幽霊パッション 第二章 水本爽涼
第二十八回
「君の目には変わりなく映るんだろうが、私や他の者には、その平林とかが受け取った瞬間、消えてしまう」
「へえ~…」
『そうなんだ…』
上山も、プカリプカリと傍(そば)で浮かぶ幽霊平林も、呆(あき)れて、ひと言、吐いた。
「分かったか! じゃあ、切るぞ!」
携帯は、言葉のあと途切れた。
『マヨネーズを、どうするんですか?』
「なんでも、霊磁波を照射して中位相にするとか、なんとか…。よく分からんが」
『フ~ン…。それで、僕もマヨネーズを霊界へ持って帰れる訳ですね』
「ああ…、なんでも、それを朝晩一週間、食べ続けて欲しいということだ」
『へぇ~…。まあ、霊界へ持って帰れるものなら、僕の口にも入るんでょうがね』
「ああ、食べたり飲んだりの必要ない君だが、口に入れることは出来るんだろ?」
『ええ、それは、フツーに出来ます。別に困りません』
「そうか…。なら、よかった。なんでも、佃(つくだ)教授に頼まれるようだが、研究所にそんな装置があったんだなあ」
『ええ、そのようですね。この前は気づきませんでしたが…』
「うん、まあなあ。こちらも、訊(き)かなかったからな」
『ええ、それはまあ、そうです』
第一会議室で、二人(一人と一霊)はヒソヒソと語り続けた。
「おお、もうこんな時間か。そそろ戻らんとな…。君はどうする?」
『僕ですか? いても、意味ないっしょ! 消えます。また、必要なときに、手をグルリとお願いします…』
そう云い残すと、幽霊平林はスゥ~っと格好よく消え失せた。上山は、それを見届けて第一会議室を出た。
最新の画像[もっと見る]