水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第二章 (第六十八回)

2011年11月11日 00時00分00秒 | #小説

幽霊パッション 第二章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             
    
第六十八回
『分かりました。それじゃ、場所を変えて効果を試します』
「私は会社にいるから、効果が分かり次第、伝えるだけ伝えてくれないか」
『はい、そうします。その後は?』
「効果の結果によるさ。それによって考えを変えにゃならんからな」
『そうですよね。効果もないのに世界紛争を、などと茶番です』
「まあ、そういうことだ…」
『では…』
 幽霊平林はスゥ~っと消え去り、上山は舗道を駐車場へと急いだ。鉄道ルートでも通勤出来るのだが、今朝は車で行くことにしたのだった。心の奥底には、最近、改正された車による通勤手当のアップというセコい根性が頭をもたげたことも否めない。
 それは、ともかくとして、上山はいつものように業務第二課長として席に着いた。
「おはようございます! 課長。今日は早いですね」
「ああ、岬君か。ちょいと朝、早く起きてな…。君も早いな。それより結婚生活の方はどうかね?」
「はあ、お蔭様で楽しくやらせてもらってます。あっ! そうでした。妻が妊娠しまして…。三ヶ月だそうです」
「おお! そりゃ、おめでとう。仲人としては、なにか祝わんといかんな…」
「もう、そんな心配は、しないで下さい、課長」
「そうか? いや、そうもいかんだろ、聞いた以上」
「云わなきゃ、よかったですよ。妻にも余り大げさに云わないよう、釘を刺されてますし…」
「亜沙美君は気配りの利く子だったからなあ」
「はい…。まあ、そんなことですから…」
「分かった分かった。聞かなかったことにするよ」
 上山の内心は祝い袋をいくらにするか…だったが、口では真逆を語っていた。


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