水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第二章 (第五十三回)

2011年10月27日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第二章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      
    
第五十三回
「君は律儀だからな。その…ほれ…、なんとか云ったな。ああ、そうそう、平林だったか? その者と同じで日に三回。いや、君も忙しいだろうから、朝晩の二回でいい、報告してくれまいか?」
「分かりました…」
「それじゃな…」
 滑川(なめかわ)教授の電話は途絶えた。そしてすぐ、上山はマヨネーズのキャップを外(はず)し、吸いつくように口にした。夜も更け、誰もが寝静まろうとする頃、上山は自分の変化を確認しようとしたが、出来るべくもないことに気づいた。当の幽霊平林を呼ばない限り、結果は分からないのだ。呼んで彼の姿が見えれば効果ゼロ、見えねば効果があったということになる。
 さすがに、その晩は疲れていたのか、上山は幽霊平林は呼ばないことにした。呼ぶ方法は以前と変わっていない。左手首をグルリと一回転させるだけで事は足りた。そんなことで、いつでも呼べるんだから…と思うと、気分が緩んだせいか眠気に襲われた上山は、いつしか微睡(まどろ)んでいた。
 次の日は上手い具合に日曜だった。上山は慌(あわただ)しく朝の諸事、具体的には食事の準備、片づけ、家の雑事なのだが、それらを済ませ、左手首を故意にグルリと回した。予期したように当然、幽霊平林は格好よく現れた。彼が現われたといえるのは幽霊平林の姿が上山に見えた訳で、それが残念なのか残念でないのかは別として、中位相処理されたマヨネーズ効果は、まだなかったのである。この段階ではマヨネーズ効果が、まったくないのか、あるいは一度のみゆえ効果が出ていないのか・・は、上山に分からなかった。
「やっぱり、見えるよ」
『そうですか…、残念でした。…って、僕としては嬉しいんですが…。じゃあ、また…』
 気遣(づか)ってか、幽霊平林は、すぐ消えた。
 結局、上山は何度か口にしてみたが、幽霊平林の姿は、やはり見えた。それは中位相処理されたマヨネーズが霊界の幽霊平林には効き、上山には駄目だということだった。上山としては、これで当分は幽霊平林と付き合える訳なのだが、彼を手助けして社会悪を滅ぼす、という正義の味方を演じなければならないのだから、痛し痒(かゆ)しというところだった。


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