRUNさせ、アスキー・ファイルとして保存したファイルである。

 [1]ウイルス・ベクター
   (1)ガンマ・レトロウイルス
   (2)レンチウイルス
   (3)アデノウイルス
   (4)アデノ随伴ウイルス
   (5)単純・ヘルペスウイルス

「いろいろ、あるけど、どうなのっ? って、直接、ウイルスさんに訊(たず)ねてみたいくらいのものだな…」
 この海老尾のSF思考の呟(つぶや)きが、後日、現実のものになろうとは、誰も思うやに出来ない。
 赤鯛と飲んだ酔いが残っていたせいか、海老尾はデスクに突っ伏して、いつの間にか眠り込んでいた。気づけば、すでに日は変わっており、深夜の二時過ぎになっていた。
「まあ、いいか…」
 何がいいのか分からないが、海老尾はそのまま寝室へ入り、二度寝することにした。海老尾の海老尾たる所以(ゆえん)である。海老尾は夢を見た。
『海老尾さん、海老尾さんっ! 起きて下さいよっ!! こんなところで寝ちゃ、風邪(かぜ)引きますよっ!』
 海老尾はデスクに突っ伏して眠っていた。
「…んっ!?」
 肩を叩(たた)かれたような気がした海老尾は、寝ぼけ眼(まなこ)で辺りを見回した。誰もいる訳がない…とは思うのだが、声を感じたのは事実だった。

                   続


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