代役アンドロイド 水本爽涼
(第71回)
三人は、ただ沙耶の指先を目で追うばかりで言葉を失っている。パソコンを前に机椅子に座って遠目で見る保は、しまった! やっちまったか…と舌打ちした。この沙耶の動きまでは保に読めていなかった。
「あ! あんた、いったい何者だっ!」
顔を引き攣(つ)らせた山盛教授が上擦(ず)った声で叫んだ。
『私ですか? 岸田の従兄妹の沙耶です…。それが何か?』
沙耶は至って冷静である。こりゃ、危険だ! と保は思った。
「ははは…。沙耶、駄目じゃないか。勝手に手を出しちゃ!」
上手く誤魔化さなければ…と保は咄嗟(とっさ)の逃げを打った。
「岸田君、どういうことかね?」
教授の目線が保に飛んだ。
「いやぁ~、沙耶はメカ好きで、困るほどの機械オタクなんですよ」
「なんだ。そういうことか…。驚いたよ」
教授に笑顔が戻った。
『すみません。つい、見てられなくって…』
「いいんですよ、お嬢さん。ははは…」
渡りに船とは、まさにこのことか・・と但馬は思ったに違いない。一転、自分の面目が保たれたからだ。保にしたって、危うく沙耶の正体がばれるか・・と思える危機を脱したのだから、ある意味で同じだった。結果、ハイレベル電磁波防御システムを含む沙耶の最終試験は、ほぼ合格ラインに至った。
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