水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

世相ユーモア短編集 -93- 雨

2025年02月22日 00時00分00秒 | #小説

 雨が降っていた。庭に落ちる雨滴をガラス越しに見ながら、田力はソファに座った。最近の世相は、雨の日が続いている…と田力は思った。田力はこの現象を天岩戸(あまのいわと)現象と勝手に名づけた。^^ この現象が出現すると世相は暗くなり、魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する陰湿な世界へと変貌するのである。世界では紛争や戦争が勃発し、国内では悪い法律[労働者派遣法や法改正etc.]や制度、規律、規則が暗躍し、人々は暮らし辛(づら)くなる。コンプライアンスが叫ばれ、人々の行動は委縮の一途を辿る訳だ。しかし最近、田力の力は弱まっていた。二毛作が一毛作となり、稲田の収穫が終われば田畑は草に覆われ、荒れ放題となっていた。
『あの頃は菜種、胡麻、レンゲが…』
 田力は黄色い菜の花畑を脳裏に浮かべ、あの頃は自分も強かったな…と、思った。そんな思いに耽(ふけ)りながら、いつの間にか田力は睡魔に襲われ、ウトウトと眠っていた。
 雲の上で田力は目覚めた。雲海から日が昇ろうとしていた。日の出はいいな…と、田力は思いながら雲の絨毯(じゅうたん)の上へ寝そべった。
『岩戸を開ける必要がないから、こりゃ楽だわ…』
 そう思った途端、目覚ましが鳴り、田力はハッ! とソファで目覚めた。
「なんだ、夢か…」
 ガラス越しに見える外は、相変わらず暗く陰湿な雨が降っていた。
 雨ですか。雲を払われるアメノウズメさんにお頼みになれば、如何(いかが)でしょう?^^

                   完


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