水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第二章 (第七十九回)

2011年11月22日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第二章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  
    
第七十九回
「おっ! これなんか、手頃じゃないか。そう危険そうでもないし、二人の第一弾としてはバッチリだと思うんだが、君はどうだ?」
 右上を見上げるように、上山は幽霊平林に訊(たず)ねた。
『いいんじゃないですか、それ。僕もそれくらいが確実だと思いますよ』
 幽霊平林は即座に肯定した。上山が手にする新聞には、部族の宗教間対立によるアフリカ某国の暴動勃発記事が掲載されていた。
「ひどいことになってるなあ…。そこへいくと、我が日本は平和だ…」
『ありがたいことです。死人の僕が云うのもなんですが…』
「そうそう。素直に感謝しないとな。その心を忘れた日本人が増えつつあるのは悲しいが…」
『おっしゃるとおりです。困ったもんですよ』
 幽霊平林は頷(うなず)いて肯定した。
「よし! じゃあ、私がマジックで要点を書くから、君は、これを読んでくれ」
 上山は、新聞を示しながら云った。
『はいっ!』
 幽霊平林は新聞にスゥ~っと接近しながらそう云った。
「軍事紛争じゃないだけ増しだわな」
『ええ…。僕は死んでますから、どちらでもいいんですが、課長は生身ですからねえ』
「生身か…。なんか生肉のユッケ的表現で、いやだな」
『すいません…。それじゃ、記事を読みますよ』
「ああ…」
 上山はケント紙の前でマジックを片手に聴き耳を立て、幽霊平林は新聞記事に目を凝らした。


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