水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第二章 (第九十九回)

2011年12月12日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第二章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     
    
第九十九回
「そうか…。なら、いいんだ、ご苦労さん。続けて効力の及ぶ範囲も調べといてくれよ」
『はい!』
 迷惑だと感じたのか、幽霊平林は即座に消え去った。もちろん、格好よく消えることだけは忘れていなかった。
 さて、霊界へ戻った幽霊平林である。住処(すみか)へ入って止まろうとしたが、いつものように止まれない。いや、正確に云うなら、止まれるのだが止まれない気分の昂(たかぶ)りがある、といった方がいいだろう。止まれるとは、人間界なら眠れる、ということになる。感じは、ゴーステンの影響で止まれなくなったあの時とは違う止まれなさ、なのだ。そこで、幽霊平林は無理に止まらないことにした。上山に云われた念じた効力の及ぶ範囲を調べるには、どうすればいいかを弔文屋(ちょうもんや)で買い求めた霊界万(よろず)集で探ろうと思ったのだ。人間界の書物と違い、この霊界万集で分からないことは皆無だった。ただ、その索引の語に辿り着くまでが厄介(やっかい)なのである。なんといっても、すべての分野に及び、天文学的な内容を包含(ほうがん)している霊界万集だから、少し慣れた幽霊平林といえど、そう容易なことではなかった。そこで彼は、まず如意の筆という語から索引することにした。

□ 如意の筆 霊界の君臨者である霊界司が、その使者となる霊界番人に授けた筆。あらゆる事象を如意のままに変ずることが出来る超霊力を有する筆。効力は無限にして無上とされる。かつて効力の及ぶ限界を知った御霊(みたま)は、いないとされている。遣(つか)わされる場合は、特殊な事情がある場合だといわれる ━

『なるほど…』
 霊界万集を紐解(ひもと)いた幽霊平林は、書かれた文面を読みながら一人ごちた。


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