幽霊パッション 水本爽涼
第三十三回
「そんなのがあるんだ…、やはり」
『ええ、霊界は立派に存在してますよ。…立派というのも妙な云い方なんですが…』
幽霊平林は霊気を放って蒼白く笑い、上山は人間っぽくオレンジ色で笑った。
「まあ、そんなことはいいが、君の場合はスンナリ研究室へ入れるが、私がねえ。滑川(なめかわ)教授にどう接近するかだ…」
『そうでした…』
「何かの社用でお伺いした、とでも云えば、昔のよしみで入れなくもないんだろうが…」
『というより、その方法しかないんじゃないでしょうか』
「まあ、そうだなあ…。それで教授にどう切り出すかだなあ、君と私のことを…」
『素直に、洗いざらい云った方がいいんじゃないでしょうか。僕が見えるってことも含めて…』
「君は、そう簡単に云うが、この話って尋常じゃないからなあ」
『でも、教授も尋常じゃないんですから、上手くいくような気が僕はするんですよ』
「ああ、そうか…。マイナス×マイナス=プラスって訳か」
『はい…』
「よしっ! なら、そうしようじゃないか。で、いつ実行するかだが…」
『私ははいつだって、現れますよ』
「岬君の仲人話が六月だから、それまでには、なんとかせにゃいかんな」
『あと、ひと月半ほどですね。急ぎますか?』
「ああ、数日中に、まずは滑川(なめかわ)教授に電話してコンタクトを取ろう。プツリ! と切られんように慎重にいかんとな」
『ええ、そうして下さい。僕は瞬間移動でアチラから霊力を送りますから』
「そんなことが出来るのかい? 君」
『ええ、その気にさせると迄はいきませんが、そういう雰囲気を送ることは出来ます。もちろん、相手にもよりますが…』
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